映画「無宿 (やどなし)」



高倉健                        勝新太郎

今回は斉藤耕一監督1974年製作「無宿 (やどなし)」をピックアップする。
本作は刑務所で知り合った性格の対照的な二人の男が、対立しながらも奇妙な友情に結ばれ、足抜けさせた女郎とともに海に沈んでいる大金を探しだそうとする冒険を描いたものだ。
当時の撮影について2018年3月12日に発刊された梶芽衣子さんの著書「真実」によると……..。

映画の撮影は丹後半島にある日本海に面した間人(たいざ)で行われたのですが、「寺内貫太郎一家」と時期が重なっていましたので、私たちは東京と間人とを何度も往復し、向田邦子さんの脚本があがらずに、ヒヤヒヤすることもありました。
翌日に「無宿」の撮影を控えている時は少しでも早い新幹線に乗りたいのが心情です。どんなに撮影が押しても最終には乗れるだろうと思っていても結局はかなわず、翌日の始発に間に合うかどうか、などということもありました。ですからそんな時は宿で休む時間もなくそのまま現場へ直行しなければなりませんでした。
間人へは一か月近く通っていたのですが、週に四日はTBSでドラマの収録があるので私は二~三日しかいられません。ですからそのスケジュールに合わせて私の出演シーンを集中的に撮っていくことになります。現場に入っていつもまず目にするのは勝さんと健さんが斎藤監督とディスカッションしている姿でした。
せりふの多い映画ではありませんから、それだけにそれぞれがどう演じ監督がどう撮るかによって印象はさまざまに変わります。いつもにも増してお互いの意見交換を重要視していらしたのもよくわかります。それが終わらないと撮影に入れませんから、私はただただ待つしかありません。討論は一時間以上続くということもありました。
勝さんは夢中になるとどんどんアイディアが湧いてくる方で、本番のカメラが回っている時でも突然それを実践することがありました。玄造とサキエがうな丼を食べているシーンで勝さんは「もっとガツガツ食えよ」と言っていますが、あのセリフは台本にはないものでした。勝さんはご自身のことだけでなく私の芝居を見て「もうちょっとこういうふうにやってみな」とアドバイスしてくださることもありました。
「真実」梶芽衣子 著 文藝春秋刊より


梶芽衣子                       安藤昇 

【ストリー】
昭和12年夏、粋な着流しの穴吹錠吉(高倉健)と、白い麻の背広に力ンカン帽の駒形玄造(勝新太郎)が出所した。駒玄は坂東梅之丞率いるドサ廻りの芝居小屋に舞い戻った。錠吉の方は、兄費分の女房ユキノを女郎屋へ訪ねるが、既にユキノは死んでいた。女郎のサキエ(梶芽衣子)は、ユキノの死因は自殺で、自分も同じ道を巡るのは嫌だ、足抜けさせて欲しい、と錠吉に哀願する。丁度、遊びに来ていた駒玄の助けを貸りて、錠吉はサキエを足抜きさせてやった。しかし、人混みで錠吉を見失ってしまったサキエは、梅之丞一座にいる駒玄と出会った。その時駒玄は、サキエから、錠吉が元潜水夫だった事を聞き、自分の「計画」に錠吉を引き込む決意をした。駒玄とサキエは兄貴分の仇・人斬り仙蔵(安藤昇)を狙っている錠吉を捜し廻った。そして、とある宿屋で錠吉を見つけた駒玄は、錠吉に、山陰沖に沈んでいるバルチック艦隊の軍用金引き上げの話を持ちかけるが、錠吉は無視し、再び姿を消した。サキエを追って来た玉井組に追われた駒玄とサキエは、とある賭場で錠吉が捜し求めている仙蔵と会った。そこへ錠吉もやって来た。駒玄が止めるのを振り切った錠吉は、仙蔵と対決、兄貴分の仇を討った。だが仙蔵は死ぬ間際、兄貴分を殺せ、と命じたのは親分の大場(大滝秀治)である事を錠吉に告げた。そして、錠吉はまたもや駒玄とサキエの前から姿を消した。錠吉の事を諦めた駒玄は、サキエとともに山陰の海へ行き、駒玄の父の使用人だった為造(殿山泰司)の家へ巡り着いた。目指す海域は軍の立入禁止区域となっていたが、駒玄は為造から舟を買い、サキエに呼吸ポンプをこがせて、自ら潜って金を探し廻った。そんな時、大場親分を殺し、追手から逃れて来た錠吉が、二人のいる海岸へやって来た。そして、錠吉も駒玄と交替で海に潜ることになった。数日後、沈んでいる船の残骸を発見、大金はもうすぐ目の前とばかり大喜びする。しかし、そこへ錠吉を追っている大場の子分の辰平(中谷一郎)たちが現われた。辰平たちと対決しようとする錠吉を、駒玄は持っていた舟の残骸で殴り倒し、「ここは立入禁止区域だ!」と叫びながら彼らに近づくが、いきなり拳銃で射たれてしまった。気が付いた錠吉も駒玄に近づこうとした時、弾丸が二、三発命中、その場に倒れた。二人が死ぬのを見ていたサキエは、愕然として、砂浜に膝を落とすのだった。


石橋蓮司                   梶芽衣子、高倉健、勝新太郎

題名:無宿 (やどなし)
監督:斉藤耕一
製作:勝新太郎、西岡弘善、真田正典
脚本:中島丈博、蘇武道夫
撮影:坂本典隆
照明:中岡源権
録音:大角正夫
音効:倉嶋暢
美術:太田誠一
装置:渡辺善太郎
装飾:草川啓
背景:森瀬茂男
衣装:伊藤なつ
美粧:今義巳
結髪:石井エミ
技斗:楠本栄一
記録:山本礼子
編集:谷口登司夫
音楽:青山八郎
製作主任:小山孝和
助監督:市古聖智
色彩計測:渡辺貢
宣伝:大門正雄
現像:東洋現像所
スチール:大谷栄一
出演:勝新太郎、高倉健、梶芽衣子、安藤昇、藤間紫、山城新伍、中谷一郎、大滝秀治、荒木道子、殿山泰司、三上真一郎、今井健二、神津善行、石橋蓮司
1974年日本・勝プロダクション/シネスコサイズ・カラー97分35mmフィルム
無宿 (やどなし) -DVD-
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。


梶芽衣子、勝新太郎                 無宿 (やどなし)

映画「泥棒番付」

泥棒番付泥棒番付
勝新太郎                      小林哲子

今回は池広一夫監督1966年製作「泥棒番付」をピックアップする。
本作は司馬遼太郎氏の「盗賊と間者」を原作に新撰組の隊士が大泥棒の悪党だったという仮説で展開する勝新太郎さん主演の時代劇だ。座頭市や兵隊やくざのスタッフが関わっているが、主人公のキャラクターは当然ながら演じ分けている。オープンセットの贅沢な使い方が凄いと思った、

泥棒番付泥棒番付
内田朝雄                      小林哲子

【ストリー】
俺は泥棒番付東正横綱の日本一の大泥棒とうそぶいていた佐渡八(勝新太郎)は、左手の人差指が途中からないにもかかわらず、幕末の動乱でごったがえす大阪界隈を荒しまわり大泥棒の名をほしいままにしていた。だがある日、新選組の池田屋騒動にぶつかり、残党狩りの非常警戒にひっかかった。鬼与力と異名をとる田中松次郎(内田朝雄)に捕えられ、油をしぼられた挙句、田中の恩情で解き放された佐渡八は、田中から預けられたこそ泥の清七(青山良彦)を預り、京都でうどん屋を開いて正業についた。佐渡八が最も尊敬する田中の十手から抜いた赤糸が彼の神様であった。一夜、近藤勇(五味龍太郎)に会った佐渡八は、その度胸を見込まれ、壬生屯所前で屋台を出すことを許された。ある日、田中から言いつかった大阪娘お慶(小林哲子)が、佐渡八と清七の面倒を見るためやって来た。並いる新選組隊士の中にあり、乱暴で尊大な五大という男は、いつも右手に弓を引く時のユガケをかけ、異様な存在であった。清七が風邪をひいたある日。佐渡八は隊士の一人から清七あての封じ文をことづかった。不審に思う佐渡八に、清七は封書を一読するや顔色を変えた。清七は実は長州藩士で、勤皇の志深い田中と連絡をとり、新選組の動静を探っていたのだった。手紙は大阪の田中らの秘密の会合を新選組が襲うとの知らせであった。お慶も田中の養女であったのだ。二人の素姓を知った佐渡八は、田中の危急を聞き、病床の清七に代わって大阪にとび、泥棒仲間の応援で田中の行方を探した。後を追ったお慶は、倒幕に情熱をかける清七よりも人間味あふれた佐渡八に強よく魅かれた。一方新選組隊員五大(内藤武敏)は、実は島破りの悪党で、長崎のオランダ倉庫を被った時、人差指をひきちぎられ、それを隠すためユガケをはめていたのだった。鬼与力田中の目がそれをのがすはずはなく、悪らつな五大は逆に田中の秘密を探り、隊を動かして襲ったのだ。田中らが倒幕資金に用意した金銀を爆薬を使って奪い、田中を殺害した五大に、佐渡八は烈火の如く怒った。佐渡八は左手の人差指のないことで、昔ぬれ衣を着せられ、長崎の町を追われた経験があるのだ。恩人の仇と復讐、佐渡八は泥棒番付けの腕をふるって、壬生屯所に佐渡八にもぐりこみ、ふくみ針で五大を殺すと、金銀を奪って、逃げるのだった。

泥棒番付泥棒番付
藤岡琢也                     勝新太郎、小林哲子

題名:泥棒番付
監督:池広一夫
企画:奥田久司
原作:司馬遼太郎「盗賊と間者」
脚本:伊藤大輔
撮影:武田千吉郎
照明:加藤博也
録音:林土太郎
美術:西岡善信
技斗:宮内昌平
編集:山田弘
音楽:鏑木創
現像:東洋現像所
製作主任:村井明彦
助監督:太田昭和
スチール:大谷栄一
出演:勝新太郎、青山良彦、小林哲子、内藤武敏、内田朝雄、藤岡琢也、遠藤辰雄、戸浦六宏、五味龍太郎
1966年日本・大映京都/シネスコサイズ・カラー82分35mmフィルム
泥棒番付 -DVD-
2017年9月現在、DVDレンタルはありません。

泥棒番付泥棒番付
勝新太郎

映画「帝都物語」

帝都物語
嶋田久作
帝都物語帝都物語
勝新太郎                      石田純一

今回は実相寺昭雄監督1988年製作「帝都物語」をピックアップする。
本作は90年代CG全盛前のバブル絶頂期に、製作費18億円を投入した大作で、実相寺監督とコダイを中心とした撮影技術陣が遺憾なく実力を発揮した作品であり、当時コダイ・グループの末席にいた私にとって尊敬する先輩たちの集大成=実相寺ワールドを見せて戴いたという思いがある。本作は富士フィルムを使用し、レンズはBNCマウントのCineoVisionで撮影された事はエンドタイトルからも分かる。スタッフも知人が多く参加しているので語り尽くせないが、本作クランクアップ後に油谷監督、特技監督の大木淳吉氏と特撮怪獣映画(劇場非公開)の撮影を担当させて戴いたのを思い出す。

※CineoVisionについては「地獄の黙示録」でエピソードがあります。
※コダイ・グループは中堀正夫氏を中心に撮影部・照明部の事務所です。(現在は代々木上原)
[追記・訃報]
本作で特殊美術を担当された池谷仙克氏が2016年10月25日(享年76歳)に亡くなられた。
撮影現場では勿論の事、株式会社コダイ代表でもある事から私が事務所を間借りした時にお世話になった。また本作に出演された俳優の平幹二朗氏は2016年10月23日(享年82歳)に亡くなられた。謹んでご冥福をお祈りします。

帝都物語
原田美枝子
帝都物語帝都物語
平幹二朗                        西村晃

【ストリー】
明治45年。実業家・渋沢栄一(勝新太郎)は土御門家の陰陽師・平井保昌(平幹二朗)や物理学者・寺田寅彦(寺泉憲)らに協力を求め、ある計画を進めていた。それは「東京改造計画」といい、帝都・東京を軍事的にだけでなく霊的にも守護しようとするものだった。しかし、謎の魔人・加藤保憲(嶋田久作)がその計画の前に立ちふさがっていた。加藤は1000年前関東に独立国を築こうとして失敗し、謀反人として討伐された平将門の霊を呼び醒まし、東京を壊滅させようと企んでいた。そして加藤は将門の末裔・辰宮由佳理(姿晴香)を霊媒として選んだ。平井や文豪・幸田露伴(高橋幸治)の努力により加藤の企みは潰えたかに見えたが、由佳里の胎内には恐るべきサイキック・パワーを秘めた生命が宿っていた。加藤との闘いに敗れた平井は大正12年9月1日を帝都壊滅の日と予言し、明治天皇崩御の日、自刃する。大正12年9月1日。大地震は起こったが幸田は死闘の末、加藤に傷を負わせた。結局、将門の怨霊は目醒めず、帝都破壊は不完全に終わった。そして東京は渋沢らの手により急速に復興していった。昭和2年。日本初の地下鉄道が開通しようとしていたが、加藤の放った魔物が妨害していた。寺田はその解決策として西村真琴(西村晃)が作った日本で最初のロボット“学天則”を利用。加藤は力を回復し再び帝都破壊を企むが、新たな宿敵が現われた。将門の命を受け、由佳里の兄・辰宮洋一郎(石田純一)へ嫁いで来た目方恵子(原田美枝子)である。加藤は由佳里に産ませた雪子(山本清美)を銀座の雑踏で誘拐し、将門の霊を呼び戻そうとする。しかし、実は雪子は加藤の子ではなく洋一郎と由佳里の間に産まれた子だった。洋一郎は自らの霊力で将門の霊を封じ、恵子はサイキック・パワーで加藤と死闘を繰りひろげた。春。銀座では“帝都復興式典”が開かれ、賑わっている。花見客のあふれる神田明神では易者姿の泉鏡花(坂東玉三郎)が加藤に似た軍服姿の男を見つけドキッとするが、人ごみにまぎれて行った。

帝都物語

上の写真は、昭島市の昭和の森で総工費3億円と45日間を費やして、銀座4丁目交差点から新橋方面の街並みを150メートル3,000坪を再現し、銀座通りを走る市電も2,000万円を使って製造して走行させ、延べ3,000人のエキストラを動かしたそうだ。

帝都物語帝都物語
佐野史郎                         宍戸錠
帝都物語
帝都物語
帝都物語帝都物語
坂東玉三郎                       桂三枝

題名:帝都物語
監督:実相寺昭雄
企画:村井美登、宇田川和雅、花田良知
製作:堤康二
原作:荒俣宏
脚本:林海象
撮影:中堀正夫
照明:牛場賢二
特機:石井健、秋山勲
録音:瀬川徹夫
美術監督:木村威夫
特殊美術:池谷仙克
美術:内田欣哉
特技監督:大木淳吉
アニメーター:真賀里文子
特殊メイク:原口智生
衣装:川崎健二
装飾:安田彰一
記録:宍倉徳子
編集:浦岡敬一、ネガ編集:南とめ
音楽:石井眞木
製作総指揮:一瀬隆重
アソシエイト・プロデューサー:和田康作
プロデューサー:飯泉征吉
ビジュアルプロデューサー:久里耕介
コンセプチャル・デザイナー:H・R・ギーガー
特美デザイナー:大澤哲三
イメージ・デザイン:椋尾篁
衣裳デザイン:合田瀧秀
助監督:服部光則、油谷誠至
セカンドユニット・撮影:宮島正弘、小林裕
セカンドユニット・照明:熊谷茂
特殊効果:菅野幸光
視覚効果:中野稔
オプチカル:宮重道久
オプチカル合成:デン・フィルムエフェクト
現像:イマジカ
撮影機材:シネオカメラ
照明機材:三和照明
マネージメント:太田啓子(コダイ・グループ)
製作協力:ウイズ、大王製紙 企画協力:西洋環境開発
スチール:原田大三郎
出演:勝新太郎、嶋田久作、原田美枝子、石田純一、平幹二朗、坂東玉三郎、姿晴香、佐野史郎、いとうせいこう、寺田農、峰岸徹、中村嘉葎雄、宍戸錠、井川比佐志、島田正吾、大滝秀治、西村晃、桂三枝、寺泉憲、高橋幸治、山本清美
1988年日本・EXE/ビスタサイズ・カラー135分35mmフィルム
実相寺昭雄監督公式サイト
帝都物語-DVD-
2017年1月現在、DVDレンタルはありません。

帝都物語帝都物語
いとうせいこう                    姿晴香
帝都物語帝都物語
帝都物語
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