映画「太陽の墓場」


炎加世子                      川津祐介

今回は大島渚監督の「青春残酷物語」に続く1960年作品「太陽の墓場」をピックアップした。
私はリアルタイムで観ている世代ではないが、70年代に池袋文芸坐で観た。作品の背景として石原慎太郎氏原作「太陽の季節(古川卓己監督/1956年日活)」「狂った果実」が当時世を席捲していた。湘南を舞台にした両者に対し、本作は大阪のドヤ街の設定でありアンチとして成り立った作品だと思う。

作品リスト

「太陽の季節(古川卓己監督/1956年日活)」に主演した長門博之氏の弟である津川雅彦氏。
狂った果実(中平康監督/1956年日活)に主演した川津祐介氏が本作では共演といったキャスティングである。


佐々木功、津川雅彦             小沢栄太郎、伴淳三郎

本作は大阪のロケーション撮影が多くを占めるが、火災シーンや室内は、松竹大船撮影所が使われたと思われる。松竹大船は1980年代に撮影所を縮小してイトーヨーカ堂と三越になってしまった。
この頃私はTVCFの撮影で使用した事があるが、2000年6月に完全閉鎖し、現在では鎌倉女子大学になっている。1986年の大映京都撮影所閉鎖に続いて、戦後二例目の撮影所完全閉鎖であった。原因は俳優渥美清氏の死後「男はつらいよ」シリーズの続行不可など経営悪化での土地売却だった。

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本作撮影中の大島渚監督と名匠川又昂カメラマン

写真のキャメラは1000フィートマガジンを装着したNCミッチェル(アメリカ製)。
私より上の世代が使ったパララックスカメラである。つまり本番でファインダー下のノブを回してレンズ面とフィルム面とが入れ替わる様にスライド出来る構造 になっている。これはレンズに入った光を100%フィルム面に露光させる為の方式で、ミラーシャッター方式(※1)が出現する前の常套であり、フレームを 決めるにも職人技が必要だった。
その後、ミッチェルはMarkⅡ・Ⅲとミラーシャッター方式になったが、ムーブメント(フィルム駆動装置)の画止まり安定度は正確無比でパナビジョン社などのキャメラに継承されている。


佐々木功                      伴淳三郎

佐々木功氏は当時ロカビリー歌手としても和製プレスリーと呼ばれブレイクしたが、後に「宇宙戦艦ヤマト」「銀河鉄道999」などアニメ主題歌でも再ブレイクしアニソンの大王と呼ばれ現在も活躍されている。また1970年実相時昭雄監督「無常」にも出演している。
伴淳三郎氏は1950年代松竹「二等兵物語シリーズ」1960年代東宝「駅前シリーズ」など大ヒットした喜劇俳優で有名だが、内田吐夢監督1964年製作 「飢餓海峡」などでシリアスな演技にも独特な存在感を出し今村昌平監督1981年作品「ええじゃないか」まで活躍されたが1981年11月に他界された。


小沢栄太郎                    羅生門綱五郎

上右の写真を見て欲しい。私はジャイアント馬場さんかと思った。調べてみると羅生門綱五郎氏だった。黒沢明監督1961年「用心棒」にも出演されてるそうだ。1940年代に力士(花籠部屋)を経て日本プロレス入りし巨人レスラーとして知られたそうだ。

【ストリー】
大阪の小工場街の一角にバラックの立ち並ぶドヤ街がある。安っぽい看板を下げた建物の中では、愚連隊風の若い男ヤスに見張らせて、元陸軍衛生兵の村田が大 勢の日雇作業員から血を採っていた。花子がそれを手伝った。ポン太は三百円払うのが仕事だった。動乱屋と称する男は 国難説をぶって一同を煙にまき、花子の家に往みつくことになった。ヤスとポン太は最近のし上った愚連隊信栄会の会員で、この種の小遣い稼ぎは会長の信から 禁じられていた。その二人の立場を見抜いた花子は二人の支払いを値切った。一帯を縄張りとする大浜組を恐れる信は大浜組の殴り込みを恐れてドヤを次々に替 えた。
二人は武と辰夫という二人の少年を拾い、信栄会に入れた。仕事は女の客引きだった。
ドヤ街の一角には、花子の父寄せ松、バタ助とちかの夫婦、ちかと 関係のある寄せ平、ヤリとケイマ達が住んでいた。一同は旧日本陸軍の手榴弾を持った動乱屋を畏敬の目で迎えた。武は信栄会を脱走したところを見つかり、花 子の力でリンチを免れた。信の命令で大仕事に出た武、辰夫、花子は公園でアベックを襲った。花子が見張り、物を盗り、辰夫が女を犯した。花子は動乱屋と組 んで血の売買を始めたが、利益の分配でもめ、信栄会と組んだ。信の乾分の手で村田は街から追い出された。動乱屋のもう一つの仕事は、正体不明の色眼鏡の男 に、戸籍を売る男を世話することだった。その戸籍は外国人に売られるのだった。その金で武器を買い、旧軍人の秘密組織を作るのだと豪語した。
戦争や革命を 夢みて、目的なく生きる人々が集まった。花子は坂口という若い医師を誘惑し、採血仲間に加えた。やがて信栄会は内部分裂し、信と花子は喧嘩別れした。仲間 のパンパンのぶ子をつれて大浜組に身売りしようとしたヤスは信に殺された。アベックの男が自殺した。これらのことを見た武はこの世界に嫌気がさした。
その 武に花子の心はひかれた。村田をひろい上げた花子は、動乱屋と組んで再び血の売買を始めた。バタ助は動乱屋に戸籍を売ると、その金で大盤ふるまいをして、 首を吊った。人のいい大男の戸籍を買った動乱屋は、男を北海道に追いやった。花子は武の口から、それとなく信栄会のドヤを聞いた。二人が公園まで来ると、 狂ったように一人の女が武にとびかかった。恋人に死なれたアベックの女だった。花子がつきはなすと、女は悲鳴を上げて崖から転落した。安ホテルの一室で二 人は激しく抱き合った。花子のすすめもあって、信栄会から足を洗うことを決心した武は辰夫に相談した。反対する辰夫はナイフを抜いた。倒れたのは辰夫だっ た。花子は大浜組に信栄会のドヤを教えた。信栄会は殴り込みを受け信の他は全員殺された。武と高架線の上を逃げる信は、ドヤの場所が武の口から花子に知れ たことを悟った。銃声がひびいた。撃たれた武は信にしがみついた。離れない二人の上を、電車が通り過ぎた。呆然とする花子に動乱屋のヤジが聞こえた。
ソ連 が攻めて来て、世の中が変ったところで、このドヤ街に何の変化が来よう!花子もヤジった。騒然とした中に動乱屋の手榴弾が大爆発した。バラックはふっとん だ。
その中を、採血針をもった村田が花子のあとを気ぜわしげに駈け廻っていた。

題名:太陽の墓場
監督:大島渚
製作:池田富雄
脚本:大島渚、石堂淑朗
撮影:川又昂
照明:佐藤勇
録音:栗田周十郎
編集:浦岡敬一
美術:宇野耕司
音楽:真鍋理一郎
出演:津川雅彦、炎加世子、伴淳三郎、佐々木功、川津祐介、北林谷栄、藤原釜足、田中邦衛、小沢栄太郎、小池朝雄、戸浦六宏、渡辺文雄、小松方正
1960年日本・松竹/シネスコサイズ・カラー88分35mmフィルム
太陽の墓場 [DVD]
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。

※1 回転ミラーシャッターは、ドイツArriflex社が1937年に考案しアカデミー賞科学技術賞を受賞した技術だ。レンズから入る光を シャッターが開いている時にフィルム面に、閉じている時にファインダーにミラーで分配する。シャッター開角度180°で秒24コマだと 1/48(360×24÷180)がシャッター速度になる。撮影するとチラチラするがパララックス(視差)はない。

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