映画「赤い殺意」

赤い殺意
「赤い殺意」春川ますみ
赤い殺意赤い殺意
春川ますみ                                                              露口茂

今回は今村昌平監督1964年製作「赤い殺意」bestを8月14日に新文芸坐「戦後75年 社会派の巨匠・今村昌平 映画を通して日本の社会を考える」で「にっぽん昆虫記」と併映で観て来た。35mmフィルム上映である。
本作は、古い家族制度の中で抑圧的な環境にも拘わらず生きる貞子(春川ますみ)は、強盗(露口茂)に犯された事を契機に、彼女の性を素朴でユーモラスに織り交ぜながら、強くしたたかに変貌を遂げていく様を淡々と描いている。底辺に或るテーマは「にっぽん昆虫記」と同根である。この時代の今村作品に深く感銘する。

赤い殺意赤い殺意
西村晃、春川ますみ                  西村晃、楠侑子

【ストリー】
強盗が押し入った夜、夫の吏一(西村晃)は出張中であった。恐怖におののく貞子(春川ますみ)を、殴打しスタンドのコードで縛りあげて、獣のようにせまって来る強盗の平岡(露口茂)に、貞子は半ば気を失って呻いた。明け方強盗は再び貞子を犯して去った。“死なねばならない”貞子は、土堤下を通る鉄路にふらふらと出てみたが子供勝への愛情はたち難かった。翌日出張から帰って来た夫に、何度かうちあけようとしたが、何も気づかない風の吏一の態度に、言葉をのんだ。東北大学の図書館に勤める吏一には、事務員義子(楠侑子)と五年も肉体関係がある反面、家庭では吝嗇で、小心な夫であった。再び強盗が貞子の前に現れたのは、あれから2日後の夜だった。乱暴なふるまいのあと、「もうじき死ぬんだ、あんたに優しくしてもらいたいんだ」と哀願した。その夜吏一に抱かれながら、貞子は、家庭の平和を乱したくないと苦悶した。だが、デパートの特売場で、平岡に声をかけられた貞子を、義子が見てから、夫は、近所の学生英二との間を疑うようになった。2月の初め、妊娠に気づいた貞子に、強盗は“腹の子は俺のだ”と執拗にせまった。吏一の父清三(加藤嘉)の葬儀に行った貞子は、自分が妾腹だという理由で入籍されず、子供の勝が清三の子になっているのを知って愕然とした。数日後、平岡が合図の石を屋根に投げたのを聞いた夫が、英二(糸賀靖雄)のしわざと思いこみ嫉妬にかられて隣家に踏みこんだ。夫に疑われて追いつめられた貞子は、平岡に会いにいった。平岡はトランペット吹きで、心臓を病んでいた。よわよわしい彼の表情に負けて、またも温泉マークに入った貞子は、ついに平岡を殺そうと決意した。農薬をジュースに混入して殺すのだ。吏一の東京出張中、貞子と平岡は、汽車に乗ったが、途中不通となったため、吹雪の中を疲労にふらつく平岡を助ける貞子に義子が木影からカメラをむけていた。疲労の末貞子が手を下すまでもなく悶絶してゆく平岡を前に、貞子は、何か説明しがたい胸の痛みを感じた。そして義子も、カメラをもったまま車にはねられて死亡した。何ごともなかったような毎日が始まったが、貞子のうえには、女としての自覚と責任が、新しく芽ばえていた。

赤い殺意赤い殺意
赤木蘭子、春川ますみ           春川ますみ、小沢昭一、北村和夫、西村晃

題名:赤い殺意
監督:今村昌平
企画:高木雅行
原作:藤原審爾
脚本:長谷部慶次、今村昌平
撮影:姫田真佐久
照明:岩木保夫
美術:中村公彦
録音:神保小四郎
特機:金田啓治
振付:漆沢政子
記録:大平篤子
編集:丹治睦夫
音楽:黛敏郎
製作主任:山野井政則
助監督:遠藤三郎
方言指導:小梨勝彬、結城良熙
スチール:斎藤耕一
出演:春川ますみ、西村晃、露口茂、楠侑子、赤木蘭子、北林谷栄、北村和夫、小沢昭一、宮口精二、加藤嘉、近藤宏、北原文枝、殿山泰司
1964年日本・日活/シネスコサイズ・モノクロ150分35mmフィルム

赤い殺意
「赤い殺意」露口茂、春川ますみ
赤い殺意赤い殺意
赤い殺意

映画「にっぽん昆虫記」

にっぽん昆虫記
「にっぽん昆虫記」左幸子
にっぽん昆虫記にっぽん昆虫記
北村和夫、左幸子                 左幸子、春川ますみ

今回は今村昌平監督1963年製作「にっぽん昆虫記」bestを8月14日に新文芸坐「戦後75年 社会派の巨匠・今村昌平 映画を通して日本の社会を考える」で「赤い殺意」と併映で観て来た。35mmフィルム上映である。
本作は昆虫の様に本能本位で生きている人間群を、生物の生態観察の様に客観的に観察する捉え方をしている。
今村監督は「セットには自然な風が吹かない」との理由で、全てのシーンにおいてオール・ロケーション撮影で行われたそうだ。 私は70年代に再映を旧文芸坐で初めて観て、強烈な刺激を受けたのを思い起した。

にっぽん昆虫記にっぽん昆虫記
河津清三郎、吉村実子               小沢昭一、春川ますみ

【ストリー】
とめ(左幸子)は、母親の松木えん(佐々木すみ江)が忠次(北村和夫)を婿にもらって2カ月目に生まれた。母の乱れた生活の中でとめは育っていった。昭和16年23歳で、とめは高羽製紙の女工となったが日本軍がシンガポールを落した日、とめは実家に呼び返され、地主の本田家に足入れさせられ、出征する俊三(露口茂)に無理矢理抱かれた。翌年の秋とめは信子(吉村実子)を生み、本田の家を出て、信子を預け再び高羽製糸に戻った。がそこで係長の松波(長門裕之)と肉体関係を結び終戦を迎えた。工場は閉鎖となり実家に帰ったが、再開した高羽製糸に戻り、松波の感化で組合活動を始めた。過激なとめの活動は、会社に睨まれ、又、課長に昇進した松波からは邪魔とされた。高羽製紙をクビとなったとめは7歳になった信子を忠次に預け単身上京した。松川事件で騒然とした時であった。基地のメィドや売春宿の女中と、体を投げ出すとめの脳裏を、信子の面影が離れなかった。宮城前広場でメーデー事件があった数日後、基地のメイド時代に知り会ったみどり(春川ますみ)に会い、とめも共に外で客をとるようになった。信子への送金を増すためであった。問屋の主人唐沢(河津清三郎)がとめの面倒をみてやろうと言い出したのは、丁度こんな時だった。が、それもとめの豊満な肉体めあての愛のない生活であった。新しくコールガール組織を作ったとめは、どうやら生活も楽になり、念願の忠次と信子を故郷から呼んだ。しかし、それもつかの間心の支えであった忠次は亡くなりそのうえ、とめは仲間の密告から売春罪を課せられ刑に処した。刑期を終えたとめを今は唐沢の情婦となった信子がむかえた。恋人の上林(平田大三郎)と開拓村をやる資金欲しさに唐沢に体をあたえたのだ。契約期間が過ぎると信子は故郷へ帰り上林と開拓村をはじめていた。唐沢の店を持たしてやるからとひきとめる言葉を胸にとめは故郷の土を踏んだ。健康な二人を前にして、やはりとめの心は店をきりもりする安楽な母娘の姿を描いていた長い間の人生の波にもまれたとめが、最後にもとめたささやかな夢だったのだ。

にっぽん昆虫記にっぽん昆虫記
北村和夫、左幸子

題名:にっぽん昆虫記
監督:今村昌平
企画:大塚和、友田二郎
脚本:長谷部慶次、今村昌平
撮影:姫田真佐久
照明:岩木保夫
美術:中村公彦
録音:古山恒夫
記録:小林圭子
編集:丹治睦夫
音楽:黛敏郎
製作主任:山野井政則
助監督:磯見忠彦
スチール:斎藤耕一
出演:左幸子、吉村実子、河津清三郎、北林谷栄、佐々木すみ江、春川ますみ、長門裕之、北村和夫、小沢昭一、小池朝雄、岸輝子、相沢ケイ子、殿山泰司、桑山正一、露口茂、東恵美子、平田大三郎
1963年日本・日活/シネスコサイズ・モノクロ123分35mmフィルム

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にっぽん昆虫記

映画「喜劇 女は度胸」


「喜劇 女は度胸」倍賞美津子、河原崎建三

倍賞美津子                       河原崎建三

今回は森崎東監督1969年製作「喜劇 女は度胸」をピックアップする。
本作は森崎東監督のデビュー作であり、倍賞美津子さんの第一回主演作品になる。次の監督作品は、翌年に渥美清さん主演の人気シリーズ第2作「男はつらいよ・フーテンの寅」になる。世界観がまるで違う両作品だが、家族に対するシリアスなモチーフは、喜劇を前置きする必要はないと思った。

【追記・訃報】
「喜劇・女は度胸」「時代屋の女房」など庶民の反骨精神を明るく描いてきた映画監督の森崎東(もりさき・あずま)さんが2020年7月16日死去した。92歳だった。1956年に松竹入社。野村芳太郎や山田洋次の助監督に付き、69年、「男はつらいよ」第1作の脚本を山田とともに執筆する。初監督は同年、山田の原案になる泥臭い人情ドラマ「喜劇・女は度胸」。翌年には「男はつらいよ フーテンの寅」を監督するが、過激な描写が寅さんの雰囲気に合わないとして、シリーズからはずされる。その後、「喜劇・女は男のふるさとヨ」「喜劇・女生きてます」など人情豊かな喜劇を監督。「喜劇ではなく怒劇」と自ら称するように、社会から虐げられている庶民の怒りを代弁する作品を生涯撮り続けた。75年フリーになり、「黒木太郎の愛と冒険」を発表するも不遇が続く。83年に古巣松竹で撮った夏目雅子主演の「時代屋の女房」がヒット。85年の「生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言」も話題を集めた。04年の「ニワトリはハダシだ」で芸術選奨文部科学大臣賞。認知症の母親の介護を明るくつづった13年公開の「ペコロスの母に会いに行く」が、キネマ旬報ベスト・テンの1位に選ばれた。これが最後の作品になった。
2020.7/17(金)12:00配信 朝日新聞デジタル


渥美清、花沢徳衛                          清川虹子

【ストリー】
桃山学(河原崎建三)は自動車修理工で、夜間大学の受験勉強に励んでいる。というのも、父泰三(花沢徳衛)は怠け者だし、母ツネ(清川虹子)は働く以外は生きる術を知らないし、ダンプカーの運転手をやっている兄勉吉(渥美清)は衝動的な若さを爆発させる動物のように思えたからだった。学はこんな人間の集った桃山家を「家庭」だとは思わなかった。彼は白い柵に囲まれた小さな芝生の庭のある「家庭」を夢みている。そんな学が恋をした。彼女の名前は白川愛子(倍賞美津子)、学は愛子にゲーテの詩集を贈り、二人で別の世界を築いてゆこうと心に決めた。そんなある日、勉吉が見覚えのある詩集を持って帰って来た。勉吉は酒くさい息で「あんないい子がコールガールやってんのかな……」と囁いた。学の疑惑に苦しめられる毎日が始まった。学は連れ込み旅館で問題の女に逢った。その子は愛子ではなかったが、友達からあの本を借りたという。学はホッとしたものの、恋人の仲間にこんな女がいるかと思うと気が狂わんばかりだった。学の苦しみを見て泰三は愛子の友人笑子(沖山秀子)に会った。この一件より勉吉は泰三と大喧嘩し、学も笑子とつき合っている愛子と絶交してしまった。それからというもの、泰三も勉吉も学でさえも寝るため以外には家に戻らなくなった。そんなある日、愛子と笑子が訪ねて来た。愛子は学と、笑子は勉吉とよりを戻しにやって来たのだ。二人を迎え入れたツネは、いつになく優しく「うちの倅と結婚してくれないかね……」と頼むのだった。


沖山秀子                    花沢徳衛、渥美清、久里千春、清川虹子

題名:喜劇 女は度胸
監督:森崎東
製作:上村力
原案:山田洋次
脚本:大西信行、森崎東
撮影:高羽哲夫
照明:青木好文
録音:田中俊夫
調音:松本隆司
美術:熊井正雄
装置:関根安重
編集:浦岡敬一
音楽:山本直純 主題歌:倍賞美津子「恋の芽ばえ」
現像:東洋現像所
製作主任:馬道昭三
監督助手:大嶺俊順
進行:池田義徳
スチール:長谷川宗平
出演:倍賞美津子、河原崎建三、清川虹子、渥美清、沖山秀子、花沢徳衛、有島一郎(東宝・特出)、佐藤蛾次郎、春川ますみ、久里千春、中川香奈、大橋壮多
1969年日本・松竹大船撮影所/シネスコサイズ・カラー90分35mmフィルム
喜劇・女は度胸 -DVD-
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。


「喜劇 女は度胸」河原崎建三、倍賞美津子

清川虹子、花沢徳衛                     倍賞美津子、河原崎建三

京浜急行電鉄デハ230形 (空港線)

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