映画「大いなる驀進」

大いなる驀進大いなる驀進
中村賀津雄                       佐久間良子

今回は関川秀雄監督1960年製作「大いなる驀進」をピックアップする。
本作は「大いなる旅路」の姉妹編として東京~長崎間の寝台特急さくらを舞台にしている。国鉄(日本国有鉄道=JRの前身)の全面協力で制作された作品である。1967年には松竹制作で「喜劇 急行列車」「喜劇 初詣列車」「喜劇 団体列車」が瀬川昌治監督、主演を渥美清さん、佐久間良子さんで国鉄協力のもと作られている。いずれも今はない路線、列車など貴重な鉄道記録にもなっている。

大いなる驀進大いなる驀進
三国連太郎、中村賀津雄                 中原ひとみ

【ストリー】
東京--長崎間を驀進する特急さくら。専務車掌の松崎義人(三國連太郎)、列車給仕の矢島敏夫(中村賀津雄)、食堂車のウェイトレス松本芳子(中原ひとみ)らの乗務員、そして種々の乗客をのせて、列車は今日も長崎めざして驀進する。発車まぎわに慌しく乗り込んだのは矢島の恋人望月君枝(佐久間良子)だった。結婚するには列車給仕などしていられない、という矢島を君枝は必死になだめた。矢島を秘かに愛する芳子は二人の姿を淋しく見ていた。富士川鉄橋を渡る頃、車内巡視に廻った矢島は客の時定から殺人犯の同乗を密告された。殺人犯の七郎(直木明)は静岡駅で逮捕された。京都近くで車内に盗難事件が発生した。すりのカメレオンの松(花澤徳衛)の仕業らしかった。真夜中、列車は大阪駅に到着した。プロ球団の選手たちが下車し、血清を抱いた看護婦森原数子(久保菜穂子)とサブ(曽根晴美)という青年殺し屋が乗車した。発車間ぎわ、風速40メートルという台風襲来のニュースが入った。豪雨の中を驀進するさくらの中では、乗客の一人、炭坑主の吉田(小川虎之助)が自殺を図った。医者(小沢栄太郎)が岡山駅からかけつけ、命は助かった。台風は瀬戸内海沿岸に上陸し、松崎は間もなく前方に崖崩れを発見した。急停車する列車、松崎は騒然たる乗客をなだめると、シャベルを抱えて風雨の中にとび出した。乗務員も続いた。半ばふてくされて、とび出そうとしない矢島を、松崎は殴打した。崖崩れに埋もれた鉄路を救おうとして、必死に努力する人々の姿をみる矢島の胸底には、忘れていた感動がよみがえった。彼もシャベルをつかんでとび出した。君枝も、芳子も、数子までも鉄路の泥と闘った。何時間か後、さくらは再び驀進した。徳山駅では、下車した駈け落ちの男女が、迎えに出た男に叱咤されていた。下関で事件が起きた。殺し屋時定(波島進)が、殺し屋サブにめった斬りにされたのである。七郎の復讐らしかった。カメレオンの松は、台風と闘う鉄道員の姿に心を打たれたといって悔悛した。終着駅長崎はもうすぐである。君枝は矢島に鉄道員としての誇りを自覚させたことが嬉しかった。松崎が二人の仲人をするという。二人の前途を祝福するかのように、さくらは終着駅長崎にすべり込んだ。

大いなる驀進大いなる驀進
中村賀津雄                      大いなる驀進

題名:大いなる驀進
監督:関川秀雄
企画:坪井与、岡田寿之、加茂秀男
製作:大川博
脚本:新藤兼人
撮影:仲沢半次郎
照明:銀屋謙蔵
録音:大谷政信
美術:森幹男
編集:長沢嘉樹
音楽:斎藤一郎
進行主任:登石集一
助監督:山田稔
協力:日本国有鉄道
出演:中村賀津雄、三国連太郎、佐久間良子、中原ひとみ、久保菜穂子、小宮光江、曽根晴美、大村文武、花澤徳衛、上田吉二郎、大原幸子、八名信夫、沢彰謙、小沢栄太郎、小川虎之助、直木明、波島進
1960年日本・東映東京撮影所/シネスコサイズ・スラー89分35mmフィルム
大いなる驀進 -DVD-
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。

大いなる驀進大いなる驀進
佐久間良子、中原ひとみ                大いなる驀進

映画「この子の七つのお祝いに」


岩下志麻                       根津甚八

今回は増村保造監督1982年製作「この子の七つのお祝いに」をピックアップする。
本作はミステリー小説を映画化したものだが、早い段階で犯人が分かってしまうという構成だ。そう思いつつも、岸田今日子さんの怪演と岩下志麻さんの感情を殺した熱演に見入ってしまう作品である。


杉浦直樹、岩下志麻               室田日出男、小林稔侍

「美しく、狂おしく 岩下志麻の女優道」 (春日太一著・文藝春秋刊)より
A:岩下志麻 Q:春日太一
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Q:次にうかがいたいのは「この子の七つのお祝いに」です。
A:この映画のことは、今回見直すまでほとんど忘れていました。というのも、増村監督の演出と私が全く合わなかったんです。それでも最終的には監督に従ってやりましたけど。増村さんは独自の演出のされ方でした。例えばレンズから覗いていて「この1メートルの横幅の中で動いて下さい」とか、そういう要求をなさるんですよ。そうすると、こちらはとても不自然な動きになります。それが私は耐えられなくて。自然にやれないので。それがまずできなかったのと、それと声の出し方です。私が演じたのは怨念を持った女でしたが、表向きは自然にやっていて、実は裏に怨念を持っていた女という役作りをしていたら、監督が「低い声で、しゃがれた声で、恨みを持った声で」と言って、ちょっとでも高い声を出すとNGが出るんです。「もっともっと」って。監督としては岸田今日子さんが演じられたような、ああいうおどろおどろしさが狙いでした。
Q:たしかに、増村監督は芝居にある種の分かりやすさを求める傾向があります。
A:ですから、杉浦直樹さんに「愛してるわ」と言うセリフでも、普通に「愛してるわ」というとNGで、くっきりはっきり低い声で「愛してるわ!」と言うとOKでした。怨念を持って、低い声で、芝居がかって言うとOKなんです。その辺が、私が持っていた麻矢という女の人のイメージと異なっていました。でも、今見直すと監督の狙いもよく分かります。たしかに、私が考えたように普通にやっちゃうと怨念劇にならなかったかもしれません。自分の父親への復讐だけのために気が狂ったように。怨念だけで一生を生きているわけですから。
でも、当時は自然にできないのがどうも耐えられなくて。根津甚八さんも抵抗していらっしゃいました。根津さんはアングラ系劇団のご出身の方ですから、芝居が自然体なんですよ。根津さん、「ヨーイ、スタート」と言われても芝居を始めなかったこともありましたし。最終的に根津さんし自分の自然体をかなり生かしておやりになったんじゃないかと思います。Q:たしかにあの作品では根津さんだけがいつもの「根津流」で通しているといいますか、増村さんの芝居のスタイルと違いますね。声もあまり張っていませんし。
A:根津さんは違っていました。でも杉浦さんは、「増村さんの狙いがあるから。僕はこの演出方法はとてもよく分かる」とおっしゃっていました。私が「分からない」と言ったら、「それでも増村監督に従ってやらないとこの作品は失敗作に終わるから、従ったほうがいい」って。
Q:杉浦さんは大映テレビのドラマで増村さん脚本の作品に出ていますので、流儀が分かっていたのかもしれませんね。
A:それから、これは今思うと私でも信じられないことなのですが、「この子の七つのお祝いに」は「疑惑」後半の一部が掛け持ちだったんです。私としては「疑惑」に神経が行っていたんだと思います。それもあって「この子の七つのお祝いに」は疑問を持ちながら演じたのでわりと記憶から飛んでいたんですよ。

※1982年野村芳太郎監督「疑惑

【ストリー】
次期総理の座を狙う大蔵大臣磯部の私設秘書・秦一毅(村井国夫)の元お手伝い・池畑良子(畑中葉子)が殺された。ルポライター、母田耕一(杉浦直樹)は政界の謎をあばこうと秦の身辺をさぐっていた矢先の事件で秦の内妻、青蛾(辺見マリ)が奇妙な手型占いをするという噂をきく。しかもその的中率を頼んで大物政治家、財界人等が己れの手型を持って続々と詰めかけており、秦自身もこの占いのお陰で現在の地位を築いたというのだ。母田は青蛾の影を追い始める。そんなある日、後輩の事件記者須藤(根津甚八)に、ゆき子(岩下志麻)という変り者の美人ママがいるというバーに連れて行かれる。母田は彼女に強くひかれ、彼のマンションで密会するようになった。だが母田は何者かによって殺害され、須藤は危険を承知で母田の仕事を引き継ぎ、彼の残した足跡を探る。昔、ある麻布のバーに占いのよく当たる娘がいたという事、ママの名前は麗子。そして秦の内妻、つまり青蛾の正体が麗子である事をつきとめる。やがて彼は謎の占いの娘の写真を見せられるが、それは青蛾ではなく倉田ゆき子だった。追いうちをかけるように、須藤のもとに青蛾惨殺の報が届いた。さらに、ホテル王高橋佳哉(芦田伸介)にゆき子から呼び出しがかかった。高橋に同行した須藤の前にゆき子が姿を現わした。ゆき子の告白によれば高橋は母の仇だという。敗戦の混乱の中、妻と生き別れて満州から引き揚げてきた高橋は真弓(岸田今日子)と結ばれ、赤ん坊が生まれた。だがその赤ん坊はすぐに病死し真弓はショックのあまり精神に異常をきたした。高橋はふとした偶然で生き別れていた妻と再会し、真弓の前から姿を消して別に家庭を持った。二人の間に生まれた赤ん坊は、復讐鬼となった真弓に盗まれ、30数年が経過した。その間、真弓に育てられたのが盗まれた赤ん坊のゆき子で、高橋に復讐する事だけを徹底的に教え込まれ、占いという特殊能力を生かし、青蛾を使って高橋が目の前に現われる日を待っていたのだが、途中、おじ気づいた青蛾を殺害した。高橋に、真弓の本当の娘でない事を教えられたゆき子はあまりの残酷さに発狂寸前だった。


村井国夫、辺見マリ                中原ひとみ、根津甚八

題名:この子の七つのお祝いに
監督:増村保造
製作:角川春樹
原作:斉藤澪
脚本:松木ひろし、増村保造
撮影:小林節雄
照明:川崎保之丞
録音:井家眞紀夫
音効:佐々木英世
美術:間野重雄
装置:荒井新一
装飾:神田明良
衣装:相沢登記雄 (松竹衣裳)
美粧:入江壮ニ
結髪:馬場利弘、沢辺満代
記録:山之内康代
編集:中静達治 ネガ編集:南とめ
音楽:大野雄二
現像:東洋現像所
プロデューサー:岡田裕介、中川完治
製作主任:高橋文雄
製作担当:生田篤
製作進行:宮本恵司、大崎裕伸、八鍬敏正
助監督:近藤明男
監督助手:藤由紀夫、加藤仁
撮影助手:竹沢信行、岩本道夫、笠間公夫
特機:塚本貞重
照明助手:国本正義、本田純一、大坂章夫、清野俊博、岡秀雄
美術助手:和田洋 セット付:藤田雄幸
録音助手:舛森強、小川健司
編集助手:大橋富代
スチール:清水紀雄
出演:岩下志麻、根津甚八、杉浦直樹、室田日出男、小林稔侍、辺見マリ、芦田伸介、岸田今日子、中原ひとみ、村井国夫、神山繁、畑中葉子、坂上二郎、名古屋章、戸浦六宏
1982年日本・角川春樹事務所+松竹/ビスタサイズ・カラー111分35mmフィルム
この子の七つのお祝いに -DVD-
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。


岸田今日子                   芦田伸介、根津甚八

映画「白昼の無頼漢」

白昼の無頼漢白昼の無頼漢
丹波哲郎                       中原ひとみ

今回は深作欣二監督1961年製作「白昼の無頼漢」をピックアップする。
本作は、深作欣二監督が東映の企画部長から「シルバーウィークの番組に穴が開くのでギャングものを1本、2週間で撮って欲しい」と依頼され、スタンリー・キューブリック監督「現金に体を張れ」を意識して作られたと思われるフィルム・ノワールである。

白昼の無頼漢白昼の無頼漢
久保菜穂子

【ストリー】
駐留軍のジェット基地出入りの宮原(丹波哲郎)は、かねてから頭に描いていた計画を実行にうつすため、四人の人物を古城のような別荘に招いた。基地に勤務する黒人兵トム・トウェイン(アイザック・サクソン)。基地でラジオ店を経営する金山正夫こと韓国人洪全成(春日俊二)。不良アメリカ人夫妻ジョン・ケンデイ(ダニー・ユマ)とアン(ラビィン・シェルトン)の四人である。宮原は妻の亜紀(久保菜穂子)とその弟三郎(曽根晴美)を紹介し、四人の前歴を披露した。どれもこれも屑ばかりだ。宮原は基地周辺に根を張るやくざ芝山(沖竜次)の仲介で趙から金を借り、金山とケンデイは護送車の通過時刻を確認。また、セスナを飛ばして機上から護送車の進行経路を航空写真に収めた。だが、人種的偏見からくるケンデイの黒人トムに対する仕打ち、トムがアンに寄せる好色な目付き、宮原は仲間割れの危険を感じて、二人の融和を図るため、特殊バーから混血娘の花子(中原ひとみ)を引き抜いてトムに当てがった。一方、芝山は自分の弟を殺した脱走兵のトムを探していた。決行の日は来た。花子は通行止めの標識によって護送車を誘導した。アンは色仕掛けで運転手をおびき出し、宮原達は運転手を殺し、金袋を亜紀の車に移した。その時、宮原達の行動を監視していた芝山一味が襲って来た。アンはその弾丸に倒れ、花子は亜紀と金袋を乗せたまま何処かへ持ち去った。引揚げた一同は、ケンデイが亜紀と肉体関係から二人だけの密計があったことを知って殴り殺してしまった。その夜、再び芝山達の襲撃があった。トムはその騒ぎに失踪した。宮原は、トムが花子と共に基地演習場外のゴースト・タウンに逃げたことを知った。一方、花子のために山小屋に閉じこめられた亜紀は、逃れて芝山達に寝返った。宮原と三郎はゴースト・タウンにトムと花子を追いつめた。その時、芝山一味が亜紀の案内で襲って来た。しかたなく宮原は、トムと手を握り芝山一味をダイナマイトで全滅さした。トムは一切の金銭的欲望を失っていた。ただひたすらに花子との生活を考え、香港へ脱出することだけを考えていた。だが、宮原は金の一人占めを図って、トム殺害の機を狙っていた。しかし、宮原には油断があった。瀕死の重傷の中で、亜紀はダイナマイトを抱きながら宮原、トム、三郎のところに転がりこんだ。ダイナマイトの爆発に皆消し飛んだ。一人生き残った花子と札束だけが、死の町にポツンと残っているだけだった。

白昼の無頼漢白昼の無頼漢

題名:白昼の無頼漢
監督:深作欣二
企画:大賀義文
脚本:佐治乾
撮影:星島一郎
照明:原田政重
録音:大谷政信
美術:近藤照男
編集:田中修
フィルム:富士フィルム
現像:東映化学
音楽:河辺公一
製作主任:渋谷幹雄
助監督:田口勝彦
スチール:遠藤努
出演:丹波哲郎、中原ひとみ、曽根晴美、久保菜穂子、八代万智子、春日俊二、沖竜次、須藤健、柳永二郎、亀石征一郎、久地明、ダニー・ユマ、アイザック・サクソン、ラビィン・シェルトン、サイ・ティラー
1961年日本・ニュー東映/シネスコサイズ・モノクロ82分35mmフィルム
白昼の無頼漢 [DVD]
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。

白昼の無頼漢白昼の無頼漢
丹波哲郎

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