映画「風の視線」


園井啓介                        新珠三千代

今回は川頭義郎監督1963年製作「風の視線」をピックアップする。
本作は、松本清張氏原作のメロドラマであるが、冗長な流れで展開する三角関係で終始する。60年代の世相、男女の地位などが明確に反映された背景が現代ではありえず、逆におもしろかった。


岩下志麻                          佐田啓二

【ストリー】
亜矢子(新珠三千代)は夫重隆(山内明)との愛なき結婚にすっかりつかれ果てていた。外国に赴任している夫の留守を、視力を失った母堂總子(毛利菊枝)と暮らしていた。そうした美貌の人妻亜矢子に、新進のカメラマン奈津井(園井啓介)は憧れを持っていた。だが、彼女のすすめるままに千佳子(岩下志麻)と簡単な見合結婚をしてしまった。千佳子は亜矢子の夫重隆に誘惑されて、短かい愛の交渉をもった暗い過去があった。この結婚にはこういった暗い影があった。亜矢子は、夫の留守中に知り合った大新聞の事業部の次長久世(佐田啓二)が、心のよりどころとなりそれが愛にかわっていた。久世は、画期的な企画に敏腕をふるって業界にその名を知られていたし、若い芸術家達に絶大な信頼があった。しかし、彼もまた亜矢子と同じように、愛なき結婚で結ばれた名前だけの妻(奈良岡朋子)と別居した生活を送っていた。そんなところへ、重隆が突然帰国してきた。この帰国は複雑な人間関係に大きな波紋を投げかけた。この帰国を知った千佳子は、荒廃した自分の中に真実の愛を確かめようとして重隆を訪れた。しかし、彼はただ千佳子の身体を求めるだけだった。彼女は現在の生活までも捨てようとした自分の愚かさを知って、奈津井のアパートから姿を消した。一方、久世の妻英子は夫と亜矢子の仲にしっと心をもやし、帰国早々の重隆に中傷した。重隆は亜矢子との離婚を認めず、最後まで彼女を苦しめようと図った。そんな時、重隆は密輸であげられた。亜矢子はこれで夫とは絶対別れられないと決心し、久世を川治温泉に誘って一夜を過ごした。そうした亜矢子の心を知って久世は、みずから進んで、佐渡の支局へ転勤した。そんな頃、荒んだ生活の奈津井のもとに千佳子が帰ってきた。若い二人はお互の愛の傷を見詰め合うことによって、新しい愛の生活に出発しようとする勇気と意志を持ったのだ。一方、英子は東京から佐渡へ渡る気になれず、自分から久世に別れを告げた。そして、獄窓の重隆も亜矢子との離婚に心から同意するようになっていた。亜矢子と久世の結ばれる日は、もう間近なのだ。


岩下志麻、新珠三千代                    山内明

奈良岡朋子                          園井啓介

題名:風の視線
監督:川頭義郎
製作:脇田茂
原作:松本清張
脚本:楠田芳子
撮影:荒野諒一
照明:飯島博
録音:松本隆司
整音:沼上精一
美術:岡田要
装置:佐須角三
装飾:深沢重雄
衣裳:吉田幸七
編集:杉原よ志
音楽:木下忠司
進行主任:峰順一
助監督:中新井和夫
撮影助手:内海収六
照明助手:荒木勝
録音助手:佐藤広文
渉外事務:秦野賢児
スチール:堺謙一
出演:岩下志麻、新珠三千代、園井啓介、佐田啓二、山内明、滝田裕介、奈良岡朋子、加藤嘉、高宮敬二、山内明、毛利菊枝、中村たつ、小林トシ子、松本清張
1963年日本・松竹/シネスコサイズ・モノクロ105分35mmフィルム
風の視線 -DVD-
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。


園井啓介、岩下志麻                     風の視線

映画「心中天網島」


中村吉右衛門                  岩下志麻(治兵衛の妻おさん)

中村吉右衛門、岩下志麻(遊女小春)             岩下志麻

今回は篠田正浩監督1969年製作「心中天網島」bestをピックアップする。
本作は、篠田監督が松竹から独立してから撮った最初の作品で、ATG(日本アートシアターギルド)の1,000万円映画として2週間の撮影期間で制作されたものだが、内容とクオリティの高さに驚く作品である。300万円の予算超過があったそうだが、劇中に黒子が登場したり、大きな古文字や浮世絵が描かれた壁や床のセットなどのハイセンスな栗津潔さんの美術、全編を通しての斬新な演出・撮影・照明が行われ、大掛かりなセットが組めない低予算映画という事を逆手に取っている。

本作を2019年1月20日に池袋の新文芸坐で行われた特集上映 “デビュー60年 女優・岩下志麻” で、35mmプリントで再び観て来たが、中村吉右衛門さんの歌舞伎で培われた独自の発声とイントネーション、細かい所作の素晴らしさと、母性とモラルの妻おさんと、心中する儚い遊女小春の二役を見事に、違和感なく演じ分けた岩下志麻さんの上質の芝居が、成島東一郎氏のモノクロトーンに冴え映り、完璧なものにしている。本作は1960年代に、日本の優れた才能が結集して作られた作品である事は間違いない。


中村吉右衛門、岩下志麻                   滝田裕介

【ストリー】
大阪天満御前町の紙屋治兵衛(中村吉右衛門)は、女房子供のある身で、曽根崎新地紀伊国屋お抱えの遊女小春(岩下志麻)と深く馴染み、情死のおそれもあった。これを案じた治兵衛の兄粉屋の孫右衛門(滝田裕介)は、武士姿に仮装し、河庄に小春を呼び出した。孫右衛門は、小春に治兵衛と別れるようさとし、その本心を問いただした。小春は治兵衛と死ぬ積りはないと言った。折から、この里を訪れていた治兵衛は二人の話を立聞きし、狂ったように脇差で斬りこんだ。だが、孫右衛門に制せられ、両手を格子に縛られてしまった。そこへ恋敵の太兵衛(小松方正)が通りかかり、さんざん罵り辱しめた。これを聞きつけた孫右衛門は、表に飛びだし太兵衛を懲しめ、治兵衛には仮装を解いて誡めた。治兵衛は目が覚めた思いだった。そして小春からの起請文を投げかえして帰った。数日後、治兵衛は太兵衛が小春を身請けするとの噂を聞いた。悔し涙にくれる治兵衛。これを見た妻のおさん(岩下志麻)は、始めて小春の心変りは自分が手紙で頼んでやったことと打明けた。そして、小春の自害をおそれ、夫をせきたてて身請けの金を用意させようとした。おさんの父五左衛門(加藤嘉)が娘を離別させたのはそんな折だった。それから間もなく、治兵衛は小春と網島の大長寺で心中した。


小松方正                       滝田裕介、河原崎しづ江

題名:心中天網島
監督:篠田正浩
製作:中島正幸、篠田正浩
原作:近松門左衛門
脚本:富岡多恵子、武満徹、篠田正浩 台詞:富岡多恵子
撮影:成島東一郎
照明:奥山保雄、竹田則夫、小林達三
録音:西崎英雄
音効:高井唯夫、鈴木明
美術:栗津潔
装飾:荒川大、神田明良
美粧:高橋祥子
衣装:橋本潔
絵:篠田桃紅
時代考証:林美一
衣装考証:上野芳正
音楽:武満徹
現像:東洋現像所
製作主任:加藤正夫
助監督:中野恵之、小栗康平、小泉眞、元持昌之
撮影助手:杉村博章、坂本善尚、林光夫、三瓶恵造
編集助手:高橋司圭子
撮影スタジオ:日映新社(日本映画新社)
録音スタジオ:アオイスタジオ
協力:京都衣裳、高津小道具店、川口かつら店、東宝舞台
出演:中村吉右衛門、岩下志麻、河原崎しづ江、滝田裕介、小松方正、左時枝、日高澄子、藤原釜足、加藤嘉、浜村純
1969年日本・表現社+ATG/スタンダードサイズ・モノクロ103分35mmフィルム
心中天網島 -DVD-
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。


心中天網島

映画「わるいやつら」

わるいやつらわるいやつら
片岡孝夫                                                               松坂慶子

今回は野村芳太郎監督1980年製作「わるいやつら」をピックアップする。
本作は原作者の松本清張氏が野村芳太郎監督達と1978年11月に設立した霧プロダクションの第一回作品となる。サスペンスというより愛憎と強欲、女の怖さを豪華俳優陣が見事に演じるが、特に緒方拳さんの井上警部が戸谷信一を取調室で落とすシーンは迫力があった。

わるいやつらわるいやつら
梶芽衣子                                                             宮下順子

【ストリー】
総合病院の院長・戸谷信一(片岡孝夫)は名医と言われた父の死後漁色にあけくれ、病院の赤字を女たちからまきあげた金で埋めていた。戸谷は妻の慶子と別居中で、横武たつ子(藤真利子)、藤島チセ(梶芽衣子)の二人の金ずるの愛人がいる。また彼は槙村隆子(松坂慶子)という独身で美貌のデザイナーに夢中になっている。戸谷は友人の経理士、下見沢(藤田まこと)に妻との離婚の金銭問題やその他の悪事を任せていた。愛人たつ子は深川の材木商のおかみで、親ほど歳の違う夫は、長く病床にあり、彼女が店をきりもりしていた。彼女は戸谷に金を貢ぎながら、夫を毒殺しようとする。戸谷の協力で、たつ子の計画は成功するが、家族の疑いで彼女は店の金を自由に使えなくなってしまう。戸谷は結婚を迫る金のないたつ子を、かつての父の二号で、自分も関係した婦長の寺島トヨ(宮下順子)と共謀して殺害する。一方の愛人、藤島チセも東京と京都にある料亭を切りまわす女傑で、戸谷の最大の資金源だった。チセも夫を疎ましがっており、戸谷はたつ子のときと同じ方法で殺害する。二度とも、医師として信用のある戸谷の書いた死亡診断書は何の疑いももたれなかった。戸谷は秘密を知るトヨの存在が次第に邪魔になり、モーテルで絞殺、死体を林の中に投げ捨てた。戸谷はすべての情熱を隆子に注いだ。一方、トヨの死体発見の記事はいつまでも報道されなかった。ある日、井上警部(緒形拳)が戸谷を訪れた。たつ子とチセの夫の死因に不審な点があると言う。追いつめられる戸谷。そこへ、下見沢が戸谷の預金を下して行方をくらませたことが判明する。絶望した戸谷は殺人で逮捕される。そして、殺したはずのトヨとチセが逮まった。トヨは息絶えておらず、逃げだしてチセと組んだのだ。無期懲役の戸谷にくらべ、二人は殺人幇助ということで、刑期はずっと短かかった。数日後、隆子のファッション・ショーが開かれていた。それは下見沢のプロデュースによるものだった。そして、ナイフを隠しもった下見沢が隆子に襲いかかった。刑務所に送られる戸谷の足もとに風に舞う新聞がからみついた。そこには「血ぬられたファッション・ショー・デザイナー重傷、中年男の悲恋」の見出があった。

わるいやつらわるいやつら
宮下順子                        緒形拳

題名:わるいやつら
監督:野村芳太郎
企画:松本清張
製作:野村芳太郎、野村芳樹
原作:松本清張
脚本:井手雅人
撮影:川又昂
照明:小林松太郎
録音:山本忠彦
美術:森田郷平
編集:太田和夫
音楽:芥川也寸志
助監督:大嶺俊順
スチール:赤井博且
出演:片岡孝夫、松坂慶子、梶芽衣子、藤真利子、宮下順子、神崎愛、藤田まこと、緒形拳、渡瀬恒彦、米倉斉加年、山谷初男、滝田裕介、小沢栄太郎、佐分利信
1980年霧プロダクション+松竹/ビスタサイズ・カラー129分35mmフィルム
わるいやつら -DVD-
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。

わるいやつらわるいやつら
渡瀬恒彦                     松坂慶子、藤田まこと

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