映画「紙の月」

紙の月
宮沢りえ
紙の月紙の月
宮沢りえ                       小林聡美

今回は吉田大八監督2014年製作「紙の月」をピックアップする。
本作は、2014年1月27日に東京でクランクインし、神戸市の旧居留地や神戸市営地下鉄、実際のラブホテルでも撮影されたそうだ。銀行の撮影には茨城県水戸市の中核施設・オハナコートの一画にある旧常陽銀行双葉台出張所が使われている。私は、宮沢りえさんの卓越した演技に驚かされ、ベテラン俳優の小林聡美さん、石橋蓮司さん、近藤芳正さん、田辺誠一さんなど脇を固める布陣も凄かった。また女優に一本立ちした大島優子さんの自然な芝居が良かった。私は、ラストまでは全てがバランス良く出来た作品だと思ったが、梨花(宮沢りえさん)が窓を破ってからのラストシーンで興ざめた。台無しだ。何も警察に捕まる様なくだりはいらないが、もっと別の結末があった筈だと思う。

紙の月紙の月
石橋蓮司

【ストリー】
1994年。梅澤梨花(宮沢りえ)は、子どもには恵まれなかったものの夫(田辺誠一)と穏やかな日々を送っている。契約社員として勤務する「わかば銀行」でも、丁寧な仕事ぶりで上司の井上(近藤芳正)からも高評価。支店では、厳格なベテラン事務員の隅より子(小林聡美)や、まだ若くちゃっかり者の窓口係・相川恵子(大島優子)ら、様々な女性たちが梨花と共に働いている。だが一見、何不自由のない生活を送っている梨花であったが、自分への関心が薄く鈍感なところのある夫との間には空虚感が漂い始めていた。ある夜、梨花の顧客で裕福な独居老人の平林(石橋蓮司)の家で一度顔を合わせたことのある孫の光太(池松壮亮)と再会した梨花は、何かに導かれるように大学生の彼との逢瀬を重ねるようになる。そんな中、外回りの帰り道にふと立ち寄ったショッピングセンターの化粧品売り場。支払い時にカードもなく、現金が足りないことに気づいた梨花が手を付けたのは、顧客からの預かり金の内の1万円だった。銀行に戻る前にすぐに自分の銀行口座から1万円を引き出して袋に戻したが、これが全ての始まりであった。学費のために借金をしているという光太に梨花は「顧客からの定期の申し込みがキャンセルになった」と200万を渡す。さらに顧客から預かった300万を自分の通帳に入れ、自宅で定期預金証書や支店印のコピーを偽造する……。
やがて横領する額は日増しにエスカレートしていくのだった、上海に赴任するという夫には同行せず、梨花は光太と一緒に高級ホテルやマンションで贅沢な時間を過ごすが、光太の行動にも変化が現れ、ある日、光太が大学を辞めたことを告げられる。そんな折、隅が、銀行内で不自然な書類の不備が続いていることを不審に感じ始めていた……。

紙の月紙の月
大島優子

題名:紙の月
監督:吉田大八
製作総指揮:大角正、高橋敏弘、安藤親広
製作:石田聡子、池田史嗣、明石直弓
原作:角田光代
脚本:早船歌江子
撮影:シグママコト
照明:西尾慶太
録音:加来昭彦
整音:矢野正人
美術:安宅紀史
衣裳:小川久美子
編集:佐藤崇
音楽:Little moa、小野雄紀、山口龍夫 音楽プロデューサー:緑川徹
主題曲・主題歌:ヴェルヴェット・アンダーグラウンド・アンド・ニコ
助監督:甲斐聖太郎
出演:宮沢りえ、池松壮亮、大島優子、田辺誠一、小林聡美、近藤芳正、佐々木勝彦、石橋蓮司、中原ひとみ、天光眞弓、伊勢志摩、平祐奈
2014年日本・ロボット/シネスコサイズ・カラー126分デジタルシネマ
紙の月 DVD
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。

紙の月紙の月
平祐奈                        宮沢りえ

映画「またの日の知華」

またの日の知華またの日の知華
「第一章 知華と良雄」吉本多香美         吉本多香美、田中実

今回は原一男監督2004年製作「またの日の知華」をピックアップする。
本作は、知華というキャラクターを四人の女優が演じる構成なので、オムニバス映画ではないが、1970年代のニュース・フィルムを挿入しながら激動の時代を奔放に生きた女性・知華の生き様をテーマにしている。原監督は、劇映画初作品であるが「極私的エロス・恋歌1974」で紹介した様に、今村昌平監督、浦山桐郎監督や日活出身のキャメラマン姫田真佐久氏に師事して劇映画の礎は仕上がっている。だから本作を”ドキュメンタリー作家が作った劇映画”というのは当たらない。むしろ、台詞で説明したり、画解きをするベタなステロタイプを用いず、映像で語っているのが、原一男監督らしく素晴らしい作品だ。私は、桃井かおりさんのニュートラルな情念の演技に感動した。

※原一男監督作品についてはこちらをご覧下さい。

またの日の知華またの日の知華
「第二章 知華と和也」渡辺真起子        田辺誠一、渡辺真起子

【ストリー】
「第一章 知華と良雄」
元機動隊員の良雄(田中実)は、60年安保闘争時に身も心も傷付いていた。そんな良雄にとって従妹の知華(吉本多香美)は、いつも眩しい存在だった。知華は、自分が母の不義の子であることから、自分と良雄は実の兄弟ではないかという幻想にとらわれていた。大会中の事故がもとで体操選手となる夢を断念し、中学校の体育教師となった知華と、良雄は結婚する。東京での新生活が始まり、1969年1月、全共闘運動で揺れる東京で、知華は純一を出産する。教師として、母として、妻として、懸命に生きようとする知華。そんな矢先、良雄が結核と診断され、入院を余儀なくされる。
知華:吉本多香美 良雄:田中実
「第二章 知華と和也」
良雄が療養所に入院中、郷里の母校に勤めるようになった知華(渡辺真起子)に、新任体育教師、和也(田辺誠一)が接近してくる。和也の亡父は少女時代の知華の後援者であり、父の遺した8ミリフィルムに映る知華の映像に、和也は焦がれつづけていた。和也に求められ、知華は夫の留守に耐える妻の殻を脱ぎ捨てて、性の悦びに浸る。1972年正月、自宅療養を許された良雄が帰ってくる。和也との仲が噂になり、退職届を出した日の夜、知華は嫉妬に駆られた和也に呼び出され、モーテルへ行く。良雄は無言で送り出し、テレビを点ける。連合赤軍あさま山荘事件が映し出されていた。
知華:渡辺真起子 和也:田辺誠一
「第三章 知華と幸次」
知華の教え子、幸次(小谷嘉一)は、姉の率いるアナーキーなゲリラグループに属していた。アジトが内ゲバで襲われた夜、幸次は知華(金久美子)と再会する。かつて、生意気な転校生だった幸次を、暴力的な男性教師からかばったのも知華だった。教職を辞した後、知華は借金取りに追われるように単身で上京していた。レズビアンの姉に複雑な思いを抱きつつ、知華を慕うようになる幸次。和也から手切金を受け取った知華は、アジトを襲撃されて行き場のなくなった幸次を連れて、豊川に住む幸次の祖母の元に身を寄せる。1974年8月、手筒花火の大役をやり遂げた幸次は、東京丸の内での過激派による爆破事件に衝撃を受ける。その夜、知華と幸次は結ばれる。しかし、ふたりで南の島に旅立とうとしたとき、姉が迎えにくる。
知華:金久美子 幸次:小谷嘉一
「第四章 知華と瀬川」
流れ者の瀬川(夏八木勲)は、場末のスタンドバーでの売春の客として、知華(桃井かおり)と出会う。女を刺した前科をもつ瀬川と、知華は深い仲になってゆく。その一方で、和也との生活も続いていた。小学生になった純一が新潟から訪ねてくる度に、知華はどちらかの男性と束の間の親子の時を過ごした。瀬川は、自分が預けていた金を使い込んでしまった知華を、遠い旅に誘う。たどり着いたのは、瀬川の故郷・飛鳥。瀬川が朽ち果てた生家を訪れている間に、知華は純一に電話をかけ、「いっしょに暮らそう」と言う。しかし、電話の向こうからは、つれない返事が返ってくる。岸壁の上で瀬川とたわむれる知華。海には、真っ赤な夕焼けが燃え落ちる。
知華:桃井かおり 瀬川:夏八木勲 リエ:三条泰子 純一:吉岡秀隆「エピローグ」

またの日の知華またの日の知華
「第三章 知華と幸次」金久美子、小谷嘉一

題名:またの日の知華
監督:原一男
企画:原一男
製作:小林佐智子
脚本:小林佐智子
撮影:岡雅一
照明:山川英明
録音:西岡正己
美術:大庭勇人
記録:溝木久子
編集:鍋島惇
音楽:上田亨
撮影機材:映像サービス(AATON16)
フィルム:富士フィルム
現像:東京現像所、SONY P.C.L
プロデューサー:莟宣次
製作担当:平増邦彦
助監督:森宏治
出演:吉本多香美、桃井かおり、渡辺真起子、金久美子、夏八木勲、吉岡秀隆、田中実、田辺誠一、小谷嘉一、三条泰子、根岸季衣
2004年日本・疾走プロダクション/ビスタサイズ(Super16mm)・カラー114分16mmフィルム
またの日の知華 [DVD]
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。

またの日の知華またの日の知華
またの日の知華またの日の知華
「第四章 知華と瀬川」夏八木勲、桃井かおり