映画「五番町夕霧楼」



松坂慶子                                              奥田瑛二

今回は山根成之監督1980年製作「五番町夕霧楼」をピックアップする。
本作は、家族を養うために丹後からきた少女とその幼馴染である学生僧との悲恋を描いている。舞台は、1958年の売春防止法施行まで存在していた京都の五番町遊廓だ。ベタな展開の物語で、少々退屈するが、俳優陣の上質な芝居で成立している作品である。金閣寺炎上というキーワードで言うならば、市川崑監督が1958年に製作した「炎上」の方が印象に残る。


浜木綿子                         長門裕之

佐分利信                        奈良岡朋子

【ストリー】
与謝半島の突端にある樽泊で木樵をしている片桐三左衛門(佐野浅夫)の長女、夕子(松坂慶子)は肺病の母と三人の妹をかかえ、家族のために京都西陣の五番町夕霧楼で働くことになった。一年の歳月が流れ、西陣帯の織元・甚造(長門裕之)との水揚げも済み、夕子は五番町で一、二を争う売れっ妓になっていた。ある日、夕霧楼に夕子の幼友達で、京都で修業を積む青年僧正順(奥田瑛二)がやってきた。その日以来二人の逢瀬は続く。貧乏修業僧の正順にかわって、夕子が費用を払っていた。正順は夕子を訪ねると、歌を唄い、話をして、彼女に指一本触れずに帰っていく。しかし、その逢瀬にも終りがやってきた。夕子を妾にしようとしていた甚造が、正順が修業している鳳閣寺の慈州(佐分利信)に廓通い告げたのだ。夕子はその頃から体の不調を訴え、肺病を患い入院してしまう。一方、さい銭をもって豪遊する寺の長老たちの姿を見て、立派な僧になることを念じ続けてきた正順は失望していた。そして、慈州とぶつかり、寺を飛び出した。夕霧楼で、夕子の入院を聞いて正順は病院へ急いだ。寺以外に生きる場所のない正順の思いつめた姿に、夕子はただならぬものを感じた。正順は「復讐してやる!」と言うと夕子を抱いた。怒りと悲しみをぶつけるかのように夕子を抱く。正順に応えるかのように夕子もがむしゃらにしがみつく。激しく切なく燃える最初で最後の愛。鳳閣寺が炎上したのはその晩であった。怒りに震える手で寺に火をつけた正順は、仏像に体をくくりつけ夕子の名を叫びながら焼死していった。新聞で事件を知った夕子は、与謝へ帰り、正順を追って自ら生命を絶つのだった……


風吹ジュン                    根岸季衣、松坂慶子

佐野浅夫                         横内正

題名:五番町夕霧楼
監督:山根成之
製作:樋口清
原作:水上勉
脚本:中島丈博
撮影:坂本典隆
照明:八亀実
録音:平松時夫
調音:小尾幸魚
美術:横山豊
装置:森勇
装飾:剣持政司
衣裳:松竹衣装
考証:小泉清子(衣裳)
編集:石井巌
音楽:岸田智史、田辺信一 主題歌:岸田智史「五番町夕霧楼」
現像:東京現像所
製作補佐:中川完治
製作主任:峰順一
製作進行:中沢宣明、水島誉志次
助監督:長尾啓司
スチール:長谷川宗平
出演:松坂慶子、奥田瑛二、浜木綿子、長門裕之、奈良岡朋子、加藤嘉、佐分利信、佐野浅夫、横内正、風吹ジュン、根岸季衣、水島美奈子、宇佐美恵子、中島葵、中原早苗、織本順吉、山谷初男、林ゆたか、清水石あけみ、佐々木梨里、佐久田修
1980年日本・松竹/ビスタサイズ・カラー129分35mmフィルム
五番町夕霧楼 -DVD-
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。


五番町夕霧楼

映画「秋日和」


原節子                      佐分利信

今回は小津安二郎監督1960年製作「秋日和」をピックアップする。
本作は夫を亡くした母と娘のお互いを思いやる気持ちを中心に、亡夫の友人たちが起こす騒動を安定したローアングルと50mmレンズ1本で描いている。また小津作品の撮影チーフ助手(色彩計測)を務めた川又昂氏の監修による4Kスキャニング・デジタル修復を実施したHDマスターが2013年11月23日より東京神田の神保町シアター「生誕110年・没後50年記念 映画監督 小津安二郎」にて上映された。

作品リスト


司葉子                     岡田茉莉子

【ストリー】
亡友三輪の七回忌、末亡への秋子(原節子)は相変らず美しかった。娘のアヤ子(司葉子)も美しく育ちすでに婚期を迎えていた。旧友たち、間官(佐分利信)、田口(中村伸郎)、平山(北竜二)はアヤ子にいいお婿さんを探そうと、ついお節介心を起した。が、アヤ子がまだ結婚する気がないというので、話は立ち消えた。秋子は友達の経営する服飾学院の仕事を手伝い、アヤ子は商事会社に勤めて、親子二人郊外のアパートにつつましく暮している。たまの休みに街に出て一緒に過すのが、何よりのたのしみだった。母も娘も、娘の結婚はまだまだ先のことのように思えた。或る日母の使いで間宮を会社に訪ねたアヤ子は、間宮の部下の後藤(佐田啓二)に紹介された。後藤はアヤ子の会社に勤める杉山(渡辺文雄)と同窓だった。土曜日の午後、間宮は喫茶店で、杉山や後藤と一緒にいるアヤ子を見た。後藤とアヤ子の間に恋愛が生れたもの、と間宮は思った。ゴルフ場で田口や平山に話すとアヤ子は母親への思いやりで結婚出来ない、という結論になった。秋子の再婚ということになった。候補者はやもめの平山だった。息子まで極力賛成されてみると、平山もまんざらではない。秋子を訪ねた田口は、亡夫への追慕の情たちがたい秋子にとっても再婚の話はもち出せない。アヤ子を呼んで説得したところ、アヤ子は母は父の親友と再婚するものと早合点して、母と正面衝突した。アヤ子は親友の百合子に相談した。百合子は田口、平山、間宮を訪ねると、その独断を責め立てたので、三人もいささか降参し、アヤ子は、一時は誤解したものの、母の知らない話だと分ってみれば、和解も早い。これから先、長く一人で暮す母を思って、二人は休暇をとって、思い出の旅に出た。伊香保では三輪の兄の周吉(笠智衆)が経営する旅館があった。周吉は秋子の再婚にも、アヤ子の結婚にも賛成だった。その旅の夜、秋子は娘に自分がこれから先も亡き夫とともに生きることを語った。アヤ子と後藤の結婚式は吉日を選んで挙げられた。間宮も、田口も、平山も、ほっとした。ひとりアパートに帰った秋子は、その朝まで、そこにいたアヤ子を思うと、さすがにさびしかった。


岡田茉莉子、渡辺文雄

題名:秋日和
監督:小津安二郎
製作:山内静夫
原作:里見とん
脚本:野田高梧、小津安二郎
撮影:厚田雄春
照明:石渡健蔵
録音:妹尾芳三郎
美術:浜田辰雄
編集:浜村義康
音楽:斎藤高順
フィルム:アグファカラー
現像:東京現像所
色彩計測:老川元薫
デジタル修復監修:川又昂
出演:原節子、司葉子、佐分利信、岡田茉莉子、佐田啓二、桑野みゆき、三上真一郎、笠智衆、中村伸郎、三宅邦子、岩下志麻、十朱久雄、渡辺文雄、北竜二
1960年日本・松竹/スタンダードサイズ・カラー128分35mmフィルム
秋日和 -DVD-
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。


笠智衆                    佐田啓二、司葉子

映画「日本の黒幕」

日本の黒幕
松尾嘉代
日本の黒幕日本の黒幕
佐分利信

今回は降旗康男監督1979年製作「日本の黒幕(フィクサー)」をピックアップする。
本作は、1976年のロッキード事件をヒントに、田中角栄と児玉誉士夫をモデルとして日本の右翼組織と政財界の癒着を描いたものだ。1977年から1978年にかけて”日本の首領シリーズ”として、三作品が製作された。当初は大島渚監督の起用で進行していたが、実現しなかったのは、1979年の10月末の公開が先に決まっていて取り掛かりが遅く、大作の割りに時間がなかったのが原因だそうだ。

【追記・訃報】
映画監督、降旗康男さんが2019年5月20日午前9時44分、肺炎のため亡くなった。84歳だった。26日、東映が発表した。通夜、告別式は、生前の故人の遺志により近親者で密葬として執り行った。最後の監督作品は岡田准一主演の「追憶」(2017年5月公開)。1957年、東京大学文学部フランス文学部卒業後、東映に入社。1966年、「非行少女ヨーコ」で監督デビュー。菅原文太主演「現代やくざ」シリーズや高倉さん主演「網走番外地」シリーズや「鉄道員(ぽっぽや)」「駅 STATION」「あ・うん」などを手がけ、高倉健さんとの名コンビで数多くの作品を輩出した。1974年に東映を退社し、フリーに。2014年11月に83歳で亡くなった高倉さんとは数多くの作品でコンビを組んだ盟友。降旗監督の歴史は日本映画の歴史そのものだった。
5/26:18:17 配信 デイリースポーツ

日本の黒幕日本の黒幕
狩場勉                     田村正和、高橋悦史

【ストリー】
平山総裁は航空機売り込みに絡み、外為法違反などで東京地検と国税局の合同家宅捜査を受けていた。また日本の黒幕とも影の総理とも言われている山岡邦盟(佐分利信)も同じ容疑で捜査を受け、山岡邸の周囲は様々な人々でごったがえしていた。その騒ぎに紛れ、一人の少年(狩場勉)が邸内に忍び込み、山岡めがけて短刀を突きつけた。だが、少年の不自由な足がもつれ、書生の今泉(田村正和)らに取り押さえられてしまう。山岡はこの少年を、一光と名付け、手元に置いた。数日後、大和物産常務取締役の佐竹が本社屋上から飛び降り自殺をした。佐竹は、航空機売り込みのため、裏金を山岡を通じて平山に渡したとの疑惑を持たれており、その責任を取ったかのように思われた。その頃、大和物産副社長の朝倉は関西協進連合と組んで、山岡、平山の追い落としを謀議していた。書生の今泉と山岡の娘、雅子(松尾嘉代)の二人は夫婦同様の関係だった。山岡は二人が異母姉弟であることを隠し、自らの血を継承することを望んでいた。関西協進会連合の小河内、伊藤前首相、朝倉が密談を交した夜、朝倉のボディ・ガードが山岡の影の軍団、青山クラブの者に狙撃され、そして、翌朝、朝倉も殺された。それは、影のフィクサー同士の決戦開始を告げることとなった。地検の捜査は進み、平山総裁辞職が決まった。そして、平山は伊藤、小河内と手を組み、後任の総裁を決めていた。山岡は自分が作った総理大臣、平山に裏切られた。平山を葬り去ることは手易い。だが山岡は何も語らず、ある決意を持って、国会証人尋問に出席を表明する。翌朝、一光の部屋で、今泉と姉弟であることを知った雅子が死んでいた。今泉は雅子を抱きしめ、何事か決意したように窓の外を見つめていた。
証人尋問に出発する山岡めがけて、小河内の手下が拳銃を向けた。今泉が体で受け止め、山岡を守る。今泉の死体を残して、山岡の車はスタートした。一方、一光は短刀を抱え、街をさまよっていた。平山が遂に、収賄罪で逮捕された。平山が家を出ると、待ちかまえていた一光は、白刃を平山の腹に突き刺した……。

日本の黒幕日本の黒幕
松尾嘉代

題名:日本の黒幕(フィクサー)
監督:降旗康男
企画:日下部五朗、本田達男
脚本:高田宏治
撮影:中島徹
照明:金子凱美
録音:溝口正義
美術:井川徳道
記録:石田照
編集:市田勇
音楽:鏑木創
フィルム:富士フィルム
現像:東映化学
製作主任:菅田浩
助監督:土橋亨
スチール:中山健司
出演:佐分利信、松尾嘉代、狩場勉、田村正和、江波杏子、成田三樹夫、高橋悦史、田中邦衛、梅宮辰夫、中尾彬、尾藤イサオ、寺田農、中谷一郎、有島一郎、島田正吾
1979年日本・東映/シネスコサイズ・カラー130分35mmフィルム
日本の黒幕(フィクサー)【DVD】
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。

日本の黒幕日本の黒幕
江波杏子                      成田三樹夫
日本の黒幕日本の黒幕
田中邦衛                      中尾彬
日本の黒幕日本の黒幕
尾藤イサオ                   田村正和、松尾嘉代
日本の黒幕日本の黒幕
佐分利信

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