映画「女衒 ZEGEN」


緒形拳                         倍賞美津子

今回は今村昌平監督1987年製作「女衒 ZEGEN」をピックアップする。
本作の構想は20年、香港、マカオ、台湾、マレーシアで大規模なロケ-ションを敢行し、明治後期から昭和初期にかけて東南アジアを舞台に活躍した女衒・村岡伊平治の半生を描いている。制作期間は2年にもわたったそうだ。1983年に東映で「楢山節考」が国際映画賞を齎した事から、本作は8億円の製作費を獲得した。撮影は1986年9月2日に香港からクランクインして1987年2月に最後の北海道ロケが行われクランクアップしたそうだ。内容は、これまでの今村監督作風と違い、大河ドラマ的冗長な展開で、面白味はなかった。興行的にも振るわなかったそうだ。


緒形拳、倍賞美津子                    小西博之

三木のり平、殿山泰司                   河原崎長一郎

【ストリー】
村岡伊平治(緒形拳)が大志を抱いて故郷・島原を捨ててから早や8年が経っていた。伊平治が長太(深水三章)、源吉(杉本哲太)と香港の港に降り立ったときの格好は髪は長くボサボサ、服はボロボロでまるでルンペン。もちろん金もなければ家もない。しかたなく大日本帝国領事館へ駆け込んだ。明治35年正月のことである。伊平治はそこで上原大尉(小西博之)から満州密偵としての役をもらい、シベリア大雪原へ向かった。やがて彼は奉天の女郎屋でトメ(池波志乃)という島原の女と出会い、幼馴染みのしほ(倍賞美津子)がシンガポールに奉公に出ていることを知った。香港へ戻った伊平治は越前屋の朝長(三木のり平)という知り合いを訪ねたが、なんと、しほは朝長の女房となっていた。朝長がシンガポールで身受けしてきたのだ。愛しいしほを買い戻した伊平治は、香港の海賊に捕まっている日本人の娘たちを助け出したのが縁で女衒を始めることになった。オナゴの貿易は国のためと張り切る伊平治は、南洋の島々に渡っては商売に励んだ。一方、しほはかつて海賊で今は英領マラヤのポートセッテンハムに力をもつ王(柯俊雄)に掛け合い、この地に女郎屋を開くことを許可させた。明治37年2月、対露宣戦布告の頃には伊平治は多くの子分を抱え、商売も繁盛、四つの娼館を経営するまでになった。明治45年、夏、伊平治は天皇の逝去に際し、切腹を試みたか失敗した。すぐに立ち直った伊平治は再び仕事に精を出すが、次第に反日感情が強くなり日本娼館も苦しい立場に立たされた。大正8年6月の廃娼制度の誕生は伊平治に決定的な打撃を与えた。世の中は大きく変わろうとしていた。多くの女たちは日本に帰ることを希望し、しほは王と愛し合うようになり伊平治の元を去った。このような時制に、王は伊平治の持つ娼館のすべてとしほを20万ドルで手に入れたのである。昭和16年12月、大平洋戦争が始まる頃、伊平治もすでに70歳に達していたが、彼の女衒根性はそう簡単に消えるものではなかった。日の丸を先頭に上陸してくる日本軍の隊列に向かって伊平治は「兵隊しゃーん、オナゴのことは俺に任しんしゃーい!」と叫んだのである。


緒形拳、寺田農                  緒形拳、倍賞美津子、柯俊雄

題名:女衒 ZEGEN
監督:今村昌平
企画:三堀篤、滝田五郎
製作:杉山義彦、武重邦夫、大庭二郎
脚本:今村昌平、岡部耕大
撮影:栃沢正夫
照明:岩木保夫
録音:紅谷愃一
音効:小島良雄 リーレコ:河野競司
美術:横尾嘉良
装飾:神田明良、沖村国男、高村裕司
造形:杉森憲之
化粧:井川成子、山崎邦夫
結髪:宮島孝子、丸山澄江
記録:石山久美子
編集:岡安肇 ネガ編集:岡安和子
音楽:池辺晋一郎
フィルム:アグファ(日本アグファ・ゲバルト)
現像:東映化学
撮影機材:三和映材社
製作担当:松田康史
製作主任:田上純司
製作補佐:室岡信明
製作進行:飯野久、椎井由紀子、今村広介
製作事務:仲主敏子
助監督:佐藤武光
監督助手:月野木隆、三池崇史
撮影助手:金沢裕、岡雅一、内田良一
照明助手:木村定広、三浦勇次郎、森下徹
録音助手:北村峰晴、塚本達朗
美術助手:稲垣尚夫、竹内公一
編集助手:小島俊彦、中葉由美子
邦楽指導:本條秀太朗
製作宣伝:滝島留一
宣伝プロデューサー:福永邦昭
スチール:加藤光男
出演:緒形拳、倍賞美津子、柯俊雄、三木のり平、小西博之、河原崎長一郎、池波志乃、風間舞子、熊谷真実、殿山泰司、寺田農、常田富士男、深水三章、杉本哲太、石井光三、柯俊雄、趙方豪、吉宮君子、神田紅、レオナルド熊
1987年日本・今村プロダクション+東映/ビスタサイズ・カラー124分35mmフィルム
女衒 -DVD-
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。


緒形拳                                女衒 ZEGEN

映画「キネマの天地」


有森也実                        中井貴一

今回は山田洋次監督1986年製作「キネマの天地」をピックアップする。
本作は、1982年に深作欣二監督が角川映画(松竹配給)で「蒲田行進曲」を東映京都撮影所で撮り、大ヒットし(興行収入17億6,300万円)、それに奮起した松竹のスタッフが、松竹大船撮影所50周年記念作品として作られた経緯がある。

松竹が撮影所を大船に移転する直前の1934年頃の松竹蒲田撮影所(城戸四郎所長)を舞台に、若き日の斎藤寅次郎、島津保次郎、小津安二郎、清水宏ら気鋭の監督たちが腕を競い、田中絹代(本作のモデル)がスターへの階段を上りかけた映画黄金期(サイレントからトーキー)時代を背景にしている。

今とは違い、映画会社がキャスト(俳優部)、スタッフ(演出部、脚本部、撮影部、照明部、録音部、美術部、編集部など)を抱え、一丸となって映画創りに勤しんでいた時代である。

本作に出てくるサイレント映画キャメラのクランクによる手動スプリング駆動は、実機を用いて撮られているが、同時録音シーンのNCミッチェルのプリンプは、ハリボテではないかと思う。

サイレント映画キャメラのクランクによる手動スプリング駆動は、ジャイロが付いているとはいえ、3コマ落ちると1ステップ、8コマ落ちると1ストップの露光オーバーになる。手動で定速コマ数を維持するのは職人技である。ちなみにトーキーは今日でも24コマ/秒であるが、サイレントは16コマ/秒であった。

蒲田撮影所時代を経験し小津安二郎監督作品の撮影技師である厚田雄春氏は、「蒲田行進曲」「キネマの天地」のどちらも蒲田撮影所の当時の雰囲気が出ておらず、それは無理もないとしながらも、やっぱり物足りないと評している。

私はCF作品で有森也実さんを撮影した事がある。その現場の印象は、大作の主演女優を果たした側面は一切見せず、真摯にテーマである商品を引き立てる芝居に懸命だったと記憶する。
中井貴一さんは、私が撮影チーフ助手最後の作品でフランスロケに行った時にご一緒させて戴いた事があるが、気さくな方であった。

※「蒲田行進曲」は時代劇全盛の東映京都撮影所が舞台。
※大船撮影所については「太陽の墓場」で記述してます。
※本作でサイレント映画のキャメラはミッチェルスタンダード、シンクレア等が使われている。

松竹蒲田撮影所 1920年6月~1936年1月15日 閉鎖
日本映画黎明期をリードする撮影所として一時代を築いた。小津安二郎や成瀬巳喜男、田中絹代、高峰秀子等の映画人を輩出し、国産初の本格的トーキー映画を生み出したのも同撮影所である。

松竹大船撮影所 1936年1月15日~2000年6月30日 閉鎖
それまで松竹は東京市蒲田区(現・東京都大田区)の蒲田撮影所で撮影をしていたが、町工場の多い蒲田では騒音がトーキーの撮影に差し障るという理由から神奈川県鎌倉市大船に移転した。


渥美清、前田吟、倍賞千恵子                油井昌由樹、すまけい、中井貴一

【ストリー】
浅草の活動小屋で売り子をしていた田中小春(有森也実)が、松竹キネマの小倉監督(すまけい)に見出され、蒲田撮影所の大部屋に入ったのは昭和8年の春だった。小春は大震災で母親を失い、若い頃旅回り一座の人気者だったという病弱の父・喜八(渥美清)と長屋でのふたり暮らしだ。蒲田撮影所での体験は何もかもが新鮮だった。ある日、守衛(桜井センリ)に案内されて小倉組の撮影見学をしていた小春はエキストラとして映画出演することになった。だが素人の小春にうまく演じられる訳がなく、小倉に怒鳴られた小春は泣き泣き家に帰り、女優になることをあきらめた。長屋に戻って近所の奥さんにことのいきさつを話している小春を、小倉組の助監督島田健二郎(中井貴一)が迎えにきた。「女優になりたがる娘はいっぱいいるけど、女優にしたい娘はそんなにいるもんじゃない」。健二郎の言葉で、小春は再び女優への道を歩み始めた。やがて健二郎と小春はひと眼を盗んでデートする間柄になった。小春は幸福だった。しかし時がたつにつれ、映画のことにしか興味をしめさない健二郎に少しずつ物足りなさを覚えるようになった。小春の長屋の住人たちは不況下の失業にあえいでいた。そんな中で、唯一の希望はスクリーンに登場する小春だった。夏もすぎ秋になって、小春はプレイボーイとして有名な二枚目スター、井川時彦(田中健)と親しくつき合うようになった。師走に入って、健二郎は、労働運動で警察から追われている大学時代の先輩(平田満)をかくまったとして、留置所に入れられてしまう。その留置所生活で得たのは、かつてなかった映画作りに対する情熱だった。年が明けて、小春が大作の主演に大抜擢された。主演のトップスター川島澄江(松坂慶子)が愛の失踪事件を起こしたため、その代打に起用されたのだ。しかしその大作「浮草」で演技の壁にぶつかって、小春は苦悩した。その小春を、喜八はかつて旅回り一座の看板女優だった母と一座の二枚目俳優のロマンスを語り励ました。実は小春の本当の父親はその二枚目であることも--。「浮草」は成功した。人があふれる浅草の映画館でゆきと「浮草」を見に行った喜八は、映画を見ながら静かに息をひきとった。


松本幸四郎                         田中健

題名:キネマの天地
監督:山田洋次
製作総指揮:奥山融
製作:野村芳太郎、杉崎重美、升本喜年、島津清
脚本:井上ひさし、山田太一、朝間義隆、山田洋次
撮影:高羽哲夫
照明:青木好文
録音:鈴木功
調音:松本隆司
美術:出川三男
装置:小島勝男
装飾:町田武
美粧:宮沢兼子、吉野桂子
床山:八木かつら
衣裳:松竹衣装
編集:石井巌
音楽:山本直純
現像:イマジカ
撮影機材:パナビジョン
製作主任:新井重美
製作進行:副田稔、玉生久宗
助監督:五十嵐敬司
プロダクション・コーディネーター:内藤誠、田中康義
風俗考証:林美一、結城一朗
スチール:赤井博且
出演:中井貴一、有森也実、渥美清、松坂慶子、倍賞千恵子、美保純、笠智衆、桃井かおり、田中健、すまけい、岸部一徳、堺正章、柄本明、油井昌由樹、山本晋也、なべおさみ、大和田伸也、広岡瞬、レオナルド熊、石倉三郎、山城新伍、木の実ナナ、下條正巳、三崎千恵子、平田満、財津一郎、ハナ肇、桜井センリ、佐藤蛾次郎、人見明、関敬六、前田吟、吉岡秀隆、笹野高史、藤山寛美、松本幸四郎(9代目)
1986年日本・松竹/ビスタサイズ・カラー135分35mmフィルム
キネマの天地 -DVD-
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。


笹野高史、渥美清                     有森也実

映画「魚影の群れ」

魚影の群れ魚影の群れ
魚影の群れ
魚影の群れ魚影の群れ
緒形拳

今回は相米慎二監督1983年製作「魚影の群れ」をピックアップした。
本作は下北半島・大間を舞台に苛酷なマグロの一本釣りに生命を賭ける海の男と、寡黙であるが情熱的な女の世界を描いている。苛酷なのは撮影もそうであっただろう。その緊張感が芝居に反映されている。それがないと1カット長廻しなど見るに堪えない。1985年に若干27歳で惜しくも亡くなった夏目雅子さん、緒形拳さん(2008年71歳没)、レオナルド熊さん(1994年59歳没)、そして2001年に亡くなった相米慎二監督(53歳没)、皆がフィルムに生きていた。

【相米慎二監督作品】
1980年「翔んだカップル」
1981年「セーラー服と機関銃」
1983年「ションベン・ライダー」
1983年「魚影の群れ」
1985年「ラブホテル」
1985年「台風クラブ」
1985年「雪の断章 情熱」
1987年「光る女」
1990年「東京上空いらっしゃいませ」
1993年「お引越し」
1994年「夏の庭 The Friends」
1998年「あ、春」
2001年「風花」
2001年9月9日59歳没

魚影の群れ魚影の群れ
下川辰平、緒形拳                佐藤浩市、夏目雅子

【ストリー】
多くの漁師が40代で辞めてしまう中で、小浜房次郎(緒形拳)は初老を感じながらもマグロ漁を続けている。娘トキ子(夏目雅子)が結婚したいという、喫茶店をやっている依田俊一(佐藤浩市)に会う。養子になって漁師になってもいいという。漁に命を賭けてきた房次郎は簡単に漁師になると言われ、無性に腹立たしくなる。店を畳んで大間 に引越してきた俊一は房次郎の持ち船・第三登喜丸の前で待ち、漁を教えて欲しいと懇願する。10日以上も俊一を無視し続けたが、一緒に乗り込むのを許す。 エイスケ(三遊亭圓楽)の忠告で、トキ子が家出した妻アヤ(十朱幸代)のように自分を捨てるのではと怯えたのだ。不漁の日が続き、連日船酔いと闘ってきた 俊一がようやく打ち勝った日、マグロの群れに遭遇する。餌が放り込まれた瞬間、マグロが引張る釣糸が俊一の頭に巻きつき、血だらけになる。だが、房次郎は マグロとの死闘を続け、マグロを仕留めた時、俊一の眼には憎悪が浮かんでいた。数ヵ月後に退院した俊一はトキ子と町を去る。1年後、北海道の伊布港に上陸 した房次郎はアヤに再会する。壊しさと20年の歳月がわだかまりを溶かすが、ヒモの新一(矢崎滋)に絡まれ、房次郎は半殺しにし、止めに入ったアヤまで殴る。翌日、 伊布沖で房次郎は生まれて初めて釣糸を切られ、ショックを受ける。たくましくなって俊一が大間に戻って来た。ある日、俊一の第一登喜丸の無線が途絶える。 一晩経っても消息はつかめず、トキ子は房次郎に頭を下げて捜索を依頼する。長年の勘を頼りに第一登喜丸を発見。300キロものマグロと格闘中であった。重 傷を負っているのを見て房次郎が釣糸を切ろうとすると「切らねでけろ。俺も大間の漁師だから」という俊一にマグロとの闘いに加わる。2日間の死闘の末、大物は仕留められる。帰港の途中、来年の春に生まれる子が男だったら漁師にしたいと告げ、俊一は息を引き取る。

魚影の群れ魚影の群れ
夏目雅子、佐藤浩市

題名:魚影の群れ
監督:相米慎二
製作:織田明、中川完治、宮島秀司
原作:吉村昭
脚本:田中陽造
撮影:長沼六男
照明:熊谷秀夫
特機:NK特機
録音:信岡実
美術:横尾嘉良
編集:山地早智子
音楽:三枝成章 挿入歌:「Bright light, in the sea」原田芳雄、アンリ菅野「遣らずの雨」川中美幸
現像:東洋現像所
助監督:榎戸耕史
漁業技術指導:中森幸夫
スチール:星野健一
出演者:緒形拳、夏目雅子、佐藤浩市、十朱幸代、矢崎滋、下川辰平、レオナルド熊、石倉三郎、寺田農、三遊亭圓楽(5代目)、木之元亮、工藤栄一
1983年日本・松竹/ビスタサイズ・カラー141分35mmフィルム
魚影の群れ [DVD]
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。

魚影の群れ魚影の群れ
石倉三郎、レオナルド熊              佐藤浩市、緒形拳

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