映画「座頭市 牢破り」


勝新太郎                       三國連太郎

今回は山本薩夫監督1967年製作「座頭市 牢破り」をピックアップする。
本作は、勝プロダクション第一回作品で、“座頭市”シリーズ第16作目になる。俳優陣はベテランが勢揃いして山本薩夫監督が演出された事もあり、勧善懲悪の座頭市にならずに、刀による闘いでの人の生死を、観客に問いかける作りが良かった。

座頭市シリーズ


西村晃                        浜田ゆう子

【ストリー】
一宿一飯の恩義から富蔵親分(遠藤辰雄)の使いに立った座頭市(勝新太郎)は、相手の朝五郎親分(三國連太郎)の気っぷのいい態度に難題をまとめることができたのだが、朝五郎を追い落す機会だと、もめごとが起るのを待っていた富蔵の反感を買った。おまけに市が、百姓を大切にする朝五郎に惚れて頼まれもしないのにインチキ賭博の人質にとられていた百姓を富蔵の手から助け出したことから、頭にきた富蔵は子分の貞松(酒井修)や仁三郎(細川俊之)らに市を襲わせた。彼らが市の居合にかなうはずもなかった。市はその夜、千葉周作直伝の腕を持ちながら、国の大本は農にありと剣を捨てて土地の百姓たちと農業に励む大原秋穂(鈴木瑞穂)を知った。大原は剣の道は虚しいと、暗に市をさとした。しかし翌日、再び市を狙う富蔵たちに、市は手向わずにはおれなかった。富蔵を斬った市は再び旅に出た。アンマ仲間に入って安らかな日々を得たいと願った市だったが、成金にへつらう盲人の世界もいやらしいものだった。そんなある日、市の前に仁三郎が現われ、関八州出役の須賀(西村晃)から十手を預った朝五郎が百姓を痛めつけ、仁三郎の恋人志乃(浜田ゆう子)を須賀の妾にされたと語った。朝五郎の人柄を知る市は耳をかさなかった。ところが数カ月後、市は女郎屋で会った志乃から彼の言葉が正しかったことを知った。百姓をたぶらかし一揆を企てたとの理由で大原が縛についているとも知った市は、急ぎ村に戻った。村は荒れはて、須賀や新興商人の山源(松下達夫)と結託した朝五郎一家に、百姓たちは惨めな生活をしていた。朝五郎を信頼していた市にとって、これは意外なことだった。そんな市を朝五郎はせせら笑っていた。市は大原を助けようと朝五郎一家に殴り込んだが、一足ちがいに大原は江戸に送られた。その後を追った市は峠で一行に追いつき、須賀や朝五郎らと悽惨な闘いをまじえ、彼らを倒して峠を一面の血の海に染めた。市は大原を助けることができたものの、朝五郎に裏切られた。彼の心は、何か虚しく、またひとり、何処ともなく旅だっていくのだった。


鈴木瑞穂                        細川俊之

題名:座頭市 牢破り
監督:山本薩夫
企画:伊藤武郎、宮古とく子
製作:永田雅一
原作:子母沢寛
脚本:中島丈博、松本孝二、 猿若清方
撮影:宮川一夫
照明:中岡源権
録音:林土太郎
美術:西岡善信
擬斗:土井茂
記録:藤岡輝夫
編集:菅沼完二
音楽:池野成
現像:東洋現像所
製作主任:西沢鋭治
助監督:土井茂
スチール:藤岡輝夫
出演:勝新太郎、三國連太郎、西村晃、浜田ゆう子、鈴木瑞穂、細川俊之、石山健二郎、遠藤辰雄、藤岡琢也、松下達夫、玉川良一、京唄子、鳳啓助、古川緑九、伊達三郎、酒井修
1967年日本・勝プロダクション+大映京都撮影所/シネスコサイズ・カラー95分35mmフィルム
-座頭市 牢破り -DVD-
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。


勝新太郎「座頭市 牢破り」

映画「氷点」


「氷点」若尾文子

若尾文子                       大楠道代

今回は山本薩夫監督1966年製作「氷点」をピックアップする。
本作は三浦綾子氏の同名小説を映画化したもので、氷点とは心が凍るほどの凍え死ぬ限界点を意味するそうだ。何と言っても若尾文子さん、大楠道代さんを始めとする俳優陣の存在感が壮絶だ。
現在のテレビドラマ俳優にはない女優オーラがある。

1965年11月末、大映が「氷点」の映画化を決定、永田社長から山本薩夫監督に声がかかる。山本監督は2時間前後のカラー作品にしたかったが、テレビが終わるまでに封切るため、公開開始の3月末という予定は動かせず、1時間37分の白黒映画となり、陽子が白紙の答辞を読むシーンはカットされた。翌年3月23日、朝日新聞東京本社で映画『氷点』の試写会が2回開かれるが、社告が出てから5日間の間に21,739通の応募があり、締切後も2,000通の応募があったという。1966年3月26日、大映映画『氷点』が公開される。
封切り直後の土・日曜の全国主要4館(東京・浅草、名古屋、京都、大阪・梅田)の入館者数から推定すると、同社の看板シリーズである「座頭市」に匹敵する観客動員数160万人、興行収入3億2千万が見込まれ、地元の旭川では人口の約1割に当たる2万5千人が前売り券を買ったという。(「氷点」を旅する参照)


船越英二、鈴木瑞穂                船越英二、森光子

【ストリー】
辻口啓造(船越英二)は父の遺した病院を継いでいる。博愛家でとおってきた彼が、娘ルリ子を殺害した犯人の娘妻夏枝(若尾文子)に秘密で養女にすることを思いたったのは、ルリ子の代りに女の子を育てたいという夏枝の望みを迎える風を装いながら、娘を殺された時刻に夏枝が眼科医村井(成田三樹夫)と不貞を働いていたのでは、との猜疑の拭いきれないあせりのためではなかったのか。夏枝は何も知らない。彼女はその養女陽子(大楠道代)をを異常なほど溺愛した。そんなある日、乳児院に勤める啓造の親友高木(鈴木瑞穂)に宛てた夫の手紙を見て、夏技は陽子の出世の秘密を知った。人格の一変した夏枝に、啓造も自分の偏狭さと軽卒を侮いた。長男徹(山本圭)は直感で陽子の秘密を知り、ただ一人の庇護者になろうと心に決めた。八年過った。その間に徹は妹の秘密を知ったが、陽子の方も母の冷い仕打に耐えて明るい娘に成長していた。徹はそんな彼女を異性として愛するようになっていたが、大学の親友北原(津川雅彦)に陽子を託す心づもりで、彼を夏休みに紹介した。二人はなんとなく直感で愛しあうようにみえた。が、夏枝の方が北原に興味を示し、歓待した。その頃、夏枝の親友で陽子も慕っている辰子(森光子)が、啓造に陽子を養女に欲しいと申し出た。辰子の同情だった。夏枝は陽子宛の北原の手紙を陽子の意思と偽って返送したり、妹との写真を婚約者と写したものだと言ったりして二人を離そうとしたが、やがて陽子たちの仲が氷解したとき、夏枝は陽子の面前で北原に彼女の過去をぶちまけた。罪の血に絶望した陽子は遺書を認め、ルリ子が殺された川原で睡眠薬を呑んだ。その間、北原はその真実を求めて陽子を世話した高木に会った。高木は実はかつての仲間の不義の子を、犯人の子として啓造たちに育てさせていたのだった。それは彼の同情でもあった。皆、後悔した。悔いの中で、陽子の生命は再び息づきはじめていた。


成田三樹夫                     大楠道代、山本圭

題名:氷点
監督:山本薩夫
企画:三輪孝仁、伊藤武郎
原作:三浦綾子
脚本:水木洋子
撮影:中川芳久
照明:渡辺長治
録音:須田武雄
美術:間野重雄
編集:中静達治
音楽:池野成
製作主任:林秀樹
助監督:崎山周
スチール:柳沢英雄
出演:若尾文子、大楠道代(現:大楠道代)、山本圭、津川雅彦、森光子、船越英二、成田三樹夫、鈴木瑞穂、明星雅子、仲村隆
1966年日本・大映/シネスコサイズ・モノクロ107分35mmフィルム
氷点 -DVD-
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。


大楠道代、津川雅彦                津川雅彦、大楠道代

若尾文子、大楠道代

映画「武器なき斗い」

武器なき斗い武器なき斗い
下元勉                      渡辺美佐子、下元勉

今回は山本薩夫監督1960年製作「武器なき斗い」をピックアップする。
原作は西口克己氏の小説「山宣」を映画化したもので、山宣とは、右翼の凶刃に倒れた労働農民党の代議士・山本宣治氏の事だ。本作は、西口克己氏の講演会の後で、大阪市電の勤務者が映画化を提案したのを契機に企画され、製作資金の募金は大阪市交通局の労組、私鉄の労組、大阪総評傘下の労働者が呼びかけて始まった。没後30周年を記念する映画として、関西在住の3,000人が発起人になり、”山宣映画化実行委員会”を結成し、700万円のカンパが集められた。撮影にあたっては、延べ3,700人にのぼるエキストラが動員されたそうだ。

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中谷一郎                      宇野重吉

【ストリー】
大正12年、関東大震災が日本の経済に大打撃をあたえた直後。時の政府・資本家たちは治安維持法を制定してプロレタリア弾圧にのりだしていた。京都同志社大学で教壇にたって生物学者山本宣治は、その頃新しい考えかたによる性教育の必要を痛感して、教室で講義をしたり労組の集りで産児制限の講演をおこなったりしていた。だが、大学当局や政府筋は彼の行動を妨害した。大正14年。ソヴェト労組代表が来日し、これを機会に政府は多くの自由主義的な学生や労勧者を検束した。宣治も同志社を追放され、労働党の運動に加わった。佐山村農民組合争議の惨状を目のあたりにして、彼は自分の生物学者としての考えかたを世に徹底させるためには、まず政治を改めねばならぬのを知った。妻千代や三人の息子は彼のよさ理解者であった。生家である料亭花屋敷を経営する父亀松、母多年も、考えかたこそ異れ、息子を信頼していた。佐山村争議で宣治は小作人さき・清母子や共産党員本田、彼に好意をよせる娘のぶなどを知った。やがて金融恐慌がやってきて、支配階級は侵略戦争を起した。昭和3年、普選に労働党から立候補した宣治は、苦しい選挙干渉と弾圧をしりぞけて代議士に当選した。3月15日の全国的労農階級弾圧一斉検挙を迎えて、宣治は断固支配階級とたたかった。が、彼の身体は激しい日々の連続によって病魔におかされていた。政府は治安維持法をさらに改悪しようとした。宣治は一人、本会議場でこれの反対演説をおこなう決心をした。しかしその日を目前にひかえた夜、彼は神田の光来館で右翼の兇刃に倒れた。日本の暗い時代はますます重くるしく、ひろがっていこうとしていた。
--昭和4年のその日から年月が経て、侵略戦争は敗戦によって終止符をうった。はじめて赤旗に囲まれ、おこなわれた山宣の命日に、改めて人々は彼の姿を胸によるがえらせるのだった。

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多々良純                       小沢昭一

題名:武器なき斗い
監督:山本薩夫
企画:山宣映画化実行委員会
製作:角正太郎、伊藤武郎
原作:西口克己「山宣」
脚本:依田義賢、山形雄策
撮影:前田実
照明:田畑正一
録音:安恵重遠
美術:久保一雄
編集:河野秋和
音楽:林光
現像:東洋現像所
協力監督:今井正、小坂哲人
出演:下元勉、中谷一郎、渡辺美佐子、宇野重吉、東野英治郎、山本學、河原崎長十郎、小沢栄太郎、三島雅夫、多々良純、利根はる恵
1960年日本・大東映画/シネスコサイズ・パートカラー140分35mmフィルム
武器なき斗い [DVD]
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。

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