映画「サッドヒルを掘り返せ」


SAD HILL UNEARTHED (本作)      ※プロジェクト終了後のイベントに集結するファン達

2019年3月8日に日本で劇場公開された「サッドヒルを掘り返せ(SAD HILL UNEARTHED)」を新宿シネマカリテで12日に観に行った。本作は、イタリア製西部劇(マカロニウエスタン)の最高傑作「THE GOOD, THE BAD AND THE UGLY(善玉、悪玉、卑劣漢)」のロケ地スペインのサッドヒルを復元しようとするマカロニ・ファンの熱い思いを追ったドキュメンタリーで、監督・脚本・撮影・編集は、ギレルモ・デ・オリベイラ氏である。


THE GOOD, THE BAD AND THE UGLY (本編)   ※映画史上最高の決闘シーン

この有名なクライマックス・シーンの広大な墓地は、当時フランコ独裁政権下のスペイン軍の兵士達によって作られた。
この地は撮影後、およそ49年もの間、人知れず眠り続けていた。本作は、このロケ現場を復元しようとする全世界のマカロニ・ファンの熱い思いと一大プロジェクトの全貌を記録している。
草や土に覆われた“墓地”をファンたちが掘り返し始めると、このニュースは瞬く間にヨーロッパ中に広まり、週末毎にサッドヒルを訪れるファンは増えて行った。


THE GOOD, THE BAD AND THE UGLY (本編) ※このカットはスタントマンであると明かされた

私が知らなかった事実は、南北戦争での戦闘シーンは、スペイン軍の兵士が総動員されて撮られた事である。
南軍と北軍の衣裳、武器、背嚢などを着装した本物のスペイン軍兵士は、どおりで迫力があった訳だ。
TNT爆薬を使用した橋の破壊は、連絡ミスで2度行われた。1度目の破壊は撮影されておらず、激怒したセルジオ・レオーネ監督に対し、スペイン軍は2日で橋を再建し、再び撮影を開始したそうだ。


SAD HILL UNEARTHED (本作)

日本でも映画ロケの聖地巡礼をしばしば見かけるが、マカロニ・ファンの熱い想いはベクトルが違う。
私もマカロニ・ファンの一端であった筈だが、上には上がいるものだと感動した。
日本では社会現象として1960年代後半にイタリア製西部劇(マカロニウエスタン)がエンニオ・モリコーネの音楽と共に流行ったが、1970年代前半には下火になった。今では、本編(THE GOOD, THE BAD AND THE UGLY )が映画史に残る傑作だと言う私は、異端にされる。

ちなみに私は、2016年10月に4Kデジタル修復版を午前10時の映画祭(TOHOシネマズ日本橋)で観ている。
本編を観たのは何回目だろうか?


THE GOOD, THE BAD AND THE UGLY (本編)

撮影においてもシネマスコープによるフレームの切り取りは秀悦であり、お手本である。
撮影監督のトニーノ・デリ・コリ氏は、1938年からイタリアのチネチッタ撮影所で働き始め、1940年代に撮影監督デビューし、ピエル・パオロ・パゾリーニ監督作品を始め、イタリア式コメディ作品の撮影を担当した。ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞撮影賞を4回も受賞している方だ。

本作では、忘れる事のない音楽を担当したエンニオ・モリコーネ氏、主演したクリント・イーストウッド氏、編集のエウジェニオ・アラビソ氏、美術監督カルロ・シーミ氏(故人)の娘さんなど本編に関わった人々の貴重な証言が、映画監督ジョー・ダンテ氏の解説と共に収められている。中でもメタルロックバンド・メタリカのヴォーカル、ジェイムズ・ヘットフィールド氏も熱心なファンで、ライブコンサート前に本編挿入曲「”The Ecstasy Of Gold”(黄金のエクスタシー)」を入場曲にしているのは知らなかった。

【訃報・追記】
イタリア映画「ニュー・シネマ・パラダイス」などの音楽を作曲したエンニオ・モリコーネさん(91)が、2020年7月6日朝、ローマの病院で死去した。同国メディアが同日報じた。1928年ローマ生まれ。国立音楽院を卒業後、1960年代から映画音楽の作曲を続けた。映画「荒野の用心棒」「夕陽のガンマン」などのマカロニウェスタンの音楽を担当して注目され、1987年の「アンタッチャブル」でグラミー賞を受賞。シチリア島出身の映画監督の男が、映画にのめり込んだ自分の少年時代を郷愁とともに追憶する「ニュー・シネマ・パラダイス」(1988年)の「愛のテーマ」で世界的名声を得た。長年の映画音楽への功績がたたえられ、2007年に米アカデミー賞の名誉賞を受賞。2016年には「ヘイトフル・エイト」で作曲賞を受賞した。
朝日新聞デジタル


エンニオ・モリコーネ                 クリント・イーストウッド

ジェイムズ・ヘットフィールド(メタリカ Vocal)     ジョー・ダンテ監督

SAD HILL UNEARTHED(本作) 

題名:SAD HILL UNEARTHED
邦題:サッドヒルを掘り返せ
監督:ギレルモ・デ・オリベイラ
製作総指揮:ギレルモ・デ・オリベイラ
製作:ルイザ・カウエル
脚本:ギレルモ・デ・オリベイラ
撮影:ギレルモ・デ・オリベイラ
音楽:セルタ・モンテス
編集:ギレルモ・デ・オリベイラ
出演:エンニオ・モリコーネ、クリント・イーストウッド、クリストファー・フレイリング、アレックス・デ・ラ・イグレシア、ジェイムズ・ヘットフィールド、ジョー・ダンテ、エウヘニオ・アラビソ、セルジオ・サルヴァティ、カルロ・レバ、ジュディッタ・シーミ
2017年スペイン/ビスタサイズ・カラー86分デジタルシネマ
公式サイト

英題:THE GOOD, THE BAD AND THE UGLY「善玉、悪玉、卑劣漢」
伊題:IL BUONO, IL BRUTTO, IL CATTIVO 「善玉、卑劣漢、悪玉」
邦題:続・夕陽のガンマン/地獄の決斗
監督:セルジオ・レオーネ
脚本:フリオ・スカルペッリ、セルジオ・レオーネ、ルチアーノ・ヴィンチェンツォーニ
製作:アルベルト・グリマルディ
撮影:トニーノ・デリ・コリ
美術:カルロ・シーミ
編集:エウジェニオ・アラビソ
音楽:エンニオ・モリコーネ
出演:クリント・イーストウッド、リー・ヴァン・クリーフ、イーライ・ウォラック、ルイジ・ピスティリ、ベニート・ステファネリ、アルド・サンブレル、チェロ・アロンゾ、アルド・ジュフレ、マリオ・ブレガ、アル・ミューロック、アントニオ・カサス、アントニオ・カサール
1966年イタリア・スペイン・西ドイツ/テクニスコープ・テクニカラー162分(イタリア版は178分)35mmフィルム


クリント・イーストウッド

リー・ヴァン・クリーフ              イーライ・ウォラック