映画「野獣刑事」


緒形拳                        いしだあゆみ

今回は工藤栄一監督1982年製作「野獣刑事」をピックアップする。
ロケハンに3か月を要した本作の主舞台となる恵子(いしだあゆみ)のアパートは、大阪十三の神崎川の縁に建っていた空家を借り切って撮影したそうだ。そのアパートで撮影中に、偶然対岸の伊丹空港近くの町工場が火事を起こして黒煙を上げて燃え始めた。工藤監督は即座にシナリオを書き換え、燃え上がる工場をバックに恵子と阪上(泉谷しげる)の芝居を撮り上げたという。”降りしきる雨の夜、恵子を抱き立ち尽くす大滝の姿”で終わる予定だった本作は、岡田茂東映社長の指示で追加撮影が行われた。それは”阪上(泉谷しげる)が、復讐のため大滝(緒形拳)の前に現れ、大バトルを繰り広げるという展開”で、大阪梅田の繁華街での暴走カーチェイスを三石千尋氏によるカー・スタントで行い、阪上が立て籠る家は、千里の新興住宅地で行ったそうだ。


泉谷しげる                    泉谷しげる、いしだあゆみ

【ストリー】
雨の夜、赤い傘をさした女子短大生の死体が発見された。ナイフで何度も刺された死体は西尾由美子(麻田三智子)と判明した。有能だがヤリ過ぎと評判の大滝刑事(緒形拳)もこの事件の捜査にかり出された。大滝はかつて逮捕した男、阪上(泉谷しげる)の情婦、恵子(いしだあゆみ)と同棲に近い暮しをしている。恵子には一人息子の稔(川上恭尚)がいるが、大滝には慣つこうともしない。大滝は独自の捜査で被害者由美子の隠された生活をつきとめた。彼女は昼はノーパン喫茶、夜はコールガールをしていたのだ。その頃、恵子の夫、阪上が出所し、彼女の所に転り込んできた。大滝には頭の上がらない阪上が加わった奇妙な三角関係の生活が始まった。数日後、大滝は死体の見つかった近くの茂みで、血の跡のついたいくつもの紙片を見つけた。紙を並べると一枚の女の絵になった。そして、阪上がその絵と同じものを売っている男を見つけ、大滝に通報する。その男、田中(益岡徹)を大滝は別件で逮捕、殴る蹴るの尋問をするが証拠不十分でシロ、大滝は捜査本部からはずされた。同じ頃、阪上は再びシャブに手を出すようになり、妄想状態で暴れることもしばしばで、ついに保護されてしまう。一人になった大滝は、恵子に囮になってもらうことを頼んだ。降りしきる雨の夜、恵子は赤い傘をさして歩いた。一台の車が近づくと、赤い傘を残して去っていった。大滝は必死の追跡のはてに犯人を捕えたが、代償はかけがえのない恵子の命だった。一ヵ月後。解放された阪上は、車を奪うと、稔を助手席に乗せ、暴走し、無差別殺人を始めた。そして、住宅街の一角に人質と共に立て篭ると「恵子を殺した大滝を呼べ!」と叫ぶ。包囲する警官の制止をふりきって、大滝は阪上の銃口に向って前進する。大滝は阪上を逮捕するが、その表情は阪上以上の苦悩が読みとれた。


藤田まこと、成田三樹夫              いしだあゆみ、泉谷しげる

題名:野獣刑事
監督:工藤栄一
企画:日下部五朗、本田達男
脚本:神波史男
撮影:仙元誠三
照明:渡辺三雄
録音:栗山日出登
音効:永田稔
整音:荒川輝彦
美術:高橋章
装飾:窪田治
衣裳:黒木宗幸
美粧・結髪:太田とも子
擬斗:三好郁夫
カースタント:三石千尋 (スリーチェイス)
記録:梅津泰子
編集:市田勇
音楽:大野克夫 主題歌:大野轟二「泳ぐ人」挿入歌:内田裕也「ROLLING ON THE ROAD」
音楽プロデューサー:浅岡弘行
現像:東映化学
進行主任:長岡功
助監督:成田裕介
演技事務:寺内文夫
製作宣伝:丸国艦
スチール:金井謹治
出演:緒形拳、いしだあゆみ、泉谷しげる、川上恭尚、小林薫、成田三樹夫、芦屋雁之助、藤田まこと、川上恭尚、益岡徹、絵沢萠子、阿藤海、蟹江敬三、富永佳代子、麻田三智子
1982年日本・東映京都撮影所/ビスタサイズ・カラー119分35mmフィルム
野獣刑事 -DVD-
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。


野獣刑事                                                      緒形拳


「野獣刑事」いしだあゆみ

映画「野獣死すべし」


野獣死すべし

松田優作                    松田優作、鹿賀丈史

今回は村川透監督1980年製作「野獣死すべし」をピックアップする。
本作は大藪春彦氏の同名ハードボイルド小説を映画化したものだが、1959年に東宝で須川栄三監督が仲代達矢さん主演で撮っている。本作の方は、原作をペースにしているものの、全く異質の作品に仕上げている。作品の良し悪しは別として、1979年に製作されたフランシス・フォード・コッポラ監督の「地獄の黙示録」に相当影響を受け、名優松田優作さんの個性が炸裂している事は確かだ。劇場で観たのが懐かしい。

※1959年須川栄三監督「野獣死すべし


「野獣死すべし」松田優作

小林麻美                       室田日出男

【ストリー】
ある夜、警視庁捜査一課の岡田警部補(青木義朗)が殺害され、拳銃が奪われた。数日後、秘密賭博場が襲われ、暴力団3人が射殺され、テラ銭3,000万円が奪われた。使われた拳銃は奪われたものだった。伊達邦彦(松田優作)は、通信社のカメラマンとして、アンゴラ、レバノン、ウガンダなど血と硝煙の戦場を渡り歩き、帰国して退社した今、翻訳の仕事をしている。戦場でめざめた野獣の血、巧みな射撃術、冷徹無比な頭脳の持ち主だ。岡田警部補の部下だった柏木(室田日出男)は、執念深く事件を追い、長身、ガッチリとし体の男という容疑者像を割り出した。そして、伊達の尾行を始める。柏木の尾行をよそに、伊達はコンサート会場で華田令子(小林麻美)に接近したり、優雅な日々を送っている。暫くして、伊達は次の行動に移った。高級宝石店の店員を支払いをするからと銀行に呼び出した。店員が預金カウンターに近づくと、伊達は係の男に、前にいる男に金を渡せと電話をした。係員の防犯の合言葉で、何も知らない宝石店の男は、組み伏せられ、1分30秒後にパトカーが到着した。これは銀行の防犯体勢を調べる伊達の実験だ。大学の同窓会に出席した伊達は、そこで、自分と同じ野獣の血を感じた真田(鹿賀丈史)と出会い、彼を仲間に入れる。伊豆山中での拳銃の練習。真田はアッという間に腕を上げた。同行した恋人、雪絵(根岸季衣)が邪魔になった真田は、伊達に促され動く標的として、彼女に銃口を向けた。銀行襲撃は決行された。巧妙に逃走する伊達と真田。追う柏木。銀行に居合わせた令子も射殺して、伊達は野獣のみちを突き進んでいく……。


野獣死すべし

「野獣死すべし」松田優作、鹿賀丈史

題名:野獣死すべし
監督:村川透
製作総指揮:角川春樹
製作:黒澤満、紫垣達郎
原作:大藪春彦
脚本:丸山昇一
撮影:仙元誠三
照明:渡辺三雄
録音:福島信雅
音効:坂井三郎
美術:今村力
擬斗:松尾悟
衣装:第一衣装
美粧:入江美粧
記録:今井治子
編集:田中修
音楽:たかしまあきひこ
現像:東映化学
色彩計測:川口徹也
助監督:小池要之助
製作担当:青木勝彦、山本勉
スチール:関谷嘉明
出演:松田優作、小林麻美、鹿賀丈史、室田日出男、根岸季衣、風間杜夫、岩城滉一、泉谷しげる、佐藤慶、青木義朗、安岡力也、トビー門口、岡本麗
1980年日本・角川春樹事務所+東映/ビスタサイズ・カラー119分35mmフィルム
野獣死すべし -DVD-
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。


「野獣死すべし」室田日出男               松田優作

「野獣死すべし」松田優作          日比谷公園市政會舘(ラストカット)

映画「生きてるうちが花なのよ 死んだらそれまでよ党宣言」


倍賞美津子                       平田満

今回は森崎東監督1985年製作「生きてるうちが花なのよ 死んだらそれまでよ党宣言」をピックアップする。
本作の時代背景は、1979年に起きたスリーマイル島原発事故以降、原発に対する不安が世界的に高まり原発への信頼は急激に揺らぐ中、本作公開の翌年に歴史上最大の原発事故が、ロシアのチェルノブイリ原発で起きる。そして2011年3月11日に起こった東日本大震災は、15mの津波に襲われた東京電力福島第一原子力発電所は、1~5号機で全交流電源を喪失し、原子炉を冷却できなくなり、1号炉・2号炉・3号炉で炉心溶融(メルトダウン)が発生し、大量の放射性物質の漏洩を伴う重大な原子力事故である。これで原発は絶対安全という神話は根底から崩壊した。

本作は、時代を先取りし正しい視点に立った作品であり、原発ジプシー、ジャパユキサン(出稼ぎに来た女性外国人労働者)、コザ暴動(1970年12月20日)、校内暴力など深刻な社会問題をプロットに組み入れ、問題提起した優秀な作品だ。


倍賞美津子、原田芳雄               平田満、倍賞美津子、上原由恵

【ストリー】
旅回りのストリッパー、バーバラ(倍賞美津子)が名古屋に帰って来た。沖縄集落の中のタケ子(小林トシ江)が経営する飯み屋の二階が彼女の住居で、内縁の夫・宮里(原田芳雄)と親友のアイコ(上原由恵)が待っているはずだった。その日は、バーバラの弟の正(片石隆弘)とタケ子の娘、タマ枝(竹本幸恵)、和男(久野真平)の不良中学生三人が修学旅行からはずされた腹イセに積立金強奪騒動を起こし、人質の野呂教諭(平田満)が縛られ、物干し台に転がされていた。宮里は原発を転々と渡り歩く労働者・原発ジプシーでヤクザの仲間入りをしている。バーバラとは沖縄のコザ暴動以来の間柄で、彼女はそろそろ、二人で堅気の仕事に就いて結婚したがっていた。バーバラは宮里の顔を見るや、アイコのことを聞く。アイコは福井の美浜で原発労働者相手の娼婦をさせられていて、宮里の手引きで逃げて来たが、前日、美浜へ帰ってしまっていた。バーバラは、宮里がやくざに寝返ってアイコを帰したと思い込み、学校をクビになった野呂を鞄持ちとして再びドサ回りの旅に出た。そして、美浜に向かう。殺されたと思っていたアイコは元気だった。彼女は好きな男、安次(泉谷しげる)を葬ったところであった。学校を追われた正たちも宮里と共に美浜に来ていた。事故で死んだという安次は、本当は原発で作業中に廃液漏れで被爆し、事故隠しの為にボート小屋に監禁されたのだった。アイコは一計を案じ、安次を死んだことにして埋葬するが、後日、やくざの目を盗んで安次を墓から掘り出し、バーバラと野呂を仲人に墓場で結婚式をあげる。二人は浜を急ぐが、海上の船から銃で撃たれてしまう。バーバラや正たちは、アイコと同じ境遇にあるフィリッピン女性のマリア(ジュビー・シバリオス)にもやくざの魔の手が迫っているのを知り、マリアを連れて名古屋にもどる。そして、老船長(殿山泰司)の船でフィリピンまでマリアを連れて密航しようと考えた。マリアを追ってやって来たやくざの戸張(小林稔侍)は、宮里にアイコ殺しの代人として自首しろという。宮里は拒否し、戸張を銃で撃つが、暫く後、戸張の子分に撃たれてしまう。よろよろと外に出る宮里をやくざとつながっている鎧刑事(梅宮辰夫)が待っていた。そして、瀕死の宮里から銃をもぎ取ったバーバラが刑事めがけて発砲する。


殿山泰司                         左とん平 

題名:生きてるうちが花なのよ 死んだらそれまでよ党宣言
監督:森崎東
製作:木下茂三郎
脚本:近藤昭二、大原清秀、森崎東
撮影:浜田毅
照明:長田達也
特機:NK特機
録音:武進
整音:席勇次郎
音効:帆苅幸雄 (東洋音響)
美術:高橋章
装飾:佐藤結樹、遠藤光男、中山誠
美粧:小張えり子 (STUDIO 717)
衣裳:京都衣裳
特効:大平火薬
記録:森田溶子
編集:菅野善雄 ネガ編集:辻井好子
音楽:宇崎竜童 主題歌:五木ひろし「あほう鳥」
現像:東洋現像所
撮影スタジオ:にっかつ撮影所
録音スタジオ:アオイスタジオ
プロデューサー:中沢敏明
製作担当:越智貞夫
製作進行:山口吉郎、中島一
企画協力:市川康満
監督補:下村優
助監督:武内孝吉
監督助手:室岡信明、元波正平、当摩寿史、早川喜貴
撮影助手:井上明夫、図書紀芳、田中潤
照明助手:渡辺孝一、岡尾正行、豊見山明長
録音助手:中村淳、飴田秀彦、岩橋政志
美術助手:正田俊一郎
編集助手:阿部浩英
スチール:竹内健二
出演:倍賞美津子、原田芳雄、平田満、片石隆弘、竹本幸恵、久野真平、小林トシ江、ジュビー・シバリオス、上原由恵、乱孝寿、梅宮辰夫、河原さぶ、小林稔侍、左とん平、殿山泰司、泉谷しげる
1985年日本・キノシタ映画+ATG/ビスタサイズ・カラー105分35mmフィルム
生きてるうちが花なのよ 死んだらそれまでよ党宣言 -DVD-
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。


倍賞美津子

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