映画「夏の妹」


「夏の妹」栗田ひろみ

栗田ひろみ、石橋正次                 りりィ

今回は大島渚監督1972年製作「夏の妹」をピックアップする。
私は、1972年8月にATGで公開された本作を新宿ATGで観た。大島渚監督が、自らの制作会社である創造社で撮った最後の作品である。私は「これって大島渚監督作品?」って驚きで、3回も劇場に足を運んだ。後にも先にも3回も封切り映画を入場料を払って観たのは、本作をおいて他にない。
本作は、1972年にアメリカから返還された直後の沖縄県を舞台に、オール沖縄ロケーションで16mmで撮影され、完成原版は、35mmにブローアップしている。

本土復帰に沸きかえる沖縄を舞台に、戦中、戦後を通じて日本と沖縄を引き裂いた愛と憎しみを、沖縄の美しい自然を背景に、少女の心情を通して描いている。
主演は本作がデビュー作の栗田ひろみさん、シンガーソングライターの “りりィ”さんは、本作出演と共に歌手デビューした年だったが、数々の作品を残して2016年11月11日に惜しくも亡くなっている。

作品リスト

「ONION」りりィ

夏の妹

「夏の妹」栗田ひろみ

殿山泰司                          小松方正

佐藤慶                           戸浦六宏 

小山明子                      殿山泰司、栗田ひろみ。石橋正次

【ストリー】
夏休みも近い日、素直子(栗田ひろみ)の許に一通の手紙が届いた。大村鶴男(石橋正次)という沖縄の青年からで、彼の父は、彼が小さい時死んだものだと思っていたが、最近、母から素直子の父菊地浩佑(小松方正)が鶴男の父らしいと知らされたというのである。そして夏休みには沖縄へ遊びに来てほしい、と結んであった。夏休みが来た。素直子は彼女のピアノの家庭教師で父が再婚しようとしている若い女性、小藤田桃子(りりィ)に鶴男のことを打ちあけ、鶴男を探しに二人で沖縄へ旅立つ。姉妹のように仲むつまじい女同志の船旅。船中で二人は、桜田拓三(殿山泰司)という老人と知り合った。彼は戦前、戦中の沖縄への熱い憧憬と深い贖罪の念を抱き、誰か自分を殺してくれる相手を探しに沖縄へ行く、と言うのであった。やがて船は那覇へ着いた。そこで素直子は沖縄語を観光客に教えて金を稼いだり、ギターで流す一人の若い男と知り合った。彼は、実は鶴男なのだが勿論お互いに気付かない。二人は親しさを増していった。兄妹のように、恋人同志のように。一方、桃子はホテルに届けられた鶴男から素直子宛の手紙を受取り、素直子に黙って、ひそかに鶴男に会った。鶴男は桃子を素直子と思い、また桃子は、鶴男に惹かれていき、人違いであることを告白出来なくなる。浩佑が沖縄にやって来て国吉(佐藤慶)に会い、又鶴男の母ツル(小山明子)とも再会していた。その席に照屋林徳(戸浦六宏)が現れた。彼は名人といわれる琉歌の老歌手で、沖縄戦において体験した日本軍の残酷行為に深い怨みを抱き復讐の一念に燃えている男である。桜田拓三も同席した。殺されたい男、殺したい男桜田と照屋が対峙する。日本と沖縄の戦中、戦後史を貫く彼らの愛と憎しみと怨念が激しく葛藤する。桃子、素直子も加わり、一同に会した。そこで素直子はツルに問出すもはぐらかされる。翌日桃子は鶴男と会い二人は愛を交わす。その現場を素直子が物陰から目撃していた。桃子のバカヤロー、ギターのバカヤロー、鶴男を探しもしないであんなことを……素直子の瞳には大粒の涙が光っていた。砂浜で浩佑たちが歓談していた。そこに素直子が現われる。遅れて現われた鶴男と桃子。そこで素直子はギターの青年こそが鶴男だと知らされる。昔話が始まる。浩佑は大学時代、親友の国吉から妹だといってツルを紹介され、国吉が学生運動で入獄中にツルを犯した。国吉は出獄してツルからそのことを聞き、彼もまたツルを犯した。男二人の間に座って、今は見事な女丈夫となったツルはもう心揺らぐことなく静かに微笑むのだった。翌日、浩佑と桃子がひと足先に帰京。素直子も帰京すべく鶴男に別れを告げる。船中から素直子は一隻の小舟に乗っている桜田と照屋を見た。「あいつらまた魚を釣ってお酒を飲むつもりだ」とあきれた素直子は立ち去る。小舟の上では二人が取っ組み合いを始め、そして桜田が照屋を海に投げ落とすのだった…。


夏の妹

栗田ひろみ

題名:夏の妹
監督:大島渚
製作:葛井欣士郎、大島瑛子
脚本:田村孟、佐々木守、大島渚
撮影:吉岡康弘
美術:戸田重昌
録音:安田哲男
録音協力:西崎英雄
音効:本間明
記録:山口友理
編集:浦岡敬一
音楽:武満徹
制作担当:上野尭
助監督:小笠原清、佐藤静夫
撮影助手:倉田文彦、山口誠
出演:栗田ひろみ、石橋正次、りりィ、小松方正、殿山泰司、戸浦六宏、小山明子、佐藤慶
1972年日本・創造社+日本ATG/スタンダードサイズ・カラー96分16mmフィルム
夏の妹 -DVD-
2018年11月現在、DVDレンタルはありません。


「夏の妹」石橋正次、栗田ひろみ

栗田ひろみ、石橋正次                  戸浦六宏、殿山泰司

栗田ひろみ                              夏の妹

映画「飼育」


三國連太郎                          小山明子

今回は大島渚監督1961年製作「飼育」をピックアップする。
本作は、大島渚監督が松竹を退社し初めて町場で制作した作品である。
本作公開の3か月前に倒産した新東宝を分社化して同年9月1日に設立され、わずか6本を配給して活動を停止した大宝株式会社の設立第3作であった。ジョン・カサヴェテス監督が1959年に制作したデビュー作「アメリカの影」に出演したヒュー・ハードが、墜落したB29の搭乗員を演じている。

作品リスト


ヒュー・ハード                          三原葉子

【ストリー】
昭和20の初夏。或る山村へ米軍の飛行機が落ちた。百姓達の山狩りで黒人兵(ヒュー・ハード)が捕まった。黒人兵は両足首に猪罠の鉄鎖をはめられ、地主鷹野一正(三國連太郎)の穴倉へ閉じこめられた。県庁の指令があるまで百姓達は、輪番制で黒人兵を飼うことになった。こんな頃に、鷹野の姪の幹子(大島瑛子)がこの村に疎開して来た。地主の一正は、豚のように貪欲で好色な男だ。息子の嫁の久子(中村雅子)とも関係を結び、疎開もんの弘子(小山明子)にも野心を持っていた。村の少年達はクロンボが珍らしくてしょうがない。いつも倉にやって来ては黒人兵をみつめている。少年達と黒人兵はいつしか親しさを持つようになっていった。そこへ、余一(加藤嘉)の息子次郎(石堂淑朗)が召集令をうけて村に帰って来た。出征祝いの酒盛りの夜、次郎は暴力で幹子(大島瑛子)を犯した。そして、翌日次郎は逃亡した。兄が非国民となって、弟の八郎(入住寿男)は怒った。幹子のせいだ。幹子を責めた八郎は、皆に取押さえられて鷹野家の松に吊された。クロンボが八郎を慰めるように歌をうたった。八郎はクロンボも憎かった。こいつのために村中が狂ってしまったのだ。縄を切った八郎は、ナタを持ってクロンボに飛びかかった。その時、そばにいた桃子(上原以津子)は突き飛ばされて崖下に転落、そして死んだ。伝松(山茶花究)の息子が戦死したという公報が入った。みんなあのクロンボが厄病神なのだ。村の総意は、クロンボをぶち殺してしまえということになった。そうと知った少年達は、クロンボを逃がそうと図った。だが、飛びこんで来た一正が、ナタでクロンボを殺してしまった。それから数日して、書記(戸浦六宏)が慌ててみんなに発表した。戦争が終ったのだ。みんなはあおくなった。もし進駐軍に知れたら。一正の発案でなにも起らなかったことにした。みんななにも見ないしなにもしなかったのだ。そのかための酒盛りの晩、次郎がかえって来た。もし発かくしたら、次郎が犯人ということで……。ところが次郎は書記と争ってあやまって死んでしまった。その火葬の火をバックに秋祭りの相談が行われた。何ごともなかったように。それはあたかも戦争そのものがなかったようでさえあった。その炎をじっとみつめている八郎の目には無限の悲しみと、怒りがこみあげていた。……大人たちは忘れ去ったとしても、この少年には戦争は決して消し去ることのできない心のキズであった。


中村雅子                                三國連太郎

題名:飼育
監督:大島渚
製作:田島三郎、中島正幸
原作:大江健三郎「飼育」
脚本:田村孟
撮影:舎川芳次
照明:菱沼誉吉
録音:岡崎三千雄
音効:角田陽次郎
美術:平田逸郎
振付:西野晧三
編集:宮森みゆり
音楽:真鍋理一郎
製作主任:岸田秀男
助監督:柳田博美
製作協力:佐野博
脚本協力:松本俊夫、石堂淑朗、東松照明
三頸獅子舞指導:別所神社子連中
デザイン:粟津潔
スチール:武智俊郎
出演:三國連太郎、小山明子、三原葉子、ヒュー・ハード、中村雅子、岸輝子、沢村貞子、山茶花究、浜村純、大島瑛子、加藤嘉、戸浦六宏、小松方正、石堂淑朗、入住寿男
1961年日本・パレスフィルムプロダクション+大宝/シネスコサイズ・モノクロ105分35mmフィルム
飼育 -DVD-
2018年12月現在、DVDレンタルはありません。


飼育

映画「儀式」


河原崎建三                          賀来敦子

今回は大島渚監督1971年製作「儀式」をピックアップする。
日本アート・シアター・ギルド(ATG)の創立10周年を記念し、創造社と提携制作した本作は、家長制を頂点とした桜田家に集まる複雑な血縁関係者が織りなす人間模様を通して、日本の戦後民主主義を問い詰める内容だ。撮影は巨匠成島東一郎氏が担当されている。

作品リスト


佐藤慶                          小山明子

【ストリー】
「テルミチシス」テルミチ」という奇妙な電報を受取った桜田満洲男(河原崎建三)は輝道のかつての恋人律子(賀来敦子)と共に急拠打電地の南の島へと旅立っていった。その道行で、満洲男は過去桜田家で行なわれた数々の冠婚祭の儀式と、その時にだけ会うことのできる親戚の人々の事を想い起こしながら、この電報の意味を考え続けた。昭和8年満洲事変の余波さめやらぬ頃、満洲で生まれた満洲男が、昭和22年、母親のキク(高山真樹)と共に命からがら引き揚げて九州の桜田家にたどり着いた日は、満洲男の父韓一郎の一周忌の日だった。韓一郎は敗戦の年、満洲から東京に渡ったが、日本の前途に絶望して自殺した。その法事の席には、内務官僚であったために追放中の祖父の一臣(佐藤慶)、祖母のしづ(乙羽信子)、曽祖母の富子(河原崎しづ江)、祖父の兄嫁のちよ(三戸部スエ)、ちよと一臣の間に生まれた守(戸浦六宏)、父親の腹ちがいの弟の勇(小松方正)、もう一人の腹ちがいの弟進の子忠(土屋清)、叔母の節子(小山明子)とその子供の律子、しづが可愛がっている輝道(中村敦夫)などが列席した。幼ない弟を満洲で失い、これから母と二人で生き抜こうと決心した満洲男であったが、祖父の命令で桜田家の跡継として、この複雑な血縁関係のなかに引き込まれていった。昭和27年の夏、全国高校野球大会に東京代表チームの投手で四番打者として活躍していた満洲男は、準々決勝戦の前夜、母の危篤を知らされた。翌日の試合で満洲男が致命的な失投をした頃、母は息を引きとった。追放がとけ、ある公団の総裁に就任した祖父の力もあってキクの葬儀は盛大であった。その通夜の晩、滴洲男は節子から父の遺書を手渡されたことによって父と節子が愛し合っていたこと、そして、その愛が祖父によて引き裂かれ、節子は祖父の政治的野望の犠牲になったことを知った。そして、その夜、満洲男は、自分の憧れの的であった節子が、輝道の愛撫を受けているのを見てしまうのだった。その翌年、輝道が祖父の秘書として上京したのと入れかわりに、満洲男は京大に入り、再び野球の世界に没入していった。昭和31年、日共の党員である叔父勇(小松方正)の結婚式が行なわれ、その席には中国から戦犯としての刑期を終えて帰国した叔父進(渡辺文雄)の顔があった。その夜、満洲男は好きだという自分の気持を律子に言いだせず、輝道が律子を抱くのをただ呆然とながめていた。夜更け、節子が死んだ。原因不明のまま自殺として盛大に葬られた節子の死を、満洲男は祖父が殺したのだと思った。昭和36年、政財界人を集め祖父の命令で行われた自分の結婚式、花嫁の失踪をかくした虚飾に満ちた披露宴に怒りをぶつけた忠(土屋清)、その忠の事故死。そして輝道の家出。その後、満洲男は、輝道が自分の父の許嫁と祖父との間にできた子であることを知った。そして偉大な祖父の死などさまざまな出来事の想い出が満洲男の脳裏を横切っていった……。旅の終りが近づいていた。満洲男と律子を乗せた船は、紺碧に輝く南の海を、輝道のいる島へと進んだ。そして、そこで見たものは、全裸で横たわる輝道の死体だった。生きる意志を失った律子は、満洲男の目前で自ら手足を縛り薬を口に含んだ。


中村敦夫                           乙羽信子

題名:儀式
監督:大島渚
製作:葛井欣士郎、山口卓治
脚本:田村孟、佐々木守、大島渚
撮影:成島東一郎
照明:山下礼二郎
録音:西崎英雄
音効:倉嶋暢
美術:戸田重昌、下石坂成典
装置:吉見光男、馬場保行
背景:高橋作次
装飾:眞城一夫
結髪:宇野久夫
美粧:ムラハシ英子
記録:松田美津子
編集:浦岡敬一
音楽:武満徹
現像:東洋現像所
撮影助手:藤井秀男、杉村博章
移動効果:西村伊三男
照明助手:石原喜三
録音助手:山田貢、高井唯夫
編集助手:永富勲
製作主任:眞田正典
製作進行:足立源一郎
協力:大映京都撮影所
出演:河原崎建三、賀来敦子、中村敦夫、土屋清、乙羽信子、佐藤慶、小山明子、小松方正、渡辺文雄、戸浦六宏、原知佐子、小沢栄太郎、殿山泰司、高山真樹、河原崎しづ江、椿隆一、大田良明、成島有美
1971年日本・創造社+日本ATG/シネスコサイズ・カラー123分35mmフィルム
儀式 -DVD-
2018年11月現在、DVDレンタルはありません。


佐藤慶、椿隆一                                                   土屋清、中村敦夫

儀式                           大田良明、小山明子、成島有美

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