映画「怪談海女幽霊」


明智十三郎                                 万里昌代

今回は加戸野五郎監督1960年製作「怪談海女幽霊」をピックアップする。
本作は怪談と言うよりも殺人ミステリーものになるが、新東宝の海女シリーズ「海女の戦慄」「海女の化物屋敷」に比べて色気度は少ない。だが好きなティストで時間は流れる。


若杉嘉津子

【ストリー】
九鬼港沖合の小島“神島”の素封家里村勇作(倉橋宏明)が、終戦直後のある夜シケにあって遭難した。妻の照代(若杉嘉津子)が夫を追って自殺し、一人娘の奈美江(万里昌代)も地獄岩から身を投げた。里村家唯一人の血筋である俊也(御木本伸介)も戦死が判明し、里村家は人手に渡った。数年後、港に勇作と照代の亡霊が出るという噂が出た。その噂を裏書きするように、流れ者の漁師大場為三郎(大谷友彦)と木下源蔵(鈴木信二)が行方不明になった。今は村一番の網元で実権を握る紀州屋の旦那宮内進太郎(九重京司)は、昔は勇作の家で働く漁師だった。娘の京子や使用人達が亡霊の話をすると、笑って打ち消したもののその夜から亡霊に悩まされた。駐在の連絡でやって来た池田警部(明智十三郎)は、調書から為三郎と源蔵の事件を殺しと断定した。捜査を開始してまず浮かんで来たのは紀州屋であった。紀州屋と為三郎が口論したこと、事件の前の晩、妾の家にいた源蔵が見知らぬ男に呼び出されたこと、などが理由だった。しかし、紀州屋は答えず幽霊封じの祈祷を始めた。神島近辺の海女が地獄岩の海底で勇作の幽霊を見勇作の家を買い取った長浜吉次(沢井三郎)が地獄岩の近くで勇作と照代の亡霊に取りつかれて海底に姿を消すという事件が起きた。神島に渡った池田警部は、吉次の伜大吉が奈美江を愛し、大吉が海にはまったのと、奈美江が身投げしたのが同一の日だったことを知った。島の者に導かれて地獄岩にもぐった警部は、岩に安置された勇作と照代の位牌の前に、為三郎、源蔵、吉次三人の苦悶を物語る遺骸を発見した。怨恨による殺しと確信した警部は、里村家の使用人だった亀松(山川朔太郎)から、紀州屋と為三郎が勇作夫婦を殺して、実権を握ったらしいということを聞き出した。惨事を予期した警部が九鬼に引き返したのは紀州屋がかつての勇作夫婦の亡霊に殺害されたあとだった。--かつての里村家の四人の使用人、為三郎、源蔵、吉次、紀州屋を殺したのは、死んだと伝えられた奈美江だった。父勇作を四人に謀殺されたことを知り、自害を装い幽霊の姿を借りて四人に報復したのだった。

題名:怪談海女幽霊
監督:加戸野五郎
製作:大蔵貢
企画:津田勝二
原案:海樹満咲
脚本:松木功
撮影:岡田公直
照明:石森浩
録音:根岸寿夫
美術:宮沢計次
編集:笠間秀敏
音楽:長瀬貞夫
製作主任:毛利幸久
助監督:渡邊祐介
スチール:西崎新
出演:明智十三郎、万里昌代、若杉嘉津子、矢代京子、御木本伸介、倉橋宏明、九重京司、小高まさる、大谷友彦、鈴木信二、沢井三郎、山川朔太郎
1960年日本・新東宝/シネスコサイズ・モノクロ56分35mmフィルム
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怪談海女幽霊

映画「リングの王者 栄光の世界」


「リングの王者 栄光の世界」宇津井健

宇津井健                           池内淳子

今回は石井輝男監督1957年製作「リングの王者 栄光の世界」をピックアップする。
本作は石井輝男監督のデビュー作である。新東宝でスポコンものは珍しいが、何のオチもなく拳闘(ボクシング)ものだった。この年「明治天皇と日露大戦争」からシネマスコープ・レンズによるシネスコサイズ(1:2.35)での撮影が波及する訳だが、本作はスタンダードサイズ(1:1.37)であり、石井監督は、内容からしてシネスコサイズで撮りたかったのではないかと思料するが、シネマスコープ・レンズは、映写機にも装着しないと上映出来ないので、系列劇場の準備が揃わなかったのかもしれない。


池内淳子、宇津井健

中山昭二                                 伊沢一郎

【ストリー】
魚河岸の青年塚本新一郎(宇津井健)はかねて東洋新聞の運動部記者畑(伊沢一郎)から拳闘界入りをすすめられていたが、母志づ(真山くみ子)や恋人の京子(池内淳子)の反対で断っていた。しかし家の借金や足の悪い妹敏子(福田則子)の手術代などで切羽詰った新一郎は遂に畑を訪れた。その夜、畑は銀座裏のバーに彼をつれて行き、マダム奈美子(毛利啓子)を手伝っている元ボクサーの岩崎健次(中山昭二)にトレーナーを頼む。岩崎は一旦ははねつけたが畑の情熱に動かされて承諾する。旭光拳闘クラブで猛練習を続ける新一郎に、志づたちも次第に応援するようになるがジムの中ではライト級の三田村(細川俊夫)らの冷い目があった。やがて新一郎は前座に出て派手なデビューをしたが岩崎や畑の祝をよそに京子と連れだって帰る姿に、畑は京子を訪ね拳闘に女は禁物だ、彼の将来のために暫らく遠去かってくれと頼む。京子の姿がみえなくなり新一郎は落胆するが、果されなかった自分の夢を彼に託して岩崎の指導は日増しに激しくなってゆく。漸く新一郎が外部に認められた頃ライト級選手権をとった三田村は金の為にクラブを移る。一方、試合毎に現れるキャバレーのマダム、ルリ子(若杉嘉津子)の執拗な誘惑に心ならずもひきづられて行く。女の為に身をくずした昔の自分を思い出し岩崎は心を痛める。やがて新一郎は三田村とノンタイトル戦を行うことになったが、彼の殺人パンチに脆くも敗北を喫し、ルリ子の豹変した冷い態度に気落ちしてしまうが岩崎と畑に励まされて一心にファイトを燃やして行く。そしてタイトル・マッチの当日、汗がとび散り鮮血の流れる激しい打合いの末、見事三田村を倒した新一郎の眼には涙があふれ、祝福してくれる岩崎、畑や、病気もなおり京子に手をひかれて駈けよる妹敏子の姿がかすんでしまうのだった。


「リングの王者 栄光の世界」宇津井健

中山昭二、宇津井健                         細川俊夫

題名:リングの王者 栄光の世界
監督:石井輝男
製作:佐川滉
脚本:内田弘三
撮影:鈴木博
照明:傍土延雄
録音:中井喜八郎
美術:小汲明
編集:神田帰美
音楽:斎藤一郎
製作主任:川田信義
助監督:三輪彰
出演:宇津井健、池内淳子、中山昭二、伊沢一郎、細川俊夫、若杉嘉津子、小高まさる、御木本伸介、田原知佐子、福田則子、真山くみ子、毛利啓子、天知茂
1957年日本・新東宝/スタンダードサイズ・モノクロ78分35mmフィルム
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宇津井健、若杉嘉津子                            田原知佐子(原知佐子)

福田則子、池内淳子、宇津井健                リングの王者 栄光の世界

映画「スター毒殺事件」


「スター毒殺事件」万里昌代

万里昌代                         天知茂

今回は赤坂長義監督1958年製作「スター毒殺事件」をピックアップする。
東洋映画撮影所が舞台となる本作だが、実際に撮影された場所は、新東宝撮影所(国際放映~現・レモンスタジオ)のスタジオ群が映る。そこは、新東宝が1961年に倒産した際に、日本大学(商学部)に敷地の多くを売却する前の風景がある。その意味で本作はとても貴重な記録になっている映画である。
私が好きな女優万里昌代さんは、1956年に新東宝四期スターレットとして入社し、同期に北沢典子さん、三ツ矢歌子さん、原知佐子さん(実相寺昭雄監督の奥さん)、朝倉彩子さんらがいた。
万里昌代さんは、1958年に本作で初主演してから1961年8月に新東宝が倒産し9月に大映に移籍する。1962年に市川雷蔵主演の「婦系図」お蔦役で女優の資質を開花し高い評価を得る。大映では時代劇で「座頭市物語」などヒロイン役を演じた。


「スター毒殺事件」万里昌代

三原葉子                                                                 江見渉

【ストリー】
東洋映画のスター上原城二(天知茂)が真理(万里昌代)を知った頃、彼女は純情可憐な少女だった。このような人と結婚し、一緒に働けたら--。そう考えると、城二は真理を強引に映画界に入れた。真理は城二の口ききと、天性の資質によって売り出していった。が、その人柄も人気の上昇とともに変っていった。彼女は城二のライバルである須賀(江見渉)と接近していた。二人が愛慾のかぎりをつくしている現場を見た城二は、人気のない神宮球場のグラウンドの中で二人への復讐を誓った。彼の計画は進捗した。彼は小道具部屋へ入り、須賀らが翌日撮影へ使うウィスキーのビンを毒薬入りのものと取りかえた。翌日、セットでは、ウィスキーを口にふくんだ須賀が口うつしに真理にウィスキーを飲ませようとして、突然苦しみ出し血を吐いて倒れた。真理もそれにつづいた。だが真理は死にはしなかった。城二は彼女の許へ飛んだ。また昔の二人に戻ることができる、そんな望みをもって--。が、真理は城二を寄せつけなかった。城二は、彼の挙動を探索するようにつきまとっていた黒木助監督(沼田曜一)をもビルの屋上から突き落した。目的を達してアパートへ帰ってくると、真理が待っていた。城二を殺人者呼ばわりをする真理に、彼は襲いかかり首を締めた。翌日、真理の死体を処理すべく、城二が街を疾走していくと、そこにはパトカーが網を張っていた。絶体絶命。城二は夢遊病者のごとく警官の前に出ていった。“真理は死んだ! 須賀も死んだ!僕は生きてどうする!”と叫びながら。


「スター毒殺事件」万里昌代

上写真のキャメラは、1000フィートマガジンを装着したNCミッチェル・キャメラだ。
私より上の世代が使ったパララックスカメラである。本番でファインダー下のノブを回してレンズ面とフィルム面とが、スライドで入れ替わる構造の二眼レフだ。これはレンズに入った光を100%フィルム面に露光させる為の方式で、ミラーシャッター方式が出現する前の常套であり、フレームを決めるにも職人技が必要だった。その為か、当時はカメラマンを撮影技師と呼んだ。
後にミッチェルは、MarkⅡ・Ⅲとミラー・シャッター方式になったが、NCミッチェルからのムーブメント(フィルム駆動間欠装置)の画止まりと安定度は、正確無比で、パナビジョン社などのフィルム映画キャメラに継承されている。


天知茂、三原葉子                 万里昌代、天知茂

題名:スター毒殺事件
監督:赤坂長義
企画:岡本良介
製作:大蔵貢
原案:葭原幸造
脚本:蓮池義雄、葭原幸造
撮影:吉田重業
照明:石森浩
録音:竹口一雄
美術:鳥居塚誠一
編集:永田紳
音楽:渡辺宙明
製作主任:永野裕司
助監督:小池淳
出演:天知茂、万里昌代、三原葉子、江見渉、沼田曜一、城実穂、御木本伸介、江川宇禮雄、高田稔、中川一郎
1958年日本・新東宝/スタンダードサイズ・モノクロ75分35mmフィルム
スター毒殺事件 -DVD-
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。


万里昌代、天知茂

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