映画「遊び」

遊び遊び
大門正明、関根恵子                関根恵子、大門正明

今回は増村保造監督1971年製作「遊び」をピックアップする。
本作は増村保造監督の大映での最後の作品であり、起死回生を狙った大映と日活の共同配給機構”ダイニチ映配”が解消となって倒産寸前の状態になり、本作の製作費が廻らず度々撮影が中断されたそうだ。しかしながら、若き日の蟹江敬三さんや平泉成さん、松阪慶子さん、昭和の日本映画を支えてきた名バイプレーヤーである杉山とく子さん、根岸明美さん、内田朝雄さんが出演しているのは貴重だ。

遊び遊び
内田朝雄                    大門正明、蟹江敬三

【ストリー】
町工場で働く、やっと十六歳になった少女(関根恵子)には、寂しい過去があった。数年前、ダンプの運転手をしていた父(内田朝雄)は、人身事故を起こして以来飲んだくれ、借金を残して死んでしまった。後には、造花の内職をするしか能のない母(杉山とく子)と、カリエスで寝たっきりの姉(小峯美栄子)が残され、少女は借金の返済のために、中学を卒業すると働きにだされた。狭苦しい工場の女子寮では、昼間の仕事に疲れながらもわずかな自由な時間を若い男に賭ける女子工員の熱気でむせかえっていたが、少女だけは、陰気だとののしられながらも寮にとじ込もり、給料を家に送り続けていた。ある日、もと工員のヨシ子(甲斐弘子)が、キャバレーのマネジャーを連れて寮にやってきた。
ヨシ子の口から語られるホステスの生活は、ベルトコンベアーに追い廻される工員たちにとっては夢のようであった。数日後、少女はヨシ子を尋ねるため町に出た。電話帳をめくる少女に、背の高い少年(大門正明)が声をかけた。少年は十八歳。父親は、蒸発し、母親(根岸明美)はおでんの屋台をひき、寂しくなると男をくわえこむ、飲んだくれのどうしようもない母親だったが、少年はぐれながらも面倒をみていた。今は、町のチンピラになった少年の最初のスケコマシの相手が少女だったのである。少年は、喫茶店に誘い、映画館に連れ込み、そして、兄貴(蟹江敬三)の指図する通り、連込み宿へと足を運んだ。少年は、少女の素直さに胸を打たれ、薄汚れた一室で兄貴たちに犯され、後はトルコ風呂(ソープランド)に売られていくことを想うと、少年の胸は震え、やくざのこわさを忘れた。少年は、見張りの宿のおやじを鉄びんでぶん殴り、少女を裏口から連れだし、タクシーに乗り込んだ。夜ふけ、二人は川辺の小さなホテルにたどりついた。少女は、生まれて初めてやさしくされ、母のことも、カリエスの姉のことも貧しかった過去もみんな忘れようとした。少年も兄貴を裏切ったこわさを忘れようとした。二人は浴衣を脱ぎ払った。少女の身体は、まぶしく美しかった。少年は、不器用に、少女の裸体を抱いた。翌朝、朝霧の中、二人は葦原を走り廻った。そして川辺に浮かぶ古い水舟を見つけると沖へ沖へと漕ぎだした。ぶくぶくと沈む舟の中で、服を脱ぎ捨てた二人はしっかりと抱き合った。二人の水舟は、キラキラ輝く海へと流されていった。

遊び遊び

題名:遊び
監督:増村保造
企画:藤井浩明
原作:野坂昭如「心中弁天島」
脚本:今子正義、伊藤昌洋、増村保造
撮影:小林節雄
照明:渡辺長治
美術:間野重雄
録音:須田武雄
編集:中静達治
音楽:渡辺岳夫
現像:東京現像所
助監督:崎山周
スチール:大葉博一
出演:関根恵子(高橋惠子)、大門正明、内田朝雄、蟹江敬三、松坂慶子、平泉征、杉山とく子、小峯美栄子、甲斐弘子、根岸明美、高橋由美子
1971年大映東京撮影所/シネスコサイズ・カラー89分35mmフィルム
遊び -DVD-
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。

遊び遊び

映画「おさな妻」


関根恵子(高橋惠子)

関根恵子                      新克利

今回は臼坂礼次郎監督1970年製作「おさな妻」をピックアップする。
本作は女優、関根恵子(現:高橋惠子)さんのデビュー作品として決定していたが、「高校生ブルース」の主演予定だった女優が怪我をしたことから、代役に抜擢され1970年8月封切の「高校生ブルース」がデビュー作となった。

【ストリー】
黛玲子(関根恵子)は数カ月前、母(坪内ミキ子)を病気でなくし、みなし子になってしまった。親族会議の結果、伯母静江の家に引き取られることになった。母をなくした悲しみを、静江(近江輝子)は優しくいたわり、今まで通り高校に通わせてくれたが、静江の息子淳一(炎三四郎)だけは、いかがわしい眼つきで玲子を見ていた。ある日、淳一が静江の留守中、学校から帰った玲子に乱暴しようとしたため、玲子はこの家を出る決心をする。行くあてもなく町をブラブラしている玲子に声をかけたのは由紀子(渡辺美佐子)というあまり売れない、小劇場の舞台女優だった。由紀子に事情を説明すると、こころよく、彼女のアパートにとめてくれ、翌日、安いアパートを紹介してくれた。静江の反対を押し切ってアパートでの一人暮しを始めた玲子は、再会した幼稚園時代の先生の紹介で通学のかたわら保育園で子供たちの面倒をみるアルバイトを始めた。生活のためとはいえ、学校を抱えてのアルバイトは苦しかったが、やがてそれもなれた。園児たちはすぐ玲子になつき、ことに母のないまゆみ(佐藤久里子)は、玲子を母のようにしたうようになった。やがてまゆみを間にはさみ、父親の吉川(新克利)と玲子は食事をしたり、買い物をしたりする、楽しい時間を持つようになった。玲子は、吉川をまゆみの父親としてよりも、男性として愛情を感じ始めていた。吉川の強引な求婚に、玲子は高校生という自分の立場と吉川との年齢の開きに躊躇しながらも結婚に合意する。幸せな結婚生活が続いた。しかし、ふとしたきっかけで吉川の昔の恋人(真山知子)を知り、いまもなおその恋人が吉川を愛していることを知った玲子は、大人の愛憎の複雑さが理解できず自暴自棄になって結婚を後悔し、家庭を棄てようとするが、吉川の強い愛情を感じ、やがてまゆみと吉川との静かで平和な生活にもどっていった。


真山知子

題名:おさな妻
監督:臼坂礼次郎
企画:藤井浩明、川崎治直
原作:富島健夫
脚本:白坂依志夫、安本莞二
撮影:上原明
照明:久保江平八
録音:飛田喜美雄
美術:間野重雄
編集:糸井敬男
音楽:八木正生 主題歌:関根恵子「はじめての愛」
現像:東京現像所
製作主任:川村清
助監督:山本洋
スチール:大葉博一
出演:関根恵子(高橋惠子)、新克利、渡辺美佐子、近江輝子、坪内ミキ子、真山知子、福田豊土、八代順子、炎三四郎、佐藤久里子
1970年日本・大映/シネスコサイズ・カラー86分35mmフィルム
おさな妻 -DVD-
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。


京王井の頭線神泉駅前3000系(1970年)

映画「成熟」

成熟
関根恵子(高橋惠子)
成熟成熟
関根恵子、篠田三郎

今回は湯浅憲明監督1971年製作「成熟」をピックアップする。
本作の撮影前から大映は倒産寸前という状況で、撮影実行予算は山形県議会の商業映画製作委員会が出資し、鶴岡市、庄内観光協議会、酒田市庄内観光協会、庄内交通などがタイアップしている。内容は景勝地にスーパーインポーズタイトルが入る観光映画にドラマを挿入した無難な形になっており「高校生ブルース」でデビューした関根恵子さんの大映最後の作品でもある。そして大映株式会社は、本作公開後に倒産した。その後1974年から2002年まで徳間書店が経営再建で映画事業を引き継いだ。この時点で”大映”という名前は残っていたが2004年からは経営権を角川書店が取得して角川映画に合併し、映画会社”大映“という名前は60年の歴史に幕を下ろし消滅した。

角川映画多摩川撮影所
現在の角川大映スタジオ(Googl Mapより)
成熟成熟
関根恵子、早川保                  伴淳三郎

【ストリー】
山形県庄内平野の鼠ケ関は、古くからみこし流しという行事が行われており、その日は近隣から老若男女が集まり大変なにぎわいを見せる。みこし流しには、一つのいい伝えがあった。それは、みこしを担いで海に入る男たちの濡れた体は将来を誓い合った娘以外は拭いてはならない。万一、体を拭いた娘と拭かれた若者が結婚しないと竜神の崇りで二人とも必ず不幸になるというものだった。農業高校の写真部員加納ゆう子(関根恵子)はこれらの被写体を求めて夢中だった。そして、みこし流しの伝説を信じないゆう子が、気軽に見知らぬ青年笹尾隆二(篠田三郎)の体を拭いたことから騒動が持ち上ってしまった。隆二が、農業高校のライバルである水産高校生であり、しかも同じ写真部員であったため、両校写真部員はいきりたってしまったのである。又、昔気質の隆二の父吾助(伴淳三郎)は、今だに竜神伝説を信じる頑固もので隆二のとめるのを振り切ってゆう子の家を訪れ、ゆう子を嫁にくれと頼むが、農業を営むゆう子の両親に竜神伝説を一笑され、ゆう子には坂井正夫(菅野直行)という婚約者がいると断わられてしまった。数日後、学生写真コンクールの審査員である宣伝課長木内(青空はるお)が、市内の写真屋で見かけた隆二の写真を激賞したという噂がたった。それは、ゆう子の水着姿を撮ったものだという。やがて、鶴岡市の天神祭り、別名お化け祭りの日がきた。お化け祭りとは男女の区別なく独特の女装をして、顔を布で隠し、徳利と盃を持って見物人に酒を飲ませるという祭りである。昼間から酒を飲まされたゆう子の婚約者正夫は、夜、公園でお化けに扮した若い娘をゆう子と感違いして抱いてしまう。しばらくして町中に、ゆう子が隆二の子を妊娠したという噂がたった。両校生徒は勿論、ゆう子の両親や吾助までその噂を信じる有様だった。追いつめられた二人は、自分たちの愛を確認し合い誤解する周囲に嫌気がさして、東京へ出ていく決心をする。翌朝、駅に急ぐゆう子は、田んぼに秋うんかが発生しているのを知り愕然とする。稲作に大被害をもたらす秋うんかの発生を放置することはゆう子にはできなかった。駅に待っていた隆二にそのことを伝え、駆落は中止された。やがて写真コンクールの一次審査が始まりゆう子と隆二の作品が優勝候補に挙げられた。ところが、ゆう子は応募作品を取り下げると申し出、これを聞いた隆二も辞退してしまった。つもりにつもった両校の対抗意識は爆発し、大混乱となった。その時、両校生徒に意外な告白をしたのはゆう子のクラスメイト小谷ミキ(八並映子)であった。祭りの夜、正夫に抱かれたのも、ゆう子と隆二の噂を流したのも正夫を愛していたミキだった。正夫とミキ、ゆう子と隆二という二組のカップルが生まれ、両校生徒の祝福を受けるのを見た写真部長の桂教師(早川保)は乱闘の責任をとって東京に発っていった。

成熟成熟
赤座美代子

題名:成熟
監督:湯浅憲明
企画:斎藤米二郎
脚本:高橋二三
撮影:喜多崎晃
照明:久保江平八
録音:奥山秀夫
美術:矢野友久
編集:宮崎善行
音楽:菊池俊輔
現像:東京現像所
製作主任:真鍋義彦
助監督:小林正夫
スチル:塩見敏彦
出演:関根恵子(高橋惠子)、篠田三郎、早川保、伴淳三郎、八並映子、赤座美代子、菅野直行、小野川公三郎、高橋由美子、桜京美
1971年日本・大映/シネスコサイズ・カラー86分35mmフィルム
成熟-DVD-
本作はゲオ宅配レンタルでご覧になれます。

成熟成熟
菅野直行、八並映子

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