映画「傷だらけの挽歌」


キム・ダービー                  スコット・ウィルソン

今回はロバート・アルドリッチ監督1971年製作「傷だらけの挽歌(THE GRISSOM GANG)」をピックアップする。
本作は1930年代のアメリカを背景にしたフィルム・ノワールであるが、卓越した配役、演技に相まって脚本が素晴らしい作品である。本作には2種類のラストが存在する。DVD版では、虚しさと哀しさでボロボロになったバーバラが、探偵フェナーの運転するロードスターの助手席から、父親を振り返る顔のストップモーションで終わる。1971年の劇場公開版は、フェナーに送り届けられる途中、川に身を投げるバーバラで終っているそうだ。


コニー・スティーヴンス

【ストリー】
1931年の夏、不況のドン底にあった、ここは中部のカンサス・シティ。町はずれの安酒場で、3人のチンピラが、みすぼらしいナイトクラブの写真屋ヘイニーからうまい話を聞き出した。プレイガールのバーバラ・ブランディシュ(キム・ダービー)が身につけている首飾りが5万ドルもするダイヤだというのだ。チンピラ・ギャングのトリオ、ジョー・ベイリー、フランク・コナー、サムの3人は早速、もぐり酒場ゴールデン・スリッパーへ駆けつけた。待ち構える3人に、予想通り、バーバラはボーイフレンド、ジェリー・マクゴーワンに伴われて姿を現わした。しかし、急に喧嘩を始めたバーバラは、怒って酒場をとび出した。慌てて店を出た3人は、バーバラを乗せたジェリーのロードスターが走り出すと、リンカンで後に続いた。やがて、妨害して車を止めさせると、怒ったジェリーはいきなりサムに殴りかかっていった。突然コナーはピストルをジェリーめがけて射った。泣き叫ぶバーバラを車に乗せて、3人はひとまずカンサス・シティから100 マイル離れた所にある黒人の元ボクサー、ジョニー・ハッチンスの小屋に隠れることにした。途中で彼らはガソリン・スタンドに立ち寄り、まずいことにグリッソム・ギャングと呼ばれる名うてのギャング団の1人、エディ・ヘイゲン(トニー・ムサンテ)に会ってしまった。エディは持ち前の勘で、3人を臭いとにらんだ。彼は早速、女親分マー・グリッソム(アイリン・デイリー)に知らせに車を走らせた。ハッチンスの小屋にひそんだ3人のギャングとバーバラを訪ねて、突如グリッソム・ギャングがやってきた。エディ、メイス、ウォッピー、それにマー・グリッソムの息子で精神に異状のあるスリム(スコット・ウィルソン)の4人である。すっかりおびえた3人組は、たちまちのうちに射殺され、バーバラはグリッソム・ギャングに連れ去られた。グリッソムは早速、身代金を要求した。そして約束通りの金を受け取ると、用のすんだバーバラを殺す計画を立てた。しかし、バーバラの美貌にひかれ、友達になりたいと思いつめるスリムは、絶対服従のはずのマー・グリッソムにも盾つき、絶対にバーバラは離さないと、得意のナイフをちらつかせた。バーバラの父親ジョン・P・ブランディシュ(ウェズリー・アディ)は、百万長者の実業家である。早速私立探偵デイブ・フェナー(ロバート・ランシング)を雇ったが、バーバラは戻らなかった。すでに用のないバーバラを消してしまおうとするマー・グリッソムに、スリムはナイフをつきつけ、母親でも容赦はしないといきまいた。おかげで命を保っているバーバラは、薄汚くて軽薄なスリムへの嫌悪感を振り払って、スリムのご機嫌を取らねばならなかった。グリッソムの経営するナイトクラブで歌っている、殺されたコナーの女アンナ・ボーグは、ガソリン・スタンドの男から、コナーがエディ・ヘイゲンに会ったことを聞いた。それを知ったエディは、ガソリン・スタンドの男を殺し、バーバラから離れようとしないスリムのために、2人がまるで新婚生活を送るかのような豪華な部屋を提供した。一方、フェナーはアンナ・ボーグに関する聞き込みを得て、芸能周旋屋に化けて、まんまとジョニー・ハッチンスの名前を聞き出した。エディはそれを知るとアンナを射殺し、急遽、スリムたちを廻した、ハッチンスに会ったフェナーは、ことのいきさつを聞き出したが、スリムたちに襲われた。しかし到着した警官たちを見て、スリムたちは逃げ出し、フェナーは九死に一生を得た。エディがスリムの留守にバーバラをものにしようと迫った時、スリムが現われ、得意のナイフでエディを刺し殺した。一方、警官隊はナイトクラブを包囲した。ギャングと警官隊との間に激しい射ち合いが展開され、マー・グリッソムも遂に銃弾を浴びて倒れた。バーバラを連れて車で逃げ回るスリムは、途中、ラジオで母親の惨死を知り、悲しみに沈みながらも更に逃げ、とある農家の納屋にひそんだ。しかし、それを見た農夫が警察に通報した。その納屋で、バーバラは初めてスリムの暖かい心にうたれ、優しく包むようにスリムを抱いた。夜が明けそめるころ、警官隊は納屋の回りをびっしりと取りかこんでいた。バーバラの制止も振り切って飛び出したスリムは、一斉に発射された無数の銃弾を浴びて倒れた。泣き叫びながらスリムの死体を愛撫するバーバラに、父親の冷たい言葉が突き刺さり、バーバラの目はうつろな色に変わっていった。


アイリーン・デーリー            スコット・ウィルソン、キム・ダービー

題名:THE GRISSOM GANG
邦題:傷だらけの挽歌
監督:ロバート・アルドリッチ
製作:ロバート・アルドリッチ
原作:ジェームズ・ハドリー・チェイス「ミス・ブランディッシの蘭」
脚本:レオン・グリフィス
撮影:ジョセフ・バイロック
衣装:ノーマ・コック
音楽:ジェラルド・フリード 主題歌:ルーディ・ヴァリー “I Can’t Give You Anything But Love, Baby”
編集:マイケル・ルチアーノ
現像:メトロカラー
出演:キム・ダービー、スコット・ウィルソン、トニー・ムサンテ、ロバート・ランシング、コニー・スティーヴンス、ウェズリー・アディ
1971年アメリカ/ビスタサイズ・カラー125分35mmフィルム
傷だらけの挽歌 -DVD-
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。


傷だらけの挽歌(THE GRISSOM GANG)

ロバート・アルドリッチ監督

傷だらけの挽歌(THE GRISSOM GANG)
※ARRIFLEX 35 BL CAMERA

映画「夜の大捜査線」


シドニー・ポワチエ                   ロッド・スタイガー

今回はノーマン・ジュイソン監督1967年製作「夜の大捜査線(IN THE HEAT OF THE NIGHT)」をピックアップする。1960年代当時、ここまでリアルにアメリカ南部の人種差別問題を背景として描いた作品は、本作をおいてない。サスペンス・ドラマとしても傑作で、撮影は巨匠ハスケル・ウェクス氏だ。「マイ・シネマトグラファー」というドキュメンタリーを参照すると興味深い。


リー・グラント              シドニー・ポワチエ、ロッド・スタイガー

【ストリー】
ミシシッピーの田舎町スパルタの夜はうだるような熱さだった。警官サム(ウォーレン・オーツ)は深夜のパトロール中、町の実業家が殺害されているのを発見した。サムからの連絡をうけた署長のビル・ギレスピー(ロッド・スタイガー)は早速行動を開始した。気負いたったサムは駅で列車をまっていた黒人をいきなり容疑者として逮捕した。ところがその黒人はバージル・ティッブス(シドニー・ポワチエ)というフィラデルフィア警察の殺人課の優秀な刑事で、休暇で帰っていたのだった。初めて殺人事件を扱うギレスピーはベテランのティッブスの協力を頼みたいと思ったが、人種偏見の強い土地柄、どうしても頭をさげることができなかった。だが殺人犯として逮捕された不良少年が犯人ではないと断定したティッブスの見事な論理にカブトを脱いだギレスピーは渋々と助力を頼みこんだ。絶えず衝突し、感情を抑えながらもティッブスとギレスピーは捜査を続けた。だが白人が黒人に調べられるという屈辱に町民は怒り、捜査は困難をきわめ、ティッブスは生命さえ危険になっていった。これ以上のトラブルをおそれたギレスピーは捜査をうち切るようにとティッブスに勧告したが、ティッブスは聞きいれなかった。そして、実業家は他所で殺されて発見された場所まで車で運ばれたと推理したティッブスは、事件のあった夜、車の中で不良少女と情事にふけっていた食堂のボーイを犯人と断定した。ティッブスの推理は正しかった。ボーイは少女の堕胎費をえるために殺人をおかしたのだった。感情的な対立に苦しみながら、こうして事件は終わった。フィラデルフィアへ帰るティッブスをギレスピーは駅頭に送り、黙したままトランクを持ってやった。無骨なギレスピーの、これが唯一の感謝のしるしだった。

題名:IN THE HEAT OF THE NIGHT
邦題:夜の大捜査線
監督:ノーマン・ジュイソン
製作:ウォルター・ミリッシュ
原作:ジョン・ボール
脚本:スティーリング・シリファント
撮影:ハスケル・ウェクスラー
美術:ロバート・プリーストリー
録音:サミュエル・ゴールドウィン
配役:リン・スタルマスター
編集:ハル・アシュビー
音楽:クインシー・ジョーンズ 歌:レイ・チャールズ
現像:デラックスカラー
出演:シドニー・ポワチエ、ロッド・スタイガー、ウォーレン・オーツ、リー・グラント、ジェームズ・パターソン、クエンティン・ディーン、ラリー・ゲイツ、ウィリアム・シャラート、ベア・リチャーズ、スコット・ウィルソン
1968年第40回アカデミー賞作品賞、主演男優賞(ロッド・スタイガー)、脚色賞(スターリング・シリファント)、音響賞(サミュエル・ゴールドウィン、撮影所サウンド部)、編集賞(ハル・アシュビー)を受賞。
1967年アメリカ/ビスタサイズ・カラー109分35mmフィルム
夜の大捜査線 -DVD-
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。


シドニー・ポワチエ、ロッド・スタイガー           シドニー・ポワチエ