映画「妖僧」


「妖僧」市川雷蔵

市川雷蔵                              藤由紀子

今回は衣笠貞之助監督1963年製作「妖僧」をピックアップする。
本作は、女帝を守り風雲を呼ぶ不死身の怪僧を描いた平安時代劇だが、公金横領に権力闘争という現代に通ずる腐敗政治をストリーのベースにしている。衣笠貞之助監督を始め巨匠を輩出した大映映画は、美術セットや照明、森田富士郎氏の特撮など目を見張るカットは数多くあるが、ストリーが陳腐だった。


「妖僧」万里昌代

万里昌代                                近藤美恵子

【ストリー】
厳しい山嶽仏教の修業に百人のうちで唯一人堪えた、行道(市川雷蔵)は、恐るべき魔力を秘めた法力を獲得した。山を下りた行道はその法力を駆使して、病人を治し、やがて、その噂は宮廷に迄およんだ。類まれな美貌の女帝(藤由紀子)が幼時から不自由であった御足が、とみに悪化してきたというのだ。ひそかに招かれた行道は如意輪の秘法をもって遂に御足の痛みを取り去った。喜びの女帝は行道を重宝にし、忌憚のない言葉に耳を傾けた。政権を欲しいままにする太政大臣・藤原良勝(城健三朗)に反感を抱く左大臣・藤原清川(小沢栄太郎)、右大臣・藤原光成(稲葉義男)、大蔵卿犬養(島田竜三)らは、行道の勢力に力を得、良勝が金銭を私している事を行道に告げた。この事実を知った良勝は、女帝の耳に達するのを恐れ、行道に刺客をさしむけた。しかし行道の恐るべき法力は、体を貫く刃に一滴の血も流さなかった。追いつめられた良勝は、かねてから不平をかこつ市原の皇子(成田純一郎)と語らい反逆の兵を挙げた。法術で事を知った行道は、女帝を守るために永久に留まろうと決意、頭を剃り、見違えるような美僧の姿となり名を道鏡と改めた。道鏡の魔力と朝廷側の反撃が功を奏し、良勝の軍は敗走した。女帝の信任をあつくした道鏡は、権力に近づき、女人を愛し、僧の戒律を破った苦悩に悩みつづけた。新に大政大臣に藤原清川が、大政大臣禅師に道鏡が任じられた。女帝の愛寵を深くした道鏡は、天皇の位と同等の法王の位を与えられた。嫉妬に狂った清川は秘かに道鏡を狙った。折も折、女帝は病に犯され必死に如意輪の秘法を念じる道鏡の法力もむなしく、女帝は絶命した。なきながらにとりすがる道鏡の背後から、清川の放った刺客が襲った。かつては、刃も通じなかった道鏡の胸も、今や法力はなく女帝の手を握ったまま崩れた憎の姿があるのみだった。


小沢栄太郎                             城健三朗(若山富三郎)

題名:妖僧
監督:衣笠貞之助
企画:原田光夫
製作:永田雅一
原案:八尋不二
脚本:衣笠貞之助、相良準
撮影:今井ひろし
特撮:黒田義之、森田富士郎、美間博
照明:加藤博也
録音:大谷巖、加藤茂
音効:倉島暢
美術:柴田篤二
装置:山本佐一郎
衣装考証:上野芳生
擬斗:宮内昌平
編集:菅沼完二
音楽:伊福部昭
製作主任:田辺満
助監督:黒田義之
スチール:小牧照
出演:市川雷蔵、藤由紀子、万里昌代、近藤美恵子、片岡彦三郎、小沢栄太郎、城健三朗(若山富三郎)、小林勝彦、小林勝彦、丹羽又三郎、中条静夫
1963年日本・大映京都撮影所/シネスコサイズ・モノクロ118分35mmフィルム
妖僧 -DVD-
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妖僧

映画「透明人間と蝿男」

透明人間と蝿男透明人間と蝿男
北原義郎                      品川隆ニ

今回は村山三男監督1957年製作「透明人間と蝿男」をピックアップする。
本作は1957年(昭和32年)の羽田空港、江戸川橋、皇居周辺、有楽町などが見られ資料的な価値は高い作品だ。撮影は名匠村井博氏、特撮は的場徹氏が担当されている。

透明人間と蝿男透明人間と蝿男
叶順子                       毛利郁子

【ストリー】
姿なき殺人魔の跳梁にこのところ都民は恐怖におののいていた。旅客機上の密室殺人事件をはじめ、被害者はいずれも白昼の繁華街か完全な密室で殺され、手がかりといえば現場附近で聞かれた蠅のような羽音だけ。若林捜査一課長(北原義郎)をはじめ捜査陣は全く翻弄された形だった。一方、その頃若林の友人で少壮物理学者の月岡博士(品川隆二)は、早川博士(南部章三)の指導で宇宙線研究の途上、偶然にも透明光線を発見した。この発見を知った殺人鬼はこれを奪わんと遂に早川博士を殺害した。恩師の死に月岡は決然と還元装置が未完成のまま透明光線の前に立ち、自分の姿を消して若林ら捜査陣に協力することになった。そして殺人鬼は、一瞬にして体を縮め、蠅の姿になる、即ち蠅男だということを知った。正体を暴露された蠅男は、しかしなおも捜査陣の追及を逃れ、ナイトクラブの踊子美恵子(毛利郁子)、葉山刑事(浜口喜博)と次次に惨殺した。だが、この頃南米帰りと称する謎の大富豪楠木の正体を追っていた月岡は、彼が南方の島から旧日本軍の秘密兵器、姿を蠅に変え人に残忍な心を与える魔薬のアンプルを持って帰ったことを知った。殺人鬼蠅男は、この楠木(伊沢一郎)の手先なのだ。楠木は敗戦の時、彼一人に戦犯の罪を着せて日本へ逃帰った上官、同僚たちに復讐しようとしていたのだ。
かくて、透明人間月岡と仮面を捨てた楠木との決戦がはじまった。自ら蠅となって逃れる楠木。そしてついに追いつめられた彼は、透明光線の装置を寄越さぬと全都を壊滅させると宣言した。そしてそれを証明するように、彼は有楽町のガードにさしかかった満員電車を、ガード諸共爆破してしまった。不安と恐怖におののく都民。その行交う足元で楠木は面白そうに笑う。その取引の夜、死の街と化した丸の内のあるビルの屋上で、ついに透明光線装置は楠木の手に渡った。得意の彼はヘリコプターで逃去ろうとしたが、その時再びヘリコプターが着陸して楠木がよろめき出た。その後にピストルをかざしているのは、早川博士の娘章子。彼女は月岡に励まされながら、ついに還元装置を完成すると透明光線で姿をかくし楠木の意表をついたのだ。いまはこれまでと、楠木は章子の拳銃を奪うと拳銃を乱射しながら逃げようとした。しかし、応戦する若林の一弾が見事命中、楠木はビルの上からもんどりうって転落した。

透明人間と蝿男透明人間と蝿男

題名:透明人間と蝿男
監督:村山三男
企画:米田治
製作:永田秀雅
原案:山野利一
脚本:高岩肇
撮影:村井博
照明:米山勇、佐藤寛
録音:飛田喜美雄
美術:後藤岱二郎
特殊技術:的場徹
編集:名取功男
記録:立花慎子
音楽:大久保徳二郎
製作主任:奈良原義雄
助監督:石田潔
出演:北原義郎、品川隆ニ、叶順子、毛利郁子、鶴見丈二、浜口喜博、南部章三、見明凡太朗、伊沢一郎、中条静夫
1957年日本・大映/スタンダードサイズ・モノクロ95分35mmフィルム
透明人間と蝿男 -DVD-
2019年2月現在、DVDレンタルはありません。

透明人間と蝿男透明人間と蝿男

映画「夫が見た」

「女の小箱」より 夫が見た
若尾文子
「女の小箱」より 夫が見た「女の小箱」より 夫が見た
若尾文子                      若尾文子、川崎敬三

今回は増村保造監督1964年製作『「女の小箱」より 夫が見た』をピックアップした。
物語は、高度経済成長を背景に「男は野心に生き、女は愛に賭けた。男と女の生死を賭けた愛の闘争が激しく始まる」という内容だが、裸体の隠し方が実に上手い。工夫しているアングル、決めのポーズに技巧がある。ドラマも本質を突きピタッと完結しており、さすがは職人の映画だと思った。本作の題材は古くなったにせよ、質の高い脚本と俳優の名演技は、今のヌルい日本映画では観れない。

【追記・訃報】
川崎敬三(かわさき・けいぞう、本名=陶山恵司)さんが2015年7月21日に川崎市内の病院で死去した。1954年に大映のニューフェースに合格後「こんな奥様見たことない」で映画デビュー。若尾文子さん主演の「新婚」シリーズや山本富士子さん主演の「夜の河」などに出演、「サザエさん」「雑居時代」などテレビドラマにも出演し、テレビ朝日系の昼のワイドショー「アフタヌーンショー」の司会で人気を博した。同番組のリポーター山本耕一さんの口癖だった「そうなんですよ、川崎さん」は漫才コンビ「ザ・ぼんち」のネタにもなった。

「女の小箱」より 夫が見た「女の小箱」より 夫が見た
田宮二郎、岸田今日子               田宮二郎、江波杏子

【ストリー】
川代誠造(川崎敬三)は、敷島化工の株式課長だ。今、株の買占めに悩まされる敷島化工は、その防衛に必死で、川代も家をあける事もしばしば。妻の那美子(若尾文子)はそんな夫との生活に耐えられず、友人に誘われるまま、バー「2・3」で遊ぶようになった。バーの経営者石塚健一郎(田宮二郎)は事業欲が旺盛で敷島の乗取りを企てるつわもの。石塚は郡美子が川代の妻と承知の上で誘惑した。石塚は、美人秘書エミ(江波杏子)やバーのマダム洋子(岸田今日子)とも関係している。一方誠造も石塚の情報を得るためエミと関係した。株の買占めに洋子は、何かと手をつくしていた。那美子が誠造の情事を知った直後、エミは何者かによって殺害された。犯人は誠造であるとみなされた。那美子は一度は夫のアリバイ造りに偽証したものの石塚の苦境を知り、夫を裏ぎり石塚のアリバイを証言した。全てに失敗し会社の地位をも失った誠造は、那美子に身体を売って石塚に株の買占めから手をひくよう懇願してくれとたのんだ。意を決した那美は石塚との情事にふけった。石塚は株の代金二百万を、洋子との手切れ金にし、那美子との新しい生活に入ろうとした。が、那美子が洋子の家でみたのは石塚の冷たいなきがらであった。

「女の小箱」より 夫が見た「女の小箱」より 夫が見た
川崎敬三                       田宮二郎

題名:「女の小箱」より 夫が見た
監督:増村保造
企画:塚口一雄、三熊将暉
原作:黒岩重吾
脚本:高岩肇 野上龍雄
撮影:秋野友宏
照明:伊藤幸夫
録音:飛田喜美雄
美術:渡辺竹三郎
編集:中静達治
音楽:山内正
現像:東京現像所
助監督:崎山周
スチール:沓掛恒一
出演:若尾文子、田宮二郎、川崎敬三、小沢栄太郎、 江波杏子、岸田今日子、早川雄三、中条静夫、見明凡太朗、千波丈太郎、町田博子
1964年日本・大映/シネスコサイズ・カラー92分35mmフィルム
女の小箱より「夫が見た」 [DVD]
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。

「女の小箱」より 夫が見た「女の小箱」より 夫が見た
若尾文子                    田宮二郎、岸田今日子