映画「動乱」


「動乱 第1部海峡を渡る愛」高倉健、吉永小百合      吉永小百合

永島敏行、小林稔侍                   田村高廣

今回は森谷司郎監督1980年製作「動乱」をピックアップする。
二部構成の本作は、第一部「海峡を渡る愛(48分)」と第二部「雪降り止まず(102分)」でインターバルはない。内容は昭和史の起点となった515事件から226事件までを背景に、寡黙な青年将校とその妻の愛を中心に描いている大作だ。


佐藤慶                      米倉斉加年、高倉健

桜田淳子、にしきのあきら               志村喬

【ストリー】
第一部「海峡を渡る愛」(48分)
昭和7年4月、仙台連隊。宮城啓介大尉(高倉健)が隊長をつとめる中隊の初年兵、溝口(永島敏行)が脱走した。姉の薫(吉永小百合)が貧しさから千円で芸者に売られようとしていたからだ。溝口は捜索隊の上司を殺してしまい、宮城は弁護を申し出るが聞き入れられず、溝口は銃殺刑に処せられた。宮城は父に用立ててもらった千円を香典として渡す。当時、日本は厳しい経済恐慌に包まれ、これを改革すべく、一部の海軍将校と陸軍士官候補生らが決起した。5・15事件である。クーデターは失敗に終り、陸軍内部の皇道派と統制派の対立を激化させた。この影響は仙台にいる宮城にまで及び、部下から脱走兵を出した責任で朝鮮の国境守備隊へ転任を命じられる。そこは、朝鮮ゲリラへ軍需物資の横流しが平然と行なわれる腐敗したところだ。官城は将校をねぎらう宴に招待され、そこで芸者になった薫と再会する。薫を責める宮城。数日後、薫が自殺を図った。宮城は軍の不正を不問にすることで、薬を入手し薫の命を救う。その頃、国内では統制派によって戦争準備が押し進められていた。

第二部「雪降り止まず」(102分)
昭和10年10月、東京。宮城は第一連隊に配属になり、薫と共に居をかまえた。
しかし、二人の間にはまだ男と女の関係はなかった。官城の家には多くの青年将校が訪れ、“建設か破壊か”と熱っぽく語り合っていく。憲兵隊の島謙太郎(米倉斉加年)はそんな宮城家の向いに往みこんで、四六時中、見張りを続けていた。ある日、宮城は恩師であり皇道派の長老格でもある神崎中佐(田村高廣)を薫と伴に訪れた。神崎の家庭の幸せを見て、薫は「私の体は汚れているから抱けないんですか」と宮城につめよる。数日後、宮城が決行を決意していた軍務局長暗殺を神崎が単身で陸軍省におもむき果してしまった。この事件は青年将校たちに“時、来る”の感を持たせ、昭和維新への機運いっきに高まった。官城たちの行動に、心情的には同調しながらも、憲兵という職務から事を事前にふせごうと島は苦悩する。決行の日が決まり、宮城は実家に帰り父に薫のことを頼むと、はじめて彼女を抱くのだった。決行の日が来た。時に昭和11年2月25日。夜半から降りはじめた雪は、男たちの熱い思いと、女たちの哀しい宿命をつつみこんで、止むことなく降り続いていた……。


米倉斉加年                       吉永小百合

題名:動乱
副題:第1部海峡を渡る愛 第2部雪降り止まず
監督:森谷司郎
企画:池田静雄、坂上順、岡田裕介
脚本:山田信夫
撮影:仲沢半次郎
照明:川崎保之丞
録音:広上益弘
音効:原尚
美術:中村州志、今村力
装置:中村文栄
装飾:田島俊英
衣装:河合啓一
美粧:入江荘二
美容:宮島孝子
記録:高津省子
編集:戸田健夫
音楽:多賀英典 主題歌:小椋佳「流れるなら」
現像:東映化学
進行主任:小島吉弘
製作担当:東一盛
助監督:沢井信一郎
演技事務:和田徹
スチール:遠藤努
出演:高倉健、吉永小百合、米倉斉加年、田村高廣、桜田淳子、志村喬、佐藤慶、田中邦衛、にしきのあきら、川津祐介、戸浦六宏、小林稔侍、田中邦衛、小池朝雄、岸田森、日色ともゑ、永島敏行、相馬剛三
1980年日本・東映+シナノ企画/シネスコサイズ・カラー150分35mmフィルム
動乱 -DVD-
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。


「動乱 第2部雪降り止まず」

高倉健、吉永小百合

映画「無頼漢」


仲代達矢                           岩下志麻
今回は篠田正浩監督1970年製作「無頼漢」をピックアップする。
本作は、大島渚監督、吉田喜重監督と共に松竹ヌーベルバーグの旗手と呼ばれれ、2003年に「スパイ・ゾルゲ」を最後に映画監督からの引退を発表した篠田正浩監督の寺山修司氏脚本による異色時代劇である。

美しく、狂おしく 岩下志麻の女優道」 (春日太一著・文藝春秋刊)より
A:岩下志麻 Q:春日太一
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Q:これは東宝の作品です。松竹側は大丈夫でしたか?
A:他社出演に関しては結構スムーズでしたね。ですから、本当にありがたかったです。
Q:今回は花魁役でしたが、どのような役作りを?
A:花魁の役は初めてでしたので、まず高いぽっくりを履いて練り歩くのが難しくて。最初、ぽっくりだけ借りてずいぶん歩きの練習をしました。歩くのも、外側に足を廻して歩かないといけないんですよね。しかもゲタが高いでしょう。ですから結構難しくて。
Q:相手役は仲代さんでした。
A:仲代さんはいつも厳しかったり逞しかったり、という役が多いのですが、あれは白塗りでナヨッとしていて、妙に色っぽく見えました。それから、お母さんの市川翠扇さんが素晴らしくて。あの市川翠扇さんと仲代さんの母子関係、母親が子どもにベタベタする関係もよかったですね。
Q:反権力の集団を描く、篠田監督らしい時代劇でした。
A:そこを意識して作った映画なんじゃないかなと私は思いました。ああいうかたちを借りて、体制と反体制をクリアに描いていると思うんです。「権力は変わらない、交代するだけだ」という水野忠邦の最後のセリフがありますが、あの言葉は印象的でした。
Q:独立プロでありながら進んでメジャーと組んで大作を作っていくところが、表現社というか篠田監督の面白さでもあります。
A:そうです。表現社製作で受け持つ場合と、スタッフだけ貸す場合と、いろいろな形があります。表現社単体で作るのが難しい場合は無理に作らない。
Q:作品のスケールや必要な予算に応じて柔軟に製作体制を変えている印象があります。
A:ですから、独立プロで赤字を作らないでずっとこれたのは、表現社ぐらいじゃないかしら。他はみんな家を売ったりして苦労されていますものね。
Q:そこの計算が見事ですね。
A:篠田が絶対に自分のところで背負い過ぎないような製作体制にして、作品のスケールによって作り方を変えていたと思います。


仲代達矢、岩下志麻                    丹波哲郎

【ストリー】
天保13年、水野忠邦(芥川比呂志)の天保の改革は庶民を苦しめ、市井には不満の声が満ちていた。江戸、猿若町の見世物小屋が軒を並べるあたり、役者志願の遊び人直次郎(仲代達矢)は、美しい花魁犬口屋の三千歳(岩下志麻)を知った。直次郎が母親のくま(市川翠扇)と住む犯罪長屋。1年ぶりに帰ってきたなまけ者丑松(小沢昭一)だが、留守中に女房お半と子供は、御用聞き、五斗米市と家主の紋左衛門(春日章良)の手にかかり姿を消していた。芝居小屋の前で「水野体制批判」をして役人に追われた三文小僧を救ったのは、河内山宗俊(丹波哲郎)だった。三千歳を直次郎とはり合う森田屋(渡辺文雄)は御家人くずれの金子市之丞(米倉斉加年)に直次郎殺しを頼んだ。だが金子市は、直次郎と間違えて河内山を襲い、顔を合わせた金子市、河内山、森田屋の三人は、互にふくみ笑いして見合った。直次郎は老いて醜い、おくま(市川翠扇)がいては三千歳と世帯ももてないと考え蒲団にくるみ、大川へ投げ込んだ。一方、河内山は上州屋の一人娘浪路(太地喜和子)が、松江出雲守(中村敦夫)にめかけになれと無理難題を押しつけられているのを聞き、200両で浪路をとり返すことをうけあった。河内山の生命をかけた大仕事を知り直次郎が仲間に加わった。ところで、金子市は丑松、三文小僧など水野体制からはみだした連中を集め、改革に謀叛の火を打ちあげんとしていた。松江家では依然、出雲守が浪路を追い回していたが、家老北村大膳はこの乱行が外にもれることを怖れ、浪路と近習頭宮崎数馬を不義の仲とデッチあげた。そこへ、河内山扮する御使僧北谷道海と直次郎扮する駕篭脇に控える侍桜井新之丞が現れ、晴れの舞台よろしく、大芝居をうった。出雲守からまんまと、浪路をだましとった河内山だが、大膳に見破られ凄絶な最後をとげた。直次郎は邪魔者おくまを背負って捨てに家を出たが、その時、夜空にひろがる花火を見た。それは金子市、丑松、三文小僧の三人が打ち上げた謀反の火柱だった。


市川翠扇                              小沢昭一

題名:無頼漢
英題:THE SCANDALOUS ADVENTURES OF BURAIKAN
監督:篠田正浩
製作:藤本眞澄、若槻安重
原作:河竹黙阿弥「天衣紛上野初花」
脚本:寺山修司
撮影:岡崎宏三
照明:榊原庸介
録音:西崎英雄 (アオイスタジオ)
音効:本間明
美術:戸田重昌
装飾:荒川大
衣装:上野芳生
結髪:細野明
調度:高津年晴
風俗構成:林美一
題字:粟津潔
記録:島田はる
編集:杉原よ志
音楽:佐藤勝
撮影機材:パナビジョン(三和映材社)
現像:東京現像所
製作担当:小笠原清
助監督:中野恵之
演技事務:中村英子
スチール:遠藤正、亀倉正子
出演:仲代達矢、岩下志麻、小沢昭一、丹波哲郎、渡辺文雄、米倉斉加年、山本圭、芥川比呂志、市川翠扇、中村敦夫、浜村純、藤原釜足、蜷川幸雄、太地喜和子、春日章良
1970年日本・表現社+にんじんくらぶ/シネスコサイズ・カラー103分35mmフィルム
無頼漢 -DVD-
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。


丹波哲郎、米倉斉加年                   仲代達矢、岩下志麻、渡辺文雄

映画「わるいやつら」

わるいやつらわるいやつら
片岡孝夫                                                               松坂慶子

今回は野村芳太郎監督1980年製作「わるいやつら」をピックアップする。
本作は原作者の松本清張氏が野村芳太郎監督達と1978年11月に設立した霧プロダクションの第一回作品となる。サスペンスというより愛憎と強欲、女の怖さを豪華俳優陣が見事に演じるが、特に緒方拳さんの井上警部が戸谷信一を取調室で落とすシーンは迫力があった。

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梶芽衣子                                                             宮下順子

【ストリー】
総合病院の院長・戸谷信一(片岡孝夫)は名医と言われた父の死後漁色にあけくれ、病院の赤字を女たちからまきあげた金で埋めていた。戸谷は妻の慶子と別居中で、横武たつ子(藤真利子)、藤島チセ(梶芽衣子)の二人の金ずるの愛人がいる。また彼は槙村隆子(松坂慶子)という独身で美貌のデザイナーに夢中になっている。戸谷は友人の経理士、下見沢(藤田まこと)に妻との離婚の金銭問題やその他の悪事を任せていた。愛人たつ子は深川の材木商のおかみで、親ほど歳の違う夫は、長く病床にあり、彼女が店をきりもりしていた。彼女は戸谷に金を貢ぎながら、夫を毒殺しようとする。戸谷の協力で、たつ子の計画は成功するが、家族の疑いで彼女は店の金を自由に使えなくなってしまう。戸谷は結婚を迫る金のないたつ子を、かつての父の二号で、自分も関係した婦長の寺島トヨ(宮下順子)と共謀して殺害する。一方の愛人、藤島チセも東京と京都にある料亭を切りまわす女傑で、戸谷の最大の資金源だった。チセも夫を疎ましがっており、戸谷はたつ子のときと同じ方法で殺害する。二度とも、医師として信用のある戸谷の書いた死亡診断書は何の疑いももたれなかった。戸谷は秘密を知るトヨの存在が次第に邪魔になり、モーテルで絞殺、死体を林の中に投げ捨てた。戸谷はすべての情熱を隆子に注いだ。一方、トヨの死体発見の記事はいつまでも報道されなかった。ある日、井上警部(緒形拳)が戸谷を訪れた。たつ子とチセの夫の死因に不審な点があると言う。追いつめられる戸谷。そこへ、下見沢が戸谷の預金を下して行方をくらませたことが判明する。絶望した戸谷は殺人で逮捕される。そして、殺したはずのトヨとチセが逮まった。トヨは息絶えておらず、逃げだしてチセと組んだのだ。無期懲役の戸谷にくらべ、二人は殺人幇助ということで、刑期はずっと短かかった。数日後、隆子のファッション・ショーが開かれていた。それは下見沢のプロデュースによるものだった。そして、ナイフを隠しもった下見沢が隆子に襲いかかった。刑務所に送られる戸谷の足もとに風に舞う新聞がからみついた。そこには「血ぬられたファッション・ショー・デザイナー重傷、中年男の悲恋」の見出があった。

わるいやつらわるいやつら
宮下順子                        緒形拳

題名:わるいやつら
監督:野村芳太郎
企画:松本清張
製作:野村芳太郎、野村芳樹
原作:松本清張
脚本:井手雅人
撮影:川又昂
照明:小林松太郎
録音:山本忠彦
美術:森田郷平
編集:太田和夫
音楽:芥川也寸志
助監督:大嶺俊順
スチール:赤井博且
出演:片岡孝夫、松坂慶子、梶芽衣子、藤真利子、宮下順子、神崎愛、藤田まこと、緒形拳、渡瀬恒彦、米倉斉加年、山谷初男、滝田裕介、小沢栄太郎、佐分利信
1980年霧プロダクション+松竹/ビスタサイズ・カラー129分35mmフィルム
わるいやつら -DVD-
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。

わるいやつらわるいやつら
渡瀬恒彦                     松坂慶子、藤田まこと

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