

小川真由美 岡田裕介
今回は石井輝男監督1975年製作「実録三億円事件 時効成立」をピックアップする。
1968年12月10日、昭和を揺るがした三億円事件は、東京都府中市で発生し、未だに真相は闇の中である。本作は “三億円事件”をヒントに架空の犯人像を想定して制作されたが、東映は警察とは別の ”捜査隊” を組織、莫大な資料を集め事件に関わる多くの人物を緻密に描いた意欲作である。犯行現場である府中刑務所裏での撮影は、1975年11月に第六監視塔前で行われたそうだ。
主演の岡田裕介さんは、1970年代には俳優をしていたが、父が岡田茂元東映社長である事もあり、プロデューサーに転向し、2002年に東映社長を経て東映代表取締役グループ会長になっている。
【追記・訃報】
俳優として活躍し、映画プロデューサーとしては多数の映画を送り出してきた東映グループ会長の岡田裕介(おかだ・ゆうすけ、本名剛=つよし)さんが2020年11月18日午後10時58分、急性大動脈解離のため、東京都内の病院で死去した。71歳。京都市出身。通夜・告別式は近親者のみで執り行う。亡くなった岡田会長は1970年、東宝映画「赤頭巾ちゃん気をつけて(森谷司郎監督)」で俳優デビューし、以降テレビドラマ、映画出演を続ける俳優としての顔も持っていた。俳優デビューしたきっかけもスマートな二枚目らしいエピソードが残っている。慶大在学中に京都のクラブで飲んでいるとき、顔が似ている石坂浩二とプロデューサーに間違えられ、スカウトされたという。父親は東映の元会長で名誉会長を務めた岡田茂さん。映画デビューに先駆け、NET(現・テレビ朝日)のテレビドラマ「レモンスカッシュ4対4」で俳優生活に踏み出し、1973年に岡本喜八監督作品に出演。74年には岡本監督からプロデューサーを任され、一方でTBS「グッドバイ・ママ」「Gメン’75」などにも出演。1976年、岡本監督の「吶喊(とっかん)」で主演兼プロデューサーを担った。86年の「火宅の人(深作欣二監督)」では太宰治を演じた。1980年代からは俳優よりプロデューサー業が中心に。吉永小百合主演作を多数手掛け、「天国の駅 HEAVEN STATION(1984年)」、「華の乱(1988年)」、「千年の恋 ひかる源氏物語(2001年)」などのほか、3部作と高い評価を受けた「北の零年(2005年)」、「北のカナリアたち(2012年)」、「北の桜守(2018年)」も送り出し、「北の零年」「北の桜守」は製作総指揮で手腕を発揮した。昨年、東映「麻雀放浪記2020」で出演俳優が麻薬取締法違反で逮捕された際もさまざまな意見が交錯する中、ノーカット公開としたほか、2020年9月、吉永小百合主演の「いのちの停車場(2021年公開予定、成島出監督)」に出演していた伊勢谷友介が大麻取締法違反容疑で逮捕されたが、「作品に罪はない」と撮り直しやカットすることなく、公開する方針を決断するなど、映画人として一徹な面を思わせた。ただ、陣頭指揮を執ってきたこの吉永主演作品の完成を待たずしての急逝となってしまった。
中日スポーツ11月20日(金) 18:29配信


金子信雄 絵沢萠子
【ストリー】
博奕好きで、女にだらしない西原房夫(岡田裕介)は証券会社の運転手をしていたが、会社の金400万円を横領し、競馬につぎ込んでしまった。だが、横領が会社にバレて警察に突き出されるところを、情婦の向田孝子(小川真由美)がダイヤの指輪と土地を売り、金を返済してくれたので、刑務所行きはまぬがれた。その後、二人は同棲生活を送るが、借金に追われる苦しい状態が続いた。1968年7月、多摩農協に再三の脅迫状が舞い込んでいた。送り主は西原である。この脅迫状は警察をあざむくためのカモフラージュで、彼は1968年12月から三億円強奪の準備を始めていた。そんなある日、西原の態度に不審を覚えた孝子は、彼から日本信託銀行国分寺支店から東芝工場に輸送される3億円の強奪計画を聞かされた。月賦屋に追われる生活に嫌気がさしていた孝子は、西原と行動を共にする決心をした。西原は準備資金にするために、金持ちの未亡人・久住みどり(絵沢萠子)を誘惑し、100万円騙し取った。8月12日、西原はトランジスターメガホンを盗んで以来、白バイ警官衣装等の獲得準備をすすめ、ヤマハスポーツ350RI、1966年型カローラ、1968年型カローラ等を、次々に盗み、12月9日、全ての準備を完了した。1968年12月10日。午前6時に、西原と孝子は日野の自宅を出発。9時21分、府中刑務所裏にさしかかった現金輸送車である黒のセドリックを停止させた西原は、車内に爆弾が仕掛けられていると偽りセドリックに乗って逃亡。そして、国分寺・七重の塔跡で待つ、第2のカローラにジュラルミンのトランクを移し、孝子の運転で山梨県大月市にある西原家の墓地へと向った。途中、ラジオで500円札には通しナンバーがひかえてある、との報道で、500円札は全て処分、残金を墓の下に隠した。その後、西原と孝子は金には手をつけず、以前と全く変りない生活を送っていった。一方、警察の捜査網は拡大していくばかりだったが、葛木刑事(金子信雄)は、その経験とカンで不良退職者のリストを地道に洗っていた。その中に、西原の名も上っていた。1975年9月、西原は府中駅前広場で、久住みどりと会い、100万円を返さなければ警察に訴えると脅される。時効成立間近になって動揺した西原は、金を引き出すべく山梨の墓地に向った。そこには西原の態度に気づいた孝子がいた。西原から事情を聞いた孝子は100万円使うなら全部使うのも同じ、と金を掘り出した。時効まであと40日。葛木刑事は、府中競馬場で、西原がイギリスの名馬ペガサスを2億1,000万円を出資して輸入する、という話を耳にした。葛木は西原に目をつけた。400万円横領事件、住居が日野にある……。時効10日前。西原が他人名儀で所有するマンションがガス爆発を起こした。西原を犯人と断定した葛木は、ガス事故の件を利用して、西原を別件逮捕した。取調べ室で、葛木に訊問される西原だが、黙杏権で何も答えない。時効を数日後にひかえている葛木は、西原の家で500円札を焼いた残りが発見されたとか、ペガサスが死んだとか執拗な訊問を行ない、ついに西原は精神的に衰弱し倒れてしまった。しかし、彼は医務室のベッドの中で「黙否権でいけば絶対に助かる」と言った孝子の言葉を反芻していた。そして、12月10日、西原は証拠不充分でついに釈放された……。


田中邦衛 実録三億円事件 時効成立
題名:実録三億円事件 時効成立
監督:石井輝男
企画:太田浩児、坂上順
原作:清水一行「時効成立」
脚本:小野竜之助、石井輝男
撮影:出先哲也
照明:川崎保之丞
録音:広上益弘
美術:藤田博
装置:小早川一
装飾:田島俊英
美粧:住吉久良蔵
美容:石川靖江
衣装:河合啓一
記録:勝原繁子
編集:祖田富美夫
音楽:鏑木創
現像:東映化学
進行主任:東一盛
助監督:福湯通夫
演技事務:山田光男
スチール:遠藤努
出演:小川真由美、岡田裕介、金子信雄、田中邦衛、絵沢萠子、浜田ゆう子、田中筆子、松平純子、中田博久、相馬剛三、滝沢双、、田島義文、近藤宏、河合絃司、山田光一、山下則夫、木村修、土山登士幸、横山繁、亀山達也、岡本八郎、山本緑、宗田千枝子、岡久子、松井紀美江、津森正夫、南廣、沢田浩二、清水照夫
1975年日本・東映東京撮影所/シネスコサイズ・カラー89分
実録三億円事件 時効成立 -DVD-
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実録三億円事件 時効成立 小川真由美、岡田裕介