映画「夢千代日記」


吉永小百合                       北大路欣也

今回は浦山桐郎監督1985年製作「夢千代日記」をピックアップする。
本作はテレビドラマとして高視聴率を上げた「夢千代日記」」シリーズの完結篇として原作者の早坂暁氏の要望で映画化され浦山桐郎監督の遺作(1985年10月死去、享年55歳)である。浦山桐郎監督と吉永小百合さんの「キューポラのある街」から23年後の作品で、日本を代表する女優の変わらぬ美貌とスピリチュアルな透明感が映し出されて感慨深い。


田中好子                                            左時枝、名取裕子

【ストリー】
山陰の雪深い温泉町、湯村。“はる家”の夢千代こと永井左千子(吉永小百合)は広島で被爆していた。“はる家”は夢千代が母から受け継いだ芸者の置家で、夢千代の面倒を子供の頃から見てくれている渡辺タマエ(風見章子)、気のいい菊奴(樹木希林)、スキー指導員・名村(渡辺裕之)に恋し自殺未遂を起こす紅(田中好子)、好きな木浦(前田吟)のため、彼の妻の替わりに子を宿す兎(名取裕子)、癌で三ヵ月の命だという老画伯・東窓(浜村純)に、束の間の命の灯をともす小夢(斉藤絵里)たちがいる。神戸の大学病院で「あと半年の命」と知らされた夢千代は、帰りの汽車の窓から祈るように両手を合わせて谷底へ落ちて行く女性を見た。同乗していた女剣劇の旅役者の一人、宗方勝(北大路欣也)もそれを見ていたが、彼の姿は消えてしまう。捜査の結果、その女性の駆け落ちの相手、石田が逮捕された。彼の子を身篭った女が邪魔になったのだろうという事だったが、夢千代には自殺としか思えなかった。翌日、旅芝居好きの菊奴の案内で春川一座を尋ねた夢千代は、宗方に本当のことを教えてほしいと嘆願するが、宗方は「見ていません」と冷く答えるのだった。夢千代はタマエから、死んで行くしかない特攻隊員との愛のかたみに母が女手一つで自分を産み落としたことを聞かされ、一度だけ出来た子供を堕したことを悔いた。ある夜、夢千代は春川一座へ出かけ、熱を出して倒れてしまう。そして、宗方に背おわれて“はる家”に戻ってきた。春川一座のチビ玉三郎(白龍光洋)は、母である座長や菊奴の前で宗方の夢千代に対する気持を言いあてる。その時、宗方は菊奴から夢千代の命が長くないことを知らされた。証人として宗方の身元を調べていた藤森刑事(加藤武)は、彼の名がでたらめであることを知る。さらに、15年前、父親を殺して指名手配中であることをつきとめ、夢千代に警告するのだった。宗方は一座から姿を消した。彼を隠岐行のフェリーで見かけたという紅の言葉を頼りに、夢千代は隠岐島へ向った。そして、宗方に愛を告白し、二人は結ばれた。宗方は衰弱した夢千代を“はる家”へ連れ帰る。皆の見守るなか、夢千代は息を引きとり、宗方は藤森によって逮捕されたのだった。


浜村純                                       斉藤絵里

題名:夢千代日記
監督:浦山桐郎
企画:早坂暁
製作:岡田裕介、佐藤雅夫、坂上順、斎藤一重
脚本:早坂暁
撮影:安藤庄平
照明:渡辺喜和
録音:荒川輝彦
美術:井川徳道、佐野義和
装飾:渡辺源三
背景:西村三郎
衣装:森譲、黒木宗幸
美粧・結髪:東和美粧
技斗:上野隆三
振付:藤間勘五郎
記録:森村幸子
編集:玉木濬夫
音楽:松村禎三 和楽:浪花三之介
現像:東映化学
製作主任:長岡功
助監督:鈴木秀雄
スチール:中山健司
出演:吉永小百合、名取裕子、田中好子、樹木希林、北大路欣也、風見章子、小川真由美、河原崎長一郎、斉藤絵里、渡辺裕之、三條美紀、小田かおる、左時枝、横内正、加藤武、前田吟、岸部一徳、白龍光洋
1985年日本・東映京都撮影所/ビスタサイズ・カラー128分35mmフィルム
夢千代日記 -DVD-
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。


夢千代日記                                                            吉永小百合

映画「その男、凶暴につき」


ビートたけし                        白竜

今回は北野武監督1989年製作「その男、凶暴につき」をピックアップする。
本作は当初プロデューサーの奥山和由氏が、深作欣二監督に依頼した企画であり、深作監督が降板した事で、急遽ビートたけしさんが主演・監督をする事に至り、たけしさんは、脚本の書き直しを唯一の条件に引き受け、北野武名義で第1回監督作品を務める事となった。今までのバイオレンス映画と違い、時間の流れ、間の取り方が、秀悦な描き方をしており、その後の北野武監督作品を予感する思いだった。


芦川誠、ビートたけし                  平泉成

吉澤健                         音無美紀子

【ストリー】
一匹狼の刑事・我妻諒介(ビートたけし)は、凶暴なるがゆえに署内から異端視されていた。ある晩、浮浪者を襲った少年の自宅へ押し入り、殴る蹴るの暴行を加えて無理矢理自白させた。暴力には暴力で対抗するのが彼のやり方だった。麻薬売人の柄本(遠藤憲一)が惨殺された事件を追ううち、青年実業家・仁藤(岸部一徳)と殺し屋・清弘(白竜)の存在にたどり着いたが、麻薬を横流ししていたのは、諒介の親友で防犯課係長の岩城(平泉成)だった。やがて岩城も口封じのため、自殺に見せかけて殺されてしまう。若い菊地(芦川誠)は諒介と組むが、いつもハラハラのし通しだった。一方、清弘の仲間たちは知的障害の少女を諒介の妹(川上麻衣子)と知らずシャブ漬けにして輪姦する。諒介は刑事を辞めて、岩城の復讐のために仁藤を撃ち殺した。さらに清弘もアジトで射殺するが、その死体にすがるのは変わり果てた妹・灯の姿だった。諒介は最愛の妹にも引き金をひいたのだった。その時、背後から忍び寄った仁藤の部下・新開(吉澤健)が諒介を射殺、菊地に岩城の代わりをさせて麻薬の密売を引き継ぐことになったのだった。


佐野史郎                    岸部一徳、吉澤健

題名:その男、凶暴につき
監督:北野武
製作総指揮:奥山和由
製作:鍋島壽夫、吉田多喜男、市山尚三
原案:奥山和由
監修:黒井和男
脚本:野沢尚
撮影:佐々木原保志
照明:高屋齋
録音:堀内戦治
音効:帆苅幸雄(東洋音響)
МA:アオイスタジオ リーレコ:岩橋政志
美術:望月正照
装置:福田義昭
装飾:遠藤光男、毛尾喜泰
小道具:中島順子
特殊効果:納富貴久男、唐沢裕一
特殊メイク:原口智生
擬闘:菊地竜志、津川誠(菊地剣友会)
ガンエフェクト:BIGSHOT
カースタント:竹内雅敏(カースタントTAKA)
特殊機械:中村雅敏
美粧:浜田芳恵、博田佳子
配役:吉川威史
記録:中田秀子
編集:神谷信武 ネガ編集:大橋まさみ、錦織朱美
音楽:久米大作 音楽プロデューサー:佐々木麻美子 挿入歌:トレイシー「ガール・ユー・ニード」
現像:東京現像所 タイミング:福島宵行
製作担当:貝原正行
製作主任:黒田晃司
製作進行:中村秀康
進行助手:近藤信二
監督補:天間敏広
助監督:月野木隆
監督助手:加門幾生、宮島英紀、中西健二
撮影助手:図書紀芳、相馬健司、柳田裕男、小柴健二
照明助手:中村裕樹、清水康利、院瀬見昭佳、井上信治、内田浩策、鈴木敦子
録音助手:佐久間猛、石見洋
美術助手:沢路和範
編集助手:西岡容子、井山和彦
車両担当:西垣恵一、三浦了、斎藤重信
撮影スタジオ:にっかつ撮影所
製作協力:森昌行、ライトヴィション
企画協力:末吉博彦
スチール:野上哲夫
出演:ビートたけし、白竜、川上麻衣子、佐野史郎、吉澤健、芦川誠、岸部一徳、平泉成、遠藤憲一、音無美紀子、上田耕一
1989年日本/ビスタサイズ・カラー103分35mmフィルム
その男、凶暴につき -DVD-
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。


ビートたけし、川上麻衣子                ビートたけし

映画「キネマの天地」


有森也実                        中井貴一

今回は山田洋次監督1986年製作「キネマの天地」をピックアップする。
本作は、1982年に深作欣二監督が角川映画(松竹配給)で「蒲田行進曲」を東映京都撮影所で撮り、大ヒットし(興行収入17億6,300万円)、それに奮起した松竹のスタッフが、松竹大船撮影所50周年記念作品として作られた経緯がある。

松竹が撮影所を大船に移転する直前の1934年頃の松竹蒲田撮影所(城戸四郎所長)を舞台に、若き日の斎藤寅次郎、島津保次郎、小津安二郎、清水宏ら気鋭の監督たちが腕を競い、田中絹代(本作のモデル)がスターへの階段を上りかけた映画黄金期(サイレントからトーキー)時代を背景にしている。

今とは違い、映画会社がキャスト(俳優部)、スタッフ(演出部、脚本部、撮影部、照明部、録音部、美術部、編集部など)を抱え、一丸となって映画創りに勤しんでいた時代である。

本作に出てくるサイレント映画キャメラのクランクによる手動スプリング駆動は、実機を用いて撮られているが、同時録音シーンのNCミッチェルのプリンプは、ハリボテではないかと思う。

サイレント映画キャメラのクランクによる手動スプリング駆動は、ジャイロが付いているとはいえ、3コマ落ちると1ステップ、8コマ落ちると1ストップの露光オーバーになる。手動で定速コマ数を維持するのは職人技である。ちなみにトーキーは今日でも24コマ/秒であるが、サイレントは16コマ/秒であった。

蒲田撮影所時代を経験し小津安二郎監督作品の撮影技師である厚田雄春氏は、「蒲田行進曲」「キネマの天地」のどちらも蒲田撮影所の当時の雰囲気が出ておらず、それは無理もないとしながらも、やっぱり物足りないと評している。

私はCF作品で有森也実さんを撮影した事がある。その現場の印象は、大作の主演女優を果たした側面は一切見せず、真摯にテーマである商品を引き立てる芝居に懸命だったと記憶する。
中井貴一さんは、私が撮影チーフ助手最後の作品でフランスロケに行った時にご一緒させて戴いた事があるが、気さくな方であった。

※「蒲田行進曲」は時代劇全盛の東映京都撮影所が舞台。
※大船撮影所については「太陽の墓場」で記述してます。
※本作でサイレント映画のキャメラはミッチェルスタンダード、シンクレア等が使われている。

松竹蒲田撮影所 1920年6月~1936年1月15日 閉鎖
日本映画黎明期をリードする撮影所として一時代を築いた。小津安二郎や成瀬巳喜男、田中絹代、高峰秀子等の映画人を輩出し、国産初の本格的トーキー映画を生み出したのも同撮影所である。

松竹大船撮影所 1936年1月15日~2000年6月30日 閉鎖
それまで松竹は東京市蒲田区(現・東京都大田区)の蒲田撮影所で撮影をしていたが、町工場の多い蒲田では騒音がトーキーの撮影に差し障るという理由から神奈川県鎌倉市大船に移転した。


渥美清、前田吟、倍賞千恵子                油井昌由樹、すまけい、中井貴一

【ストリー】
浅草の活動小屋で売り子をしていた田中小春(有森也実)が、松竹キネマの小倉監督(すまけい)に見出され、蒲田撮影所の大部屋に入ったのは昭和8年の春だった。小春は大震災で母親を失い、若い頃旅回り一座の人気者だったという病弱の父・喜八(渥美清)と長屋でのふたり暮らしだ。蒲田撮影所での体験は何もかもが新鮮だった。ある日、守衛(桜井センリ)に案内されて小倉組の撮影見学をしていた小春はエキストラとして映画出演することになった。だが素人の小春にうまく演じられる訳がなく、小倉に怒鳴られた小春は泣き泣き家に帰り、女優になることをあきらめた。長屋に戻って近所の奥さんにことのいきさつを話している小春を、小倉組の助監督島田健二郎(中井貴一)が迎えにきた。「女優になりたがる娘はいっぱいいるけど、女優にしたい娘はそんなにいるもんじゃない」。健二郎の言葉で、小春は再び女優への道を歩み始めた。やがて健二郎と小春はひと眼を盗んでデートする間柄になった。小春は幸福だった。しかし時がたつにつれ、映画のことにしか興味をしめさない健二郎に少しずつ物足りなさを覚えるようになった。小春の長屋の住人たちは不況下の失業にあえいでいた。そんな中で、唯一の希望はスクリーンに登場する小春だった。夏もすぎ秋になって、小春はプレイボーイとして有名な二枚目スター、井川時彦(田中健)と親しくつき合うようになった。師走に入って、健二郎は、労働運動で警察から追われている大学時代の先輩(平田満)をかくまったとして、留置所に入れられてしまう。その留置所生活で得たのは、かつてなかった映画作りに対する情熱だった。年が明けて、小春が大作の主演に大抜擢された。主演のトップスター川島澄江(松坂慶子)が愛の失踪事件を起こしたため、その代打に起用されたのだ。しかしその大作「浮草」で演技の壁にぶつかって、小春は苦悩した。その小春を、喜八はかつて旅回り一座の看板女優だった母と一座の二枚目俳優のロマンスを語り励ました。実は小春の本当の父親はその二枚目であることも--。「浮草」は成功した。人があふれる浅草の映画館でゆきと「浮草」を見に行った喜八は、映画を見ながら静かに息をひきとった。


松本幸四郎                         田中健

題名:キネマの天地
監督:山田洋次
製作総指揮:奥山融
製作:野村芳太郎、杉崎重美、升本喜年、島津清
脚本:井上ひさし、山田太一、朝間義隆、山田洋次
撮影:高羽哲夫
照明:青木好文
録音:鈴木功
調音:松本隆司
美術:出川三男
装置:小島勝男
装飾:町田武
美粧:宮沢兼子、吉野桂子
床山:八木かつら
衣裳:松竹衣装
編集:石井巌
音楽:山本直純
現像:イマジカ
撮影機材:パナビジョン
製作主任:新井重美
製作進行:副田稔、玉生久宗
助監督:五十嵐敬司
プロダクション・コーディネーター:内藤誠、田中康義
風俗考証:林美一、結城一朗
スチール:赤井博且
出演:中井貴一、有森也実、渥美清、松坂慶子、倍賞千恵子、美保純、笠智衆、桃井かおり、田中健、すまけい、岸部一徳、堺正章、柄本明、油井昌由樹、山本晋也、なべおさみ、大和田伸也、広岡瞬、レオナルド熊、石倉三郎、山城新伍、木の実ナナ、下條正巳、三崎千恵子、平田満、財津一郎、ハナ肇、桜井センリ、佐藤蛾次郎、人見明、関敬六、前田吟、吉岡秀隆、笹野高史、藤山寛美、松本幸四郎(9代目)
1986年日本・松竹/ビスタサイズ・カラー135分35mmフィルム
キネマの天地 -DVD-
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。


笹野高史、渥美清                     有森也実

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