映画「街の灯」
堺正章 栗田ひろみ
今回は森崎東監督1974年製作「街の灯」をピックアップする。
本作は錚々たる俳優陣が脇を固めているにも関わらず、おもしろくない内容になっている。股旅シーンも散漫でつまらない。映画にとって脚本が失敗すると惨憺な結果となる事を思い知らされる一作であった。映画が衰退したと言われるのはテレビのせいにする赴きがあるが、それだけではないと思う。
笠智衆 財津一郎
【ストリー】
坂の下の千代松、通称・チョロ松(堺正章)。職業はアプローチ屋、つまりセックス仲介のインチキ稼業をしている若者である。チョロ松は、兄ちゃんと呼ぶ梅吉(財津一郎)とコンビを組み、この稼業をしている。二人は、竹子(吉田日出子)が経営する赤ちょうちんの二階に住んでいるが、ここには向島の捨て児寺に捨てられた少年少女たちも一緒に暮しており、血縁なき者同志が一家を構成していた。さて、梅吉の13年来のお得意さんである好色老人の栗田(森繁久彌)は、医者からあと3回と宣告された精力の数少ない一滴を、タレントの欅ヒロミ(栗田ひろみ)に、と二人にアプローチを頼んだ。だが、二人の珍妙なアタックにもかかわらず話は進展せず、あわや作戦放棄という時に、ちょっと頭がおかしいが、ヒロミにうりふたつの美少女を発見、彼女を替え玉にしようと考えつく。ところが、この少女には頑固で妙に古めかしい老人(笠智衆)がくっついており、二人は老人の故郷・九州まで徒歩旅行に出発してしまった。何とか道中の途中で少女を連れ戻そうと考えたチョロ松は、二人の後を追った。ところが、千代松の考え通りにはいかず、次々と珍妙な事件に巻き込まれてしまう。大船駅構内で赤ん坊を拾ったり、ヒッピーの三人組(ガロ)が加わったり、おかしな夫婦の喧嘩に巻き込まれたり、女子プロレス一行と一緒になったり……。それらすべての事件の収集者として不当な裁きを受けるのは、大抵、チョロ松だった。にもかかわらず、じわじわと奇妙な連帯感が生まれてくる。老人は、実はブラジル移民で、“緑あふれる”ふるさとと、初恋の人・お米婆さん(鈴木光枝)に一目会うための、47年ぶりの帰国だったのだ。しかし、ふるさとは既に“緑あふれる”地ではなく、お米は恋敵の粟三郎(三木のり平)と所帯を持っていた。かくて、すべての夢を見終った老人は、また一人ブラジルへ帰ろうとするが、すっかり彼になついてしまった少女も一緒に行きたいと泣きだしてしまった。チョロ松が少女にぞっこん惚れていることを知った老人は、二人を結婚させてブラジルへ連れて行こうと決心して、大胆にも銀行強盗を遂行した。駈け落ち風のチョロ松と少女が羽田を発とうとすると、梅吉とタレント失喪事件を追っていた警察が少女を発見。少女はその騒動のショックで頭が正常に戻ると、なんと本物の欅ヒロミだった。しかも、彼女はマネージャーに連れ去られた直後、交通事故で死んでしまった……。老人はブラジルへと強制送還……。変な夢を見ていたようなチョロ松の数日間。愛と友情と、かけがえのないものを突然に奪いとられた哀しみが、チョロ松の胸に湧きあがってきた。
三木のり平 吉田日出子
ガロ 研ナオコ
題名:街の灯
監督:森崎東
製作:瀬島光雄、杉崎重美
企画:田辺昭知
脚本:森崎東、梶浦政男
撮影:吉川憲一
照明:八亀実
録音:平松時夫
調音点松本隆司
美術:重田重盛
装置:小野里良
装飾:印南昇
衣裳:松竹衣装
音楽:佐藤勝 挿入歌:ガロ「ディスカバー・ピクニック」
編集:太田和夫
現像:東京現像所
製作主任:内藤誠
製作進行:玉生宗久
監督助手:大嶺俊順
スチール:長谷川宗平
出演:堺正章、栗田ひろみ、笠智衆、森繁久彌、フランキー堺、三木のり平、研ナオコ、吉田日出子、財津一郎、田中邦衛、鈴木光枝、山谷初男、ガロ
1974年日本・松竹+田辺エージェンシー/ビスタサイズ・カラー91分
田中邦衛 栗田ひろみ、堺正章、笠智衆