映画「時の娘」


真喜志きさ子                       橋水光

今回は内藤誠監督1980年製作「時の娘」をピックアップする。
本作は「ツィゴイネルワイゼン」に続いて荒戸源次郎氏が率いるシネマ・プラセット第2回作品であり、東映の専属監督だった内藤誠監督のフリー第1作になった。出演は劇団天象儀館の俳優とベテラン映画俳優の布陣で、寺山修司ティストの鈴木清順原作の世界観を描いている。


梅宮辰夫                        加賀まりこ

【ストリー】
江戸情緒の面影もすっかりなくなった元吉原。想太郎(梅宮辰夫)の母と花火師富造(松本克平)は、昔、恋仲であったが、富造は、江戸花火師の意地と、床についたまま明日も知れぬ昔の惚れた女の為、仲間の花火職人と語らって、今は語り草でしかない江戸前の大花火を、法を破っても打ち上げようとしていた。しかし、名人気質で、死んだ母をかえりみなかった父親の職人としての情熱をかなしく恨んでいた娘の紋(真喜志きさ子)は、警察に通報しても、それも止めようとする。江戸の華はついに打ち上がらず終りかと思えたが……。


橋水光、加賀まりこ                     藤井千代美

松本克平                            殿山泰司

題名:時の娘
監督:内藤誠
企画:小田知雄
製作:荒戸源次郎
原案:鈴木清順
脚本:佐々木守、内藤誠
撮影:鈴木史郎
照明:斉藤政弘
録音:八木降幸
音効:伊藤克己
整音:岩田広一、山本逸美
美術:多田佳人
化粧:橋本直枝、川村美加
記録:大鶴由子
編集:菅野順吉
音楽:殿原秀男
現像:東映化学
製作進行:平沼善幸
製作事務:宗像栄子
助監督:祭主恭嗣
監督助手:酒井直人、高橋徹、中島竹彦、宮下真
撮影助手:遠藤政史、黒沢常男、下元寺郎、下元哲
照明助手:岡本滝河、丸山幸雄
美術助手:平松正之、小間豊
編集助手:井手真人
スチール:志水誠
出演:真喜志きさ子、橋水光、梅宮辰夫、加賀まりこ、藤井千代美、松本克平、殿山泰司、牧口元美、岸田今日子(NA)
1980年日本・シネマ・プラセット/ビスタサイズ・カラー80分35mmフィルム
時の娘 -DVD-
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。


時の娘

映画「この子の七つのお祝いに」


岩下志麻                       根津甚八

今回は増村保造監督1982年製作「この子の七つのお祝いに」をピックアップする。
本作はミステリー小説を映画化したものだが、早い段階で犯人が分かってしまうという構成だ。そう思いつつも、岸田今日子さんの怪演と岩下志麻さんの感情を殺した熱演に見入ってしまう作品である。


杉浦直樹、岩下志麻               室田日出男、小林稔侍

美しく、狂おしく 岩下志麻の女優道」 (春日太一著・文藝春秋刊)より
A:岩下志麻 Q:春日太一
————————————————————————-
Q:次にうかがいたいのは「この子の七つのお祝いに」です。
A:この映画のことは、今回見直すまでほとんど忘れていました。というのも、増村監督の演出と私が全く合わなかったんです。それでも最終的には監督に従ってやりましたけど。増村さんは独自の演出のされ方でした。例えばレンズから覗いていて「この1メートルの横幅の中で動いて下さい」とか、そういう要求をなさるんですよ。そうすると、こちらはとても不自然な動きになります。それが私は耐えられなくて。自然にやれないので。それがまずできなかったのと、それと声の出し方です。私が演じたのは怨念を持った女でしたが、表向きは自然にやっていて、実は裏に怨念を持っていた女という役作りをしていたら、監督が「低い声で、しゃがれた声で、恨みを持った声で」と言って、ちょっとでも高い声を出すとNGが出るんです。「もっともっと」って。監督としては岸田今日子さんが演じられたような、ああいうおどろおどろしさが狙いでした。
Q:たしかに、増村監督は芝居にある種の分かりやすさを求める傾向があります。
A:ですから、杉浦直樹さんに「愛してるわ」と言うセリフでも、普通に「愛してるわ」というとNGで、くっきりはっきり低い声で「愛してるわ!」と言うとOKでした。怨念を持って、低い声で、芝居がかって言うとOKなんです。その辺が、私が持っていた麻矢という女の人のイメージと異なっていました。でも、今見直すと監督の狙いもよく分かります。たしかに、私が考えたように普通にやっちゃうと怨念劇にならなかったかもしれません。自分の父親への復讐だけのために気が狂ったように。怨念だけで一生を生きているわけですから。
でも、当時は自然にできないのがどうも耐えられなくて。根津甚八さんも抵抗していらっしゃいました。根津さんはアングラ系劇団のご出身の方ですから、芝居が自然体なんですよ。根津さん、「ヨーイ、スタート」と言われても芝居を始めなかったこともありましたし。最終的に根津さんし自分の自然体をかなり生かしておやりになったんじゃないかと思います。Q:たしかにあの作品では根津さんだけがいつもの「根津流」で通しているといいますか、増村さんの芝居のスタイルと違いますね。声もあまり張っていませんし。
A:根津さんは違っていました。でも杉浦さんは、「増村さんの狙いがあるから。僕はこの演出方法はとてもよく分かる」とおっしゃっていました。私が「分からない」と言ったら、「それでも増村監督に従ってやらないとこの作品は失敗作に終わるから、従ったほうがいい」って。
Q:杉浦さんは大映テレビのドラマで増村さん脚本の作品に出ていますので、流儀が分かっていたのかもしれませんね。
A:それから、これは今思うと私でも信じられないことなのですが、「この子の七つのお祝いに」は「疑惑」後半の一部が掛け持ちだったんです。私としては「疑惑」に神経が行っていたんだと思います。それもあって「この子の七つのお祝いに」は疑問を持ちながら演じたのでわりと記憶から飛んでいたんですよ。

※1982年野村芳太郎監督「疑惑

【ストリー】
次期総理の座を狙う大蔵大臣磯部の私設秘書・秦一毅(村井国夫)の元お手伝い・池畑良子(畑中葉子)が殺された。ルポライター、母田耕一(杉浦直樹)は政界の謎をあばこうと秦の身辺をさぐっていた矢先の事件で秦の内妻、青蛾(辺見マリ)が奇妙な手型占いをするという噂をきく。しかもその的中率を頼んで大物政治家、財界人等が己れの手型を持って続々と詰めかけており、秦自身もこの占いのお陰で現在の地位を築いたというのだ。母田は青蛾の影を追い始める。そんなある日、後輩の事件記者須藤(根津甚八)に、ゆき子(岩下志麻)という変り者の美人ママがいるというバーに連れて行かれる。母田は彼女に強くひかれ、彼のマンションで密会するようになった。だが母田は何者かによって殺害され、須藤は危険を承知で母田の仕事を引き継ぎ、彼の残した足跡を探る。昔、ある麻布のバーに占いのよく当たる娘がいたという事、ママの名前は麗子。そして秦の内妻、つまり青蛾の正体が麗子である事をつきとめる。やがて彼は謎の占いの娘の写真を見せられるが、それは青蛾ではなく倉田ゆき子だった。追いうちをかけるように、須藤のもとに青蛾惨殺の報が届いた。さらに、ホテル王高橋佳哉(芦田伸介)にゆき子から呼び出しがかかった。高橋に同行した須藤の前にゆき子が姿を現わした。ゆき子の告白によれば高橋は母の仇だという。敗戦の混乱の中、妻と生き別れて満州から引き揚げてきた高橋は真弓(岸田今日子)と結ばれ、赤ん坊が生まれた。だがその赤ん坊はすぐに病死し真弓はショックのあまり精神に異常をきたした。高橋はふとした偶然で生き別れていた妻と再会し、真弓の前から姿を消して別に家庭を持った。二人の間に生まれた赤ん坊は、復讐鬼となった真弓に盗まれ、30数年が経過した。その間、真弓に育てられたのが盗まれた赤ん坊のゆき子で、高橋に復讐する事だけを徹底的に教え込まれ、占いという特殊能力を生かし、青蛾を使って高橋が目の前に現われる日を待っていたのだが、途中、おじ気づいた青蛾を殺害した。高橋に、真弓の本当の娘でない事を教えられたゆき子はあまりの残酷さに発狂寸前だった。


村井国夫、辺見マリ                中原ひとみ、根津甚八

題名:この子の七つのお祝いに
監督:増村保造
製作:角川春樹
原作:斉藤澪
脚本:松木ひろし、増村保造
撮影:小林節雄
照明:川崎保之丞
録音:井家眞紀夫
音効:佐々木英世
美術:間野重雄
装置:荒井新一
装飾:神田明良
衣装:相沢登記雄 (松竹衣裳)
美粧:入江壮ニ
結髪:馬場利弘、沢辺満代
記録:山之内康代
編集:中静達治 ネガ編集:南とめ
音楽:大野雄二
現像:東洋現像所
プロデューサー:岡田裕介、中川完治
製作主任:高橋文雄
製作担当:生田篤
製作進行:宮本恵司、大崎裕伸、八鍬敏正
助監督:近藤明男
監督助手:藤由紀夫、加藤仁
撮影助手:竹沢信行、岩本道夫、笠間公夫
特機:塚本貞重
照明助手:国本正義、本田純一、大坂章夫、清野俊博、岡秀雄
美術助手:和田洋 セット付:藤田雄幸
録音助手:舛森強、小川健司
編集助手:大橋富代
スチール:清水紀雄
出演:岩下志麻、根津甚八、杉浦直樹、室田日出男、小林稔侍、辺見マリ、芦田伸介、岸田今日子、中原ひとみ、村井国夫、神山繁、畑中葉子、坂上二郎、名古屋章、戸浦六宏
1982年日本・角川春樹事務所+松竹/ビスタサイズ・カラー111分35mmフィルム
この子の七つのお祝いに -DVD-
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。


岸田今日子                   芦田伸介、根津甚八

映画「婉という女」


岩下志麻                         緒形拳

今回は今井正監督1971年製作「婉という女」をピックアップする。
本作は、封建制度下の土佐藩で40年もの間、幽閉された婉(えん)の実話を記した大原富枝氏の同名小説を映画化したもので、岩下志麻さんが好演している。しかし、狭いスタジオに配置された家屋のセットに感じた圧迫感は、狙いなのか?独立プロダクションでの低予算の為に用意出来なかったのか?分からなかった。


中村賀津雄                       北大路欣也

岸田今日子                       北林谷栄

【ストリー】
土佐藩家老野中兼山が失脚して死ぬと、藩政を握った政敵たちは、当時わずか四歳であった婉たち兼山の遺族を宿毛へ閉じ込めた。外界と完全に接触を断たれた婉は、せまい獄舎をそれ程苦しいとは思わなかったが、娘として成熟するにつれ、獄舎はせまくなり、自由ではなくなってきた。異腹の兄弟とはいえ、せまい一つの世界での男であり女である。「他人に会いたい!」くずれるような婉を学問が支えた。婉が二六歳になった時、奇蹟が訪れた。亡き父兼山を敬慕する青年学者谷秦山が幽居を訪ねてきたのである。獄吏に遮られ対面こそできなかったが、許された年に一、二度のそれも学問上の質疑に限られた秦山との文通は、婉の中の女の生命の炎を烈しく燃やした。そして四〇年ぶりに触れる新しい世界、岩石をくだき、白い飛沫をあげる川の流れ……。互の存在を知りあって実に二〇年ぶりの初対面。別れしな、婉の手をつつむように握った秦山の手のぬくもりは、いつまでも消えることはなかった。だが外界も婉ののぞんだような自由な世界ではなかった。世間の好奇な眼があり、妻子ある秦山と会う事は思うにまかせず、いぜんとして文通でしか心は通じあえなかった。世間という漠としてとらえがたい障害、しかも秦山はその力に抗じがたいものを見、婉から遠ざかろうとしている。秦山に想いを寄せる婉の気持とは逆に、秦山は婉に婚姻をすすめた。やがて思いがけぬ悲運が婉を見舞った。土佐藩の継続問題がもとで、秦山が幽居を命ぜられたのである。婉と秦山の立場が逆転した。「幽居にはじめて訪れたただ一人の人。こんどは私が会わずば気がすまぬ」。婉は駕篭を駆った。途中城代、山内主馬の行列とぶつかった。婉は侍たちをキッと見上げた。「元家老、兼山の娘、婉、邪魔だちは許しませぬぞ!」。婉の体内に政治へのすさまじい抵抗がみなぎっていた。

題名:婉という女
監督:今井正
企画:本田延三郎、高島幸夫、鈴木尚之、今井正
製作:内山義重
原作:大原富枝
脚本:鈴木尚之
撮影:中尾駿一郎
照明:平田光治
録音:安恵重遠
音効:福島幸雄
美術:川島泰三、平川透徹
装飾:荒川大
衣装:上野芳生
美粧:川口裕弘
技髪:川口義弘
考証:林美一
着付:橋本潔
記録:吉田栄子
編集:丹治睦夫
音楽:間宮芳生
製作主任:小山孝和
助監督:長井博
撮影助手:豊田収
照明助手:本橋俊男
美術助手:永沼宗夫
装飾助手:安田彰一
録音助手:中山義広
編集助手:丹治光代
スチール:木庭鴻志
現像:東洋現像所
出演:岩下志麻、中村賀津雄、緒形拳、江原真二郎、河原崎長一郎、北大路欣也、山本学、岸田今日子、加藤嘉、長山藍子、北林谷栄、織本順吉、田代美恵子、佐々木すみ江
1971年日本・ほるぷ映画/シネスコサイズ・カラー123分 35mmフィルム
婉という女 -DVD-
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。


婉という女

1 2 3 4