映画「エロ事師たち」より 人類学入門

「エロ事師たち」より 人類学入門
「エロ事師たち」より 人類学入門 小沢昭一
「エロ事師たち」より 人類学入門「エロ事師たち」より 人類学入門
小沢昭一                       坂本スミ子

今回は今村昌平監督1966年製作「エロ事師たちより 人類学入門」をピックアップする。
本作は野坂昭如氏の同名原作を映画化したものだが、小沢昭一さんの好演と坂本スミ子さんの熱演に観る者の心が奪われる作品である。かつて8ミリフィルムエロ映画をブルーフィルムと呼んだが、写真下右のカメラは、フジカシングル8-P100である。P100を4台、フラットプレートに固定し視差はあるものの一度に撮影する。2カメなので8本の商品が作れるといった具合だ。現像機とプリンターを導入する話も出て来るが、劇中では現れなかった。つまり8本の撮影済みを街場の現像所(D.P.E)で処理してもらっている訳で、今のアダルトビデオの様な結合シーンは撮れないから牧歌的なエロ映画であったのだ。

※シングル8またはスーパー8のフィルム・カートリッジ1巻は、サイレント18コマ/秒で3分20秒、トーキーで24コマ/秒で2分30秒が撮影できる。シングル8は富士フィルム、スーパー8はコダック製。

【追記・訃報】
「夜が明けて」のヒット曲や映画「楢山節考」で知られる歌手・俳優の坂本スミ子(さかもと・すみこ、本名石井寿美子=いしい・すみこ)さんが2021年1月23日午前、脳梗塞のため熊本市の病院で死去した。84歳。大阪市出身。葬儀は近親者のみで行う。喪主は長女聖子(せいこ)さん。熊本市の自宅は非公表。高校卒業後、NHKの合唱団を経てラテン歌手としてデビュー。NHKのバラエティー番組「夢であいましょう」に出演し、主題歌を歌って注目を集めた。
「ラテンの女王」と呼ばれ、NHK紅白歌合戦に1961年から5年連続で出場した。俳優としても才能を発揮し、1983年にカンヌ国際映画祭で最高賞パルムドールに輝いた映画「楢山節考(今村昌平監督)」で、息子に山に捨てられる老いた母を好演。当時カンヌで前歯を抜いた役作りなどを語って話題に。実年齢で1歳しか違わない緒形拳さんと母子を演じきった。今村監督の映画「『エロ事師たち』より人類学入門」で毎日映画コンクール助演女優賞。テレビドラマにも出演した。1993年からは義母の後を継ぎ、聖母幼愛園(熊本市東区)の園長として幼児教育に力を注いだ。
1/23(土) 22:19配信熊本日日新聞

「エロ事師たち」より 人類学入門「エロ事師たち」より 人類学入門
佐川啓子                    フジカシングル8 -P100

【ストリー】
人間生きる楽しみいうたら食うことと、これや。こっちゃの方があかんようになったらもう終りやで。スブやんこと緒方義元(小沢昭一)は、いつも口ぐせのようにこうつぶやくと、エロと名のつくもの総てを網羅して提供することに夢を抱いている。スブやんは関西のある寺に生れたが、ナマグサ坊主の父親とアバズレ芸者の義母の手で育てられた。高校を卒えて大阪へ出て来たスブやんは、サラリーマンとなったが、ふとしたことからエロ事師の仲間入りをしたのがもとで、この家業で一家を支えることになった。彼の一家とは彼が下宿をしていた松田理髪店の女王人で未亡人の春(坂本スミ子)と彼女の二人の子供、予備校通いの幸一(近藤正臣)と中学三年生の恵子(佐川啓子)である。スブやんは春の黒髪と豊満な肉体に魅かれてこうなったのだが、春にとっては思春期の娘をもって、スブやんを間に三角関係めいたもやもやが家を覆い、気持がいらつくばかりだ。そして、歳末も近づいた頃、遂に春は心蔵病で倒れた。スブやんは病人の妻と二人の子供をかかえて、動くこととなった。仲間の伴的(田中春男)は暴力団との提携をすすめたが、スブやんは質の低下を恐れて話を断わり、8ミリエロ映画製作に専念した。その映画とは実の親が娘を犯すといったもので、さすがのスブやんも考え込んでしまった。帰宅するとスブやんは恵子の様子がきがかりで仕方がなかった。その夜、スブやんはニュータイプの器具から足がついて、警官に逮捕された。その頃、春の病状は思わしくなかった。幸一のバリ雑言の中で、春は、スブやんの仕事を信じていた。出所したスブやんにまた生気がよみがえってきた。数日後、酔いつぶれて帰って来た恵子に、スブやんはいとしさがこみあげて、ついに一線を越えてしまった。事の成りゆきを知った幸一は家出した。「緒方はんいたずらしはるねん」恵子は母にこうもらしたが、死期の迫った春には、返す言葉もなかった。4月春はスブやんの子供を妊ごもったまま、恵子の写真を針でつきながら死んでいった。春と恵子を愛し、スブやんは幸一をも案じながら年をとっていった。それから5年、美容師に成長した恵子の店の裏の川で船上生活をする白髪のスブやんは、エロ事師一世一代の仕事として、恵子をモデルにした精巧なダッチワイフの制作に励んでいた。ある夜、船を繋いでいた縄が切れたのも知らず、一心不乱に人形に植毛するスブやんの姿があった。船はゆらりゆらりと大海原へ流されていくのだった。

「エロ事師たち」より 人類学入門
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「エロ事師たち」より 人類学入門「エロ事師たち」より 人類学入門
小沢昭一、浜村純                  坂本スミ子

題名:「エロ事師たち」より 人類学入門
監督:今村昌平
企画:今村昌平、友田二郎、山本一哉
原作:野坂昭如
脚本:今村昌平、沼田幸二
撮影:姫田真佐久
照明:岩木保夫
録音:紅谷愃一
美術:高田一郎
音楽:黛敏郎
編集:丹治睦夫
製作主任:山野井政則
製作進行:曽志崎信二、武重邦夫、和田淳司、宇佐美正吾
監督助手:磯見忠彦、結城良煕、田中登
撮影助手:安藤庄平、山本連二、早川勝春
照明助手:大場通彰、飯田富保、佐藤礼次郎
録音助手:小柳恵政、信岡実
美術助手:塩沢弘巳
方言指導:駒田達郎
スチール:荻野昇
出演:小沢昭一、坂本スミ子、中村鴈治郎、佐川啓子、田中春男、中野伸逸、菅井一郎、園佳也子、菅井きん、北村和夫、浜村純、殿山泰司、ミヤコ蝶々、西村晃、佐藤蛾次郎
1966年日本・今村プロダクション+日活/シネスコサイズ・モノクロ128分35mmフィルム

「エロ事師たち」より 人類学入門「エロ事師たち」より 人類学入門
園佳也子、小沢昭一                  小沢昭一、坂本スミ子
「エロ事師たち」より 人類学入門「エロ事師たち」より 人類学入門
近藤正臣、坂本スミ子             「エロ事師たち」より 人類学入門

映画「赤い殺意」

赤い殺意
「赤い殺意」春川ますみ
赤い殺意赤い殺意
春川ますみ                                                              露口茂

今回は今村昌平監督1964年製作「赤い殺意」bestを8月14日に新文芸坐「戦後75年 社会派の巨匠・今村昌平 映画を通して日本の社会を考える」で「にっぽん昆虫記」と併映で観て来た。35mmフィルム上映である。
本作は、古い家族制度の中で抑圧的な環境にも拘わらず生きる貞子(春川ますみ)は、強盗(露口茂)に犯された事を契機に、彼女の性を素朴でユーモラスに織り交ぜながら、強くしたたかに変貌を遂げていく様を淡々と描いている。底辺に或るテーマは「にっぽん昆虫記」と同根である。この時代の今村作品に深く感銘する。

赤い殺意赤い殺意
西村晃、春川ますみ                  西村晃、楠侑子

【ストリー】
強盗が押し入った夜、夫の吏一(西村晃)は出張中であった。恐怖におののく貞子(春川ますみ)を、殴打しスタンドのコードで縛りあげて、獣のようにせまって来る強盗の平岡(露口茂)に、貞子は半ば気を失って呻いた。明け方強盗は再び貞子を犯して去った。“死なねばならない”貞子は、土堤下を通る鉄路にふらふらと出てみたが子供勝への愛情はたち難かった。翌日出張から帰って来た夫に、何度かうちあけようとしたが、何も気づかない風の吏一の態度に、言葉をのんだ。東北大学の図書館に勤める吏一には、事務員義子(楠侑子)と五年も肉体関係がある反面、家庭では吝嗇で、小心な夫であった。再び強盗が貞子の前に現れたのは、あれから2日後の夜だった。乱暴なふるまいのあと、「もうじき死ぬんだ、あんたに優しくしてもらいたいんだ」と哀願した。その夜吏一に抱かれながら、貞子は、家庭の平和を乱したくないと苦悶した。だが、デパートの特売場で、平岡に声をかけられた貞子を、義子が見てから、夫は、近所の学生英二との間を疑うようになった。2月の初め、妊娠に気づいた貞子に、強盗は“腹の子は俺のだ”と執拗にせまった。吏一の父清三(加藤嘉)の葬儀に行った貞子は、自分が妾腹だという理由で入籍されず、子供の勝が清三の子になっているのを知って愕然とした。数日後、平岡が合図の石を屋根に投げたのを聞いた夫が、英二(糸賀靖雄)のしわざと思いこみ嫉妬にかられて隣家に踏みこんだ。夫に疑われて追いつめられた貞子は、平岡に会いにいった。平岡はトランペット吹きで、心臓を病んでいた。よわよわしい彼の表情に負けて、またも温泉マークに入った貞子は、ついに平岡を殺そうと決意した。農薬をジュースに混入して殺すのだ。吏一の東京出張中、貞子と平岡は、汽車に乗ったが、途中不通となったため、吹雪の中を疲労にふらつく平岡を助ける貞子に義子が木影からカメラをむけていた。疲労の末貞子が手を下すまでもなく悶絶してゆく平岡を前に、貞子は、何か説明しがたい胸の痛みを感じた。そして義子も、カメラをもったまま車にはねられて死亡した。何ごともなかったような毎日が始まったが、貞子のうえには、女としての自覚と責任が、新しく芽ばえていた。

赤い殺意赤い殺意
赤木蘭子、春川ますみ           春川ますみ、小沢昭一、北村和夫、西村晃

題名:赤い殺意
監督:今村昌平
企画:高木雅行
原作:藤原審爾
脚本:長谷部慶次、今村昌平
撮影:姫田真佐久
照明:岩木保夫
美術:中村公彦
録音:神保小四郎
特機:金田啓治
振付:漆沢政子
記録:大平篤子
編集:丹治睦夫
音楽:黛敏郎
製作主任:山野井政則
助監督:遠藤三郎
方言指導:小梨勝彬、結城良熙
スチール:斎藤耕一
出演:春川ますみ、西村晃、露口茂、楠侑子、赤木蘭子、北林谷栄、北村和夫、小沢昭一、宮口精二、加藤嘉、近藤宏、北原文枝、殿山泰司
1964年日本・日活/シネスコサイズ・モノクロ150分35mmフィルム

赤い殺意
「赤い殺意」露口茂、春川ますみ
赤い殺意赤い殺意
赤い殺意

映画「愛のコリーダ」

愛のコリーダ愛のコリーダ
松田英子                         藤竜也

今回は大島渚監督1976年製作「愛のコリーダ(L’EMPIRE DES SENS)」をピックアップする。
題名の「コリーダ」はスペイン語で闘牛を意味する本作は、1936年(昭和11年)に起きた“阿部定事件”を題材に大島渚監督が、撮影を京都で行ない、フランスで現像・編集を行った作品である。劇場公開時に性描写などに多くの修正と一部のシーンにカットが施されたが、2000年のリバイバル時に修正を減らたノーカット版「愛のコリーダ2000」として公開された。私は1976年10月に劇場公開されてから数年後にグアムロケに行った際、ノーカット版を現地映画館で観た記憶がある。
主演の松田英子さんは、1968年から寺山修司氏主宰の劇団「天井桟敷」に市川魔胡として活躍し、1970年に「野良猫ロック マシン・アニマル」で映画デビュー、東映京都作品のほか、ATG作品「聖母観音大菩薩」や、日活ロマンポルノ、東映大泉などの数本の映画に出演。1982年のフランス映画「Cinq et la peau」への出演を最後に引退し、2011年に病死している(合掌)。

愛のコリーダ愛のコリーダ
愛のコリーダ(L’EMPIRE DES SENS)

【ストリー】
昭和11年2月1日、東京は中野の料亭「吉田屋」に、30過ぎの女が、女中として住み込んだ。名は阿部定(松田英子)と言ったが、店では、加代と名付けられた。定は神田で繁昌している畳屋の末娘だったが、15歳の時に大学生に犯されて以来、不良となり、18歳で芸者に出され、以後娼妓、私娼、妾などの生活を転々としてきたのだった。しかし、最近彼女のパトロンになった名古屋の商業高校の校長(九重京司)は、定が浮草のような生活を止めて、真面目になるなら小料理屋を出してくれることになり、修業のために定は女中奉公に出たのだった。だが、定は吉田屋の主人吉蔵(藤竜也)に一目惚れしてしまった。吉蔵も、水商売の歳月を重ねてきた定の小粋な姿に惹きつけられた。二人は夜更けの応接間や、早朝の離れ座敷などで密会を重ねていくうちに、ついに吉蔵の妻(中島葵)に知れてしまった。そして、その翌日、二人は駆け落ちした。最初は一日か二日のつもりで家を出て来た吉蔵も、いつしか定の情熱に引きずられていった。やがて金のなくなった定は、吉蔵に自分の赤い長襦袢を着せて部屋に閉じ込め、自分は名古屋のパトロンのもとへ金策に行った。その離れている時間の切なさ。再会した二人は、さらに待合を転々として愛欲の世界に浸り込んでいくのだった。二人が駈け落ちしてから二週間経った。吉蔵は「二人が末長く楽しむために」どうしても一度家へ戻って処理しなければならないことがある、と言った。定はいやいや承知した。互いに想いを慕らせた二人が再会したのは5日目の5月11日だった。二人は待合の一室に篭ったまま果てしない愛欲の生活にのめり込んでいった。定は戯れに「今度、別れようとしたら殺してやる!」と叫んで出刃包丁をふりかざすのだった。5月16日夜、戯れに吉蔵の首を締めていた定の手に力が入りすぎ、吉蔵の顔は赤く腫れあがってしまった。定は懸命に介抱するが直らず、吉歳は一旦、家へ帰って養生する結論を出した。しかし、定は前に別れていた時の切なさを思い出し、吉蔵を自分一人のものにするため、吉蔵を殺す決意をした。定は疲れ果ててまどろむ吉蔵の首に腰紐を巻きつけ、力を込めた。しばし死んだ吉蔵に添寝していた定は、吉蔵への愛絶ちがたく、その陰部を出刃包丁で切り取り、肌身につけるのだった。

愛のコリーダ愛のコリーダ
愛のコリーダ(L’EMPIRE DES SENS)

題名:愛のコリーダ
仏題:L’EMPIRE DES SENS
監督:大島渚
製作総指揮:アナトール・ドーマン
製作:若松孝二
脚本:大島渚
撮影:伊東英男
照明:岡本健一
録音:安田哲男
美術:戸田重昌
装置:下石坂成典
装飾:荒川大
衣裳:加藤昌廣
美粧:竹村幸二
結髪:大沢菊江
編集:浦岡敬一
音楽:三木稔
音楽演奏:日本音楽集団
フィルム:イーストマンコダック
現像:L.T.C(フランス)
助監督:崔洋一
合作調整:フランス映画社
スチール:小山田幸生
出演:松田英子、藤竜也、中島葵、芹明香、阿部マリ子、松井康子、殿山泰司、小山明子、白石奈緒美、松廼家喜久平、富山加津江、九重京司
1976年日本・フランス(アルゴス・フィルム=オセアニック=大島渚プロ)/ビスタサイズ・カラー104分35mmフィルム
愛のコリーダ -DVD-
2018年8月現在、DVDレンタルはありません。

愛のコリーダ愛のコリーダ
愛のコリーダ(L’EMPIRE DES SENS)

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