映画「あいつと私」
「あいつと私」芦川いづみ
石原裕次郎 芦川いづみ
今回は中平康監督1961年製作「あいつと私」をピックアップする。
日活青春ドラマ定番の石坂洋次郎氏原作の小説を映画化したものだが、60年前に作ったとは思えない程、現代に通じるおもしろさがある作品。60年安保闘争も織り交ぜながら時代の断片を散りばめ挿入する事により、適度な緊張感を保ちつつ、対照的な家族をテーマにしている。私の好きな映画女優芦川いづみさんのショートヘアーがとても良かった。
「あいつと私」芦川いづみ
芦川いづみ、小沢昭一、石原裕次郎 芦川いづみ、渡辺美佐子
【ストリー】
都心から離れた専明大学。ここには若さと明かるさと太陽だけがあった。黒川三郎(石原裕次郎)はそういう学生の中にあって特に野放図でくったくのない男だった。だから、授業中にうっかり「夜の女を買った」と喋ったため、女生徒の吊し上げにあい、プールに投げこまれてしまった。びしょ濡れの三郎を家が近くだという女生徒浅田けい子(芦川いづみ)が父の服をかしてくれることになった。けい子の家は、父親の他は女ばかり7人。三郎を大いに歓迎してくれた。三郎の家は反対に父母と3人暮し、母親のモト子(轟夕起子)は有名な美容師で、することなすことが並はずれてスケールの大きなスーパーレディ、園城寺(庄司永健)という恋人もいる。父親の甲吉(宮口精二)はその偉大な夫人のヒップの後にかくれているような気の弱い男だった。だが、みんな型にはまらず個性的でカラッとしていてけい子は感激した。三郎とけい子はこの機会を通じて仲良くなっていった。夏休みが来た。三郎やけい子たち5人のクラスメートは東北地方を廻って軽井沢にある三郎の別荘までドライブを決行した。軽井沢についた晩、突然、モト子が円城寺と弟子の松本みち子(渡辺美佐子)を連れてやって来た。けい子は、みち子の三郎に対する態度にふと不審の念を抱いた。女の愛する者への直感だった。問いつめられた三郎は、みち子と以前に関係のあったことを告白した。けい子は泣きながら外へとびだした。後を追った三郎は、泣きじゃくるけい子を強引に接吻した。二人の仲はこれがもとでもっと強力となった。二学期が始まり秋風が吹く頃、モト子の誕生日がやって来た。けい子、円城寺、そして、モト子の昔の友達というアメリカでホテルを経営する阿川(滝沢修)が久し振りに日本に帰って来て出席していた。楽しかったパーティも、阿川が三郎に“アメリカでホテルの後を継いでくれ”といったことからパーティはメチャメチャとなった。三郎はモト子と阿川の間に出来た子供だったのだ。翌日、モト子はすっかり元の陽気さを取り戻し、三郎も出生の秘密を知った暗さなどどこにもみられなかった。三郎はけい子と婚約した。将来、三郎とけい子はアメリカに行くかも知れないのだ。
轟夕起子、宮口精二 吉永小百合
題名:あいつと私
監督:中平康
企画:坂上静翁
原作:石坂洋次郎
脚本:池田一朗、中平康
撮影:山崎善弘
照明:藤林甲
録音:片桐登司美
美術:松山崇
特技:金田啓治
技斗:峰三平
音楽:黛敏郎 主題歌:石原裕次郎「あいつと私」
記録:堀北昌子
編集:辻井正則
現像:東洋現像所
製作主任:銭谷功
助監督:西村昭五郎
色彩計測:畠中照夫
スチール:斎藤耕一
出演:石原裕次郎、芦川いづみ、笹森礼子、吉永小百合、中原早苗、小沢昭一、吉行和子、渡辺美佐子、清水将夫、轟夕起子、宮口精二、高田敏江、細川ちか子、武藤章生、伊藤孝雄、庄司永健、高野由美、滝沢修、酒井和歌子
1961年日本・日活/シネスコサイズ・カラー105分
高田敏江、中原早苗 吉行和子
【トリビア】赤丸印は東宝に入社する前の酒井和歌子さん。当時は劇団若草所属だった。
笹森礼子 滝沢修、石原裕次郎