映画「マイ・シネマトグラファー」

マイ・シネマトグラファー
撮影監督ハスケル・ウェクスラー氏(自身の機材倉庫)

今回はマーク・S・ウェクスラー監督2004年製作のビデオドキュメンタリー「マイ・シネマトグラファー(TELL THEM WHO YOU ARE)」をピックアップした。本作は劇場で公開され撮影関係者の間でも話題になったが、私はDVDでの視聴となった。だからキネコなのかFレコなのかを 知らないが、製作年度を考えると微妙なところだ。

マイ・シネマトグラファーマイ・シネマトグラファー
カメフレックスのマガジン(エクレール社製)   マーク・ウェクスラー コンラッド・ホール

本作を監督したのは「バージニア・ウルフなんかこわくない(WHO’S AFRAID OF VIRGINIA WOOLF?)」「ウディ・ガスリー/わが心のふるさと(BOUND FOR GLORY)」で2度のアカデミー撮影賞を受賞した伝説的撮影監督ハスケル・ウェクスラー氏の息子である。その父が80歳になった時、ドキュメンタリー監督でもある息子のマーク・S・ウェクスラー氏は、父の名声との葛藤を克服すべくビデオカメラを手に伝説の撮影監督と向き合うという内容だ。

マイ・シネマトグラファー
マイ・シネマトグラファー [DVD]

【主なハスケル・ウェクスラー撮影監督作品】
1963年「アメリカ・アメリカ(AMERICA, AMERICA)
1966年「ヴァージニア・ウルフなんかこわくない(WHO’S AFRAID OF VIRGINIA WOOLF?)」
1967年「夜の大捜査線(IN THE HEAT OF THE NIGHT)」
1968年「華麗なる賭け(THE THOMAS CROWN AFFAIR)」
1973年「アメリカン・グラフィティ(AMERICAN GRAFFITI)」
1975年「カッコーの巣の上で(ONE FLEW OVER THE CUCKOO’S NEST)」
1976年「ウディ・ガスリー/わが心のふるさと(BOUND FOR GLORY)」
1978年「帰郷(COMING HOME)」
1978年「天国の日々(DAYS OF HEAVEN)」
1988年「カラーズ 天使の消えた街(COLORS)」
1989年「三人の逃亡者(THREE FUGITIVES)」
1989年「プレイズ(BLAZE)」
1991年「アザー・ピープルズ・マネー(OTHER PEOPLE’S MONEY)」
1992年「夢を生きた男・ベーブ(THE BABE)」
1994年「フィオナの海(THE SECRET OF ROAN INISH)」
1995年「ジョン・キャンディの大進撃(CANADIAN BACON)」
1996年「狼たちの街(MULHOLLAND FALLS)」

【追記・訃報】
2015年12月27日、米映画撮影監督で著名なハスケル・ウェクスラー氏がカリフォルニア州サンタモニカの病院で死去、93歳だった。ハリウッドを代表的な撮影監督の一人であった。「バージニア・ウルフなんかこわくない」(66年)と、「ウディ・ガスリー/わが心のふるさと」(76年)でアカデミー撮影賞を受賞。その他にも、ジョージ・ルーカス監督の「アメリカン・グラフィティ」(73年)、ミロス・フォアマン監督の「カッコーの巣の上で」(75年)などの撮影を担当しその名を残した。また、リベラル派の活動家として多数のドキュメンタリー作品も手掛け、ハリウッドの殿堂「ウォーク・オブ・フェイム(名声の歩道)」にも名を連ねている。
2015年12月28日 ソース:シネフィル

マイ・シネマトグラファーマイ・シネマトグラファー

さぞかしハリウッドの映画制作現場が見れるだろうと期待したが、テーマは「父の名声との葛藤を克服」であった。その意味では作品として成立しているが、拍子抜けしたのも否めない。照明・構図・音声とやる事なす事に注文をつけるハスケル氏に、撮影は大変だったと思う。本作撮影時で80歳という高齢で市民運動へも参加するバイタリティ、演出家の言う事など聞かない頑固で偏屈な姿は凄い!(真似したら即クビだよ![笑])ビデオレンズを通した親子の対話は、子供じみた言い争いに発展し、撮影は難航する。ジョージ・ルーカス、マイケル・ダグラス、ジェーン・フォンダ、ジュリア・ロバーツ、ミロ ス・フォアマン、ロン・ハワード、シドニー・ポアティエ…等々、ハリウッドを代表する俳優、監督の貴重なインタビューを通して伝説のシネマトグラ ファー像が見えて来る。

マイ・シネマトグラファーマイ・シネマトグラファー

「アメリカの夜(DAY FOR NIGHT/LA NUIT AMERICAINE)」をピックアップした時に「撮影監督については別の機会で後述する」と予告した。本作のエピソードを交えながら資料を添付しようと 考えていたのだが叶わなかった。以下は概説だかアメリカ映画では必ずタイトルされる。

アメリカの撮影システム
Director of Photography(撮影監督)
アメリカ撮影監督組合(American Society of Cinematographers)が決定したルールに沿っているシステム。撮影・照明・特機の責任者であり、撮影技術に関するあらゆる技術的判断を行い 照明を作り上げ露出を決定する。カメラ操作はオペレーター、ピントはフォーカスプラー、機材管理等はギャファー、ベストボーイなどが細分化して担当する。
Camera Operatpr(キャメラオペレーター)
日本と相違しカメラを操作する担当者はカメラマンではなくオペレーターと呼び通常撮影の他、専門職に分かれ、スタディカム、水中撮影、空中撮影などに専門化している。
1st Assistant CameraMan(ファーストアシスタントカメラマン)
フォーカスプラーとも呼ばれレンズのフォーカスを担当する。日本ではセカンド撮影助手に相当する。
●2st Assistant Cameraman(セカンドアシスタントカメラマン)
フィルムローダーとも呼ばれマガジンにフィルムを詰めフィルム管理を担当する。日本ではセカンド撮影助手兼任かサード撮影助手が担当する。また Bold(カチンコ)を叩き、カメラリポート(ラボ向)の記録を担当する。日本でカチンコと言うと助監督の仕事が定番で、アメリカでは撮影助手の仕事であ る。
●Gaffer(ガファー)
撮影監督システムに日本で言う照明技師は存在しない。Gafferは撮影監督を補佐し、露出計を持ち照明に関するあらゆる事をする。日本ではと照明技師と撮影チーフ助手の兼任といったところか。しかし技師ではなく補佐扱いになる。
●Electrician(エレクトリシャン)
照明の灯体及び電気関係(スタジオ電源・ジェネレーターなど)を担当する。但しライトを実際に設置する事はしない。
●KeyGrip(キーグリップ)
照明の配置を始め特機関係など、撮影に関する備品を掌握してグリップを動かす責任者。
●BestBoy(ベストボーイ)
複数いるグリップのチーフ的存在。
●Grip(グリップ)
照明・特機・操演などの操作を行う複数の担当者。

日本の場合はキャメラマンがオペレー ション、チーフ撮影助手が計測(露出を測る=ライトバランス)、セカンド助手がフォーカス送り、機材とフィルム装填がサード助手で最低4人で行っている。

アメリカの場合は日本の様に明確な徒弟制度はない。オペレーターの昇格試験があると聞いたが真偽は知らない。しかしフォーカスプラー やGaffer、Gripなどは独立した職業となっているので生涯十分な報酬と権利がアメリカ撮影監督組合で保障されている。またユニオンに加入していな いとイレギュラーと見做されメジャーな仕事は出来ないという。

【実際に接して】
アメリカロケには数多く行ったチーフ撮影助手の頃だ。LA(ロスアンジェルス)近郊のスタジオまたはロケ撮影で、露出計を持ちガファーに指示する私をアメ リカ人スタッフが見て撮影監督と間違え、本来のカメラマンを閉口させた事があった。カメラマンになってから低予算の作品で助手は全てアメリカ人になった時 も大変だった。ガファーはフィルムチェンジをしないので私がフィルムチェンジ、露出計測、オペレーターをこなした。日本人スタッフはそれを見て「DPだ ね=Director of Photographyの略=出てったパパ」とからかうからひどいものだった[笑]。
余談になったが、映画フィルムが無くなろうとしている今、映画用データカメラでの撮影監督システム編成は、フィルムローダー(2st Assistant Cameraman)の作業内容が変わる程度で大きな変更はないと思われる。ARRIFLEX ALEXAによるデジタルデータ撮影を行ったキャスリン・ビグロー監督の公開中作品「ゼロ・ダーク・サーティ(ZERO DARK THIRTY)」でもその通りだった。
前にも書いたが、日本の場合、撮影監督と名乗る方もいるが、照明技師が独立しているので撮影技師として仕事をしている方の方が圧倒的に多い。アメリカや EU諸国の映画撮影に「照明部」というポジションはない。つまり照明部を吸収した形での撮影監督は一般的になったとは言えないのが日本の現状だ。また日本 にはアメリカ撮影監督組合(American Society of Cinematographers)の様な強力なルールで権利を守る団体も存在しない。

マイ・シネマトグラファーマイ・シネマトグラファー
シドニー・ポワチエ             ジュリア・ロバーツ

題名:TELL THEM WHO YOU ARE
邦題:マイ・シネマトグラファー
監督:マーク・ウェクスラー 、 マーク・S・ウェクスラー 、 ハスケル・ウェクスラー 、 ジョージ・ルーカス
製作:マーク・S・ウェクスラー
原作:マイケル・ダグラス
撮影:マーク・S・ウェクスラー、サラ・リヴィ
音楽:ブレイク・レイ
出演:ハスケル・ウェクスラー、ジェームズ・ベケット、バーナ・ブルーム、ビリー・クリスタル、ジェーン・フォンダ、ミロス・フォアマン、ハスケル・ウェ クスラー、マーク・S・ウェクスラー、ピーター バート、ビル・バトラー、マイケル・ダグラス、ジュリア・ロバーツ、マーティン・シーン、シドニー・ポワチエ
2004年アメリカ/ビデオ・カラー95分SDビデオ
マイ・シネマトグラファー [DVD]
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。