映画「愛のめぐりあい」

愛のめぐりあい愛のめぐりあい
イネス・サストル           イネス・サストル、キム・ロッシ=スチュアート

今回は巨匠ミケランジェロ・アントニオーニ監督1995年製作「愛のめぐりあい(PAR DELA LES NUAGES)」をピックアップした。本作は監督が自ら執筆した小説を原作に北イタリアの小さな村で出張の途中出会った魅力的な女教師に恋焦がれる青年の物語「ありえない恋の物語」、自らの父親を殺したという女性と一夜を過ごした男を描いた「女と犯罪」、2組の男女の恋の行方を綴った「私を探さないで」、ある女性に一目惚れした青年のエピソード「死んだ瞬間」の4話からなるオムニバス作品をアントニオーニ監督が手掛け、プロローグ、幕間、エピローグをヴィム・ヴェンダース監督が担当している。映像が美しく見事に完結している。

愛のめぐりあい愛のめぐりあい
ソフィー・マルソー          ジョン・マルコビッチ、ソフィー・マルソー

【ストリー】
雲のなかを飛行機で旅する映画監督の私(ジョン・マルコヴィッチ)。作品を完成した疲労の中から、次の映画のアイディアが生まれる。霧の立ち込めるフェラーラの街へ。
【第1話】
フェラーラ、ありえない恋の物語>水力技師のシルヴァノ(キム・ロッシ=スチュアート)は出張先の霧の村でカルメンという女(イネス・サストル)に出会う。二人は同じ宿に泊まり、翌日散歩の途中に接吻を交わす。夜、二人はお互いを求めつつも、それぞれ別の部屋に眠った。翌朝彼が目覚めると、彼女はもう旅立っていた。数年後、二人はフェラーラの映画館で再会し、彼女の家に行く。二人は裸で向き合い、彼の手も唇も、彼女の肌や唇にスレスレになりながら、触れることはできない。シルヴァノは憮然と立ち上がり、そのまま去っていった。彼はその後もずっと、この一度も自分のものとすることの無かった女を愛し続けたのである。
【第2話】
ポルトフィーノ、女と犯罪>冬のポルトフィーノの路地で、私は若い女性(ソフィー・マルソー)の後を尾行した。海辺の閑散としたカフェで読書していると、彼女が話かけてきた。自分は父親を殺し。12回刺して殺害し、裁判で無罪になったという。その午後は彼女の部屋で激しく抱き合った。なぜ父を殺したのか、彼女は覚えていない__。私はそんなことよりも、12回という回数の真実に頭がいっぱいになった。映画では、どうしても3、4回にしてしまうだろう。その方がリアルに受け取ってもらえるという妥協から__。
【第3話】
パリ、私を探さないで>パリのカフェで、イタリア出身の娘(キアラ・カゼッリ)がパリに住むアメリカ人の男(ピーター・ウェラー)に話しかけてから3年、男の妻(ファニー・アルダン)は夫の不実に耐えてきた。自暴自棄でアルコールに溺れる妻の体を男は求める、もう女とは別れると約束しながら。だが別れを告げに来たはずの女のアパートで、男はまた彼女の肉体を貪る。パリ郊外のモダンなアパルトマンに、男(ジャン・レノ)が出張から帰ってくると、家具も妻の姿もない。電話が鳴り、妻が「私を探さないで」とだけ言って切れた。そこへ例の夫に裏切られた妻がやってきた。男の妻から部屋を買い取る約束になっているという。二人は互いの境遇を知り、同情と奇妙な共感が芽生える。そこに電話が鳴る。彼女の夫からだ。女は「私を探さないで」とだけ告げ、受話器を置く。南仏を走る列車の中の私。同じコンパートメントに同席した婦人(エンリカ・アントニオーニ)の携帯電話が鳴る。女は「私を探さないで」とだけ言って切る。エクス・アン・プロヴァンス郊外の丘で、日曜画家(マルチェロ・マストロヤンニ)がセザンヌの『聖ヴィクトワール山』を真似て絵を描いている。彼の友達(ジャンヌ・モロー)がコピー文化にかこつけて彼をからかう。私はその彼女が営むホテルに泊まっている。フロントで青年(ヴァンサン・ベレーズ)が建築研究所の住所を聞いた。向かいの建物だ。しばらくして、そこから青年が青いコートの娘(イレーヌ・ジャコブ)を追うように出てくる。私は二人の後ろ姿を見つめる。
【第4話】
エクス・アン・プロヴァンス、死んだ瞬間(この泥の肉体)>青年は娘といっしょに急ぎ足で歩きながら、しきりと話かける。彼女は口数は少ないが微笑みをたたえている。彼は誰かに恋しているからと訊ね、彼女はそうだと答える。だからそんな満足した顔をしているのか、と彼。彼女は教会のミサに行くところだった。祈る彼女の横顔に見とれながら、いつしか眠ってしまう。目を覚ますとミサは終わっていた。外に出ると彼女は広場の噴水の側にしゃがみ、路面に彫られた花に触れている。雨が降りだし彼は彼女を家まで送っていった。彼女は足を滑らして転び、朗らかに笑った。別れ際、明日も会えるねと聞くと、彼女は「明日、修道院に入るの」と答える。<エピローグ>雨の中を歩いていく青年の後ろ姿を、私は見つめる。ホテルには様々な人が泊まり、世界には様々な人が生きている。その人間たちの表面を見つめることから、新しい物語、新しい映像、新しい真実を、私は紡ぎだすだろう。

愛のめぐりあい愛のめぐりあい
キアラ・カゼッリ               ピーター・ウェラー

題名:PAR DELA LES NUAGES/AL DI LA DELLE NUVOL
邦題:愛のめぐりあい
監督:ミケランジェロ・アントニオーニ、ヴィム・ヴェンダース
原作:ミケランジェロ・アントニオーニ
脚本:ミケランジェロ・アントニオーニ、ヴィム・ヴェンダース、トニーノ・グエッラ
エグゼクティブプロデューサー:ウルリッヒ・フェルスベルク、ダニエル・ゲゴウフ・ローゼンクランツ、ブリジット・ファウレ、ピエール・ロイトフェルド
製作:フィリップ・カルカッソンヌ、ステファーヌ・チェルガジェフ
共同製作:ヴィットリオ・チェッキ・ゴーリ
撮影:アルフィオ・コンティーニ、ロビー・ミュラー
美術:ティエリー・フラマン
録音:ジャン・ピエール・ルー
衣装:エスター・ヴァルツ
編集:クラウディオ・ディ・マウロ、ペーター・プルツィゴッダ、ルシアン・セグラ
音楽:ルチオ・ダルラ、ローラン・プティガン、ヴァン・モリソン、パッセンジャーズ
アソシエイト・プロデューサー:フェリス・ラウダディオ
監督補佐:ヴィム・ヴェンダース
衣裳提供:ジョルジョ・アルマーニ
スチール:ヴィム・ヴェンダース 、 ドナータ・ヴェンダース
出演:ジョン・マルコビッチ、ソフィー・マルソー、キアラ・カゼッリ、ファニー・アルダン、ピーター・ウェラー、イネス・サストル、ジャン・レノ、マルチェロ・マストロヤンニ、キム・ロッシ=スチュアート、ジャンヌ・モロー、イレーヌ・ジャコブ、ヴァンサン・ペレーズ
1995年フランス・イタリア・ドイツ/ビスタサイズ・カラー110分35mmフィルム
愛のめぐりあい [DVD]
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。

愛のめぐりあい愛のめぐりあい
ジャン・レノ              イレーヌ・ジャコブ、ヴァンサン・ペレーズ

【解説】
イタリアとフランスの四つの土地に四つの愛の物語を描くオムニバス映画。監督は「さすらい」「赤い砂漠」など、60年代ヨーロッパ映画のモダニズムをリードした巨匠ミケロンジェロ・アントニオーニ。「ある女の存在証明」完成後脳卒中で倒れ、言語障害と右半身不随で再起が絶望視されていたが、「リスボン物語」のヴィム・ヴェンダースを補佐役に、13年ぶりの新作実現となった。ヴェンダースはスチル写真家としてアントニオーニに付き添いながら補佐、そして四つの挿話をつなぐ部分を演出。アントニーニを補佐して夫人のエンリカ・アントニーニがエグゼクティヴ・コンサルタントをつとめている(小さな役で出演も)。脚本はアントニオーニの短編小説集『Quel Bowling sul Tevere(あのテヴェレ河のボーリング、83年セッテンブリーニ・メストレ文学賞受賞)』からの四つの物語を基にアントニオーニ、ヴェンダース、トニーノ・グエッラが執筆。グエッラはアントニオーニの「夜」をはじめ、彼の作品を多数手掛けた現代イタリアを代表する脚本家。音楽はルチオ・ダラ、「都市とモードのビデオノート」「時の翼に乗って」のローラン・プチガン、ヴァン・モリソン、U2がブライアン・イーノと組んだ“パッセンジャーズ”(「さすらいの二人」の原題にちなんで命名された)。ヴェンダース演出のプロローグ、幕間、エピローグ部分は、撮影が「パリ、テキサス」「デッドマン」のロビー・ミューラー、編集がヴェンダースの全作を手掛けているペーター・ブルジコッダ。出演は仏、伊、米、スペインの新旧大スターが顔をそろえる。アントニオーニ自身を思わせる旅する映画監督には「メディストの誘い」のジョン・マルコヴィッチ。第1話にはイタリアの若手人気スターのキム・ロッシ=スチュアートと、カルロス・サウラの「エル・ドラド」子役で雑誌『エル』のモデルからアントニオーニが抜擢したイネス・サストル。第2話は「ブレイブハート」のソフィー・マルソー。第3話には「愛の報酬」のファニー・アルダンと「夜ごとの夢・リニア幻想譚」のキアラ・カッゼリ、「ニューエイジ」のピーター・ウェラー、「レオン」のジャン・レノ。第4話は「ふたりのヴェロニカ」「トリコロール/赤の愛」のイレーヌ・ジャコブと「恋人たちのアパルトマン」のヴァンサン・ペレーズ。そして第3話と第4話の幕間には「夜」「こうのとり、たちずさんで」の主演コンビ、「プレタポルテ」のマルチェロ・マストロヤンニと「心の地図」のジャンヌ・モローが特別出演。ちなみに、挿話のタイトルは原作の短編によるが、映画のなかでは一切言及はない。舞台となるのはアントニオーニの出身地フェラーラ、イタリアのリゾート港町ポルトフィーノ、パリ、南仏のエクス・アン・プロヴァンス。1995年ヴェネチア映画祭国際批評家連盟賞受賞。

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