映画「チャイナシンドローム」

チャイナシンドローム
「チャイナシンドローム(THE CHINA SYNDROME)」ジェーン・フォンダ
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ジェーン・フォンダ                                         ジャック・レモン

今回はジェームズ・ブリッジス監督1979年製作「チャイナシンドローム(THE CHINA SYNDROME)」をピックアップする。
題名の”チャイナシンドローム(中国症候群)”とは、核燃料が高熱によって融解(メルトダウン)して原子炉の外に漏れ出すメルトスルー(溶融貫通)と呼ばれる状態を原子力技術者の間で使われていた用語の事で、アメリカの原子炉がメルトスルーを起こした場合に、溶けた核燃料が岩石等を溶かして地中深く沈み込み、地球の裏側の中国まで突き抜けるというジョークに由来する。

アメリカで本作公開の12日後、現実にスリーマイル島原子力発電所事故が起きた。
そして日本では福島第一原子力発電所事故で安全神話は崩れ去り、圧力容器格納容器の損傷状況の詳細は不明とされているが、1~3号機で現実にメルトスルーが起き、格納容器の底部に達しているのだ。確かに日本でも原発事故を扱った作品はあるが、テレビの場合は大手スポンサーである東京電力を敵対してまで描こうとはしないし、政権の露骨な圧力もある。映画にしても抒情的なものが多く、本質を描いたものは、私の知る限りは無い。

しかし本作は、原発の取材中に事故に遭遇して、それを伝えようとする女性レポーターと命がけで事故を防ごうとする原発技術者、これに対し故障等の情報をもみ消そうとする原発会社と公的権力の対立を明確に描いている。

ここで分かるのが、日本のマスコミ・ジャーナリズムとの次元がまるで違うのだ。今や報道も忖度や官邸圧力が横行し、真実から遠退いている。いよいよ本格的な電気紙芝居の到来という情けない状況で、テレビは信用できないメディアになりつつある。

本作は、明確に本質を導き出している作品であり、40年以上前に警鐘を鳴らしていた事に深く感動する。

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マイケル・ダグラス

【ストリー】
キンバリー(ジェーン・フォンダ)は、ロサンゼルスのKXUAテレビ局の人気女性キャスターで、ある日、彼女は、カメラマンのリチャード(マイケル・ダグラス)と録音係のヘクター(ダニエル・バルデス)をともなって、ベンタナ原子力発電所の取材に出かけた。厳重なチェックを受けた3人は広報担当のギブソン(ジェームズ・ハンプトン)の案内で、取材を開始した。しかし、中心部のコントロール・センターでカメラを回そうとしたリチャードが、ギブソンに禁止だからとそれを止められる。その時突然震動が起こり大騒ぎの制御室の中で技師のジャック(ジャック・レモン)が冷静に指示を与えている。やがて、放射能もれがわかり、原子炉に緊急停止の命令が出された。その様子をリチャードがカメラに収める。スタジオに帰ったキンバリーは、早速プロデューサーのジヤコビッチ(ピーター・ドーナット)に、そのことを報告した。原子炉の事故は一大スクープになるはずだ。しかし、ジャコビッチは、このニュースを流すことに反対した。調査の結果、その後の発電所に異常が認められないため、運転が再開されることになるが、ただ1人、ジャックだけは不安な予感を抱いていた。発電所の近くの酒場で、ジャックはクビを言い渡されたリチャードを探していたキンバリーと出会った。リチャードは、例のフィルムをもったまま行方をくらましているのだ。キンバリーと別れたジャックは、かすかな震動を感じ、原子炉を調べにいった。やはり、ポンプの一つにもれがあった。もう少し様子をみてから運転を再開すべきだというジャックの忠告に、しかし所長は耳をかそうともしなかった。翌日、取材に出かけたキンバリーは、偶然、リチャードに会う。彼は、例のフィルムを物理学者のローウェル博士(ドナルド・ホットン)に見せにきたのだ。フィルムを見た博士は、もう少しでチャイナ・シンドロームになるところだったと断言した。チャイナ・シンドロームというのは、原子炉の核が露出した時、溶融物が地中にのめりこんでいき、地球の裏側の中国にまで達するという最悪の事故のことだ。一方、ジャックは、発電所内の各所にあるパイプ結合部のX線写真を調べているうちに、重大なミスを発見した。それは、納入業者が製品チェックの手ぬきのために、同じ写真を何枚も焼き増ししたものなのだ。事故の原因追求に悩みぬいた末、ジャックはX線写真をキンバリーに渡し、世論に真相を訴える決意をする。しかし、その頃、何者とも知れぬ者たちが動き出し、まずX線写真をとりに行ったヘクターが車ごと崖下に突き落とされ、ジャックも彼らの追跡をうけ、命をねらわれた。そこで、ジャックは残された1つの手段を決行することにした。それは、発電所の中心部にジャックが篭城し、発電所をキンバリーに取材させ、内部の異常を世間に知らせようというもので、言うことをきかなければ、核をもらすと所長を脅した。しかし、外から中心部を操作できる発電所の人間が、発電所の動きを止めたため、ジャックは射殺され、すべて酔っぱらいのたわごととしてかたづけられることになつた。しかし、キンバリーは、追求を続け、発電所内の人間の証言をとり、ニュースで事実を発表するのだった。

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シネマプロダクトCP16 フィルムキャメラ     IKEGAMI 79E ビデオカメラ

1979年当時にアメリカテレビ業界も16mmフィルムと出始めのビデオ映像を使い分けていた。
上写真の左は、シネマプロダクト社のCP16という同時録音キャメラである。フランス製のアンジェニューズームレンズ(12~120mm)と400フィートマガジンを装着している。撮影したフィルムはテレビ局内の現像所で現像し、編集してテレシネに掛け放送するという段取りだった。私も知る限り、テレビ朝日には横浜シネマの出張所があり、TBSには地下に現像所があったが、いずれも旧社屋の事である。
一方、上写真の右のビデオカメラは、池上通信機の79Eという撮像管式のビデオカメラである。初めてこのビデオカメラで撮影した時、右頬がすごく熱かったのを思い出した。ビデオカメラは嫌いである。

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題名:THE CHINA SYNDROME
邦題:チャイナシンドローム
監督:ジェームズ・ブリッジス
製作総指揮:ブルース・ギルバート
製作:マイケル・ダグラス
脚本:マイク・グレイ、T・S・クック、ジェームズ・ブリッジス
撮影:ジェームズ・A・クレイブ
美術:ジョージ・ジェンキンス
装置:アーサー・ジェフ・パーカー
衣裳:ドン・フェルド
配役:サリー・デニソン
音楽:スティーブン・ビショップ
編集:デイヴィッド・ローリンズ
撮影機材:パナビジョン
現像:メトロカラー
出演:ジェーン・フォンダ、ジャック・レモン、マイケル・ダグラス、スコット・ブラディ、ジェームズ・ハンプトン、ピーター・ドーナット、ウィルフォード・プリムリー、リチャード・ハード、ダニエル・バルデス、スタン・ボーマン、ジェームズ・カレン、ドナルド・ホットン
英国アカデミー主演女優賞、英国アカデミー主演男優賞、カンヌ国際映画祭男優賞
1979年アメリカ/ビスタサイズ・カラー122分35mmフィルム

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