映画「炎上」


市川雷蔵                     市川雷蔵、中村鴈治郎

今回は市川崑監督1958年製作「炎上」をピックアップする。
本作は三島由紀夫氏の「金閣寺」の映画化で、驟閣という美に憑かれた男を描く異色作だ。市川崑監督は、日活から大映に移籍してから5本目の大映作品となり、市川雷さんにとってデビューから4年目、48本目の初の現代劇主演作である。撮影は巨匠宮川一夫氏、”モノクロ”と”シネスコ”による効果的映像が素晴らしい。

【当ブログで紹介した市川崑監督作品】
1951年「盗まれた恋」
1951年「恋人
1956年「処刑の部屋
1957年「
1957年「満員電車
1958年「炎上
1959年「
1959年「野火
1960年「女経」より「物を高く売りつける女」
1961年「黒い十人の女
1962年「破戒


仲代達矢                       新珠三千代

【ストリー】
溝口吾市(市川雷蔵)は、父の遺書を携えて京都の驟閣寺を訪れた。昭和19年の春のことである。彼は父から口癖のように、この世で最も美しいものは驟閣であると教えこまれ、驟閣に信仰に近いまでの憧憬の念を抱いていた。父の親友でこの寺の住職・田山道詮老師(中村鴈治郎)の好意で徒弟として住むことになった。昭和22年、戦争の悪夢から覚めた驟閣には、進駐軍の将兵を始め観光客が押しよせた。静かな信仰の場から、単なる観光地になり下ってしまったのだ。ある日米兵と訪れ戯れる女を、溝口は驟閣の美を汚す者として引ずりおろした。25年、溝口は古谷大学に通うようになり、そこで内翻足を誇示して超然としている戸苅(仲代達矢)を知った。彼は、驟閣の美を批判し老師の私生活を暴露した。溝口の母あき(北林谷栄)は、生活苦から驟閣寺に住みこむことになった。溝口は反対した。父が療養中、母は姦通したことがあるからだ。この汚れた母を、美しい驟閣に近づけることは彼には到底出来なかったのである。口論の挙句、街にさまよい出た溝口は、芸妓を伴った老師に出会った。戸苅の言ったことは、真実であった。彼は小刀とカルモチンを買い、戸苅から金を借りて旅に出た。故郷成生岬の断崖に立ち荒波を見つめる溝口の瞼には、妻に裏切られ淋しく死んでいった父のダビの青白い炎が浮んだ--。挙動不審のため警察に保護され、連れ戻された溝口を迎えた、母と老師の態度は冷かった。彼は、自分に残されているのは、ただ一つのことをすることだけだと思った。溝口はふるえる手で、三たびマッチをすった。白煙がたちのぼり、その中から赤い透明の焔が吹き上った。美しくそそり立つ驟閣が、夜空をこがして炎上する。その美しさに溝口は恍惚とした。--国宝放火犯人として検挙された溝口は、頑として尋問に答えなかった。実施検証で焼跡を訪れた。が、そこに見出したのは無惨な焼跡だけだった。汽車に乗せられた溝口は、便所へ立った、少しの油断を見て、彼は自らの体を車外へ投げ出した--。


北林谷栄、市川雷蔵              市川雷蔵、浦路洋子、仲代達矢

題名:炎上
監督:市川崑
企画:藤井浩明
製作:永田雅一
原作:三島由紀夫「金閣寺」
脚本:和田夏十、長谷部慶治
撮影:宮川一夫
照明:岡本健一
特機:宇野薫
録音:大角正夫
音効:倉嶋暢
美術:西岡善信
装置:梶谷輝雄
装飾:松本春造
背景:太田多三郎
美粧:小林昌典
結髪:石井エミ
記録:中井妙子
編集:西田重雄
音楽:黛敏郎 邦楽:中本利生
製作主任:橋本正嗣
製作進行:鈴鹿俊彦
助監督:田中徳三
撮影助手:田中省三
照明助手:美間博
美術助手:加藤茂
録音助手:近藤正一
演技事務:千賀滝三郎
スチール:西地正満
出演:市川雷蔵、仲代達矢、新珠三千代、中村鴈治郎、浦路洋子、中村玉緒、北林谷栄、信欣三
1958年日本・大映京都撮影所/シネスコサイズ・モノクロ99分35mmフィルム
炎上 -DVD-
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。


市川雷蔵                        「炎上」

映画「婦系図」



市川雷蔵                       万里昌代

今回は三隅研次監督1962年製作「婦系図」bestをピックアップする。
新東宝の専属女優だった万里昌代さんが、新東宝が倒産してから大映に移籍して第二作目の作品である。本作は、万里昌代という女優の資質を開花させた三隅監督に敬意を表すると共に、彼女の魅力に感動する優れた作品である。その表情と所作は美しく絶品であり、観る者は必ず引き込まれる。

※大映移籍第1作は「お兄哥さんとお姐さん」1961年(監督:黒田義之 共演:勝新太郎)


三條魔子                  千田是也、木暮実千代、市川雷蔵

【ストリー】
帝大教授酒井俊蔵(千田是也)の恩情で立派な教育を受けた早瀬主税(市川雷蔵)は、兄妹のようにして育った酒井の娘妙子(三条魔子)が自分に恋をよせているのを知り、これを受けては義理ある先生にすまぬと、酒井家を出た。そして魚屋めの惣の世話で、かねてから恋仲だった柳橋の芸者お蔦(万里昌代)と、先生には内証で世帯を持った。かつての酒井先生の情人で、妙子の実の母であるお蔦の姉芸者小芳(木暮実千代)は、身分違いの恋の不幸を主税に説くが、主税は、芸者を妻にするのが出世の妨げなら出世せぬまで-と、初志を変えない。ところが、ふとしたことで主悦に恨みを持つ、静岡の権勢家の息子で同窓の河野英吉(片山明彦)は、さまざまな策動をして主税をスキャンダルにまきこみ、さらにお蔦のことを酒井先生に告げて処分を迫った。酒井は主税をかばいつつも、お蔦とは別れさせるといわざるを得ない。酒井から、俺か女かどちらかを選べと迫られ、主税はやむなくお蔦と別れることを決心し、散歩にことよせてお蔦を湯島境内へさそった。思いもかけぬ別れ話にお蔦は歎き悲しむが、ついに得心して身を引くことを承知した。そして、髪結いをしているめの惣の家内のところで、すき手として働くことになった。河野の卑劣な行為を怒った主税は、めの惣(船越英二)から、河野の当主の夫人がお抱えの御者と密通し、子までなしたいきさつを知り、この事実をもって復讐しようと、静岡へ去った。河野一家に接近してドイツ語私塾をひらいた主税に、政略結婚で河野家の不幸な娘はぐんぐんひかれてきた。その娘に、主税は母親の秘密を暴露する。それを立聞きした夫人(南美江)の銃弾で、主税は重傷を負い、病床の人となった。一方、お蔦は風邪をこじらせて死の床にあった。たまたま訪ねた妙子の連絡で酒井も駈けつけた。酒井の命令で、めの惣が静岡に飛ぶが、主税は帰らない。「芸者にも真実な女がいますよ」と、お蔦は酒井に訴えて息絶えた。ようやく傷のいえた主税は、河野家の当主が夫人を射殺した日、東京へ帰った。今は亡きお蔦との思い出深い湯島天神にたたずむ主税の背に、梅の花が散った。


船越英二                      藤村志保

題名:婦系図
監督:三隅研次
企画:鈴木晰成
製作:永田雅一
原作:泉鏡花
脚本:依田義賢
撮影:武田千吉郎
照明:加藤博也
録音:大谷巖
美術:内藤昭
装置:三輪良樹
編集:菅沼完二
音楽:伊福部昭
現像:東洋現像所
製作主任:大菅実
助監督:井上昭
色彩計測:青柳寿博
スチール:小牧照
出演:市川雷蔵、万里昌代、三條魔子、船越英二、木暮実千代、千田是也、水戸光子、片山明彦、南美江、上田吉二郎、藤村志保
1962年日本・大映/シネスコサイズ・カラー99分35mmフィルム
婦系図 -DVD-
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。


万里昌代、市川雷蔵

映画「忍びの者」

忍びの者忍びの者
市川雷蔵                       伊藤雄之助

今回は山本薩夫監督1962年製作「忍びの者」をピックアップする。
これまで荒唐無稽だった忍者映画にリアリズムと醜い権力争いの犠牲者という視点を取り入れた内容で、本作のヒットにより市川雷蔵さん主演でシリーズ化された。

1962年「忍びの者(監督:山本薩夫)」
1963年「続・忍びの者(監督:山本薩夫)」
1963年「新・忍びの者(監督:森一生)」
1964年「忍びの者 霧隠才蔵(監督:田中徳三)」
1964年「忍びの者 続・霧隠才蔵(監督:池広一夫)」
1965年「忍びの者 伊賀屋敷(監督:森一生)」
1966年「忍びの者 新・霧隠才蔵(監督:森一生)」
1966年「新書・忍びの者(監督:池広一夫)」

忍びの者忍びの者
加藤嘉                         藤村志保

【ストリー】
戦国末期。伊賀の国には高技術を誇る忍者が輩出した。その中に石川村の五右衛門(市川雷蔵)がいた。彼は三太夫(伊藤雄之助)の配下に属する下忍(最下級の忍者)だった。その頃、全国制覇の野望に燃える織田信長(若山富三郎)は宗門め掃討を続けた。そんな信長に対し、天台、真言修験僧の流れをくむ忍者の頭領、三太夫は激しい敵意を持ち下忍達に信長暗殺を命じた。一方、三太夫と対立中の藤林長門守も信長暗殺を命令していた。その頃、五右衛門は何故か信長暗殺を命ぜられず三太夫の妻、イノネ(岸田今日子)と砦にいた。彼女の爛熟した体は若い五右衛門に燃え上り、彼らはもつれた。が、三太夫は女中のハタに二人を監視させていた。五右衛門はその気配を覚りハタを追ったが、その間にイノネは三太夫に殺された。が、五右衛門は三太夫に信長を暗殺すれば罪を許すとささやかれた。五右衛門は京に出て信長を狙ったが、その都度、織田信雄(小林勝彦)、木下藤吉郎(丹羽又三郎)らに阻まれた。信長を追って堺に来た五右衛門は一軒の妓楼でマキ(藤村志保)という遊女と知り合い、彼女の純心さに惹かれていった。ある日、五右衛門はハタ(藤原礼子)にめぐり合い、イノネが三太夫に殺されたことを知り、全てが彼の策略だったことを知った。怒りにもえた五右衛門は急拠伊賀へ帰り三太夫を面罵したが、彼は逃げ去った。五右衛門はマキと一緒に山中の小屋で日々を送った。ある日、突然三太夫が現われマキを人質にした。五右衛門は愛する者のため三太夫の命に従い安土へ走った。その頃、信長は豪壮な安土城を築き得意の絶頂にあった。折りからの築城祝いに乗じ信長の寝所の上に忍び込んだ五右衛門だが、信長毒殺は失敗に帰した。信長は急拠伊賀攻めを敢行した。三太夫の砦はすぐに包囲され、建物は炎上していた。が、忍者達は必死に戦った。信雄の采配が一閃した。と、一団となって砦になだれ込む兵達--。瞬間、五右衛門も砦へとび込み三太夫を探したが、情婦と共に死んでいる三太夫を見て愕然とした。何と長門守と同一人物だったのだ。山道へ走り出た五右衛門の顔ははればれと明かるかった。

忍びの者忍びの者
岸田今日子                     加藤嘉、市川雷蔵

題名:忍びの者
監督:山本薩夫
企画:伊藤武郎、土井逸雄
製作:永田雅一
原作:村山知義
脚本:高岩肇
撮影:竹村康和
照明:加藤博也
録音:奥村雅弘
美術:内藤昭
記録:藤岡輝夫
編集:宮田味津三
音楽:渡辺宙明
スチール:藤岡輝夫
出演:市川雷蔵、藤村志保、伊藤雄之助、若山富三郎、小林勝彦、城健三郎、岸田今日子、浦路洋子、藤原礼子、真城千都世、西村晃、加藤嘉
1962年日本・大映京都/モノクロ・シネスコサイズ104分35mmフィルム
忍びの者 [DVD]
2016年10月現在、DVDレンタルはありません。

忍びの者忍びの者
藤村志保、市川雷蔵

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