映画「悪い奴ほどよく眠る」


三船敏郎                         香川京子

今回は黒澤明監督1960年製作「悪い奴ほどよく眠る」をピックアップする。
本作は黒澤監督が東宝を退社し、黒澤プロダクションを設立してからの第1弾作品で、直接制作費8,200万円で興行収益は東宝と折半したそうだ。冒頭の結婚式のシーンで、マスコミ記者に登場人物を語らせて状況を整理するという手法は、当時画期的だったに違いないと思う。内容は、西幸一(三船敏郎)が、政治汚職を背景に父親を死に追いやった元凶である政治家達に様々な方法で復讐して行くが、悪の根源はもっと深いところにあるというものだ。やや冗長な構成ではあるが、優れた作品である。

2018年、軍国的な教育を行う学校法人に賛同した安倍内閣総理夫妻に忖度して、10億円する国有地を1億円で払い下げた森友学園問題は、売却を担当した財務省職員が不正に耐えられず自殺した。
虚偽答弁、事実隠蔽、公文書改竄を平然と続ける安倍晋三とその一味……。悪の根源は、現在も何ら変わっていない。
むしろ罷り通っている。50年以上前に作られた本作は、現在も続くテーマを内包している事に、私は黒澤監督の偉大を思う。


志村喬、森雅之、三橋達也              三船敏郎、西村晃

【ストリー】
日本未利用土地開発公団の副総裁岩淵(森雅之)の娘佳子(香川京子)と、秘書の西幸一(三船敏郎)の結婚式は、異様な舞囲気に満ちていた。政界、財界の名士を集めた披露宴が始まろうとする時、公団の課長補佐和田(藤原釜足)が、のりこんだ捜査二課の刑事に連れ去られた。押しかけた新聞記者たちは、5年前、一課長補佐が自殺しただけでうやむやのうちに終った庁舎新築にからまる不正入札事件に、やはり現公団の副総裁岩淵と管理部長の守山(志村喬)、契約課長の白井(西村晃)が関係していたことを思いだした。ウェディング・ケーキが運ばれてきた。それは、5年前の汚職の舞台となった新築庁舎の型をしていた。しかも、自殺者が飛び降りた7階の窓には、真赤なバラが一輪突きささっていた。その頃、検察当局には差出人不明の的確な密告状が連日のように舞いこんでいた。そのため、開発公団と大竜建設の30億円にのばる贈収賄事件も摘発寸前にあった。だが、肝心の証拠が逮捕した和田や大竜建設の経理担当三浦(清水元)の口からも割りだすことができず拘留満期がきて二人は釈放された。三浦は拘置所の門前で、トラックに身を投げ出して自殺、和田も行方不明となった。和田は公団の開発予定地である火口から身を投げようとした。その前に立ちふさがったのは西だった。翌日の新聞は、和田の自殺を報じた。奇怪な事件がまた起った。岩淵と守山の命で貸金庫の鍵を開けた白井が、金が消えさっている代りに、例の新築庁舎の絵葉書が一枚残されているのを発見したのだ。その貸金庫のカラクリを知っているのは、白井と死んだ和田しか知らないはずだ。白井はその夜、自宅の街燈の下に和田の姿を見て、ショックのため気が狂った。そんな白井が不正事件を発覚させないかと案じた大竜建設の波多野社長(松本染升)と金子専務(山茶花究)は、岩淵と守山に処分を命じた。彼らは殺し屋(田中邦衛)を使って白井を消そうとした。白井を救ったのは、またしても西だった。西は5年前自殺した古谷の息子だったのである。すべては父の復讐をするためだったのだが、守山に感づかれた。西は守山を造兵廠跡の廃墟に閉じこめた。和田が佳子を電話で呼び出し、廃虚に連れてきた。何もかも聞き幸せですという佳子を、西は初めて抱きしめた。帰った佳子を岩淵はだまし、西の居所を言わせた。西は薬用アルコールを静脈に注射され、自動車に失心状態のまま押しこまれて、貨物列車にぶつけられた。岩淵は記者に「申し分のない秘書を、しかも、娘の婿を失って呆然自失--」とつぶやいた。


志村喬、西村晃、森雅之              田中邦衛、西村晃

題名:悪い奴ほどよく眠る
監督:黒澤明
製作:田中友幸、黒澤明
脚本:小國英雄、久板榮二郎、黒澤明、菊島隆三、橋本忍
撮影:逢澤譲
特機:大隅銀造
照明:猪原一郎
録音:矢野口文雄、下永尚
音効:三縄一郎 (パースペクタ立体音響)
美術:村木興四郎
小道具:浜村幸一
技髪:山田順二郎
結髪:浅見知子
衣裳:栗原正次
記録:斎藤照代
編集:黒澤明
音楽:佐藤勝
特殊技術:東宝技術部
現像:キヌタ・ラボラトリー
製作担当:根津博
製作進行:江口英彦
助監督:森谷司郎
監督助手:坂野義光、西村潔、松江陽一、川喜多和子
撮影助手:斎藤孝雄、木村大作
美術助手:佐久間純
編集助手:兼子玲子
演技事務:吉竹悠一
音楽事務:原田英雄
製作宣伝:林醇一
スチール:副田正男
出演:三船敏郎、森雅之、香川京子、三橋達也、志村喬、西村晃、加藤武、藤原釜足、笠智衆、宮口精二、南原宏治、土屋嘉男、山茶花究、田中邦衛、菅井きん、松本染升、清水元
1960年日本・黒澤プロダクション+東宝/東宝スコープ(シネスコサイズ)・モノクロ150分35mmフィルム
悪い奴ほどよく眠る -DVD-
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。


加藤武、香川京子、三橋達也               森雅之

映画「黒い傷あとのブルース」


「黒い傷あとのブルース」吉永小百合

小林旭                          吉永小百合

今回は野村孝監督1961年製作「黒い傷あとのブルース」をピックアップする。
本作は吉永小百合さんと小林旭さんが共演した唯一の作品であり、日活独特の緩いハードボイルド・サスペンスになっている。ロケーションは、神奈川県横浜市曙町、神奈川県立音楽堂、チャペルセンター、野毛山動物園、兵庫県神戸市で行われている。


大坂志郎、吉永小百合                   郷鍈治

大坂志郎、近藤宏、神山繁                 稲葉義男

【ストリー】
霧笛流れる横浜の波止場に、白いトレンチ・コートの男渡三郎(小林旭)が姿を現わした。5年前、落ち目の勢力を挽回しようとあせって堤組の組長(松本染升)が、小牧(大坂志郎)のもってきた密輸の取り引きに手を出し、その取り引き現場を何者かに襲われて死に、渡は警察に捕えられたのだった。いま彼は小牧を探そうとしている。あの事件は小牧の仕組んだ芝居とにらんだからだ。昔なじみの場所をあたったが、小牧の行方はつかめない。ただ、この間にふとしたことで知り合った清純なバレリーナ洋子(吉永小百合)と再会したことが、渡の心を慰めた。渡は小牧がモダンなスーパー・マーケットを経営しているのを知った。彼は小牧に500万円を要求した。むろん、堤の遺族のためである。ところが、あの洋子が意外にも小牧の一人娘だった。洋子に結婚を申し込んでいるクラブ“ブルー・ムーン”の社長茂原(神山繁)の名がマーケットの登記書にあることを洋子に聞いた渡は、黒幕が茂原であり、堤組をつぶした小牧と共謀して事件をたくらんだことを知った。このころ、洋子と渡の胸に、たがいに慕情が芽生えてきたのだった。洋子は、かつて堤組のチンピラだった丈二(郷鍈治)から父の秘密を聞かされ、父に無断で500万円を渡に届けた。彼はこの金を堤の未亡人たか(東恵美子)に渡そうとしたが、小さな幸福を求めて子供をかたぎに育てようとしているたかは受け取らない。渡は5年間の報復の念が空しいものになったことを知った。茂原は渡を消そうと小牧をそそのかし、夜更けの倉庫裏に二人を対決させた。相討ちに見せかけようとする茂原の銃弾--。渡の応戦に茂原は肩を射抜かれたが、小牧もまた息絶えた。洋子は一人ぼっちになった。渡への恋心だけが生きる糧であった。渡への手紙を丈二に託した洋子は、喫茶店で渡を待った。が、遠くから彼女の姿をじっと見ただけで、渡の白いトレンチ・コートは霧の中に消えていった。


東恵美子                        吉永小百合、小林旭

題名:黒い傷あとのブルース
監督:野村孝
企画:児井英生
原作:山野良夫
脚本:山崎巌、吉田憲二
撮影:岩佐一泉
照明:岩木保夫
録音:福島信雅
美術:木村威夫
擬斗:渡井喜久雄
記録:服部佳子
編集:鈴木晄
音楽:大森盛太郎 主題歌:小林旭「黒い傷あとのブルース」挿入歌:牧村旬子「女の素肌」
現像:東洋現像所
製作主任:武藤良夫
助監督:吉田憲二
色彩計測:小栗準之助
スチール:荻野昇
出演:小林旭、吉永小百合、大坂志郎、神山繁、郷鍈治、稲葉義男、金井克子、東恵美子、近藤宏、深江章喜、木島一郎、松本染升
1961年日本・日活/シネスコサイズ・カラー86分35mmフィルム
黒い傷あとのブルース -DVD-
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。


吉永小百合                      黒い傷あとのブルース