映画「男はつらいよ・寅次郎相合い傘」


船越英二、渥美清                浅丘ルリ子(マドンナ役)

今回は山田洋次監督1975年製作「男はつらいよ・寅次郎相合い傘」をピックアップする。
第15作となる本作のロケ地は、青森県青森市、北海道函館市、札幌市、小樽市、長万部町などで行われ、封切り時の観客動員は200万人、配給収入は9億3,000万円だったそうだ。当時のロードショー入場料金は1,000円、併映は「ザ・ドリフターズ カモだ!!御用だ!!(監督:瀬川昌治 出演:ザ・ドリフターズ、倍賞美津子、キャンディーズ、伊東四朗)」であった第11作「寅次郎忘れな草」編で嵌り役リリーを演じた浅丘ルリ子さんが再び登場する。


山田洋次監督と撮影の高羽哲夫氏 左はArriflex 35 BL I型 (同録用) 左はArriflex IIC BV(サイレント)

渥美清、浅丘ルリ子、船越英二              下條正巳、前田吟、倍賞千恵子、三崎千恵子

【ストリー】
相変らずのテキヤ稼業で全国を旅して廻る車寅次郎ことフーテンの寅(渥美清)は、東北のとある田舎町で、変な男と出会った。男は兵頭謙次郎(船越英二)と名乗り、親の七光りもあって一流会社の“おかざり重役”で、冷たい家庭と平々凡々な生活にあき蒸発したのだった。事情を聞いた寅は、柴又の妹・さくら(倍賞千恵子)のところへ電話して、兵頭の家族との連絡をとるなどして一生懸命。翌日から兵頭は寅と一緒に旅をして廻った。そんなある日、函館の屋台のラーメン屋で、寅は二年ぶりにリリー(浅丘ルリ子)と再会した。リリーは鮨屋の亭主と離婚し、もとの歌手に戻って、全国のキャバレーを廻っていたのだ。その夜再会を祝って、寅とリリー、そして兵頭の三人はドンチャン騒ぎとなった。そして、三人一つの部屋に雑魚寝と相なった。ところが、冷え性だと言ってリリーが、寅の寝ている蒲団にもぐり込むが、寅はそれを断ったために、リリーは仕方なく今度は兵頭の蒲団の中にもぐり込んだ。驚ろいた兵頭は、おかげでこの夜は一睡もできなかった。翌日から三人の、金は無くわびしいながらも楽しい旅が始った。駅のベンチで寝たり、野宿をしたり、兵頭は味わったことのない生活に、徐々に人間らしさを取り戻して来た。三人が小樽に来た時、兵頭がこの町に初恋の人がいることを告白。彼女(岩崎加根子)は、夫に先立たれひっそりと喫茶店を経営していたのだったが、兵頭は彼女に会ったものの、現在の心境を語ることはできなかった。そんな兵頭を寅が、女一人幸せにできないのか、と責めた事から、リリーが怒りだし、三人はバラバラになり、そこで三人の旅は終ってしまった……。数日後、寅は久しぶりに柴又に帰って来たものの、リリーと兵頭との別れが気になり何となく憂うつだった。そんな時、突然、リリーが訪ねて来たので、寅は俄然元気になった。それからというものリリーと寅は夫婦きどりの仲の良さで、とらやの人々はおろか、御前様(笠智衆)、町の人々までが二人は夫婦になるのにふさわしいと思うようになった。ある日、さくらたちがリリーに寅との結婚を聞いたところ、リリーは承諾した。ところがその事を寅に伝えると、「冗談だろう」と相手にしない。隣りでそれを聞いていたりリーは、「そうよ、冗談よ」と寂しそうにとらやを出て行くのだった。「すぐ追って行きなさい」と言うさくらに、寅は「リリーは賢くて強い女よ、結婚しても俺とじゃうまくいかないさ」と言うだけだった……。すでに夏も終りに近づいた頃、とらやでは、訪ねて来た兵頭を相手に寅の噂に花を咲かせていた。寅とリリーの仲をそっとしておいてやったなら、二人の友情と恋は長くつづいたのかもしれないのに、と……。


倍賞千恵子、下條正巳、太宰久雄、前田吟 下條正巳、倍賞千恵子、佐藤蛾次郎、笠智衆

題名:男はつらいよ・寅次郎相合い傘
監督:山田洋次
企画:高島幸夫、小林俊一
製作:島津清
原作:山田洋次
脚本:山田洋次、朝間義隆
撮影:高羽哲夫
照明:青木好文
録音:中村寛
調音:松本隆司
美術:佐藤公信
編集:石井巌
音楽:山本直純 主題歌・唄:渥美清
フィルム:富士フィルム
現像:東京現像所
製作主任:内藤誠
製作進行:玉生久宗
助監督:五十嵐敬司
スチール:長谷川宗平
出演:渥美清、浅丘ルリ子、倍賞千恵子、前田吟、三崎千恵子、太宰久雄、笠智衆、佐藤蛾次郎、下條正巳、船越英二、岩崎加根子、久里千春、早乙女愛、米倉斉加年、上條恒彦、宇佐美ゆふ、谷よしの、村上記代、光映子、秩父晴子、中村はやと
1975年日本・松竹/シネスコサイズ・カラー91分35mmフィルム
公式サイト
男はつらいよ・寅次郎相合い傘 -DVD-
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。


渥美清、浅丘ルリ子

映画「煉獄エロイカ」

煉獄エロイカ煉獄エロイカ
岡田茉莉子                    岡田茉莉子、岩崎加根子

今回は吉田喜重監督1970年製作「煉獄エロイカ」をピックアップする。
本作は吉田監督作品の中で最も前衛的であり、実験的な映画である。筋を追うという映画の見方をすると難解なのだが、体験をするという見方をすれば納得出来る。「エロス+虐殺」「告白的女優論」「戒厳令」の長谷川元吉氏が撮影を担当されている。

作品リスト

煉獄エロイカ煉獄エロイカ
岩崎加根子

【ストリー】
庄田力弥(鴉田貝造)40歳、現在原子力機構にたずさわる研究職員。彼は日常の平和な、根無し草のような頼りなく漂っている時間に生きている。それがある日付のときから、破滅の道を選ばざるをえなくなる。庄田の妻夏那子(岡田茉莉子)が見知らぬ少女を(木村菜穂)誘拐したのである。それは奇妙な事件だった。得体のしれない闖入者のように、少女の方から彼らの家庭に入りこんできたのである。妻は少女が力弥の過去となんらかの関係があると信じ、またそれを裏づけるように力弥の昔の友人田屋(牧田吉明)が登場する。たしかに力弥には隠された暗黒の時代があった。戦後日本の前衛党が非合法化された時代、大学生であった力弥はその細胞の末端にあって、当時計画されたアメリカ大使誘拐事件に加わったメンバーだった。だが事実は前衛党の挑発行為であったことが暴露され、裏切られた力弥たちはその重い過去を背負ったまま沈黙したのだった。妻が誘拐した見知らぬ少女の背後にかつてのメンバーであり、あの事件以来海外に姿を消していた友人田屋(牧田吉明)の帰国。それらの暗示は力弥にあのいまわしい過去が現在にも影をおとしていることを教え、戦慄させるのだった。そしてその不安は現実に起る。力弥は脅迫された。だがその相手は彼のまったく知らない若い娘でありその背後にあるものは反戦グループと自称する組織だった。そして彼らの計画しているものはアメリカ大使誘拐であり、庄田夫妻の少女誘拐を理由に、彼等への協力を強いられたのだ。二十年近い時間をへだてて、偶然まったく相似したアメリカ大使誘拐計画の全貌。力弥は思わず幻惑の淵に溺れた。

煉獄エロイカ煉獄エロイカ

題名:煉獄エロイカ
監督:吉田喜重
製作:吉田喜重、岡村精
脚本:山田正弘、吉田喜重
撮影:長谷川元吉
照明:鎌田勉
録音:瀬川徹夫
音効:三枝一博
美術:山口修
衣装:森英恵
編集:安岡洋之
音楽:一柳慧
現像:キヌタラボラトリー
助監督:岡村精
スチール:石松建
出演:岡田茉莉子、鵜田貝造、岩崎加根子、武内淳、木村菜穂、牧田吉明、筒井和美
1970年日本・現代映画社+ATG/スタンダードサイズ・モノクロ118分35mmフィルム
煉獄エロイカ [DVD]
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。

煉獄エロイカ煉獄エロイカ
木村菜穂

映画「血は渇いてる」

血は渇いてる血は渇いてる
佐田啓二

今回は吉田喜重監督1960年製作「血は渇いてる」をピックアップした。
本作は白黒テレビが放送開始して間もない頃にマスコミをテーマにした先見性があったと言える作品だ。本作が日本で公開されてから37年後にコスタ=ガヴラス監督が「マッド・シティ」で「興味本位なメディアとそれに踊らされる民衆の姿、真実が歪められていく様」を描いているが、本作とテーマはある意味同じだが、テレビが放送開始の頃に作られたという事実に敬服する。撮影は「戦場のメリークリスマス」の巨匠成島東一郎氏が担当されている。スタジオから飛び出し、東京の街を縦横無尽に手持ちカメラが冴え渡っているのは見所だ。

作品リスト

血は渇いてる血は渇いてる
佐田啓二               戸浦六宏、芳村真理

【ストリー】
東洋毛織で社員のクビ切り通告があった時、社員の木口(佐田啓二)は皆を助けようとして拳銃自殺を図った。木口は老社員・金井(織田政雄)の機転で一命を取り止めた。この事件は、クビ切り争議と自殺という社会問題として報道された。昭和生命の宣伝広報課に勤めている野中ユキ(芳村真理)は、木口を生命保険の宣伝に利用しようと考えた。木口にコマーシャル・タレントになってくれと頼んだが、断られた。しかし、ユキは金井を抱きこみ、木口とコミで使うことにし、生活の不安を訴えている木口の妻(岩崎加根子)をクドくことで木口を動かすのに成功した。昭和生命のビルには、木口が拳銃をこめかみに当てている写真がかけられ、通行人の目を見はらせた。ユキはまた、学生時代の友達で週刊誌の記者をしている原田(三上真一郎)に木口を売りこんだ。原田は木口の自殺は狂言自殺だといい、断った。昭和生命は木口を使った宣伝が成功し、契約高は急増した。木口はいまやスターであった。ユキが彼を激励し、リードした。原田が木口を叩きつぶす機会を狙った。木口の妻と関係を結び、その時盗み取りした写真を木口に見せた。木口は勝手な中傷だとして取り上げなかった。木口はある日、右翼の男に腕を刺された。その報道は、木口にまた同情を集めた。原田はモデルの洋子を使い、木口を連れ出してスキャンダル写真を撮ることに成功した。その写真が週刊誌に掲載された。木口は原田と対決し、逃げる原田を突きとばした。原田は通りかかった車にはねられた。この木口の傷害事件は、社会にも昭和生命にもショックを与えた。重役達は木口をクビにした。彼は再び重役達の前で自殺しようとした。専務は自殺常習犯だろうとうそぶき相手にしなかった。木口は拳銃を撃ち、死んだ。ユキは原田に言った。「あんたの負けね」「死んだ奴は強い、でもな、俺は勝った、勝ち残ったんだ」と、原田は昂然とうそぶいた。

血は渇いてる血は渇いてる
佐田啓二、芳村真理             佐田啓二、岩崎加根子

題名:血は渇いてる
監督:吉田喜重
製作:佐々木孟
脚本:吉田喜重
撮影:成島東一郎
照明:田村晃雄
美術:佐藤公信
録音:田中俊夫
衣装:田口よし江
編集:杉原よし
音楽:林光
現像:東洋現像所
出演:佐田啓二、三上真一郎、岩崎加根子、芳村真理、戸浦六宏、織田政雄
1960年日本・松竹/シネスコサイズ・モノクロ87分35mmフィルム
血は渇いてる [DVD]
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。

血は渇いてる血は渇いてる
芳村真理、三上真一郎

 

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