映画「お茶漬の味」

お茶漬の味お茶漬の味
佐分利信                      木暮実千代

今回は巨匠小津安二郎監督1952年製作「お茶漬の味」をピックアップした。
本作は倦怠期の夫婦の心模様を、一杯のお茶漬を通してユーモラスに描いた作品で、昭和20年代の東京ドームになる前の後楽園球場、未だ連合軍の管理下にあった羽田空港、パンアメリカン航空のプロペラ機、手動式パチンコなど、当時の風俗、風景を随所に盛り込んでいるのに注目する。

作品リスト

お茶漬の味お茶漬の味
鶴田浩二                      津島恵子

【ストリー】
妙子が佐竹茂吉と結婚してからもう7、8年になる。信州の田舎出身の茂吉と上流階級の洗練された雰囲気で育った妙子は、初めから生活態度や趣味の点でぴったりしないまま今日に至り、そうした生活の所在なさがそろそろ耐えられなくなっていた。妙子は学校時代の友達、雨宮アヤや黒田高子、長兄の娘節子などと、茂吉に内緒で修善寺などへ出かけて遊ぶことで、何となく鬱憤を晴らしていた。茂吉はそんな妻の遊びにも一向に無関心な顔をして、相変わらず妙子の嫌いな「朝日」を吸い、三等車に乗り、ご飯にお汁をかけて食べるような習慣を改めようとはしなかった。たまたま節子が見合いの席から逃げ出したことを妙子が叱った時、無理に結婚させても自分たちのような夫婦がもう一組できるだけだ、と言った茂吉の言葉が、大いに妙子の心を傷つけた。それ以来二人は口も利かず、そのあげく妙子は神戸の同窓生の所へ遊びに行ってしまった。その留守に茂吉は飛行機の都合で急に海外出張が決まり、電報を打っても妙子が帰ってこないまま、知人に送られて発ってしまった。その後で妙子は家に帰ってきたが、茂吉のいない家が彼女には初めて虚しく思われた。しかしその夜更け、思いがけなく茂吉が帰ってきた。飛行機が故障で途中から引き返し、出発が翌朝に延びたというのであった。夜更けた台所で、二人はお茶漬を食べた。この気安い、体裁のない感じに、妙子は初めて夫婦というものの味をかみしめるのだった。その翌朝妙子一人が茂吉の出発を見送った。
茂吉の顔も妙子の顔も、別れの淋しさよりも何かほのぼのとした明るさに輝いているようだった。

お茶漬の味お茶漬の味
笠智衆                       淡島千景

題名:お茶漬の味
監督:小津安二郎
製作:山本武
脚本:野田高梧、小津安二郎
撮影:厚田雄春
照明:高下逸男
録音:妹尾芳三郎
美術:浜田辰雄
装置:山本金太郎
装飾:守谷節太郎
衣裳:齋藤耐三
編集:浜村義康
音楽:斉藤一郎
監督助手:山本浩三
撮影助手:川又昂
出演:佐分利信、木暮実千代、鶴田浩二、淡島千景、津島恵子、三宅邦子、柳永二郎、望月優子、笠智衆、設楽幸嗣
1952年日本・松竹/スタンダードサイズ・モノクロ115分35mmフィルム
お茶漬の味 [DVD]
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。

お茶漬の味お茶漬の味
お茶漬の味お茶漬の味

映画「お早よう」

お早ようお早よう
笠智衆

今回は巨匠小津安二郎監督1959年製作「お早よう」をピックアップする。
本作は小津監督の「彼岸花」に続くカラー作品第二弾であり、東京タワーから白黒テレビ放送が送出された翌年にテレビ受像機を巡る世相を描いたものだ。ニュースフィルムでは知る由もない市民生活の機微を知る事が出来る作品である。
1959年1月にロケハン、2月27日から4月19日まで撮影、5月12日に公開されたそうだ。
撮影期間と仕上げ日数にプログラムピクチャーと言われた日本映画最盛期が伺える。

作品リスト

お早ようお早よう
久我美子                      佐田啓二

【ストリー】
東京の郊外--小住宅の並んでいる一角。組長の原田家は、辰造、きく江の夫婦に中学一年の子・幸造、それにお婆ちゃんのみつ江の四人暮し。原田家の左隣がガス会社に勤務の大久保善之助の家。妻のしげ、中学一年の善一の三人。大久保家の向い林啓太郎の家は妻の民子と、これも中学一年の実、次男の勇、それに民子の妹有田節子の五人暮し。林家の左隣・老サラリーマンの富沢汎は妻とよ子と二人暮し。右隣は界隈で唯一軒テレビをもっている丸山家で、明・みどりの若い夫婦は万事派手好みで近所のヒンシュクを買っている。そして、この小住宅地から少し離れた所に、子供たちが英語を習いに行っている福井平一郎が、その姉で自動車のセールスをしている加代子と住んでいる。林家の民子と加代子は女学校時代の同窓で、自然、平一郎と節子も好意を感じ合っている。このごろ、ここの子どもたちの間では、オデコを指で押すとオナラをするという妙な遊びがはやっているが、大人たちの間も、向う三軒両隣、ざっとこんな調子で、日頃ちいさな紛争はあるが和かにやっている。ところで、ここに奥さん連中が頭を痛める問題が起った。相撲が始まると子供たちが近所のヒンシュクの的・丸山家のテレビにかじりついて勉強をしないのである。民子が子どもの実と勇を叱ると、子供たちは、そんならテレビを買ってくれと云う。啓太郎が、子供の癖に余計なことを言うな、と怒鳴ると子供たちは黙るどころか、「大人だってコンチワ、オハヨウ、イイオテンキデスネ、余計なこと言ってるじゃないか」と反撃に出て正面衝突。ここに子供たちの沈黙戦術が始まった。子供たちは学校で先生に質問されても口を結んで答えないという徹底ぶり。この子供たちのことを邪推して近所の大人たちもまた揉める。オヤツをくれと言えなくて腹を空かした実と勇は原っぱにおヒツを持出して御飯を食べようとしたが巡査に見つかって逃げ出し行方不明となった。間もなく子供たちは駅前でテレビを見ているところを、節子の報せで探しに出た平一郎に見つかった。家へ戻った子供たちは、そこにテレビがおいてあるのを見て躍り上った。停年退職した富沢が電機器具の外交員になった仕事始めに月賦でいいからと持込んだものだった--。

お早ようお早よう
三宅邦子                         大泉滉

題名:お早よう
監督:小津安二郎
製作:山内静夫
脚本:野田高梧、小津安二郎
撮影:厚田雄春
照明:青松明
録音:妹尾芳三郎
美術:浜田辰雄
装置:山本金太郎
装飾:守谷節太郎
美粧:杉山和子
衣裳: 吉田幸七
編集:浜村義康
音楽:黛敏郎
フィルム:アグファ・ゲバルト
現像:東京現像所
監督助手:田代幸三
色彩計測:老川元薫
撮影助手:舎川芳次
出演:佐田啓二、久我美子、佐田啓二、笠智衆、三宅邦子、杉村春子、沢村貞子、設楽幸嗣、島津雅彦、東野英治郎、大泉滉、殿山泰司
1959年日本・松竹/スタンダードサイズ・カラー94分35mmフィルム
お早よう [DVD]
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。

お早ようお早よう