映画「女体渦巻島」


吉田輝雄                        三原葉子

今回は石井輝男監督1960年製作「女体渦巻島」をピックアップする。
本作は、対馬を東洋のカサブランカに見立てた無国籍風フィルム・ノワールだが、展開が悪い。高感度フィルムがない時代に、屋外ナイトシーンが多いのはいいのだが、セット撮影以外は”ツブシ”で撮っている様だ。ジェネレータの容量がないのか、ライトを当てずにNDまたはFを絞るだけで対応し、ライトバランスを取っていないので、本当の”ツブシ”ではなく、暗くなっているだけだった。それに現地(対馬)でロケーション撮影はしていないであろう風景が入り、興ざめるカットもある。当時はこれで観客が満足したのだろうかと、疑問が残る作品だった。


天知茂                      吉田輝雄、三原葉子

【ストリー】
対馬の港町、厳原港のキャバレー“怒濤”は香港を根城とする麻薬密輸団の中継拠点としてボス陳雲竜(天知茂)の情婦真山百合(三原葉子)を頭とし、島の女達を甘言をもって女給に採用、遂には肉体密輸の犠牲にまでするという非道の限りをつくしていた。ある日この“怒濤”に大神信彦(吉田輝雄)という男が現われた。信彦は陳雲竜の輩下で拳銃の名手であった。恋人の真山百合を日本に残して香港へ行き陳の下で一日も早く堅気になって百合との生活をしたいと考えていた。が、陳の裏切りにより百合が陳の情婦になったらしいことを知り、密輸団の掟を破り陳に無断で百合に事実をたしかめるためやって来たのだ。百合は恐るべき麻薬によって陳に体をしばられていた。百合は信彦のコルトで死ねば本望と体をなげだすが、信彦はどうしても射つことができなかった。“怒濤”の支配人本田(近衛敏明)は、魚市場の志摩(万里昌代)に目をつけ、借金を種に無理に連れてきた。志摩をはじめ多くの女給たちは外国に売られてゆく運命にあった。信彦は恐るべき密輸団の全貌を見るにつけ、陳を倒すばかりでなく、密輸団を徹底的に壊滅さすべく、韓国の密輸団、張(大友純)の一味と取引きする現場を事前に警察に知らせた。張一味は裏切り者が信彦であることを知って信彦を襲った。信彦の危機が迫った時、張一味の背後から百合がその危難を救った。二人はそこで昔の二人にかえろうと誓い合った。事毎に失敗する取引に疑惑を持った陳は対馬に乗り込んできた。本田から百合が信彦をかくまっていることを聞かされた陳は、百合をオトリに信彦を呼びだした。その罠の裏をかいて信彦は、逆に陳を断崖のそばに追い込んだ。「俺は復讐のためにお前を殺るんじゃない。お前のために苦しんでいる女たちのためにお前を制裁するんだ」と言い終るや信彦のコルトは轟然と火を吐いた。


女体渦巻島

題名:女体渦巻島
監督:石井輝男
企画:小野沢寛
製作:大蔵貢
原作:岡戸利秋
脚本:岡戸利秋、石井輝男
撮影:鈴木博
照明:傍士延雄
録音:沼田春雄
美術:朝生治男
編集:永田紳
音楽:渡辺宙明
フィルム:富士フィルム
現像:東洋現像所
製作主任:山本喜八郎
助監督:武部弘道
出演:三原葉子、吉田輝雄、天知茂、万里昌代、星輝美、城実穂、瀬戸麗子、近衛敏明、大友純
1960年日本・新東宝/シネスコサイズ・カラー76分35mmフィルム
女体渦巻島 -DVD-
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。


三原葉子                     女体渦巻島

映画「スター毒殺事件」


「スター毒殺事件」万里昌代

万里昌代                         天知茂

今回は赤坂長義監督1958年製作「スター毒殺事件」をピックアップする。
東洋映画撮影所が舞台となる本作だが、実際に撮影された場所は、新東宝撮影所(国際放映~現・レモンスタジオ)のスタジオ群が映る。そこは、新東宝が1961年に倒産した際に、日本大学(商学部)に敷地の多くを売却する前の風景がある。その意味で本作はとても貴重な記録になっている映画である。
私が好きな女優万里昌代さんは、1956年に新東宝四期スターレットとして入社し、同期に北沢典子さん、三ツ矢歌子さん、原知佐子さん(実相寺昭雄監督の奥さん)、朝倉彩子さんらがいた。
万里昌代さんは、1958年に本作で初主演してから1961年8月に新東宝が倒産し9月に大映に移籍する。1962年に市川雷蔵主演の「婦系図」お蔦役で女優の資質を開花し高い評価を得る。大映では時代劇で「座頭市物語」などヒロイン役を演じた。


「スター毒殺事件」万里昌代

三原葉子                                                                 江見渉

【ストリー】
東洋映画のスター上原城二(天知茂)が真理(万里昌代)を知った頃、彼女は純情可憐な少女だった。このような人と結婚し、一緒に働けたら--。そう考えると、城二は真理を強引に映画界に入れた。真理は城二の口ききと、天性の資質によって売り出していった。が、その人柄も人気の上昇とともに変っていった。彼女は城二のライバルである須賀(江見渉)と接近していた。二人が愛慾のかぎりをつくしている現場を見た城二は、人気のない神宮球場のグラウンドの中で二人への復讐を誓った。彼の計画は進捗した。彼は小道具部屋へ入り、須賀らが翌日撮影へ使うウィスキーのビンを毒薬入りのものと取りかえた。翌日、セットでは、ウィスキーを口にふくんだ須賀が口うつしに真理にウィスキーを飲ませようとして、突然苦しみ出し血を吐いて倒れた。真理もそれにつづいた。だが真理は死にはしなかった。城二は彼女の許へ飛んだ。また昔の二人に戻ることができる、そんな望みをもって--。が、真理は城二を寄せつけなかった。城二は、彼の挙動を探索するようにつきまとっていた黒木助監督(沼田曜一)をもビルの屋上から突き落した。目的を達してアパートへ帰ってくると、真理が待っていた。城二を殺人者呼ばわりをする真理に、彼は襲いかかり首を締めた。翌日、真理の死体を処理すべく、城二が街を疾走していくと、そこにはパトカーが網を張っていた。絶体絶命。城二は夢遊病者のごとく警官の前に出ていった。“真理は死んだ! 須賀も死んだ!僕は生きてどうする!”と叫びながら。


「スター毒殺事件」万里昌代

上写真のキャメラは、1000フィートマガジンを装着したNCミッチェル・キャメラだ。
私より上の世代が使ったパララックスカメラである。本番でファインダー下のノブを回してレンズ面とフィルム面とが、スライドで入れ替わる構造の二眼レフだ。これはレンズに入った光を100%フィルム面に露光させる為の方式で、ミラーシャッター方式が出現する前の常套であり、フレームを決めるにも職人技が必要だった。その為か、当時はカメラマンを撮影技師と呼んだ。
後にミッチェルは、MarkⅡ・Ⅲとミラー・シャッター方式になったが、NCミッチェルからのムーブメント(フィルム駆動間欠装置)の画止まりと安定度は、正確無比で、パナビジョン社などのフィルム映画キャメラに継承されている。


天知茂、三原葉子                 万里昌代、天知茂

題名:スター毒殺事件
監督:赤坂長義
企画:岡本良介
製作:大蔵貢
原案:葭原幸造
脚本:蓮池義雄、葭原幸造
撮影:吉田重業
照明:石森浩
録音:竹口一雄
美術:鳥居塚誠一
編集:永田紳
音楽:渡辺宙明
製作主任:永野裕司
助監督:小池淳
出演:天知茂、万里昌代、三原葉子、江見渉、沼田曜一、城実穂、御木本伸介、江川宇禮雄、高田稔、中川一郎
1958年日本・新東宝/スタンダードサイズ・モノクロ75分35mmフィルム
スター毒殺事件 -DVD-
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。


万里昌代、天知茂

映画「黄線地帯」


天知茂

今回は石井輝男監督1960年製作「黄線地帯」をピックアップする。
本作は、新東宝が制作した”地帯(ライン)シリーズ”の第三作である。神戸が舞台になっているものの、実際には横浜がロケ地となっている。神戸の”カスバ”街は、新東宝美術部が作り上げた見事なセットである。

1958年「白線秘密地帯」
1959年「黒線地帯
1960年「黄線地帯
1961年「セクシー地帯
1961年「火線地帯


吉田輝雄

【ストリー】
殺し屋衆木(天知茂)は阿川(大友純)という男に頼まれて神戸税関長を殺した。しかし、その報酬は警察への密告だった。衆木は阿川を殺そうと、東京駅で強引に拾った踊子ルミ(三原葉子)とアベックを装い、神戸のカスバ街へ乗りこんでいく。ルミは新聞記者の真山(吉田輝雄)と恋仲で、神戸の新日本芸能社の踊子募集に応じるため、真山に連絡の電話をかけているところを衆木につかまったのだ。真山も新日本芸能社が国際売春組織である黄線地帯と関連があるのを知り、ルミの後を追って神戸へ急行した。神戸へ着いたルミは“連れの男は殺人犯です。助けて下さい”と書いた百円札を衆木の目を盗んで靴屋に渡した。が、店員は気づかず、入れちがいに来た弓子(三条魔子)というサラリーガールがこの百円札を受取ることになった。ルミは安ホテルに監禁された。真山は靴屋の店員から弓子の件を知らされ、弓子の許へ駈けつけたが彼女は既に誘拐された後だった。弓子は連れ去られる車から例の札を道に捨てた。これが運よく真山の手に入った。弓子は、阿川を頭とする外国人相手の秘密売春団のかくれ家に軟禁された。衆木も阿川の居所をつきとめていた。真山も黒人の女から、秘密クラブの話を聞き出し、“セブンローゼズ”に向った。ホールではルミが踊っていた。衆木は阿川をおどし、阿川に指令を発しているという社会事業家松平(中村虎彦)の邸を襲った。真山の急報で警官隊が黄線地帯に殺到した--。


天知茂                      三条魔子、三原葉子

題名:黄線地帯
副題:イエロー・ライン
監督:石井輝男
企画:佐川滉
製作:大蔵貢
脚本:石井輝男
撮影:鈴木博
照明:関川次郎
録音:村山絢二
美術:宮沢計次
編集:鹿島秀男
音楽:渡辺宙明
製作主任:高橋松雄
助監督:武部弘道
出演:天知茂、三原葉子、吉田輝雄、三條魔子、大友純、沼田曜一、中村虎彦
1960年日本・新東宝/新東宝スコープ(シネスコサイズ)・イーストマンカラー79分35mmフィルム
黄線地帯 [DVD]
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。


黄線地帯

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