映画「男はつらいよ・口笛を吹く寅次郎」


渥美清                      竹下景子(マドンナ役)

今回は山田洋次監督1983年製作「男はつらいよ・口笛を吹く寅次郎」をピックアップする。
第32作となる本作のロケ地は、岡山県備中高梁、広島県因島などで行われ、封切り時の観客動員は148万9,000人、配給収入は12億5,000万円だったそうだ。当時のロードショー入場料金は1,500円、併映は「喜劇 家族同盟(監督:前田陽一 出演:中村雅俊、中原理恵、有島一郎、ミヤコ蝶々、川谷拓三)」であった。マドンナ役の竹下景子さんは「寅次郎心の旅路(第41作/1989年)」編でも出演している。(別キャラクター)


渥美清、竹下景子                 倍賞千恵子、前田吟

【ストリー】
車寅次郎がふらりとやってきたのは義弟の博の生家がある備中高梁。今年は博の亡父の三回忌にあたり、その墓参りを思いついて訪れたのである。そこで寺の和尚と娘の朋子に出会った寅次郎はお茶に呼ばれ、すすめられるままに酒へと座は盛り上がりすっかり和尚と意気投合。朋子の弟・一道は仏教大学に在籍しているものの写真家になりたいといって父と対立していた。翌日、帰ろうとした寅次郎は朋子が出戻りだということを知る。そこに法事の迎えがやって来て、二日酔の和尚に代って買って出た寅次郎は、名調子の弁舌がすっかり檀家の人たちに気に入られてしまい、寺に居つくハメになった。数日後、博、さくら、満男の親子三人が三回忌の法事で寺にやってきた。そして、介添の僧の姿をした寅次郎を見て度胆を抜かれる。ある日、大学をやめて東京の写真スタジオで働くという一道を和尚は勘当同然に追い出した。一道には病弱な父を支えて酒屋を切り盛りしているひろみという恋人がいた。ある夜、和尚と朋子の「寅を養子に貰うか」という会話を耳にした寅次郎は、翌朝、書きおきを残して東京に発った。とらやに戻った寅次郎は、一同に余生を仏につかえることを告げ、帝釈天での押しかけ修業が始まった。ある日、とらやに一道とひろみが訪ねてきた。お店の休みを利用して上京してきたひろみを泊めてほしいとのことだった。結局、二人共二階の寅次郎の部屋に泊まり、数日後、朋子がそのお礼に訪ねてきた。寅次郎は嬉しいのだが、そわそわしてゆっくり話そうともしない。そうしているうちに朋子の帰る時間がやってきた。朋子は見送りに来た寅次郎にそれとなく好意を伝えるが、寅次郎は冗談としてうけとりはぐらかす。朋子は悲しげに去っていた。そして寅次郎は、又、旅に出るのであった。


竹下景子、松村達雄、中井貴一             杉田かおる

題名:男はつらいよ・口笛を吹く寅次郎
監督:山田洋次
企画:小林俊一
製作:島津清、中川滋弘
原作:山田洋次
脚本:山田洋次、朝間義隆
撮影:高羽哲夫
照明:青木好文
録音:鈴木功
調音:松本隆司
美術:出川三男
編集:石井巌
音楽:山本直純 主題歌・唄:渥美清
撮影機材:パナビジョン
フィルム:富士フィルム
現像:東京現像所
製作主任:峰順一
製作進行:玉生久宗
助監督:五十嵐敬司
スチール:長谷川宗平
出演:渥美清、竹下景子、倍賞千恵子、前田吟、三崎千恵子、太宰久雄、笠智衆、佐藤蛾次郎、下條正巳、吉岡秀隆、中井貴一、杉田かおる、長門勇、松村達雄、関敬六、人見明、八木昌子、穂積隆信、石倉三郎、レオナルド熊、あき竹城
1983年日本・松竹/シネスコサイズ・カラー104分35mmフィルム
公式サイト
男はつらいよ・口笛を吹く寅次郎 -DVD-
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。


渥美清、レオナルド熊               関敬六、渥美清、長門勇

渥美清、前田吟、太宰久雄、三崎千恵子、下條正巳、倍賞千恵子/三崎千恵子、倍賞千恵子、太宰久雄、吉岡秀隆、前田吟、太宰久雄

竹下景子                  倍賞千恵子、渥美清、竹下景子

映画「男はつらいよ・寅次郎恋歌」


渥美清                       池内淳子(マドンナ役)

今回は山田洋次監督1971年製作「男はつらいよ・寅次郎恋歌」をピックアップする。
第8作となる本作のロケ地は、岡山県備中高梁、山梨県甲斐大泉などで行われ、封切り時の観客動員は148万1,000人、配給収入は4億円だったそうだ。本作は初代おいちゃん役の森川信さんが出演したシリーズ最後の作品になった。当時のロードショー入場料金は700円、併映は「春だドリフだ 全員集合!!(監督:渡辺祐介 出演:ザ・ドリフターズ、進藤恵美、長山藍子)」であった。本作は、シリーズ好調の中、洋画専門劇場であった丸の内ピカデリーでもロードショー公開された。


倍賞千恵子               渥美清、池内淳子

三崎千恵子、森川信、渥美清      三崎千恵子、倍賞千恵子、森川信、前田吟

【ストリー】
例によって車寅次郎(渥美清)は半年ぶりで故郷柴又へ帰ってきた。一同は歓迎したつもりだったが、些細な言葉のゆき違いから竜造(森川信)やつね(三崎千恵子)と喧嘩となり、又もや旅にでることになった。寅が去って静かになったある日、博(前田吟)の母が危篤という電報が入り、光男を竜造夫婦に託した博とさくら(倍賞千恵子)は岡山へ急いだ。博の父の[風票]一郎(志村喬)は元大学教授で、研究一筋に生きてきた学者だった。葬式の日、驚ろいたことに寅がヒョッコリ現われた。柴又に電話したことから、葬式のことを知り、近くまできていたから寄ったという。しかし、旅先とはいえ、派手なチェックの背広姿である。さくらは近所の人から借りたダブダブのモーニングを寅に着せ、葬儀に参列させるが、トンチンカンなことばかりやってその場をしらけさせてしまう。岡山で生涯生活するという[風票]一郎を一人残して毅(梅野泰靖)、修(穂積隆信)、博の兄弟は去っていくが、[風票]一郎の淋しい生活に同情した寅は一度は去った諏訪家に戻ってくる。[風票]一郎も、自分のこれまでの人生をふりかえって、人間らしい生活をするよう寅に語った。秋も深まった頃、柴又「とらや」で皆が集まって寅の噂をしているところに、題経寺山門の近くに最近開店したコーヒー店の女主人六波羅貴子(池内淳子)が挨拶に来た。この美人を見て一同は身震いした。もしこの場に寅が居合わせたらどうなることか、と考えたからである。しかも、何たる不幸か、寅はその日帰ってきたのである。みんなの予感は摘中し、寅は貴子に身も心も奪われて、そのまま柴又に滞在する仕儀と相成った。貴子には、学という小学校四年になる男の子があった。学は自閉症的な性格のうえに、新しい学校にも馴染めず、貴子も心を痛めていた。しかし、学は寅にすっかりなつき、明るく元気になった。貴子は寅に感謝した。そして寅の、貴子に対する思慕はますます高まり、三人一緒に生活する夢まで見るようになった。その頃、さくらや竜造たちは、寅がいつ又失恋することかとハラハラ見守っていた。みんなが、そろそろ二枚目が現われて例によって失恋する時分だと話しているところに寅が帰ってきて、旅に出るために荷物をまとめだした。寅は、心配するさくらに「いくら馬鹿な俺だって潮時ってものを考えてるよ」といい残すとどこへともなく旅だっていった。


志村喬、渥美清

題名:男はつらいよ・寅次郎恋歌
監督:山田洋次
企画:高島幸夫、小林俊一
製作:島津清
原作:山田洋次
脚本:山田洋次、朝間義隆
撮影:高羽哲夫
照明:内田喜夫
録音:中村寛
調音:小尾幸魚
美術:佐藤公信
編集:石井巌
音楽:山本直純 主題歌・唄:渥美清
フィルム:富士フィルム
現像:東京現像所
製作主任:池田義徳
製作進行:玉生久宗
助監督:五十嵐敬司
スチール:堺謙一
出演:渥美清、池内淳子、倍賞千恵子、前田吟、三崎千恵子、太宰久雄、笠智衆、佐藤蛾次郎、森川信、志村喬、穂積隆信、吉田義夫、岡本茉利、中沢祐喜、上野綾子、梅野泰靖
1971年日本・松竹/シネスコサイズ・カラー113分35mmフィルム
公式サイト
男はつらいよ・寅次郎恋歌 -DVD-
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。

映画「彼女と彼」

彼女と彼
左幸子

今回は羽仁進監督1963年製作「彼女と彼」をピックアップした。
本作は左幸子・岡田英次両氏のベテラン俳優陣と前衛画家の山下菊二氏の実験的な共演を、ドキュメンタリー手法を用いたスタイルで、当時の最先端のモダンで洗練された団地生活とバラックで暮らす「バタヤ部落」の人々との対比を通じて、無機的で孤独、希薄な人間関係を描いた傑作だ。撮影地の百合丘(川崎市多摩区)は、1980年頃から数年住んでいたので街の変貌前に目が行ってしまった。その意味でも前々から気になっていた作品だが、中々劇場で観るチャンスがなくDVDで初めて観た。特別出演で舞台演出家の蜷川幸雄氏、市田ひろみさん、穂積隆信さんが出ていたのはトリビアだった。撮影は写真家の長野重一氏が担当されている。市川崑監督の記録映画「1964年東京オリンピック」や大林宣彦監督「北京的西瓜(1989年)」なども担当された35mmシネカメラに精通されている稀な写真家だ。

彼女と彼彼女と彼
岡田英次、左幸子

私が驚いたのは「ある機関助士(1964年)」「水俣-患者さんとその世界(1971年)」「不知火海(1975年)」などの記録映画監督である土本典昭 氏がポジ編集を担当されていた事だ。岩波映画繋がりなのは容易に推測出来たが「不知火海」の時に見習いで編集作業に師事させて戴いたのに知らなかった。その後 お会いする事なく2008年6月に亡くなった事をネットニュースで以前に知った。謹んでお悔やみを申し上げたい。また「初恋・地獄篇」 に追記したが、羽仁進監督と左幸子さんの娘である羽仁未央さんが2014年11月18日(享年50歳)に亡くなった。母の左幸子さんは2001年11月 (享年71歳)、岡田英次さんは1995年9月(享年75歳)、前衛画家の山下菊二氏は1986年11月(享年67歳)に亡くなっている。合掌。

彼女と彼彼女と彼
山下菊二

【ストリー】
広大な団地アパートのある東京の郊外。石川直子、英一夫婦はこのアパートに住んでいる。ある朝直子はバタヤ集落の燃えている音で目がさめた。白い西洋菓子 のようなコンクリートの城壁に住む団地族、それと対照的にあるうすぎたないバタヤ集落。直子はブリキと古木材の焼跡で無心に土を掘り返す盲目の少女をみつ けた。その少女は、夫の英一の大学時代の友人でこのバタヤ集落に住む伊古奈と呼ばれる男が連れている少女であった。犬のクマと少女をつれていつも歩いてい る男。服装はみすぼらしいが眼は美しく澄んでいた。長い金網のサクで境界線を作った団地とバタヤ集落とは別世界の様な二つの世界であった。夫を送り出したあとコンクリートの部屋で弧独の時間を送る直子に、 眼下に見えるバタヤ集落の様子は、特に伊古奈という男は意識の底に残った。直子は夫を愛するように全ての人間を愛する事に喜びを感じていた。だから伊古奈 にも、盲目の少女にも、クリーニング屋の小僧にも同じように善意をほどこした。直子の世話でバタヤから転業させようとした伊古奈は、社会から拘束されない 今の自由さから離れられず、あいかわらず犬と少女を連れて楽しそうに歩いていた。そんな伊吉奈をみる直子の心は、単調な、コンクリートの中で他人の目を気 にする自分達夫婦の生活に深い疑問をもち、夫との間に次第に距離を感じてゆくのだった。

彼女と彼彼女と彼

題名:彼女と彼
監督:羽仁進
製作:小口禎三、中島正幸
脚本:羽仁進、清水邦夫
撮影:長野重一
照明:田口政広
録音:安田哲男
美術:今保太郎
編集:土本典昭
音楽:武満徹
制作主任:高橋亦一
助監督:木村正芳
撮影助手:西山東男
MA:東京テレビセンター
現像:東洋現像所
出演:左幸子、岡田英次、山下菊二、長谷川まりこ、長谷川明男、木村俊恵、堀越節子
特別出演:蜷川幸雄、市田ひろみ、穂積隆信
第14回ベルリン映画祭特別賞受賞
1963年日本・ATG+岩波映画製作所/スタンダードサイズ・モノクロ117分35mmフィルム
彼女と彼 [DVD]
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。

彼女と彼彼女と彼

作者の言葉
近代的な生活を営もうとする人々にとって、古い「家」からの脱出は共通の希望です。夫婦によって新しく生まれる家族、二人をまず単位とする家族にとってアパートは合理的生活の一つのシンボルとさえいえるかもしれません。人間と人間の関係をどう考え直すか、というのが近代的合理的な生活に投げかけられた大きな課題となります。古い人間関係から脱けだしたつもりでも、いつのまにか新しい因習の見えないわなの中におちこんでしまうのかもしれないのです。僕達を日常生活の中で、無意識の囚人にしているものは沢山あるでしょう。僕達自身の心の中で、フッとそれに気づく瞬間もないわけではありません。僕達の生活が知らないうちに、人間の歴史に対して投げかけている重み。この映画の女主人公のささやかな行為も、いつのまにか、生活の中の小さな裂け目を拡大してしまうことになりました。二枚の絵が、ひっくりかえして見ると謎の地図だったりするのは昔のお話によくありますが、僕達の生活意識も、それと同じように不思議なところもあるような気がします。生活の中で忘れられ節度の中に埋められている一つのことについて、いくらかでも光があたり、人間らしく生きるための不断の努力に少しでも参加できるならば作者達として幸せこれにすぎません。
羽仁 進

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