映画「大根と人参」

大根と人参大根と人参
笠智衆                         乙羽信子

今回は澁谷実監督1964年製作「大根と人参」をピックアップする。
本作は小津安二郎監督が「秋刀魚の味」の次回作として企画・立案していた脚本を監督の逝去(1963年12月12日)により澁谷実監督が映画化した経緯がある。小津監督作品と決定的に違う点は、スタンダードサイズからシネスコサイズへ、50mmレンズ1本撮りから普通のレンズ選択、ローアングルの固守から標準的なポジションでのキャメラの使い方をしている。小津安二郎監督は1923年~25年に松竹蒲田撮影所で撮影助手としてスタートした。その経験と知識からアンリ・カルティエ=ブレッソンのごとく50mmレンズとスタンダートサイズに最後まで拘った。その意味で本作は澁谷実監督作品であり、小津監督とは作風が違うので”小津安二郎記念映画”と銘打つには疑問が残る。

大根と人参大根と人参
長門裕之                        加賀まりこ

【ストリー】
山樹東吉(笠智衆)は内外商事の総務次長だ。長女の京子(岡田茉莉子)、次女の夏子(有馬稲子)、三女の晴子(司葉子)はすでに嫁いで、現在は妻の信代(乙羽信子)と末娘の恵子(加賀まりこ)との3人暮しの毎日だ。その恵子も、東吉の同窓鈴鹿剛平の息子三郎(三上真一郎)と婚約して、やがて巣立とうとしている。或る夜、山樹は同窓会の席上、ガンで療養中の秋山(信欣三)にその病名を知らせる可きか否かで鈴鹿(山形勲)と口論となり、ついに恵子、三郎の縁組もあぶなくなった。だが若い二人の心は、幸せでふくらんでいた。こんな山樹に、小さな事件が訪れた。東吉の世話で、内外商事に入社した弟の康介(長門裕之)が、会社の公金を100万使い込んだのだ。後始末を頼まれた東吉は、30年かけて築きあげた地位を守らんため、預金70万を康介に手渡した。そして残りの30万を証券会社から受け取ったまま、山樹は謎の失踪をした。急拠集まった娘夫婦や、康介は、今はやりの人間蒸発ではないかと、各人各様な推理を働かせては、信代を不安に陥し入れた。河野美枝(岩下志麻)が山樹家を訪れたのは、そんな時であった。美しい娘の登場に“事件の陰に女ありと”思わせたが、実は、美枝は戦争中山樹の愛人だった美枝の母との間に生れた娘であったのだ。そして、結婚の仲人を頼みに来たのだった。山樹が家出して10日たった。こちらは大阪のジャンジャン横丁。ポン引き、コールガールのたむろするホルモン焼き屋で、快気焔をあげる山樹東吉のうれしそうな顔がある。一方山樹家では、半ばあきらめて二週間目をむかえた。そんなある日、玄関の戸を開けて“帰ったよ”と平凡な声をかけて入って来た東吉の姿に、信代をはじめ、娘たちは呆然とした。恵子と三郎の結婚も決り、山樹家に静けさが訪れた頃、秋山は遂に死亡した。数日後、山樹は、鈴鹿に失踪の理由を「動機も理由もなく、美しい空を見ていたら、いつの間にか汽車にのっていた」と語った。

大根と人参大根と人参
岩下志麻                        有馬稲子

題名:大根と人参
監督:澁谷実
製作:城戸四郎
原案:野田高梧、小津安二郎
脚本:白坂依志夫、渋谷実
撮影:長岡博之
照明:小泉喜代司
録音:大村三郎
美術:芳野尹孝
編集:杉原よ志
音楽:黛敏郎
スチール:長谷川宗平
出演:笠智衆、乙羽信子、岩下志麻、加賀まりこ、長門裕之、山形勲、岡田茉莉子、司葉子、森光子、三宅邦子、有馬稲子、加東大介、三上真一郎、信欣三、池部良、桑野みゆき、加藤芳郎
1964年日本・松竹大船撮影所/シネスコサイズ・カラー105分35mmフィルム

大根と人参大根と人参
岡田茉莉子                       加東大介 
大根と人参大根と人参
笠智衆、乙羽信子                  笠智衆、山形勲

映画「世界大戦争」

世界大戦争世界大戦争
フランキー堺                       宝田明
世界大戦争世界大戦争
星由里子                           乙羽信子

今回は松林宗恵監督1961年製作「世界大戦争」をピックアップする。
本作は、冷たい戦争と呼ばれた自由主義陣営と共産主義陣営との世界的対立構造と1947年の米国のマーシャル・プラン以降のヨーロッパに於ける東西軍事ブロックの確立、そして1961年にキューバ危機が起こり、ほんとうに核戦争の危機が迫った時代に作られた真に迫った作品である。当時の製作費で3億円、構想3年、4千名を越すエキストラ、そして特撮班が総力を挙げて水爆に見舞われた東京の姿を描き出している。東京、ニューヨーク、ロンドン、パリ、モスクワが、核ミサイルによって破壊されるクライマックスシーンは、天地を逆にしたミニチュアの下から圧縮空気を吹き出させる方法で撮影されたそうだ。

世界大戦争世界大戦争
笠智衆、白川由美                     山村聡

【ストリー】
世界各地に連鎖反応的に起りつつある侵略と闘争は、全人類の平和を危機に追いつめていた。核戦争の鍵を握る同盟国側と連邦国側は、一触即発の状態を続けていた。戦争が始まったら、間違って押したボタン一つからでも音速の十倍以上で飛んでくるミサイルが、全人類を灰にし、地球は取返しのつかないことになってしまう。全人類が一つになって原水爆禁止のための何かをしなければならないのだ。アメリカ・プレス・クラブの運転手田村茂吉(フランキー堺)は裸一貫からささやかな幸せを築いてきた。娘冴子(星由里子)と二階にいる通信技師高野(宝田明)とは恋人同士で原水爆のことを真剣に考えていた。貨物船笠置丸船上で、突然夜空にオレンジ色から紫紅色へと膨らむ不思議な物体を見た高野は、冴子のもとへの帰途、胃潰瘍手術で九死に一生を得た船のコック長江原(笠智衆)を見舞った。彼は保母をやっている娘早苗(白川由美)や子供達に囲まれて生きる素晴しさを感じていた。連邦軍基地で核弾頭を装填したミサイルが手違いで発射されそうになった折、同盟国ICBM陣地でも作業員のミスからダイナマイトが暴発、核弾庫の誘爆の危機に襲われた。そうなれば世界は破滅だと判断した司令官は命を賭して起爆装置をはずした。皆、一兵卒に至る迄心から平和を念じているのだが……平和の願いはパリ首脳会談に託された。記者ワトキンス(ジェリー伊藤)を車で送った茂吉はこれらの状勢は金儲けのための株の変動への期待としか考えられなかった。そして神経痛に顔を歪めるお由(乙羽信子)に代って、庭にチューリップの球根を埋めてやるのだった。バーング海上で連邦軍と同盟軍編隊機の衝突から戦闘状態に入り、くすぶり続けた各地の侵略と闘争は再開され、日本政府は徒らに平和と停戦を呼び続けるのみだった。日本国内基地から飛び立った連邦軍爆撃機への報復として、同盟国の原子爆弾はロケットを発射し、東京は混乱の巷と化し、恐怖は全ての人を捉えた。保育園では早苗がなす術もなく、逃げまどう人々の心には平和を願い続けたのになぜ殺されねばならないのだ!と一様に去来した。冴子は無電機で高野の送信をキャッチした。「コーフクダッタネ……」やがて火球が東京を包み第三次世界大戦が勃発、巨大なビルは破片となって散り、全てが数万度の熱に晒された。ニューヨークでもパリでもモスコーでも……津波の後の静かな洋上を笠置丸は再び東京へ向っていた。東京の最期を見たのは高野達乗組員だけだろう。流れくる放射能のために生きて戻ることは不可能でも高野は帰りたいと思った。全世界がもっと早く声を揃えて戦争を反対すればよかったものを……あらゆる良識を無視して世界大戦は勃発し、そして終ったのだ。

世界大戦争世界大戦争
世界大戦争(THE LAST WAR)
世界大戦争世界大戦争
フランキー堺、星由里子、乙羽信子            東野英治郎

題名:世界大戦争
英題:THE LAST WAR
監督:松林宗恵
製作:藤本真澄、田中友幸
脚本:八住利雄、木村武
撮影:西垣六郎
照明:森弘充
特機:矢島袈裟夫、加賀見正友
録音:矢野口文雄
整音:下永尚
音響:北沢靖 (パースペクタ立体音響)
美術:北猛夫、安倍輝明
大道具:小川重太郎、田中喜一、大谷忠雄
舞台組付:徳竹信義
小道具:建守末好、佐伯慎也
衣裳:岩井正晴
結髪:鈴木和子
記録:米山久江
編集:岩下広一
音楽:団伊玖磨
現像:東洋現像所 合成:向山宏
製作担当:森本朴
製作進行:江口英彦
演技事務:松山元計
助監督:田実泰良
監督助手:岩内克己、砂原博泰、千葉隆司
撮影助手:永井仙吉、志田篤弘、宝田武久、入口勝男
照明助手:秋池深仁、大口良雄、宮下義雄、北川忠利
録音助手:田中信行、山田守、影山修
美術助手:育野重一、鈴木一八、秋森直美
【特殊技術】
監督:円谷英二
撮影:有川貞昌、富岡素敬
美術:渡辺明
照明:岸田九一郎
特機:中代文雄
火薬:山本久蔵、渡辺忠昭
石膏:利光貞三、安丸信行
造型・造形:利光貞三、八木康栄、八木勘寿、開米栄三
光学撮影:幸隆生、徳政義行
合成撮影:三瓶一信、鵜飼啓一
合成作画:石井義雄、塚田猛昭
光学作画:幸隆生、飯塚定雄、茂田江津子、黒川博通
編集:石井清子
製作担当:成田貫
製作進行:関和郎
助監督:浅井正勝
スチール:田中一清
出演:フランキー堺、宝田明、星由里子、乙羽信子、白川由美、笠智衆、ジェリー伊藤、東野英治郎、山村聡、上原謙、河津清三郎、中村伸郎、中北千枝子、富永裕子、阿部浩司
1961年日本・東宝/東宝スコープ(シネスコサイズ)・カラー110分35mmフィルム
世界大戦争 -DVD-
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。

世界大戦争世界大戦争
星由里子、宝田明                      星由里子
世界大戦争世界大戦争
世界大戦争(THE LAST WAR)

映画「お嫁においで」


加山雄三                        沢井桂子

内藤洋子                        黒沢年男

今回は本多猪四郎監督1966年製作「お嫁においで」をピックアップする。
円谷英二特技監督とのコンビで特撮映画を撮り続けた本多猪四郎監督は、「ゴジラ」の生みの親として有名だが、本作は加山雄三さんの同名ヒット曲を元にした歌謡映画にも係わらず、若大将シリーズとは違いプロットがしっかりした作品であると思う。沢井桂子さんが魅力的に映っている。


原恵子、黒沢年男                    田村亮

笠智衆                        千石規子

有島一郎                     沢井桂子、松本めぐみ

【ストリー】
設計技師須山保(加山雄三)は父(笠間雪雄)の経営する造船会社で働いているカッコいい青年。目下、保には縁談があるが、彼はその気になれない。というのは、エンストした保のスポーツカーを押してくれた露木昌子(沢井桂子)が忘れられないからだ。昌子は何処に勤めているとも言わずに立ち去ったのだが、保は彼女がホテルのウェイトレスをしているのを偶然見かけ、それ以来、両親の勧める縁談には耳もかさない有様。ただ、兄思いの妹葉子(内藤洋子)はそんな保のためにプロポーズ作戦を練る。ところで昌子はタクシーの運転手野呂高生(黒沢年男)と親しい。だから、葉子の作戦通り保がホテルの裏口で昌子を待っていると、野呂が彼女を連れ去っていくという具合で、保の歩が悪い。そこで葉子は、タクシー会社へ野呂を指名して遠出させ、その間に保が昌子と会うという計画を立てたのがまんまと成功。保は昌子に愛を打ち明け、恋人に立候補した。昌子は迷った、野呂も好きだし、保の熱烈なプロポーズにも心を動かされる。一方野呂は魚屋の娘つね子(原恵子)から愛を打ち明けられたが、昌子を愛していると断る。そんなある日、保の両親は昌子の存在を知り、ホテルの支配人(有島一郎)を通じて昌子をクビにしたが、それを知った保は驚いて昌子の許に飛んでいった。昌子はその保にはっきりと言った。「あなたのプロポーズは突然飛び込んで来た幸福みたいで落ち着かない。身分相応の野呂さんが自分にはふさわしいと思う」そう言われた保はきっぱりと昌子との結婚を諦め二人を祝福した。ある天気のよい一日、ヨットを走らせる保と葉子の姿が湘南の海に見られた。


内田裕也                      お嫁においで

田村亮、沢井桂子                 内藤洋子、加山雄三

題名:お嫁においで
監督:本多猪四郎
製作:藤本眞澄
脚本:松山善三
撮影:宇野晋作
照明:大野晨一
録音:伴利也
整音:下永尚
美術:育野重一
大道具:田中喜一
小道具:野島秋雄
衣裳:池田誠
記録:米山久江
編集:武田うめ
現像:東京現像所 合成:三瓶一信
音楽:広瀬健次郎 主題歌:加山雄三「お嫁においで」俺は海の子「夜空を仰いで」
製作担当:山田順彦
製作進行:森知貴秀
助監督:渡辺邦彦
監督助手:藤井誠之助、松本正志
美術助手:荒巻宏俊、櫻木晶、沼田和幸
スチール:秦大三
出演:加山雄三、沢井桂子、内藤洋子、黒沢年男、原恵子、田村亮、千石規子、内田裕也、笠智衆、有島一郎、松本めぐみ、高田稔、飯田蝶子、笠間雪雄、村田知栄子、菱見地谷子(ひし美ゆり子)
1966年日本・東宝/シネスコサイズ・カラー101分35mmフィルム
お嫁においで -DVD-
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。


「お嫁においで」沢井桂子

「お嫁においで」沢井桂子

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