映画「風と樹と空と」


吉永小百合、浜田光夫 川地民夫
今回は松尾昭典監督1964年製作「風と樹と空と」をピックアップする。
本作は石坂洋次郎氏の原作を吉永小百合さんと浜田光夫さんのゴールデン・コンビが演ずる青春映画であるが、特に小百合さんが最もキュートに捉えられている作品である。多喜子(吉永小百合)の様な前向きなキャラクターは、石坂文学のヒロインの特徴であり、小百合さんの当時の看板メージでもある。セックスという問題もさりげなくインサートされ、小百合さんの「おちんちん」という台詞に少し興奮する。劇中インサートされる絵は、当時「週刊新潮」の表紙を手掛けていた童画家の谷内六郎氏。その牧歌的な画調は、登場人物たちのローカリズムと屈折を際立たせ効果的であった。
十朱幸代 加藤治子
【ストリー】
沢田多喜子(吉永小百合)は集団就職の一員として、級友新二郎(浜田光夫)、武雄(和田浩治)、吉夫()、信子(平山こはる)、かね子(大楠道代)らと上京し、安川家のお手伝いさんとなった。その夜、多喜子を迎えた安川家の晩餐は、多喜子の無邪気な明るさで、これまでになく和気あいあいたるものになった。主人儀一郎(永井智雄)、妻弓子(加藤治子)、長男三郎(川地民夫)、長女澄子(槙杏子)、それにばあや(高橋とよ)といった安川家の人々は、この多喜子の明るさを心から喜んだ。そんなある日、一緒に上京した喜子の仲間たちは日比谷公園に集り、各々の仕事や私生活の話に花をさかせた。その日多喜子は吉夫が借りて来た車でドライヴを楽しんだが、途中、信子と武雄が将来を誓い合った仲だったことを知って驚いた。多喜子は武雄に密かな好意をよせていたのであった。一方安川家では長年働いていたばあやがやめて、多喜子は益々忙しくなったがそんな中にも多喜子は、三郎や、澄子の相談相手となって、いっしょに悩み悲しんだ。が、そんな時、多喜子のもとに、武雄と信子の結婚通知が届いた。披露宴は武雄のアパートで、仲間と共に賑やかに行われた。そんな賑いを見ている内、多喜子は、自分が一人ぼっちであることに気ずき、涙をこぼすのだった。そして同じ想いの級友新二郎との心のふれ合いを感じ、感傷にふける多喜子だった。数日後多喜子は新二郎が、帰郷するという手紙を受け、急いで上野駅にかけつけたが汽車は一足違いで出た後だった。多喜子は悲しみに沈んだ。が、翌日、町内大会の野球試合に元気に出場し、バットを振る多喜子の姿があった。晴れた空も、そよぐ風も樹も、そんな多喜子の姿を祝福するかのようにざわめいていた。
和田浩治、吉永小百合、浜田光夫 荒木一郎(デビュー作)
題名:風と樹と空と
監督:松尾昭典
企画:坂上静翁
原作:石坂洋次郎
脚本:三木克巳
撮影:萩原泉
照明:大西美津男
録音:片桐登司美
美術:千葉和彦
挿入絵:谷内六郎
音楽:池田正義 主題歌:吉永小百合「風と樹と空と」
記録:津田ノリ子
編集:井上親弥
現像:東洋現像所
製作主任:栗橋正利
監督助手:千野皓司
色彩計測:内田周作
スチール:目黒祐司
出演:吉永小百合、浜田光夫、川地民夫、田代みどり、十朱幸代、山本陽子、和田浩治、大楠道代、加藤治子、高橋とよ、菅井きん、荒木一郎、槙杏子、中村是好、野呂圭介、河上信夫
1964年日本・日活/シネスコサイズ・カラー86分
吉永小百合、中村是好、菅井きん 吉永小百合、浜田光夫