映画「はなれ瞽女おりん」


岩下志麻                        原田芳雄

今回は篠田正浩監督1977年製作「はなれ瞽女おりん」をピックアップする。
本作は、水上勉氏の同名小説を映画化したものだが、瞽女(ごぜ)とは、盲目の女芸人の事を言い、その旅一座グループから離脱した者を”はなれ瞽女”と呼ぶ。
目を閉じて瞽女おりんを演じるにあって、繊細な心情と逞しさの芝居を淡々と美しく魅せた岩下志麻さんに感動する。
演出は実に堅実であり、巨匠宮川一夫氏の映像で素晴らしい作品に仕上がっている。

照明技師の佐野武治さんが、ラストの小浜で警察に密告する村人役で出演されている!
お世話になった丸山文雄さんが、照明部チーフでタイトルされていた。これにも驚いた。

本作を1月20日に、池袋の新文芸坐で行われた特集上映 “デビュー60年 女優・岩下志麻” で、35mmプリントで観て来たが、DVD映像では暗部が潰れていた。ポジテレシネしたものをキャプチャーし、MPEG2にしたのだから、フィルムのラチチュードを再現出来る訳ではないので、良い作品は劇場で観るべきだと再確認した。

はなれ瞽女おりん」撮影エピソード 語り:岩下志麻さん
「私は暗闇恐怖症なので、盲目の女性の役がきたとき、暗闇に慣れるか不安でした。化粧をしたり、風呂に入ったりするときも目をつむり、暗闇になれることから始めました。実際に新潟で生存されておられる瞽女さんを訪ねると、夜8時でも真っ暗闇の中にいらっしゃり、私たち訪問者のために電気をつけてくれました。目が見えないというのはこういうことかと実感し、役に入っていけました。瞽女さんには、傘の差し方など色々ご指導いただき、とてもありがたかったです。
目をつむって何か月か生活しました。盲学校にも行きましたが、こんなにたくさんの方が、暗闇で生活されているのかと思うと、取材をする前に涙が止まらず大変でした。校長先生に目隠しされ、廊下をまっすぐ歩くように指示を受け、歩いてみたのですがどうしても左方向に歩いてしまうのです。人間は耳がいい方に歩いてしまうと聞き、演技するときも誰かがセリフを言ったときに耳を差し出すようにしました。瞽女が弾く三味線の稽古をするのも大変で、6か月間毎日通って習いました。いつも微笑みを浮かべているようなおりんでいたい。目が不自由でも否定的ではなく、いつも明るいおりんをイメージして演じました。私にとっては大変思い出深い、大好きな映画です。


奈良岡朋子                     岩下志麻、樹木希林

【ストリー】
大正7年、春まだ浅い山間の薄暮、おりん(岩下志麻)は、破れ阿弥陀堂で一人の大男・平太郎(原田芳雄)と出会った。翌日から、廃寺の縁の下や地蔵堂を泊り歩く二人の奇妙な旅が始まる。ある日、木賃宿の広間で、漂客や酔客相手におりんが「八百屋お七」を語っている時、大男はその客に酒を注いだり、投げ銭を拾い集めていた。またある夜には、料理屋の宴席で「口説き節」を唄うおりんの声を聞きながら、大男は勝手口で、下駄の鼻緒のすげかえをすることもあった。それからも大男は、大八車を買入れ、おりんと二人の所帯道具を積み込んで、旅を続ける。そんな時、柏崎の薬師寺で縁日が開かれた。露店が立ち並ぶ境内の一隅に、下駄を作る大男と、できあがった下駄をフクサで磨きあげるおりんの姿があった。しかし、札をもらわずに店をはったという理由で、大男は土地のヤクザに呼び出される。大男が店を留守にした間に、香具師仲間の一人である別所彦三郎(安部徹)に、おりんは松林で帯をとかれていた。松林の中で、すべてを見てしまった大男は逆上し、大八車の道具箱からノミを取り出すと、松原を走り去った。やがて、渚に座りこんだままのおりんの前に大男が現れ、「また一緒になるから、当分別れてくらそう。俺は若狭の方へ行く。」と言い残すと姿を消した。季節は秋に変り、おりんは黒川の六地蔵で出会ったはなれ瞽女のおたまと共に、南の若狭方面へと向っていた。そんな時、大男は別所殺しの殺人犯として、また福井県鯖江隊所局の脱走兵としても追われていた。残雪を残す若狭の山に春が訪れる。若狭の片手観音堂に来ていたおりんは、ある日、参詣人でにぎわう境内で、大男に呼びとめられた。その夜、うれしさにうちふるえながら、おりんは初めて、大男に抱かれた。翌日から二人はまた旅を始める。しかし、二人の背後に、憲兵中尉・袴田虎三(小林薫)の姿が迫っていた。


小林薫                       岩下志麻、安部徹

題名:はなれ瞽女おりん
監督:篠田正浩
製作:岩下清、飯泉征吉
原作:水上勉
脚本:長谷部慶治、篠田正浩 台詞:長谷部慶治
撮影:宮川一夫
照明:佐野武治
録音:西崎英雄
効果:本間明
美術:栗津潔
衣裳:新井喜一 (京都衣裳)
結髪:中村さき
美粧:境厚子
考証:市川信次、市川信夫
編集:山地早智子 ネガ編集:南とめ
音楽:武満徹
現像:東洋現像所
製作補:三島巌
製作宣伝:市川しげ子
製作進行:星野常一郎
助監督:永井正夫
監督助手:岡田敏宏、鯉渕優
撮影助手:藤井秀男、榊原勝巳、川口徹也
照明助手:丸山文雄、井上富夫、佐野誠
録音助手:徳永誠
美術助手:平賀俊一、伊藤保恵、市村隆
編集助手:渋谷英子、原裕子
衣装助手:京野ツエ
撮影機材:ナック
照明機材:三和照明
録音所:アオイスタジオ
スチール:山崎博
出演:岩下志麻、原田芳雄、奈良岡朋子、樹木希林、 小林薫、安部徹、横山リエ、西田敏行、山谷初男、加藤嘉、殿山泰司、浜村純、桑山正一、不破万作、原泉、神保共子、宮沢亜古、中村恵子、嶺川貴子
1977年日本・表現社/スタンダードサイズ・カラー117分35mmフィルム
はなれ瞽女おりん -DVD-
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。


浜村純                       佐野武治氏(照明技師) 

原田芳雄                        岩下志麻、小林薫

映画「お葬式」


山崎努                         宮本信子

今回は伊丹十三監督1984年製作「お葬式」をピックアップする。
本作は、伊丹監督が妻である宮本信子さんの父親の葬式で喪主となった実体験を基に、僅か1週間で脚本を書き上げ、神奈川県湯河原町にある伊丹監督の別荘(元自宅)をロケセットにして、ATG作品でありながら、1億円の製作費で作りあげた監督デビュー作である。製作費は、伊丹監督がCM出演した愛媛県の一六本舗(製菓会社)が出資したそうだ。

【伊丹十三監督作品】
1984年「お葬式
1985年「タンポポ
1987年「マルサの女
1988年「マルサの女2
1990年「あげまん
1992年「ミンボーの女
1993年「大病人
1995年「静かな生活
1996年「スーパーの女
1997年「マルタイの女
※各作品のリンクは、予約投稿で表示しないページがありますが、後日表示されます。


菅井きん                        財津一郎

笠智衆                        大滝秀治

【ストリー】
井上佗助(山崎努)、雨宮千鶴子(宮本信子)は俳優の夫婦だ。二人がCFの撮影中に、千鶴子の父が亡くなったと連絡が入った。千鶴子の父、真吉(奥村公延)と母、きく江(菅井きん)は佗助の別荘に住んでいる。その夜、夫婦は二人の子供、マネージャーの里見(財津一郎)と別荘に向かった。一行は病院に安置されている亡き父と対面する。佗助は病院の支払いを里見に頼み、20万円を渡すが、費用は4万円足らず、その安さにおかしくなってしまう。佗助にとって、お葬式は初めてのこと、全てが分らない。お坊さんへの心づけも、相場というのが分らず、葬儀屋の海老原(江戸家猫八)に教えてもらった。別荘では、真吉の兄で、一族の出世頭の正吉(大滝秀治)が待っており、佗助の進行に口をはさむ。そんな中で、正吉を心よく思わない茂(尾藤イサオ)が、千鶴子をなぐさめる。そこへ、佗助の愛人の良子(高瀬春奈)が手伝いに来たと現れる。良子はゴタゴタの中で、佗助を外の林に連れ出し、抱いてくれなければ二人の関係をみんなにバラすと脅した。しかたなく、佗助は木にもたれる良子を後ろから抱いた。そして、良子はそのドサクサにクシを落としてしまい、佗助はそれを探して泥だらけになってしまう。良子は満足気に東京に帰り、家に戻った佗助の姿にみんなは驚くが、葬儀の準備でそれどころではない。告別式が済むと、佗助と血縁者は火葬場に向かった。煙突から出る白いけむりをながめる佗助たち。全てが終り、手をつなぎ、集まった人々を見送る佗助と千鶴子。


高瀬春奈、山崎努

宮本信子、尾藤イサオ、菅井きん              お葬式

題名:お葬式
監督:伊丹十三
製作:玉置泰、岡田裕
脚本:伊丹十三
撮影:前田米造、浅井慎平(モノクロ部分)
照明:加藤松作
特機:落合保雄
録音:信岡実
音効:小島良雄 リーレコ:河野競司
美術:徳田博
装飾:山崎輝、畠山和久、河端賀恵子
衣裳:岩崎文男
美粧:小沼みどり
スタイリスト:小合惠美子、熊谷澄子
配役:笹岡幸三郎
記録:堀北昌子
編集:鈴木晄 ネガ編集:冨田功
音楽:湯浅譲二
現像:東洋現像所
撮影機材:三和映材社
録音スタジオ:にっかつスタジオセンター
プロデューサー:細越省吾
製作担当:藤田義則
製作進行:伊藤正敏、佐藤丈樹
演技事務:宮前寿美子
助監督:平山秀幸
演出助手:泰衛、上野勝
撮影助手:福沢正典、栗山修司、村石直人
照明助手:沖田秀則、本橋義一、三枝隆之、松岡康彦
録音助手:北村峰晴、塚本達郎、細井正次
編集助手:米山幹一
スチール:宮本唯志
出演:山崎努、宮本信子、菅井きん、大滝秀治、財津一郎、高瀬春奈、江戸家猫八、尾藤イサオ、岸部一徳、笠智衆、奥村公延、友里千賀子、津村隆、西川ひかる、海老名美どり、双葉弘子、吉川満子、藤原釜足、田中春男、香川良介、佐野浅夫、津川雅彦、小林薫
1984年日本・伊丹プロダクション+ニューセンチュリープロデューサーズ+ATG/スタンダードサイズ・カラー124分35mmフィルム
お葬式 -DVD-
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。


お葬式

映画「セカンド・ラブ」


セカンド・ラブ

Michell S35R Mark II BNC キャメラを覗く大原麗子さん(CF撮影の劇中劇)

西岡徳馬、大原麗子                大原麗子、小林薫

今回は東陽一監督1983年製作「セカンド・ラブ」をピックアップする。
都会の中で生きがいと愛を求めて必死に生きる若い再婚女性の姿を描いた本作は、大原麗子さんが37歳の時に主演した作品だ。大原麗子さんはテレビドラマで多くの主演作品が多いが、何と映画の主演は、本作と1970年「三匹の牝蜂(東映/監督:鳥居元宏)」だけだとは知らなかった。しかし、CMへの出演も多く「すこし愛して、ながーく愛して」という台詞で魅力を拡散した市川崑監督によるサントリーのCM(1977~1990年放映)は珠玉の名作だ。

東陽一監督は、私が10代の頃、企業PR映画で製作進行助手で就かせて戴いた事があり、それから10数年後、私が撮影チーフ助手の時に自動車のCMでもお世話になった。その後お会いしてないが、お元気だろうか?

CM撮影の劇中劇でトリビアを見つけた。本作の撮影チーフを担当された篠田昇氏が、そのまま劇中スタッフとして入射メーターで計測し、出演している!私とは、前述した企業PR映画の仕事で知り合い、その後何度か撮影助手で就かせて戴いた事があった。篠田さんは1985年には相米慎二監督「ラブホテル」で撮影技師(カメラマン)としてデビューされている。その後、1987年神代辰巳監督「噛む女」1994年岩井俊二監督「スワロウテイル」2002年行定勲監督「月に沈む」など40作品以上の劇映画を担当されたが、2004年6月に急逝されてしまった。私が最後にお会いしたのは、別々の仕事で東映化学現像所だったと記憶する。2004年行定勲監督「世界の中心で、愛をさけぶ」が遺作となった。謹んでご冥福をお祈りしたい。

【当ブログで紹介した東陽一監督作品】
1979年「もう頬づえはつかない
1981年「ラブレター
1986年「化身


セカンド・ラブ

アイ・ジョージ                 大原麗子、アイ・ジョージ

【ストリー】
日向一実(大原麗子)32歳。職業グリーン・コーディネイター、CF撮影など感性を要求される世界で男まさりの仕事をしている。一実は再婚女性で、夫の秀夫(小林薫)は二つ年下の建築家、結婚二年目。最近いつもかかってくる正体不明の電話に、秀夫は前夫の影を感じていた。そんな時、一実に妊娠の予感、しかしなぜか秀夫には黙っていた。そんな一実に微妙な視線を向けるもう一人の男性がいた。行きつけの喫茶店のマスター友春(アイ・ジョージ)だ。いま一実は、あまりポピュラーでない自分の仕事がささやかでも認められたらと、近づく個展の準備に余念がなかった。個展当日、一実の母志保(荒木道子)、姉の茅(赤座美代子)子もお祝いにかけつけた。盛況にホッと胸をなでおろす一実に、女性誌のフリーライターを名乗る展子(中村れい子)という若い女性が取材に来た。そこに顔を出した秀夫が、オートバイに乗ることを知った展子は、執拗に彼にまといつき、彼が建築中の家へ案内してもらう。一方、一実は友春の店で仲間と個展の成功を祝い、一人帰途につくと、台所で見知らぬ男が死んでいた。そこへ秀夫が帰ってきて、またも前夫の影を口走った。事件を契機に二人のモヤモヤしたものが一気に噴き出す。そんな秀夫に展子の存在は、火に油を注ぐようなものだった。秀夫は、突然故郷の和歌山に帰ると言いだした。上京してきた実兄功一(河原崎建三)の話がその気にさせたらしい。久しぶりに故郷の空気を満喫する秀夫、その彼の帰りを熱海駅で待ち構えていたのは展子だった。その頃、一実も友春に一瞬唇を奪われていた。そして医者からは妊娠確実の宣告。ある日、一実が友人たちを招いてパーティを開いた。そこに正体不明の電話が。いらだった秀夫は、挙句の果てに一実の仕事を、自然をもて遊ぶ虚業と決めつけた。大粒の涙をためながら反論し、一実は思いのたけを、皆の前でぶちまける。夜、あやまる秀夫に一実は妊娠を告げた。その日、一実は奇妙な夢を見た。そして二人の間の何かがふっ切れた矢先、ローラースケート遊びの子供を避けようとして一実は怪我をした。事故の知らせを聞いた秀夫に展子から電話が。それをふりきってオートバイで出かけた秀夫もまた転倒した。頭に包帯を巻いて区役所から出てきた一実に、ビッコを引き引き近寄る秀夫。一実の手には母子手帳が、しっかりと握られていた。


中村れい子                     小林薫、中村れい子

題名:セカンド・ラブ
監督:東陽一
企画・製作:吉田達、前田勝弘
脚本:田中晶子、東陽一
撮影:川上皓市
照明:磯崎英範
特機:明光セレクト
録音:久保田幸雄
美術:綾部郁郎
編集:市原啓子
音楽:田中未知
現像:東映化学
製作主任:中村喜代太
製作進行:小松原時夫
助監督:栗原剛志
撮影助手:篠田昇
撮影機材:三和映材社
照明機材:日本照明
スチール:遠藤正
出演:大原麗子、小林薫、アイ・ジョージ、中村れい子、河原崎建三、長谷川初範、西岡徳馬、荒木道子、赤座美代子、加茂さくら
1983年日本・東映+幻燈社/ビスタサイズ・カラー103分35mmフィルム
セカンド・ラブ -DVD-
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。


小林薫、大原麗子

セカンド・ラブ

私の好きな女優、大原麗子さんは、2009年8月3日に不慮の死を遂げ、満62歳で亡くなった。
ほんとに残念でならない。

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