映画「江戸川乱歩の陰獣」


あおい輝彦                      香山美子

今回は加藤泰監督1977年製作「江戸川乱歩の陰獣」をピックアップする。
本作は江戸川乱歩の原作を映画化した謎とき推理サスペンスで、本編の重要なテーマであるSMシーンに果敢に挑んでいる香山美子さんが美しかった。


あおい輝彦、若山富三郎               野際陽子

【ストリー】
本格推理小説家の寒川(あおい輝彦)に、彼のファンだと言って、さりげなく近づいて来た、うなじに赤いミミズ腫れのある人妻・小山田静子(香山美子)。彼女は寒川に、自分は変格派推理小説家で、初恋の相手でもあった大江春泥から脅迫されていると訴えた。寒川は自分が一番軽蔑している春泥の名をききこの事件に興味をいだく。脅迫状には、静子と夫の夜の秘事まで完ぺきな観察記録があり、闇にひそむ陰獣のような目に静子はおそれおののいていた。そして、物音がしたという小山田邸の天井裏を探ってみると誰かが這い回った跡があり飾りボタンが一つおちていた。寒川は春泥の足どりを追いかけた。そして、寒川の担当記者でただ一度だけ春泥と面識のある本田(若山富三郎)は、浅草でピエロ姿の春泥を見たといい出したが、全く彼の足どりはつかめず。静子に第二の脅迫状が届き、その予告通り、静子の夫、六郎(大友柳太朗)が隅田川の船着場に溺死体で浮び上がった。六郎の通夜の席に顔を出したヘレン・クリスティ(田口久美)に寒川はどうも腑に落ちなかった。そんなある日、ヘレンは寒川をホテルへ誘い、自分を鞭で打ってくれと懇願する。その時寒川はヘレンが天井裏で見つけた、ボタンと同じもののついた手袋を持っていることを知る。それは、六郎が英国出張中に二人で対で買ったもので、彼女が六郎の英国での情人であったのである。寒川は、このヘレンのマゾヒズムの喜びと、六郎の部屋にあった乗場鞭、そして静子のうなじのミミズ腫れを思い出し、静子を責めるだけでは満足できなくなった六郎が一連の脅迫犯人であり、あやまって死亡したものではないか、と推理した。しかし、納得ができない事があった。それは、本田が見た春泥は彼の本の奥付けについている写真とは違う人物なのだ。この頃、寒川と静子はとある土蔵を借りて、ただれるような愛欲の日夜を送る関係になっていた。ある日、歌舞伎役者の市川荒丸(川津祐介)が殺された。そして、彼こそが自分が会った春泥だ、と本田は言った。また、小山田家の運転手が六郎からボタンが欠けたまま昨年十一月に貰ったという手袋が天井裏のものと同一であることが判明。春泥=六郎という寒川の推理は根底からくずれた。土蔵にもどると、そこでは静子が寒川にヘレンが彼に懇願した事と同じことを求めてきた。その時、寒川にひらめくものがあり、この一連の事件は変格派春泥が本格派の自分に対し探偵作家としての挑戦で二重三重に仕組んだ巧妙な完全なトリックであると。


田口久美                      香山美子

題名:江戸川乱歩の陰獣
監督:加藤泰
製作:白木慶二
原作:江戸川乱歩
脚本:加藤泰、仲倉重郎
撮影:丸山恵司
照明:三浦礼
録音:小林英男
調音:小尾幸魚
美術:梅田千代夫
装置:石渡敬之助
装飾:印南昇
衣裳:松竹衣裳
かつら:八木かつら店
編集:大沢しづ
音楽:鏑木創
現像:東洋現像所
製作主任:池田義徳
監督補:三村晴彦
製作補:池田義徳
製作進行:大川修
スチール:金田正
出演:あおい輝彦、香山美子、大友柳太朗、若山富三郎、川津祐介、中山仁、仲谷昇、野際陽子、田口久美、加賀まりこ、尾藤イサオ、倍賞美津子、藤岡琢也、菅井きん、花柳幻舟
1977年日本・松竹/スタンダードサイズ・カラー118分35mmフィルム
江戸川乱歩の陰獣 -DVD-
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。


あおい輝彦
江戸川乱歩の陰獣

【追記・訃報】
ドラマ「サインはV」での鬼コーチ役で知られた俳優の中山仁(本名・中山仁平)さんが2019年10月12日に亡くなっていたことが11月11日、所属事務所から発表された。77歳。肺腺がんだった。故人の遺志により、葬儀、お別れ会を行うことはせず、逝去の公表も控えていたという。中山さんは早稲田大学政経学部を中退し、1965年、文学座養成所入り。その後、劇団「NLT」を経て、1968年、三島由紀夫氏らと浪曼劇場を設立し、1970年の解散まで所属した。彫りの深い上品な顔立ちの二枚目で、「七人の刑事」などのドラマや映画、舞台に幅広く活躍した。「コンタック」CMでのコミカルな役柄でも注目された。(デイリースポーツ/2019年11月11日)

映画「監獄人別帳」


「監獄人別帳」渡瀬恒彦、大辻伺郎

渡瀬恒彦                        伊吹吾郎

今回は石井輝男監督1970年製作「監獄人別帳」をピックアップする。
殺し屋人別帳」に続く人別帳シリーズ第2弾(最終)の本作は、過酷な豪雪の北海道を舞台にした脱獄劇である。
内容の途中からは「網走番外地 望郷篇」とほぼ同じ展開になっている。


大辻伺郎、渡瀬恒彦                   佐藤允

内田良平                       上田吉二郎、大泉滉

【ストリー】
酷寒の網走刑務所。その中には傷害罪の橘真一(渡瀬恒彦)。悪徳警察署長・岩倉(沢彰謙)に殺された父親の復讐に失敗した殺人未遂罪の吉岡誠吉(佐藤允)。そのほか、無期徴役刑の阿久田老人(嵐寛寿郎)、殺人犯モンマルトルの鉄(伊吹吾郎)、夜這いの松こと浅吉(大辻伺郎)、牢名主の異名をとる放火ダルマの剛造(上田吉二郎)ら、様々な囚人の顔があった。温情な典獄長・月形(内田良平)は別として、所長の緒方(千葉敏郎)と典獄たちは囚人たちを虫けら同然に虐待し脱獄者は皆無だった。そんなある日、誠吉の弟秀(尾藤イサオ)と妹珠枝(賀川雪絵)が、送られてきた。真一は吉岡兄妹が仇と狙う岩倉が道庁の警視総監として赴任してきたことを知り、脱獄のチャンスをうかがった。やがて、好機到来。この脱獄に参加したのは吉岡三兄妹と真一、鉄、浅吉の6人。脱獄のベテラン鉄をリーダーに吹雪の中に出た一行だが、浅吉の密告で脱獄は失敗、そして二人ずつ手錠をかけられた。だが、この危機を救ってくれたのは阿久田老人だった。左足に銃弾をうけた鉄は自分の左腕を自ら切断、秀を単身逃がした。一方、真一と誠吉は一度は改心した浅吉の犠牲で危機を脱するが、執拗に迫りくる追手に万事休す。だが、片手の鉄の出現で再び窮地を脱するのだった。こうして脱獄に成功した誠吉と珠枝は目ざす岩倉の屋敷にのり込むが、多勢に無勢。しかし、吉岡兄妹の安否を気づかってやってきた真一と鉄の協力で形勢は逆転、岩倉邸は修羅場と化した。やがて鉄は口笛を残して死んでいった。逃げまどう岩倉を追いつめた真一は、誠吉に無事仇を、とらせてやった。そして、吹雪が冷く舞う中を刑務所へもどってゆく真一の姿があった。


清川虹子                        嵐寛寿郎

尾藤イサオ                                                           沢彰謙

題名:監獄人別帳
監督:石井輝男
企画:岡田茂、天尾完次
脚本:石井輝男、掛札昌裕
撮影:古谷伸
照明:中山治雄
録音:中山茂二
美術:石原昭
装置:米沢勝
装飾:山田久司
美粧:田中利男
結髪:横田美佳代
衣裳:松本俊和
擬斗:三好郁夫
振付:藤間勘具次
記録:石田照
編集:堀池幸三
音楽:鏑木創 主題歌:渡瀬恒彦「監獄ブルース」
フィルム:富士フィルム
現像:東映化学
進行主任:上田正道
監督補佐:荒井美三雄
助監督:依田智臣
スチール:中山健司
出演:渡瀬恒彦、伊吹吾郎、佐藤允、大辻伺郎、賀川雪絵、清川虹子、内田良平、尾藤イサオ、荒木一郎、嵐寛寿郎、沢彰謙、上田吉二郎、大泉滉、葵三津子、片山由美子、相川圭子、千葉敏郎
1970年日本・東映/シネスコサイズ・カラー95分35mmフィルム
監獄人別帳 -DVD-
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。


監獄人別帳

映画「新 仁義なき戦い 組長最後の日」


菅原文太                      松原智恵子

今回は深作欣二監督1976年製作「新 仁義なき戦い 組長最後の日」をピックアップする。
“仁義なき戦い”シリーズ8作目の本作は、暴力団の抗争の中で常に上部組織に泣かされる弱小組織の男が、組長の命を狙い続ける執念を描いたものだ。深作欣二監督のシリーズ最後の監督作である。


和田浩治                      藤岡琢也

【ストリー】
坂本英光組長(小沢栄太郎)が統率する大阪の坂本組は、日本最強、最大の組織を誇る暴力団である。閏年の2月29日夜、坂本組と尼ケ崎・河原組の準構成員であるバイ人同志の縄張り争いでパンマが殺害され、抗争事件へと発展した。仲間を殺された坂本組系・米元組々員の中道(和田浩治)が、単身、河原組へ殴り込み、拳銃を乱射したため、河原組々員がその報復として、米元組長(藤岡琢也)を狙撃、次いで坂本組の事務所を爆破させた。これは、九州・広島・下関の組織からなる七人会のバック・アップを得た河原組の坂本組への挑戦だった。坂本組では緊急幹部会が開かれたが、河原組壊滅を唱える米元派と、警察の介入を恐れる松岡派との意見が対立した。一方、九州玄竜会では、坂本組の九州進攻作戦に備え、会長の船田(名和宏)、副会長の岩木(多々良純)以下、各組長が着々と準備を進めていた。老齢の岩木組組長の後継者と目される若者頭の野崎修一(菅原文太)は沈着冷静な男として評判が高いのだが、中道の女房・麻美(松原智恵子)が、野崎の妹であり唯一の肉親であるため、微妙な立場に立たされていた。阿蘇温泉で岩木が女マッサージ師によって殺された。米元の放った刺客であると睨んだ野崎は、寒川、伸吉他の子分を連れて大阪へ乗り込んだ。だが、その間に坂本、松岡、米元たちが小倉へ行き、船田と和解協定を結んだ。そして船田に説得された野崎は断腸の思いで復讐を諦らめるのだった。だが、野崎からの中止命令を待たずして米元の家に潜入していた殺し屋ジョーが、米元の妾と子分を殺してしまったために、烈火の如く怒った米元は船田に熱湯を浴びせかけ、再び険悪な空気が漂った。しかし、意外にも船田は、智恵者・松岡の提案した玄竜会には分の悪い和解に同調する腹づもりだった。ついに野崎は、船田の反対を押し切って、単独で坂本の首をとる決意をし、ハイウェイでドライブする坂本たちをダンプカーで襲った。だが、今一歩のところで、伸吉が運転を誤り失敗。野崎の首に500万円の賞金を賭け坂本組に謝罪した船田は、米元を破門し体面をつくろった松岡の絵図にまんまと陥っていくのだった。今や、手負い獅子となった野崎は、大阪に潜入、チャンスを狙っていた。そして野崎をつけ狙うチンピラ西本、子分でありながら裏切った寒川らを始末した野崎は、麻美の家を訪れた。九州の事件で片足を失った中道は、止める麻美を振り切り、野崎を撃とうとするが、車に轢ねられ即死してしまった。そして野崎は、天王寺駅でついに坂本を追いつめたが、坂本は発病して救急車で病院に運ばれ、野崎もまた坂本の子分に撃たれ、逮捕されて警察病院に運ばれた。しかし、麻美、伸吉の協力を得て病院から脱出した野崎は、坂本の病院先へ向かった。そして、付き添いの松岡を振り切り、今では枯木同然に横たわる坂本に向って、引き金を引いた……。


横山リエ                      桜木健一

題名:新 仁義なき戦い 組長最後の日
監督:深作欣二
企画:日下部五朗、橋本慶一、奈村協
脚本:高田宏治
撮影:中島徹
照明:増田悦章
録音:中山茂二
美術:雨森義允
装置:近藤幸一
装飾:柴田澄臣
背景:平松敬一郎
美粧:伊藤実
結髪:福本るみ
衣装:岩道保
技斗:上野隆三
編集:市田勇
記録:田中美佐江
音楽:津島利章
フィルム:富士フィルム
現像:東映化学
製作主任:伊藤彰操
演技事務:森村英次
助監督:野田和男
スチール:中山健司
出演:菅原文太、松原智恵子、和田浩治、桜木健一、地井武男、尾藤イサオ、小沢栄太郎、成田三樹夫、藤岡琢也、八名信夫、名和広、多々良純、中原早苗、三上寛、川谷拓三、横山リエ
1976年日本・東映/シネスコサイズ・カラー91分35mmフィルム
新仁義なき戦い 組長最後の日 -DVD-
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。


「新 仁義なき戦い 組長最後の日」成田三樹夫      菅原文太

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