映画「乱れ雲」

乱れ雲
加山雄三

今回は成瀬巳喜男監督1967年製作「乱れ雲」をピックアップする。
本作は、巨匠成瀬巳喜男監督の遺作(1969年7月2日満63歳没)になり、東宝創立35周年記念作品となっている。内容は、交通事故の被害者と加害者の男女の憎しみと愛情の狭間で揺れる心を繊細に描いた脚本の完成度に優れ、司葉子さん、加山雄三さんの微妙な心理を演じ分ける芝居も素晴らしかった。そして成瀬監督の端正で的確なカット割りは、安心して映画を観る事が出来た。

乱れ雲乱れ雲
司葉子                      土屋嘉男、司葉子
乱れ雲乱れ雲
中丸忠雄、加山雄三                藤木悠、草笛光子

【ストリー】
江田宏(土屋嘉男)と由美子(司葉子)は幸福の絶頂にいた。江田は通産省に勤めていて米国派遣の辞令を受け、妻の由美子は妊娠していることを知ったばかりだった。だが、江田が交通事故で死んだのは二人が祝杯をあげてから間もなくのことだった。告別式の日、江田を轢いた三島史郎(加山雄三)が現われた。由美子は史郎に激しい憎悪を感じた。史郎の起した交通事故は不可抗力で、彼は無罪になったのだが、彼は勤め先の貿易会社の死命を制する通産省の役人を殺したため青森へとばされ、常務の娘(浜美枝)との婚約も破棄された。史郎は毎月一万五千円を十年間由美子に支払うと約束したが、史郎にとって少しも義務のないこの契約は、由美子の姉文子(草笛光子)が行なった。由美子には毎月決って送られてくるその金は、つらい思いにつながって暗い気持ちにさせられるものとなった。彼女は夫の両親から籍を抜かれ、その上、胎内の子も捨てねばならなかったのだ。やがて、勤めに出た彼女は、身を寄せていた文子の家で、彼女の美貌に義兄の目が光るのを感じると、義姉の勝子(森光子)がとりしきっている十和田湖畔の実家に帰った。青森で史郎を訪れた由美子は文子がとり決めた契約を破棄した。彼女は事件のすべてを忘れようと思ってのことだが二人は何度か顔を合わせた。いつか二人はお互いに愛を覚えるようになったが、由美子は史郎に自分の前から去ってくれと頼んだ。ある日、史郎が西パキスタンへ転勤を命ぜられ、二人は別れの一日を湖畔で過ごした。
由美子は幾度か史郎の激情に押し流されそうになった。その度に彼女を押しとどめたのは前夫の想い出だった。その由美子の心が急に史郎に傾いたのは史郎の発つその日だった。だが、二人は嶮しい山道で悲惨な交通事故を目撃した。その有様は、かつてのいまわしい想い出そのままに、二人を重苦しくつつんだ。由美子は決して史郎と結ばれないことを悟った。

乱れ雲
司葉子
乱れ雲乱れ雲
森光子、加東大介                  司葉子、加山雄三

題名:乱れ雲
監督:成瀬巳喜男
製作:藤本真澄、金子正且
脚本:山田信夫
撮影:逢沢譲
照明:石井長四郎
録音:藤好昌生
整音:下永尚
美術:中古智
編集:大井英史
音楽:武満徹
現像:東京現像所
助監督:高橋薫明
スチール:中尾孝
出演:加山雄三、司葉子、森光子、草笛光子、浜美枝、加東大介、藤木悠、中丸忠雄、土屋嘉男、左卜全
1967年日本・東宝/シネスコサイズ(東宝スコープ)・カラー108分35mmフィルム
乱れ雲 [DVD]
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乱れ雲
浜美枝

映画「隠し砦の三悪人」

隠し砦の三悪人
三船敏郎
隠し砦の三悪人隠し砦の三悪人
三船敏郎                      上原美佐

今回は巨匠黒澤明監督1958年製作「隠し砦の三悪人」をピックアップする。
本作は黒澤監督初のシネスコ作品で、戦国の世、敗軍の将が美女と黄金を擁して敵中を突破するという時代劇だ。ジョージ・ルーカス監督の「スター・ウォーズ(1977年/STAR WARS EPISODE IV: A NEW HOPE)」で、本作の百姓コンビ(千秋実、藤原釜足)が“C-3PO”“R2-D2”のモデルとなったそうだ。本作の撮影は、兵庫県西宮市の蓬莱峡で行われ撮影の前半は順調に進んだが、後半は天候に災いされて大幅に遅れ作品自体はヒットしたが、制作日数と予算がオーバーした。そこで製作会社の東宝は、後に監督側にプロダクションの設立を要求した。本作が現在の黒澤プロダクションが出来る契機となった訳だが、製作会社が一連の予算的なリスクを負わせる仕組みになったとも言える。

隠し砦の三悪人隠し砦の三悪人
樋口年子、上原美佐                千秋実、藤原釜足

【ストリー】
戦国の乱世、秋月家は隣国の山名家と一戦を交えて敗れ去った。秋月家の侍大将・真壁六郎太は、世継の雪姫を擁して数名の残党と隠し砦にこもった。砦近くの泉には、薪の中に軍資金黄金二百貫が隠されている。同盟国の早川領へ脱出の機会を狙っていた六郎太は、砦近くの沢で出会った二人の男、百姓の太平と又七を利用しようと考えた。二人の強欲は、黄金を背負わせたらあらゆる苦難にも耐え得ると見抜いたからだ。早川領への国境は警護が固かったから、一度山名領へ入り、敵地を通って早川領へ抜けるより道はなかった。六郎太は雪姫を口がきけない村娘にしたて、太平・又七とともに砦を後にした。国境の関所。六郎太は背中の薪を一本引抜き山で拾ったと訴え、黄金を見て騒ぎ出したその際に関門を通過した。木賃宿で一夜を明かした六郎太は、姫の願いで、人買いに買われて行く秋月の百姓娘を救った。百姓娘はどこまでもついてきた。一行五人は、しばらくの間姿をくらますことに成功したが、騎馬武者に発見された。六郎太の前に、山名の侍大将・田所兵衛が立ちふさがった。激闘数合、兵衛は六郎太の槍を太腿に受けた。首をさしのべる兵衛を残し、六郎太は馬にとび乗った。山名方は百姓を火祭りにかりたて、一行がその行列にまぎれこんで逃げるのを待った。薪を火にくべる火祭りの行列は、黄金をしこんだ薪を運ぶ絶好の機会だった。太平と又七が列を離れようとしたとき、六郎太は押しとどめその炎の中に薪を投げこんだ。一行は、百姓たちとともに踊った。翌朝、金の延棒を拾いあげていた一行に危機が迫った。山名方の山狩りである。太平・又七は敵方へ走った。--山名と早川の国境にある関所の牢の中で、雪姫と六郎太は最後を待っていた。そこに現われたのが兵衛だ。六郎太に不覚をとったため、主君に弓杖で打たれたという。姫・六郎太・百姓娘の三人は、縛られたまま馬にのせられて曳き出された。続いて黄金をつんだ五頭の馬。と、兵衛が現われ黄金をつんだ馬の尻をなぐりつけた。馬は早川領へ。続いて兵衛は六郎太の縄を切った。三人は早川領へ走り去った。兵衛も続いた。慌てた山名の鉄砲が、後を追って鳴り響いた。

隠し砦の三悪人隠し砦の三悪人
三船敏郎

題名:隠し砦の三悪人
監督:黒澤明
製作:藤本真澄、黒澤明
脚本:菊島隆三、小国英雄、橋本忍、黒澤明
撮影:山崎市雄
照明:猪原一郎
録音:矢野口文雄
整音:下永尚
美術:村木与四郎
編集:黒澤明
音楽:佐藤勝
製作担当:根津博
美術監修:江崎孝坪
監督助手:野長瀬三摩地
特殊技術:東宝技術部
出演:三船敏郎、千秋実、藤原釜足、上原美佐、樋口年子、藤田進、志村喬、三好栄子、藤木悠
1959年ベルリン国際映画祭【監督賞】黒澤明【国際評論家連盟賞】
1958年日本・東宝/シネスコサイズ・モノクロ139分35mmフィルム
隠し砦の三悪人 [DVD]
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隠し砦の三悪人隠し砦の三悪人

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