映画「吉原炎上」


名取裕子                       根津甚八

今回は五社英雄監督1987年製作「吉原炎上」をピックアップする。
本作は、明治末期の吉原遊郭を再現した絢爛豪華なオープンセットを東映京都太秦に作り、花魁の生き様をドラマチックに描いたもので、斉藤真一氏の原作を中島貞夫監督が脚色を担当された。また撮影の森田富士郎氏(※)によると、富士フィルムACE500を選択し、倍の露光(ASA250相当)で撮影をしたネガを減感現像する方法によって、階調を柔らかくし、艶めかしさを表現したそうだ。本作をご覧になれば分かるが、艶っぽくしっとり、ぽゃっとはせず、適度に黒が締まっているバランスの取れたルックである。フラッシング処理の柔らかさより、私は好きなトーンだ。この国産映画用フィルムは、ウォルフガング・ペーターゼン監督1981年製作「Uボート(DAS BOOT)」で世界に名声を馳せた。

※2002年11月15日「講演映画技術の行方デジタルとの融合」より
※単位:ASA=ISO
※現在、富士フィルムは映画用フィルムの製造をしていない


二宮さよ子                      西川峰子

【ストリー】
その昔、東京浅草の一隅に、吉原遊廓と呼ばれる歓楽の別天地があった。そこでは借金に縛られた娘たちが六年の年季が明けるまで、春を売っていた--。久乃(名取裕子)がここ吉原の“中梅楼”に遊女として売られてきたのは十八歳の春。明治の末のことである。
〈春の章〉中梅楼には花魁の筆頭とも言うべき、お職の九重(二宮さよ子)をはじめ、二番太天の吉里(藤真利子)、三番太天の小花(西川峰子)に次いで、菊川(かたせ梨乃)などさまざまな遊女がそれぞれ艶を競っていた。お職の身にありながら、宮田(井上純一)という学生と抜きさしならない仲になっていた九重は久乃に不思議な魅力を感じていた。九重の下につき見習いをはじめた久乃にやがて、娼妓営業の鑑札が下り、若汐という源氏名を貰った。ところが初見世の時、若汐は突然客のもとを飛び出し、裸足で逃げだしてしまった。そして、店のものに追われる途中、救世軍で娼妓の自由廃業運動を展開中の古島信輔(根津甚八)と出会う。若汐は結局、店のものにとり押えられ、連れ戻されるが、このことに激怒した九重は、自らの身体で若汐に廓の女の作法を教えるのだった。彼女に不思議な魅力を感じていた九重は、この時自分が廓の女であることを忘れ身悶えてしまった。そして、数日後、店への借金を成算するとどこへともなく吉原を去っていった。
〈夏の章〉一年後--。中梅楼のお職の座には吉里がついていた。ある日、娼妓の菊川が品川に住み替えとなった。菊川は気のいい女で若汐とも仲がよかっただけに、彼女は一抹のさびしさを感じていた。そんなある夜、若汐の前に信輔があらわれた。信輔は今や先代の急死で古島財閥の若き当主となっていた。そしてこの日を境に信輔は若汐のもとに通いつめた。がしかし、一度も彼女を抱こうとしなかった。やがて、お職の吉里が、熱をあげていた男にフラれた腹いせに、剃刀を持ってあばれだし、白昼、自らの首に剃刀を当て死んでいった。吉里は酒と情人に弱い女だったのだ。
〈秋の章〉ふたたび一年後。若汐の美しさはますます磨かれて、姉さん格の小花と艶を競うまでになっていた。翌年の年季明けをめざして小花はよく客をとっていた。しかし、このことが災いしてひどい喀血の末、病院送りとなってしまった。そして、小花に替わって若汐がお職の座につき、楼主と女将のすすめもあって花魁名跡“紫”を継ぐことになった。十月恒例の“仁和賀”で湧き立つ仲之町。お職の位に出世した紫の豪華な“積夜具”が部屋へ運び込まれた。その部屋はもとの小花の部屋。店のものがうっとりとそれらをながめていると突然、幽気のような小花が現われた。そしてお座敷から信輔と一緒に戻った紫の前で小花はその夜具をこなごなに切りさき、絶叫の中、死んでいくのだった。
〈冬の章〉それからさらに一年後の冬。楼主と女将に呼ばれ部屋へ行く紫。とそこには信輔がいた。信輔は二千円という大金を彼女にさし出し、好きなように使えという。そして彼女の前から姿を消してしまった。紫はその金でかねてから考えていた“花魁道中”をやることにした。ある日、紫は菊川と再会した。一度は身受けしてもらったものの再び廓に身を落とし今では安女郎の菊川。二人の差は年月以上に大きなものだった。やがて、めぐりくる桜の季節となり、紫の豪華な花魁道中が行なわれた。彼女は信輔がお春という女郎のもとにいることを知ると、すぐに駆け付けるが、そんな彼女を菊川がとがめた。そして、紫は馴染みの客の坪坂の願いもあって、吉原を去ることにした。二人を乗せた人力車が吉原を出ようとする時、お春があやまって倒した火がもとで吉原全体が猛火につつまれ紫が育った中梅楼も、信輔もすべてが灰となってしまった。彼女は、燃えあがる吉原を万感の思いで見つめていた。


名取裕子                     名取裕子、二宮さよ子

二宮さよ子、園佳也子

題名:吉原炎上
監督:五社英雄
企画:日下部五朗、本田達男、遠藤武志
原作:斎藤真一
脚色構成:笠原和夫
監修:近藤富枝
脚本:中島貞夫
撮影:森田富士郎
照明:増田悦章
録音:平井清重
整音:伊藤宏一
美術:西岡善信
装置:稲田源兵衛
装飾:福井啓三
背景:西村三郎
美粧:長友初生
結髪:福本るみ
衣装:森譲
音楽:佐藤勝
記録:田中美佐江
編集:市田勇
フィルム:富士フィルム
現像:東映化学
進行主任:長岡功
監督補佐:鈴木秀雄
色彩計測:津田宗之
スチール:中山健司
出演:名取裕子、二宮さよ子、藤真利子、西川峰子、かたせ梨乃、根津甚八、園佳也子、速水典子、左とん平、井上純一、河原崎長一郎、成田三樹夫、竹中直人、中島葵、大村崑、緒形拳、小林稔侍
1987年日本・東映京都撮影所/ビスタサイズ・カラー133分35mmフィルム
吉原炎上 -DVD-
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。


吉原炎上のオープンセット

映画「男はつらいよ・拝啓 車寅次郎様」


関敬六、渥美清                    かたせ梨乃

今回は山田洋次監督1994年製作「男はつらいよ・拝啓 車寅次郎様」をピックアップする。
第47作となる本作のロケ地は、新潟県上越市、滋賀県長浜市、西浅井町、神奈川県鎌倉市江ノ島電鉄線鎌倉高校前駅、長崎県雲仙市旧長崎県南高来郡小浜町、島原鉄道バス”雲仙バス停”、東京都渋谷区などで行われ、封切り時の観客動員は217万6,000人、配給収入は15億5,000万円だったそうだ。当時のロードショー入場料金は1,800円、併映は「釣りバカ日誌7(監督:栗山富夫 出演:西田敏行、浅田美代子、谷啓、名取裕子、三國連太郎)」であった。


吉岡秀隆、牧瀬里穂                小林幸子、渥美清

【ストリー】
地方都市の繁華街で歌う演歌歌手(小林幸子)の応援をした寅(渥美清)は、ふらりと柴又へ帰って来た。甥の満男(吉岡秀隆)は就職して半年が過ぎ、セールスマン仕事にすっかり嫌気がさしていたが、そんな彼を寅はやんわり諭す。ある日、長浜市で家業を継ぐ大学時代の先輩・川井信夫(山田雅人)から誘われ、満男は休日を利用して地元のお祭りを観に行った。そこで出会った信夫の妹・奈穂(牧瀬里穂)に町の案内をしてもらい、2人は急速に打ち解け合っていく。一方、寅も同じ長浜に来ていて、大きな撮影機材を抱えた宮典子(かたせ梨乃)がケガをしたのを助けた。年に一度撮影旅行に出かけるのを楽しみにしている典子と寅は周囲から見ると夫婦のように親しくなるが、ケガを聞いて典子の夫・幸之助(平泉成)が迎えに駆けつけ、典子は突然帰ることになった。何も言わず、送り出す寅。一方、地元の曳山祭りたけなわの夜、奈穂と二人きりになり、彼女に何げなく恋人はいるかどうか聞く。そんな満男の姿を見かけた寅は、満男にひと言声をかけて励ました後、すうっと人混みの中に消えていった。その晩、信夫から「よかったら妹をもらってくれないか」と言われ、驚きながらもまんざらでもない満男。だが、東京へ戻ってきた後、それが信夫のひとりよがりだったことを知らされがっくりし、やはり柴又に戻ってきていた寅と恋をめぐって語り合うことに。年が明け、もう会えないと思っていた奈穂がひょっこり満男の元を訪ねてきて、満男は大喜びする。そんな満男を知ってか知らずか、遠くまた旅に出た寅であった。


前田吟、下條正巳、渥美清、吉岡秀隆 渥美清、吉岡秀隆、太宰久雄、倍賞千恵子、前田吟、三崎千恵子

題名:男はつらいよ・拝啓 車寅次郎様
監督:山田洋次
企画:小林俊一
製作総指揮:櫻井洋三
製作:野村芳樹、深澤宏
原作:山田洋次
脚本:山田洋次、朝間義隆
撮影監督:高羽哲夫
撮影:池谷秀行
照明:野田正博
録音:鈴木功
調音:松本隆司
美術:出川三男、横山豊
編集:石井巌
音楽:山本直純、山本純ノ介 主題歌・唄:渥美清
撮影機材:パナビジョン
フィルム:富士フィルム
現像:東京現像所
製作主任:峰順一
製作進行:副田稔
助監督:阿部勉
撮影助手:近森真史
ステディカム:佐光朗
スチール:金田正
出演:渥美清、かたせ梨乃、牧瀬里穂、倍賞千恵子、前田吟、三崎千恵子、太宰久雄、佐藤蛾次郎、下條正巳、吉岡秀隆、小林幸子、平泉成、河原崎長一郎、山田雅人、関敬六
1994年日本・松竹/シネスコサイズ・カラー101分35mmフィルム
公式サイト
男はつらいよ・拝啓 車寅次郎様 -DVD-
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。


渥美清、吉岡秀隆                                      江ノ電「鎌倉高校前」駅

映画「肉体の門」

肉体の門
かたせ梨乃
肉体の門肉体の門
西川峰子                      渡瀬恒彦

今回は五社英雄監督1988年製作「肉体の門」をピックアップする。
田村泰次郎氏原作の「肉体の門」は、1948年にマキノ雅弘監督・轟夕起子主演、1964年と1977年に日活で鈴木清順監督・河西都子主演、西村昭五郎監督・加山麗子主演で作られ、本作は東映でかたせ梨乃さん、西川峰子さんの大胆なヌードで話題となった。大きなオーブンセットを組み、優秀な俳優陣、撮影、照明、美術などで画を作り上げている。80年代は未だ映画会社が系列館配給だけではなく映画を作っていた時代だった。
※鈴木清順監督1964年製作「肉体の門」

肉体の門肉体の門
根津甚八                     名取裕子

【ストリー】
昭和22年、秋。米軍占領下の東京で、せんをリーダーにマヤ、花江、美乃、・光代、幸子と新入りの町子たちは街娼、いわゆるパンパンをしていた。棲み家はどぶ川沿いの焼けただれたビルで、新橋を中心に関東一家と名乗っていた。ライバルは銀座の裏に棲むお澄をリーダーとするラク町一家だった。焼けビル対岸一滞の闇市を仕切るやくざの袴田一家がせんたちを配下にしたがっていた。しかし、関東一家には巨大な不発弾という守り本尊があった。いつ爆発するかわからないので、やくざたちもうかつには近寄ることができなかったのだ。秋も深まった秋の夜、一人の男が関東一家に逃げ込んできた。伊吹新太郎というその男はかつての陸軍上等兵で、強盗を働いてMPに撃たれたのだった。せんは新太郎に、自分が初めて抱かれた男の面影を見た気がした。傷が癒えたころ新太郎は「一緒にここを出よう」とせんを誘ったが、断わられた。彼女には仲間たちと金を貯めて、ここにダンスホールを造るという夢があったのだ。ところが、ある日町子が一家の金を持ち逃げして袴田組についたため、せんたちはリンチにかけた。袴田は戦前に兄弟分だった新太郎をさかんに組へ誘ったが、一匹狼となった彼は影ながらせんを見守っていた。冬を迎えるころ、せんはお澄と打ちとける仲になっていた。彼女は母と妹を犯したロバートという米兵に復讐するため、パンパンに身を落としていたのだった。袴田組のビルの追いたても激しくなったある日、新太郎は牛を一頭連れてきて、それをステーキにして酒宴となった。その夜、新太郎はマヤを抱き、二人は姿を消した。やがて関東一家の統率も乱れ、バラバラになった。そんなときお澄がロバートの復讐に失敗して、せんのところに逃げ込んできた。お澄はせんから挙銃をもらい、ロバートを撃ち殺すが、自らもMPの銃弾を受けてどぶ川へと沈んだ。昭和23年1月、ビルには“オフ・リミット”の看板が掲げられ、せんが一人たたずんでいた。そこへ美乃とマヤが戻り、新太郎は袴田を殺し、一トン爆弾の信管を抜くために帰ってきた。そして、せんは袴田組の残党の前で不発弾のロープを切り、ビルごと爆発させたのだった。

肉体の門肉体の門
芦田伸介

題名:肉体の門
監督:五社英雄
企画:日下部五朗、佐藤雅夫
製作:厨子稔雄、天野和人
原作:田村泰次郎
脚本:笠原和夫
撮影:森田富士郎
照明:増田悦章
録音:堀池美夫
整音:荒川輝彦
美術:西岡善信、今井高瑞、石原隆
記録:田中美佐江
編集:市田勇
音楽:泉盛望文 「星の流れに」八代亜紀
現像:東映化学
助監督:鈴木秀雄
スチール:中山健司
出演:かたせ梨乃、西川峰子、渡瀬恒彦、名取裕子、根津甚八、加納みゆき、山咲千里、芦川よしみ、長谷直美、松居一代、芦田伸介
1988年日本・東映/ビスタサイズ・カラー119分35mmフィルム
肉体の門(1988) -DVD-
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。

肉体の門
肉体の門肉体の門肉体の門

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