映画「カルメン故郷に帰る」


高峰秀子                        高峰秀子、小林トシ子

今回は木下恵介監督1951年製作「カルメン故郷に帰る」をピックアップする。
本作は、日本初の国産カラー映画として有名な作品だ。
映画撮影は、ネガフィルムで撮影するのが定石だが、本作は、新開発の外式リバーサルフィルムで撮影したそうだ。
つまりポジである。現像後にポジ・ポシブリントしてラッシュにしたと思われるが、カラーバランスやコントラスト、色温度、カブリなどの調整は相当に難しい。(当時は三層式カラーネガは未発表)その為、カラー撮影が終わってから白黒ネガで同一カットを撮影し、”白黒版”も作られた。カラー撮影の保険目的外に、公開時に東京・横浜・名古屋・大阪・京都以外の都市では”白黒版”で公開されたそうだ。

この国産カラーフィルム・メーカーとは、1934年の創業から映画用白黒フィルムを製造していた富士フイルムだ。

本作のリバーサルフィルムは、ASA感度は6程度なので、全てド・ピーカンのロケが9割を占め、スタジオセット(校長先生の部屋と丸十の作った舞台)に大光量のライトが使われた事は容易に推測出来る。当時の映画用白黒フィルムはASA25の感度であったから、その4倍の明るさが必要になる。

本作の後に三層式カラーネガの開発と改善、コダックに先駆けて高感度フィルムの開発を精力的に進めて国内外の名作映画で使用されるまでに至った富士フイルムだが、2013年春、突然に映画用撮影フィルムの製造をすべて中止した。
これで79年間の国産映画用撮影フィルムの歴史は閉じたのだ。現在の選択肢は、イーストマン・コダックのみである。

現在、富士フイルムはアーカイブ用映画ィルム「ETERNA-RDS・IS-100 (米アカデミー科学技術賞を受賞)」を製造している。これは、カラー画像の3色分解(セパレーション)を行い、安定した黒白画像(銀像)として記録するためのアーカイブ用フィルム。現像はD-96またはD-97を推奨している。

※日本最初のカラー映画は、1937年製作「千人針(監督:三枝源次郎 撮影:漆山祐茂 制作:大日本天然色映画 39分)」であるが、フィルムは国産ではない。恐らくアグファカラー(ドイツ)ではないかと思う。
※写真フィルムで種別を例えると外式がコダクローム、内式がエクタクロームになる。
※1970年代までテレビニュース映像は、16mm内式リバーサルフィルムで撮影されていた。


笠智衆、望月美惠子                 井川邦子、佐野周二

【ストリー】
浅間山麓に牧場を営んでいる青山の正さん(坂本武)の娘きん(高峰秀子)は、東京から便りをよこして、友達の朱実(小林トシ子)を一人連れて近日帰郷すると言って来た。しかも署名にはリリイ・カルメンとしてある。正さんはそんな異人名前の娘は持った覚えが無いと怒鳴るので、きんの姉のゆき(望月美惠子)は村の小学校の先生をしている夫の一郎(磯野秋雄)に相談に行った。結局校長先生(笠智衆)に口を利いてもらって正さんをなだめようと相談がまとまった。田口春雄(佐野周二)は出征して失明して以来愛用のオルガン相手に作曲に専心していて、妻の光子(井川邦子)が馬力を出して働いているが、運送屋の丸十(小沢栄)に借金のためにオルガンを取り上げられてしまい、清に手を引かれて小学校までオルガンを弾きに来るのだった。その丸十は、村に観光ホテルを建てる計画に夢中になり、そのため東京まで出かけて行き、おきんや朱実と一緒の汽車で帰って来た。東京でストリップ・ダンサーになっているおきんと朱実の派手な服装と突飛な行動とは村にセンセーションを巻き起こし、正さんはそれを頭痛に病んで熱を出してしまった。校長先生も、正さんを説得したことを後悔している。村の運動会の日には、せっかくの春雄が作曲した「故郷」を弾いている最中、朱実がスカートを落っこどして演奏を台無しにしてしまった。春雄は怒って演奏を中止するし、朱実は想いを寄せている小川先生が一向に手ごたえがないので、きんと二人でくさってしまう。しかし丸十の後援でストリップの公演を思い立った二人はまたそれではりきり村の若者たちは涌き立った。正さんは、公演のある夜は校長先生のところへ泊りきりで自棄酒を飲んでいたが、公演は満員の盛況で大成功だった。その翌日きんと朱実は故郷をあとにした。二人の出演料は、そっくり正さんに贈り、正さんは、不孝者だが、やっぱり可愛くてたまらない娘の贈物をそっくり学校へ寄付した。丸十は儲けに気を良くしてオルガンを春雄に只で返してやった。春雄は一度腹を立てたおきんたちにすまないと思い、光子と一緒に汽車の沿道へ出ておきんと朱実に感謝の手を振った。


笠智衆、坂本武、望月美惠子                高峰秀子、小林トシ子

題名:カルメン故郷に帰る
監督:木下恵介
企画:日本映画監督協会
製作総指揮:高村潔
製作:月森仙之助
脚本:木下恵介
撮影:楠田浩之
照明:豊島良三
録音:大野久男
美術:小島基司
装置:山本金太郎
装飾:守谷筋太郎
衣装:浜野庄太郎
結髪:佐久間とく
床山:斎藤美津雄
記録:磯崎金之助
編集:杉原と志
音楽:木下忠司、黛敏郎 主題歌:高峰秀子
フィルム・現像:富士フィルム
製作補:桑田良太郎
製作進行:新井勝次
助監督:小林正樹、松山善三、川頭義郎、二本松嘉瑞
色彩技術:富士フィルム(小松崎正枝、赤澤定雄)
撮影助手:高村倉太郎、成島東一郎
出演:高峰秀子、佐野周二、笠智衆、井川邦子、坂本武、小林トシ子、望月優子、佐田啓二、小沢栄、磯野秋雄
1951年日本・松竹大船撮影所/スタンダードサイズ・富士カラー86分35mmフィルム
カルメン故郷に帰る -DVD-
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。


高峰秀子、小林トシ子                   カルメン故郷に帰る

映画「お茶漬の味」

お茶漬の味お茶漬の味
佐分利信                      木暮実千代

今回は巨匠小津安二郎監督1952年製作「お茶漬の味」をピックアップした。
本作は倦怠期の夫婦の心模様を、一杯のお茶漬を通してユーモラスに描いた作品で、昭和20年代の東京ドームになる前の後楽園球場、未だ連合軍の管理下にあった羽田空港、パンアメリカン航空のプロペラ機、手動式パチンコなど、当時の風俗、風景を随所に盛り込んでいるのに注目する。

作品リスト

お茶漬の味お茶漬の味
鶴田浩二                      津島恵子

【ストリー】
妙子が佐竹茂吉と結婚してからもう7、8年になる。信州の田舎出身の茂吉と上流階級の洗練された雰囲気で育った妙子は、初めから生活態度や趣味の点でぴったりしないまま今日に至り、そうした生活の所在なさがそろそろ耐えられなくなっていた。妙子は学校時代の友達、雨宮アヤや黒田高子、長兄の娘節子などと、茂吉に内緒で修善寺などへ出かけて遊ぶことで、何となく鬱憤を晴らしていた。茂吉はそんな妻の遊びにも一向に無関心な顔をして、相変わらず妙子の嫌いな「朝日」を吸い、三等車に乗り、ご飯にお汁をかけて食べるような習慣を改めようとはしなかった。たまたま節子が見合いの席から逃げ出したことを妙子が叱った時、無理に結婚させても自分たちのような夫婦がもう一組できるだけだ、と言った茂吉の言葉が、大いに妙子の心を傷つけた。それ以来二人は口も利かず、そのあげく妙子は神戸の同窓生の所へ遊びに行ってしまった。その留守に茂吉は飛行機の都合で急に海外出張が決まり、電報を打っても妙子が帰ってこないまま、知人に送られて発ってしまった。その後で妙子は家に帰ってきたが、茂吉のいない家が彼女には初めて虚しく思われた。しかしその夜更け、思いがけなく茂吉が帰ってきた。飛行機が故障で途中から引き返し、出発が翌朝に延びたというのであった。夜更けた台所で、二人はお茶漬を食べた。この気安い、体裁のない感じに、妙子は初めて夫婦というものの味をかみしめるのだった。その翌朝妙子一人が茂吉の出発を見送った。
茂吉の顔も妙子の顔も、別れの淋しさよりも何かほのぼのとした明るさに輝いているようだった。

お茶漬の味お茶漬の味
笠智衆                       淡島千景

題名:お茶漬の味
監督:小津安二郎
製作:山本武
脚本:野田高梧、小津安二郎
撮影:厚田雄春
照明:高下逸男
録音:妹尾芳三郎
美術:浜田辰雄
装置:山本金太郎
装飾:守谷節太郎
衣裳:齋藤耐三
編集:浜村義康
音楽:斉藤一郎
監督助手:山本浩三
撮影助手:川又昂
出演:佐分利信、木暮実千代、鶴田浩二、淡島千景、津島恵子、三宅邦子、柳永二郎、望月優子、笠智衆、設楽幸嗣
1952年日本・松竹/スタンダードサイズ・モノクロ115分35mmフィルム
お茶漬の味 [DVD]
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。

お茶漬の味お茶漬の味
お茶漬の味お茶漬の味

映画「愛と希望の街」

愛と希望の街愛と希望の街

大島渚監督「愛と希望の街」をピックアップした。
確か池袋の文芸座で観た記憶があるが内容を覚えてなかった。今回改めてDVDで作品を観て新鮮な感動を覚えた。
これほど格差が作る社会の不条理を、分かり易く描いている作品を私は見た事はない。
当時新人だった大島監督が監督・脚本を手掛けた力作であり、特に脚本が素晴らしい。
スタッフは松竹大船の映画職人の皆さんだ。
ロケ地は1959年の川崎・鶴見である事は分かるが、現在の様変わりに記録的な価値もある作品だ。

作品リスト

愛と希望の街愛と希望の街

【ストリー】
靴みがきの女たちにまじって、一人の少年が一つがいの鳩を売っていた。精密器械会社重役久原の娘で高校二年の京子が通りかかり、弟の病気見舞いにと鳩を 買った。少年は正夫といい中学三年生、靴みがきの母と知的障害の妹との三人暮しという家庭だ。売った鳩は妹のマスコットでもあった。鳩には飼い馴らされた 巣に戻って来るという習性があり、今までにも数回買主から戻って来ていた。これを利用して同じ鳩を売っていたのだ。数日後、京子が飼っていた鳩も一羽が逃 げ出して正夫の鳩小屋に戻って来た。が、その鳩は途中で負った傷が原因で死んだ。正夫の担任の女教師秋山は正夫に目をかけていた。高校ヘ進学させたかったがそれもできないので、いい就職先を探していた。秋山は正夫を通じて京子を知った。京子の父が関係する光洋電機は、地元の中学卒業生を採用しなかった。献身的な秋山の陳情は、京子の兄で労務課員の勇次の 心を動かした。これが縁で、光洋電機は秋山の学校からも採用することになった。一方、京子も正夫の妹のために、残されていた一羽の鳩を返してやった。光洋 電機の就職試験が行われたが、正夫は不合格となった。勇次に言わせると、彼が調べあげた正夫の鳩のサギ行為が最大の原因だったという。秋山は、生活のためには仕方がない行為だから許すべきだと勇次に言い返した。正夫は近くの鉄工所で働くことになった。京子から返された一羽の鳩は、再び京子に買い取られた。正夫は鳩小屋を壊す。鳩のサギ行為を知らされた京子は、引きとった鳩を勇次に猟銃で射殺させた・・・。

愛と希望の街愛と希望の街

題名:愛と希望の街
監督:大島渚
製作:池田富雄
脚本:大島渚
撮影:楠田浩之
照明:飯島博
美術:宇野耕司
録音:栗田周十郎
編集:杉原よし
音楽:真鍋理一郎
出演:藤川弘志、望月優子、渡辺文雄、富永ユキ、千之赫子
1959年松竹/シネスコサイズ・モノクロ62分35mmフィルム
愛と希望の街 [DVD]
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。

愛と希望の街愛と希望の街